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2018/11/27

それは突然の電話だった。公害対策課に見積を提出して、1週間後の午前中に来島課長から関根に電話がかかってきた。
「関根さん、先ほど京都府内に工場がある電機メーカーのエッジ社の営業の方が見えまして、大気汚染情報提供システムの提案を持ってこられたのです。それが御社の提案とそっくりなんです。どこかに情報漏れましたかね」。
「えっ、そっくりなんですか」。
「そうなんです。無線機にセンサーを取り付けて読み取りその信号をPC上で処理してファクシミリで一斉同報する内容です。違うのは、複合機ではなくてファクシミリと小型コピー機のセット提案になっているところです。金額的には、だいぶ安いです」。

「うーん、漏れたとしかいいようがないですね。だとするとアルファ電通工事しかありえないですね」。

「おまけに、有力な市会議員からの口添えももらっています。1社購買なんてけしからん、地元の業者を入れて競争させろというような内容です。このままですと価格差も大きいので厳しいかもしれません」。
「うーん、そうなんですか」。関根は、電話口で唸ったまま、天を仰いだ。
関根は、一旦電話を終わらせた上で、上司の佐久間課長に相談に行った。

佐久間にあらましをかいつまんで話した上で、まずは佐久間と一緒に宇治市役所に向かった。

市役所に着くと、まずは公害対策課の来島課長のところに伺った。来島課長からは、公害対策課としては、市会議員からの口添えもあり提案を断ることはできないため、管財課に提案書を回さざるをえないということだった。

公害対策課を後にした関根は、管財課を訪問した。管財課としても大気汚染情報提供システムの購入手続きには、エッジ社からの提案も検討対象とするとの見解だった。このまま行くと、本庁のシステムは仕様的にヤマト単独の随意契約となるものの、数の多い出先は、価格面からエッジ社のファクシミリと小型コピー機のセット提案になる可能性が高いことが予測される。出先を取られれば、売上面では元々の案件規模の1/5となる。「なんのために今まで頑張ってきたのか」関根は悔しさで歯ぎしりする思いだった。

アルファ電通工事にも連絡を取ってみた。担当者は、電話に出ず、代わりにその上司が出て、「うちは公害対策課からの依頼に基づいて、エッジ社と協業して提案しただけ」と言い張るのみだった。

支店に戻る車中、関根と上司の佐久間はほとんど無言だった。それほど2人は憔悴していたのだった。
「アルファ電通工事の担当者にぼくが提案書を渡しさえしなかったら・・・」この言葉が関根の頭をグルグルと巡っていた。

関根は、定時で退勤した。重い足取りで帰宅すると、妻が「どうしたの、暗い顔して」と聞いてきた。「実はさー・・・」、関根はたまらず、それまでの経緯を吐き出した。
「そうだったのー。ひどい話ね。本当悔しいわね。でもさ、提案書を渡したことも、それ程うかつだったとは思えないわ。だって、お客様への工事を万全にするためだったからでしょう」。

「うん、そうだよ」。

「いつもあなたはお客様のために行動するって言ってたじゃない。だったら自分を責めちゃダメ!。あなたのせいではなく、相手が悪かったのよ。でも騙した方も後ろめたいから、だから上司の陰に隠れてあなたに話できないのよ」。

「うーん、確かにそうかもなー」。

「私は騙された方で良かったと思うわ」。

「確かにそうだけどさー。今までの努力が水の泡かと思うと俺も辛いよ」。
「まだ決まったわけじゃないんでしょ。あんなに現場に通っていたことは無駄にならないんじゃない。現場に行ってみた?」。
「そう言えば、この一件後に現場の皆さんのところにはまだ行ってないよ。そうだな、あきらめないで、現場の皆さんの意見を聞いてみようか」と関根は、妻の言葉で奮い立った。

翌朝、気を取り直した関根は、出社してすぐ以前ヒアリングした中央公民館、小学校、出張所へと向かった。

 

著作:渡邊茂一郎

その7 「挽回」へ続く

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