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2021/02/28

正確な売上予測にもとづいて営業チームを率いるためには?
フォーキャスト管理

はじめて営業マネジャー(営業課長、営業所長、営業部長)として、部下を持ち、達成すべき予算を背負った時、何に思いをはせるでしょうか?

新たな出発に胸躍らせ「頼れる営業マネジャーになるぞ!」と決意したのではないでしょうか。と同時に与えられたチーム目標値を確実に達成できるだろうか、部下をうまくまとめられるだろうか、経営陣の期待に答えられるだろうかなどの不安も湧き上がってきたのではないでしょうか。

経営者は、営業マネジャーに対して、主に「確実に業績目標を達成する」「組織運営に長けている」「人材を育成する」ことを期待しているとよく聞きます。これは「頼れるマネジャー」の条件とも言えると思います。

本稿では、この「確実に業績目標を達成する」ことにフォーカスをあてながら、部下と共に組織を運営しながら、戦略的な活動を進めていくマネジメントについて述べていきたいと思います。

 

よくある営業現場でのシーン

下図をご覧ください。これは業種を問わずB to Bの営業現場でよく見る光景です。
皆さんの営業現場でこのようなやりとりが起きていないでしょうか。

このような事態になってしまったのは、何が問題だったのでしょうか?

恐らく想像するだけでも様々な要因が考えられます。ただし、これはセールスだけの責任ではないということを営業マネジャーとしては認識する必要があります。

案件が見込んでいた時期に計上できず、翌期以降にズレることはよくある話ですが、ともすれば営業マネジャーは計上予定を受けると良い報告は鵜呑みにし、結果が悪くなるとセールスの責任にしてしまいがちです。

もちろん、メンバーの判断が未熟だということは今後の課題としてありますが、メンバーの成熟度にあわせて営業マネジャーとしてフォーキャスト管理がしっかりできているかどうかが重要になります。

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フォーキャスト管理とは

フォーキャスト(Forecast)とは、一般的に予想、見込みのことです。

営業領域におけるフォーキャスト管理とは、「期初の早い段階で、期末の業績着地をできるだけ正確に予測し、そこで見えたギャップ(差異)を埋めるために先手で対応策を計画・実行することで、ギャップを最小化していくマネジャーの行動」と定義できます。下図のチャートですと、チームに与えられた業績目標に対して、まず現時点での確定値(受注済みで当期内で計上できる案件の売上額)を積み上げます。次に、現状の見込み客の状況から、受注額と当期内で計上できる売上額(着地見込み)を予測し、ギャップを見える化します。

 

見える化したギャップに対して、チームとしてギャップを埋めるための対応策(ギャップフィル策)を立案して、徹底して実行していきます。その結果、ギャップが縮小して業績目標の達成が可能となるわけです。

このようなフォーキャスト管理を確実に遂行していくためには、予測の的確さ、ギャップフィル策の妥当性、実行の徹底度がキーとなります。

そこで、これから予測の的確さ、ギャップフィル策の妥当性、実行の徹底度を中心に論じていきます。

 

時間軸の大切に捉える

フォーキャスト管理において、時間軸の捉え方は非常に重要です。

業種業態によって受注までの商談期間は異なりますので、個社ごとの商談期間を踏まえて、いつまでに案件をいくら増やしていかなければならないのかをゴールから逆算して捉えていく必要があります。

つまり、期中において目標とのギャップを常に図りながら時間軸を見据えたタイムリーな対応策を講じなければなりません。

営業マネジャーは、自らがチーム全体のギャップ対策を講じるとともに、メンバー個々がこの視点を持って日々の営業活動を進めるように指導・支援していく必要があります。

 

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フォーキャストのしかた➊ 着地予測の構図

これまで営業の世界は、属人的でブラックボックス化しやすいと言われてきました。特に営業マネジャーの着地予測は、勘と経験がものを言う領域でした。

「A君は、慎重に判断するから彼の見込み客は7割がた見込めるが、B君は常に楽観的に判断するので、3割くらいで見込もう」などのように年季の入った職人芸的な予測を行ったものでした。

勘と経験はもちろん今でも重要ですが、ベテランの職人芸のような経験値が少ないマネジャーにも着地予測の精度を高めてもらわないと、営業本部全体のフォーキャスト管理はままならなくなります。

