チームの営業力強化に必須!BtoBにおける営業マネジメントの役割

2024.01.24 (更新日:2024.04.02)

マネジメントノウハウ

チームの営業力強化に必須!BtoBにおける営業マネジメントの役割

営業マネジメントとは、単なる数値・プロセスの管理だけではなく、戦略的視点をもって行くべき方向性を示し、人・組織を鍛えながら数値やプロセスを見える化し、伸びシロ(課題)を継続改善しつつ成果を最大化していく総合的なマネジメント(=営業マネジメント)です。

マネジメントとは

経営学者のピーター・ドラッカーは、マネジメントとは「組織が成果を出すための一機能」であると言定義しています。効率よく組織を動かすための役割であり、実際にマネジメントを行うのがマネージャーです。組織の利益を最大化できるよう、その構成要素に働きかける必要があるとも言えます。

営業マネジメントにおけるマネージャーとは、個々の営業担当者が持てる能力をフルに発揮し、最高のパフォーマンスをできるように後押しする存在です。そのためにもマネージャーには、成果につながるノウハウや情報を共有することに加え、各人のモチベーションを高める役割を担っています。

マネジメントとリーダーシップ

リーダーシップという言葉もマネジメントと並んでよく聞きますが、両者を同じような意味に捉えている人は多いのではないでしょうか。もちろん、両者とも目標に向かって仕事をするために必須のスキルなのですが、立場や役職によって求められるスキルが変わってきます。

リーダーシップが求められるのはリーダー的立場にある人だと思いがちです。しかし、必ずしもリーダーのみがリーダーシップを持っていればよいというわけではありません。リーダーシップとは、役職にかかわらず組織に所属する全メンバーが備えているべきスキルのことです。

ドラッカーによると、リーダーシップとは先天的に備わった才能ではなく、後天的な努力で身につけていくべきものとされています。組織において「リーダーシップを発揮する」とは、自身に課せられた役割を責任を持って果たすことです。つまり、部下を持つ管理職のポジションだけでなく、組織を構成する全メンバーにリーダーシップは必要であり、自身の仕事に邁進する源となる力とも言えます。

リーダーシップもマネジメントも、目指すものは共通しています。営業組織においては組織としての成果を出し利益を最大化することとなります。ただし、求められるスキルは異なります。リーダーシップとは、それを発揮することによって組織を構成するメンバーが目標達成に向かって自ら進みたくなるようなスキルのことです。マネジメントとは、実際に成果を出すための手法やプロセスを考え管理するスキルになります。

したがって、マネージャーのようにメンバーを管理するポジションでは、リーダーシップもマネジメントも両方必要です。逆に、人を管理する必要のないポジションでは、マネジメントのスキルは必ずしも必要とされません。しかし、先に述べたように、リーダーシップがあることはポジションにかかわらず重要です。

つまり、マネジメントはメンバーを管理するポジションにある者が適切に管理を行うためのスキルであり、リーダーシップはポジションに関係なく、成果を上げるために発揮するべきということになります。そして両者は相互に補完しながら効果を発揮します。

関連記事:リーダーシップメンバーの能力を最大限に引き出し、チーム目標を達成するためのリーダースキルを徹底紹介!

営業マネジメントの役割とは

それでは営業マネジメントの役割とはどういったものでしょうか。個々のメンバーがそれぞれの目標を達成できるよう管理し、適切なサポートを提供することです。ただし、短期的だけでなく、長期的視点での役割も考えなければなりません。

短期的視点:業績目標の達成

業績目標を定め、その達成に向けて管理することが、短期的視点で見た時の営業マネージャーの第一の役割です。実際に営業活動を行うのは個々の営業担当者ですから、マネージャーはチームが目指す方向性を掲げるとともに、各人が達成すべき目標を明確に示さなければなりません。

ざっくりとした目標だけ掲げて、部下に「足で稼げ」などとハッパをかけるようなやり方は通用しません。チームメンバーに対して、メンバーがどんな行動を取ることで目標が達成できるのかを明確に示す必要があります。月単位、週単位、日単位というふうに、達成するべき目標を単位ごとに細分化する必要もあるでしょう。

実現可能な目標を示しチームで共有することで、各メンバーのモチベーションも高くなります。そのために目標の根拠をわかりやすく示すことも必要です。なぜその数値なのか、根拠もないまま「達成しろ」と言われても、メンバーは納得できずモチベーションが高まることもありません。具体的な根拠を示し、それを達成することにどんな意義があるのかを伝え、各人が高いモチベーションを持って行動できるように促すことが大切です。

実現不可能な目標はメンバーのモチベーションを下げますが、簡単に達成できるような目標も同様です。「能力を最大限に発揮して達成できる」難度の目標を提示された時に、メンバーのモチベーションが最大に高まります。

マネージャーは目標を設定する際、メンバーの意欲(=自ら達成したい)を引き出すことが重要です。マネージャーという立場で勝手に目標を設定するのではなく、メンバー合意の上で目標を設定し、達成に向けて目指すことに意味があるのです。

目標を達成するためには、そこに至るまでのプロセスを管理することも必要です。これも営業マネジメントの重要な役割で、各メンバーの進捗状況を把握するとともに、適宜フィードバックも行う必要があります。

フィードバックとは目標を達成できなかったメンバーを叱責することではありません。達成した場合も、そうでない場合も、「どのような点が良かったか」「改善点は何か」「さらなる改善のためには何が必要か」という視点でフィードバックを行うことが必要です。

関連記事:部下が育つ効果的なフィードバックとは?4つの方法を解説!

長期的視点:人材の育成

長期的な視点に立てば、人材の育成こそ、営業マネジメントにおける中核と言えます。人材はあらゆる企業にとって財産です。つまりマネージャーには、組織の貴重な財産を正しく管理するとともに、優秀な人材へと育成することが求められます。

人材育成に熱意は大切ですが、昔のような精神論だけではもはや通用しません。いくら「もっと努力しろ」と言ったところで、それで業績がアップするわけではなく、逆にメンバーのモチベーションを下げることになってしまいます。

では、どうすればよいでしょうか。それは、各メンバーのパーソナリティーを把握し、強みを伸ばし弱みを克服できるように適切な道筋を示してあげることです。さらに、上から課題を押し付けるだけでなく、各自の自主性を尊重し、自ら行動できるよう成長を促すことです。それには、メンバーとの間に深い信頼関係があることが前提となります。そしてメンバーの信頼を得るには、マネージャーに高いコミュニケーション能力が求められることは当然です。

現実には「自分もプレーヤーとしてやっている以上、部下の育成まで手が回らない」というマネージャーが少なくありませんが、人材育成こそが組織の持続的な成長へとつながります。

ポイントは業績目標とメンバー育成の両立

ここまで触れてきましたが、営業マネジメントの役割とは、業績目標の設定や管理に加えて、その達成に向けて実際に行動するメンバーを育成することです。

目の前の目標を達成することに追われて短期的な視点に陥りがちですが、マネジメントでは人材育成という長期的な視点も欠かせません。もちろん、目標達成は重要ですが、短期的な視点にこだわると、望む成果を出せなかった部下を詰問したり叱責したりしてしまいがちです。

結果を求めることも大切ですが、より重要なことはメンバーが結果につながる適切な行動を実施しているかどうかを評価することです。マネージャーが「責任は自分が持つ」という態度で接すると、メンバーは結果を恐れず、自主性を発揮して行動できるようになります。そして成功体験を得ることで自己効力感が高まり、やがて組織を担う人材の育成につながっていくのです。

営業マネジメントに必要な7大要素

営業組織のマネジメントにおいては、常に何のために何をやっているかを明確に意識して行動することが大切です。そこで、営業マネジメントに必要なビジョン、プロセス、戦略、人材、組織、市場、顧客という重要な7要素をご紹介致します。

【営業マネジメント】7大要素

ビジョンをマネジメントする

営業チームとして目指すべき「ありたい姿」は必要です。その理想に向かって人は頑張ろうとする気持ちが生まれてくるからです。メンバーと一丸となって「数値だけではない、ありたい姿の実現」に向かって営業チームを結束し、進めてんでいくために必要となる目標、つまりビジョンの構築と浸透・定着を実施する必要があります。

プロセスをマネジメントする

営業組織は、ともすれば結果ばかりに目が向きがちですが、結果だけに目を向けていても狙った成果にはつながらないことは明白です。自チームの営業活動についてプロセスを見える化し、成果につながる可能性が高い行動を迅速・確実に実行させることで、限られた時間の中で、最大の成果を出す方法を見出すことです。

関連記事:営業プロセスマネジメントとは?(図解あり)

戦略をマネジメントする

「戦略」とは、目標を達成するために掲げる全体的な道筋、方針のことです。一方、戦略と混同されやすい言葉に「戦術」があります。戦術は、戦略という道筋に沿って、具体的にどのように行動するかという手法を示します。営業では、チーム全体を導く方針(=営業戦略)の下、戦術という手法で個別案件に対処することになります。