その意味で、より属人的な要素を減らし、より科学的な要素を中心にフォーキャスト管理を行うことが求められます。その構図が下のチャートです。

 

着地見込みを予測する要素は、案件化数と提案数となります。まず、チーム内の総案件のプロセス(アプローチ・案件化・提案・構築)上の進捗段階を明らかにします。

次に、チーム全体の案件化・提案のプロセス上に存在する案件額と提案額を把握して、それぞれに掛け率をかけて、受注件数と受注額を予測します。

従って、各見込み客が営業プロセス上のどの段階にあるかの判断が予測精度を高める上で重要になります。

 

フォーキャストのしかた➋ 予測精度を上げるために

予測精度を上げるためには、営業プロセス上の進捗段階を把握するための基準が大切です。この基準が的確であることとチーム全体で共有されることが求められます。

下のチャートは、アプローチ➡案件化➡提案の各プロセスを達成した段階を記述した例です。

それぞれのプロセスでセールスが実行することを記述した「定義」と、そこでのお客様の反応(言動)を記述した「ゴール基準」から構成されています。

定義は、セールスを主語にして、営業としてこのプロセスで行うべきことが記述されいます。

ゴール基準は、お客様を主語として、商談が今のプロセスを完了して次のプロセスに移行したことを判断する目安とします。ベースになるのは合意の裏付けのあるお客様の反応・行動です。セールスが主語になっている表現もありますが、その場合もお客様の合意が得られることが前提となります。

ゴール基準が、お客様との合意をもとに判断されると、人による判断のバラツキが少なくなり、商談の進捗段階の把握精度が増します。この基準がセールスに徹底され、SFAにインプットされることで、マネジャーはチーム全体の商談の進捗段階が把握できるようになります。

ただし、基準の徹底は「徹底しろ」と部下に指示するだけでは、達成できるものではありません。

「なぜ、基準が大切なのか」とそれぞれの基準について、部下の考えも聴いて話し合うことで、部下に腹落ちさせることが重要です。

 

フォーキャストのしかた❸ パイプラインの設定

チーム全体の商談の進捗レベルが把握できるようになったところで、次に掛け率(減衰率)をどう設定するかが、重要になります。

例えば、商談が提案実施まで完了したとします。個々の商談はどれくらいの確率で受注になるかは千差万別ですが、チーム全体として見ると提案を完了した商談が受注に至る一定の掛け率(減衰率)が存在します。

この掛け率を想定して、以下のような計算を行い、現在進行形の商談から見込める売上額を予測します。

当期計上売上予測額=案件化済段階チーム合計当期内計上可能商談額×掛け率
          +提案済段階チーム合計当期内計上可能商談額×掛け率

では、この掛け率をどう想定するかについては、過去の経験にもとづく推定値ということになります。

ただし、個々のマネジャーの勘と経験から割り出すのではなく、会社全体もしくは事業全体での過去の受注データと経験知によって割り出すことになります。なお、この掛け率はあくまで平時の環境時を前提とします。

 

フォーキャストのしかた❹ 重要案件リスクを捉える

前述のように、当期計上売上予測額は算定できますが、精度を上げるためには、業績への影響が大きい案件について、個別でセールスとマネジャーが商談内容を精査する必要があります。

精査することは、以下の2点です。

・受注に向けてどのような失注リスク・売上減リスクがあり、その発生可能性はどれくらいか。

・逆に売上増のオポチュニティ(機会)の発生可能性はどれくらいか。

上記の2点が見えたら、着地見込み額を修正します。

案件の精査は、ともすれば部下のできていない点の粗探しするような話し合いに陥ってしまうことがよくあります。部下と共に案件を良い方向に進捗させるための話し合いになるよう前向きなコメントを挟みつつ、部下の意見を聴き、尊重しながら進めましょう。

 

フォーキャストのしかた❺ BANT-Cで見極める

  • Budget(予算):そのものズバリ、予算確保です。
  • Authority(決裁者):意思決定する人と意思決定ルートの関係者が的確に捉えられていて、意思決定者と影響者と直接面談・交渉できているか、ということです。
  • Needs(ニーズ):お客様の要望を背景となる経営課題も含めて的確に捉えているかどうかです。お客様が話してくれたことはもちろんですが、潜在的な要望も含めて的確に質問して捉えることが重要です。
  • Timeframe(導入時期):検討する必然性、案件を実行すべき逼迫度があるかどうか、を問うています。法令で期限が決まっていたり、経営トップの方針で完了期限が明確になっている場合などの優先順位が高い案件ですと、提案に対する意思決定が迅速・確実になされます
  • Compelling event(購入必然性):課題を解決することはお客様にとって必然性があるかどうかです。