各エリアの営業マネージャーは、上位部門(会社・事業部・営業本部)の戦略を受け、それらを自チームに適合するよう加工し、各メンバーの行動へと展開する必要があります。エリアやチームごとに状況が異なるため上位戦略をそのまま伝えるだけでは不十分です。営業マネージャーには上位戦略を現場に即して練り直し、メンバーを適切な方向に導くことが求められます。

戦略マネジメントについて、詳細をご覧になりたい方は下記のebookをご参照ください。

戦略マネジメントを徹底解説

人材をマネジメントする

人材をマネジメントする前提となるのが信頼関係の構築です。日々のコミュニケーションの中で互いの理解を深め、信頼感を高めていくことが重要です。

そのうえで営業マネージャーは計画を立て、人材育成に取り組んでいきます。短期的な業績目標達成と長期的な人材開発の視点から、メンバーの現状を理解し「どんな能力を」「どの程度」「いつまでに」高めるかという計画を本人との合意の上で進めていきます。人材マネジメントではメンバーに合わせた支援が重要になります。成熟度の低いメンバーには丁寧な指導が必要ですが、経験があり成熟度の高いメンバーに対してはコーチングスキルを活用し、メンバーの自律を引き出すかかわり方が効果的になります。

組織をマネジメントする

個性も能力も異なる多数のメンバーからなる組織を、一つにまとめるのが組織マネジメントです。営業マネージャーには、チーム全体の方向性と向かう道筋を明らかにして、メンバー間の信頼感や目標達成への意欲を醸成することが求められます。メンバーが同じ方向に向かい、共通の目標に向けて情報やノウハウを共有しながら貢献するためには、チームビルディングのプロセスを理解し、メンバーに対して適切なリーダーシップを発揮するなどのマネジメントが必要となります。

営業マネジメントで心得ておくべきこと

目標の明確化と戦略の策定

a. 具体的な目標の設定:SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)な目標を設定し、従業員が明確な方向性を持てるようにします。

b. 戦略の適応性と柔軟性:組織の目標に基づいた柔軟な戦略を構築し、市場環境の変化に適応できるようにします。

リレーションシップの構築

a. 信頼構築のための積極的なコミュニケーション:定期的で誠実なコミュニケーションを通じて、信頼の醸成を図ります。
b. 顧客満足度の向上:顧客のニーズを理解し、それに応じたサービスやソリューションを提供することで、顧客満足度を向上させます。

効果的なコミュニケーション

a. 明確で適切な情報伝達:コミュニケーション手段やメッセージングを最適化し、誤解を防ぎます。
b. フィードバックの受容と活用:チームメンバーやクライアントからのフィードバックを積極的に受け入れ、それを業務改善に活かします。

市場動向の把握

a. 競合分析とトレンドマッピング:継続的な競合分析と市場トレンドのマッピングを通じて、変化に適応するための情報を収集します。
b. 新たなビジネス機会の発見:新興市場や顧客ニーズの変化に対応し、新たなビジネス機会を見つけるためのリサーチを行います。

トレーニングとスキルの向上

a. 継続的なトレーニングプログラム:営業チームに対して、新しい販売技術や業界のベストプラクティスに基づく継続的なトレーニングを提供します。
b. 個々のスキルマトリックスの策定:各メンバーの強みと課題を把握し、個別のスキル向上計画を策定します。

データと分析の活用

a. データドリブンな意思決定:顧客データや市場データを活用して、効果的な戦略と意思決定を行います。
b. KPIの定義とモニタリング:成果を測定するための適切なKPI(Key Performance Indicators)を定義し、定期的にモニタリングします。

柔軟性と適応力

a. 変化への迅速な対応:外部環境や内部の変化に対応するための柔軟な戦略やプロセスを確立します。
b. リアクティブとプロアクティブのバランス:変化に対してリアクティブであるだけでなく、将来の変化に備えてプロアクティブなアプローチを採用します。

チームワークとリーダーシップ

a. 共有のビジョンと目標:チーム全体が共有するビジョンと目標を確立し、協力の基盤を築きます。
b. リーダーシップの発揮:チームを鼓舞し、リーダーシップによって共通の目標に向かって進むよう促進します。