 

ギャップフィル策の検討➊ 検討の構図

着地見込みの精度が上がり、ギャップが明確になると、いよいよギャップフィル策の検討です。

主なギャップフィル策としては、下のチャートの4項目です。

 

これらをより具体的に落とし込むと以下のようになります。

1.受注確定案件に付加サービスを提案する

2.受注促進活動を強化して、案件の受注率・額を上げる

3.現案件に付加提案する

4.案件(数・額)を増やす
・ユーザー内新規領域に戦略商品でアプローチする
・新規開拓アプローチを戦略商品で実施する

ここでは、「案件(数・額)を増やす」にフォーカスして記述を進めていきます。

 

ギャップフィル策の検討➋ 戦略商品でのアプローチ

「ユーザー内新規領域に戦略商品でアプローチする」と「新規開拓アプローチを戦略商品で実施する」を実行するためには、対象先の抽出が必要です。下記の要件から、適合する対象先の条件を抽出する項目を明確にしていきます。

戦略商品の主な機能
製品そのものが持つ機能(ハードとソフト)と付帯サービス機能(営業活動・物流・据付・アフターメンテなど無償サービスも含む)

お客様の効用
製品を受け取る前・受け取って活用・活用後のそれぞれの段階で、お客様のシーンを思い描き検討する

競争優位性
明らかに競合に優っている機能を明確にする(複数の機能を組み合わせて考えても良い)

適合するお客様の条件
お客様の効用と競争優位性から推測する
生産ラインの状況・規模・最終製品のタイプ・工場のタイプ・現場責任者のニーズ・経営層のニーズなど

適合する対象先の条件を抽出したら、実行シナリオ・重点実施計画を作成します。

ギャップフィル策の検討は、マネジャーが一方的に指示せず部下と一緒に検討しましょう。実行の主体は部下ですので、彼らの納得感が最も重要です。前向きに対話し「よし、やろう」という意欲を引き出します。

 

ギャップフィル策の検討❸ ギャップフィル策の実行

部下を巻き込んでギャップフィル策が立案できたら、実行です。実行段階では、重点実施計画書を活用してPDCAを回し実行度を高めましょう。

  • 決めたことがどこまでできたか?
  • お客様の反応はどうだったか?
  • 目指す成果に近づいたか?
  • うまくいかなかった要因は何か?以下のカテゴリーを確認しながら探る
    • 自分自身の行動
    • 自社のサポート
    • お客様の変化
    • 競合の活動
    • 外部環境変化
  • 要因に対する対応策は?
  • そもそもの計画の見直しは必要か?

実行段階も常に部下を巻き込むことを意識して、部下とのポジティブな対話を心がけてください。

 

まとめ

変化が早く、その規模が大きくなった現代社会は、計画を立てて実行することが難しい時代かもしれません。しかし、計画があればこそ、臨機応変な修正も可能になります。変化が激しい時代だからこそ、営業マネジャーの存在意義がより高まってきています。

そのような環境下で、営業マネジャーが意識すべき3つの時間軸があります。

「今日の糧」は今期の業績を達成し、生き永らえることです。目の前の見込み客の刈り取りとニーズが顕在化する可能性が高い見込み客への即効性あるアプローチが中心となります。

「明日の仕込み」は来期以降の業績達成のための見込み客の発掘と育成です。

「明後日の種まき」は、来年度以降の見込み客づくりのために顧客との関係性強化や自社の競争優位性強化の施策および人材育成を実行することです。

本稿では、「今日の糧」すなわち今期の業績をどう達成していくかという短期施策に絞って述べましたが、営業マネジャーは短期施策を考える時も「明日の仕込み」と「明後日の種まき」も見通すことが求められます。こ

部下を巻き込みながら短期施策を実行し、未来もしっかりと見据えている。このような存在こそが「頼れるマネジャー」と言えるのではないでしょうか。

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