これらの要素に対し総合的に取り組むことで、営業マネジメントはより効果的かつ組織的に成果を上げることが可能です。

営業マネジメント力を強化するために必要な取り組み

最後に、営業マネジメント力強化のために、マネージャーが普段から意識するべき取り組みをご紹介します。

目標やビジョンを言語化する

目指すべき目標や実現したいビジョンを明確に言語化する習慣をつけましょう。単に数字だけを目標として掲げても、達成した状態(=ビジョン)がイメージできなければ、メンバーのモチベーションを高めることはできません

営業に関する書籍や研修は多数ありますが、そこで紹介されているやり方をそのまま導入しても、うまくいくとは限りません。チームが目指すものを言語化してチームの共通認識として共有することでマネジメントを円滑に実行するポイントとなります。

関連記事:マネージャーが意識すべき目標設定のポイントとは?部下の成長を促進するSMARTな目標設定のコツ

成功プロセスを体系化する

成功へ至るプロセスを体系化し、チームで共有しておくことも大切です。営業マネージャーの多くはプレイヤーとしての成功体験を持っています。一方で活動が属人化しやすく、いざ指導する立場になると成功要因をうまく伝えることができないという壁に直面するケースが多くあります。

成功までのプロセスや要因を振り返り体系化したうえでチームで共有できれば、うまくいかない時にも、どこに無駄や問題があるかを客観的に把握できるようになります。自身の成功要因を抽出することで、再現性のある指導につながりメンバーの育成が効率的に実施できるようになります。

営業マネジメントに役立つツール

営業マネジメントを効果的に支援するための様々なツールが存在します。これらのツールは、情報の管理、コミュニケーションの強化、効果的なプロセスの構築などさまざまな側面で営業活動を向上させるのに役立ちます。以下に、営業マネジメントに役立つ具体的なツールをいくつか挙げてみます。

RM(Customer Relationship Management)ツール

Salesforce、HubSpot CRM、Zoho CRMなどのCRMツールは、顧客情報の管理、セールスパイプラインの構築、リレーションシップの強化などに役立ちます。

セールスオートメーションツール

SalesLoft、Outreach、HubSpot Sales Hubなどのセールスオートメーションツールは、電子メールの自動化、フォローアップのスケジュール、セールスプロセスの最適化などを支援します。

ビジネスインテリジェンスツール

Tableau、Power BI、Lookerなどのビジネスインテリジェンスツールは、データの可視化や分析を通じてセールスデータを理解し、戦略的な意思決定をサポートします。

営業トレーニングプラットフォーム

Lessonly、MindTickle、Chorusなどのトレーニングプラットフォームは、営業チームのスキル向上やトレーニングの効果測定を行うのに役立ちます。

プロジェクト管理ツール

Asana、Trello、Jiraなどのプロジェクト管理ツールは、タスクの追跡や優先順位付け、チームコラボレーションを効果的に管理します。

電子契約ツール

DocuSign、Adobe Sign、HelloSignなどの電子契約ツールは、契約プロセスを効率的にし、署名の追跡や管理を簡素化します。

コミュニケーションツール

Slack、Microsoft Teams、Zoomなどのコミュニケーションツールは、営業チーム間の即時コミュニケーションやミーティングの実施をサポートします。

予測分析ツール

Clari、Aviso、InsightSquaredなどの予測分析ツールは、セールスパイプラインの予測や将来の取引の見積もりを行い、予測精度を向上させます。

リードジェネレーションツール

LinkedIn Sales Navigator、Leadfeeder、ZoomInfoなどのリードジェネレーションツールは、潜在的な顧客情報を見つけ、リードの生成を支援します。

営業分析ツール

Gong.io、Chorus、ExecVisionなどの営業分析ツールは、セールスコールや会話の録音・分析を通じて営業活動の向上を促進します。

一言に役立つツールといってもこれだけの種類があります。これらのツールは、営業プロセス全体を効果的に管理し、成果を最大化するのに役立ちます。
選択する際には、組織のニーズや目標に合わせて最適なツールを選ぶことが重要です。

関連記事:SFA(営業支援システム・ツール)とは何か?

【まとめ】チームの営業力を強化するために

営業マネジメントの重要性を理解しているつもりでも、多くの組織では数値の管理だけに留まっているのではないでしょうか。

BtoB営業組織においては、営業マネジャーが数値を達成するためのやり方やプロセスの体系化を考えなくてはなりません。短期・長期的視点で方向性を捉え、人材を育成し、継続的に成果を生み出すことのできるチーム作りを目指しましょう。
詳細について知りたい方はこちらを参照ください。