1on1ミーティングとは?目的やメリット、実施方法について紹介!

2024.01.22 (更新日:2024.03.26)

コーチング

1on1ミーティングとは?目的やメリット、実施方法について紹介!

1on1ミーティングとは、「上司と部下などが人材育成やモチベーションを高めるためことを目的に、1対1で話し合いを行うスタイル」を指します。

企業にとって、どのように社員と向き合い、一人ひとりを育成し評価していくかは非常に重要なプロセスです。また、社員から現場の意見を聞くことによって、それを経営に役立てることも機動的な経営をしていく上で重要です。最近では多くの企業が社員の育成や評価に1on1ミーティングという手法を導入しています。

1on1ミーティングとは?

先で述べたように1on1ミーティングとは、上司と部下などが1対1で話し合いを行うスタイルを指します。1on1ミーティングは昔から個人面談といった名称で行われてきました。しかしここで取り上げる1on1ミーティングは部下の育成やモチベーションを高めることを目的にした面談になります。

取り上げる話題

1on1ミーティングでは特に部下に焦点を合わせた話題を取り上げます。今の仕事でどんな悩みを抱えているのか、楽しく感じている点はどこかなど、心の中を尋ねます。また、これからどんなスキルを身につけ、どんなキャリアを作っていきたいのかといったキャリアビジョンについて取り上げることで仕事の意義と結びつけることを行います。
上司は部下の意見や考えを軸として対話をしていくことを重視します。

人事評価面談との違い

人事評価面談でも部下のキャリアやスキルについて対話がなされることがあります。評価者が部下を評価することを目的としています。しかし、1on1ミーティングは情報を引き出すこと自体が目的ではありません。対話を行い部下のモチベーションを高め育成につなげる点が大きな違いといえます。また、対話を通して仕事への意欲を高めるという点も、人事評価面談との大きな違いでしょう。

1on1ミーティングの目的と意味

対話型の1on1ミーティングの目的と意味を知ることにより、実際の場面で重視すべき点を理解しやすくなります。具体的にどんな目的があるのかを押さえておきましょう。

部下の成長促進

部下は自ら業務の進捗や成果について言葉にする中で、自身で行ってきた内容や方法についての「気づき」を得られることがあります。上司は部下の業務状況を引き出しながら、部下が自ら改善点を認識するように導いていきます。押し付けられた改善点ではなく自分自身で気付くことによって納得感が強くなるだけでなく、実行に向けた意欲が高まります。改善によって業務スキルが高まるだけでなく、内省する習慣が付くという目的もあります。

また、成功体験の振り返りを支援することで部下が自己効力感を高めることができ、自発的に行動する意欲を生み出すことにもつながります。

部下のエンゲージメント向上

1on1ミーティングは部下のエンゲージメント(会社やチームに対する信頼関係)を高めることも目的の一つです。1対1でじっくりと対話することでコミュニケーションの量が増え信頼関係の向上を期待できます。また、部下の成長やビジョンを理解しサポートしようとすることで信頼関係が深まり部下のエンゲージメント向上につながります。所属している会社や組織で成長できることを認識することは離職率の低下にもつながるため、エンゲージメントを高める1on1に効果を重視する企業が増えています。

個人と組織の成長をつなげる

業績を評価するための面談においては部下の自己評価と上司の評価に乖離が生じるケースがあります。一方で1on1ミーティングでは、部下が求められている役割や期待と、それに対する達成度合いを確認することができるため、部下の成長と組織の成長をつなげることができるのが特徴です。部下の仕事がどのように組織の成果に貢献しているのかを伝えることで、部下は自身の現状と課題を把握することができ、上司は組織運恵を円滑に行うことができるようになります。

1on1ミーティングが必要とされている背景

どの時代でも社員とのコミュニケーションは必要とされてきましたが、特にこの時代においては重要度が増しています。背景を理解することで効果的な1on1ミーティングの導入につなげることができます。

ビジネス環境の変化が加速

1on1ミーティングが必要とされている背景の一つに環境変化の速度があります。現代社会はVUCA(ブーカ)の時代と言われています。VUCAとは、volatility(変動性、不安定さ) 、uncertainty(不確実に)、complexity(複雑さ)、ambiguity(曖昧さ・不明確さ)の頭文字を組み合わせた言葉で、「予測不能な状態」のことを表しています。
VUCA時代では、過去の成功体験や慣例が活用できない場面も多く、従来のように「上司が部下に指導する」というスタイルが通用しないことも珍しくありません。こうしたVUCA時代を乗り切るためには、一方的でない対話を重視する1on1ミーティングでのコミュニケーションを通じて、上司と部下の双方が共に考え成長することが求められています。

労働人口の減少と働き方の変化

少子高齢化による労働人口の減少も背景にあります。少子高齢化が進み企業が働き手の確保に苦労していることに加え、成果主義・能力主義を採用する企業も増え、終身雇用制や年功序列制といった従来の企業の仕組みが崩れはじめています。
さらには転職も珍しくないため人材が流動的になり、社員はより自分の希望に合う企業を選択することができる環境に変わっています。こうしたことから企業では人材を自社に引き留めておくことが重要な経営課題になりつつあります。1on1ミーティングでは部下の成長を支援することでモチベーションの向上を期待できるため、多くの企業で注目されるようになりました。

1on1ミーティングのメリットとデメリット

1on1ミーティングを導入することによって得られるメリットとデメリットを知ることで、より効果的な1on1の方法を理解することができます。そこでここでは1on1ミーティングのメリットとデメリットの両方を取り上げます。

1on1のメリット

1on1ミーティングは適切に行うことで効果を期待できます。具体的にどんなメリットがあるのかをチェックしてみましょう。

上司と部下の信頼関係構築

1on1ミーティングは上意下達ではなく、対話型のコミュニケーションを行うためのものです。部下は心の内を語り、将来についての目標を話すことで、自身の成長に耳を傾けてくれる上司へ信頼を感じます。上司としても、表面上は見えない部下の努力や心持ちなどを知ることでより深い理解を得ることになります。お互いに心理的に近づく場を定期的に作ることで、信頼関係が強まっていくのです。

部下のエンゲージメントと自律心の向上

1on1ミーティングでは部下の成長に焦点を当てるため、部下が仕事や会社に対して愛着を持ち、感情のこもった仕事をするように促す効果もあります。これは部下のエンゲージメントを強化するものとなりますし、主体性を持って仕事に向き合うよう助けることができます。自立心を持った社員が育っていけば、独創性のあるアイディアやスムーズなコミュニケーションが取りやすくなるというわけです。

離職防止

エンゲージメントが強くなるということは、離職率低下に直接的な効果を生み出します。離職の原因としては上司を含む人間関係の難しさが主なものですが、コミュニケーションの量と質の向上によってそれを防止できます。仕事への意欲向上や自主的な仕事への向き合い方を助けるものとなりますので、仕事からの達成感ややりがいを覚える機会が多くなります。会社への愛着が強くなるきっかけとなりますので、ライバル会社への転職をしようと考えることが少なくなるのです。

チームのコミュニケーションが活性化

1on1ミーティングは上司と部下の二人だけの対話ですが、しっかりコミュニケーションを取るという習慣と意識を生み出します。結果として、わざわざ面談の機会を作らなくても、普段から上司に意見を提示することが多くなります。これは上司と部下の関係だけでなく、チームの横のつながりでも同じで、自分の意見を話す態度が生まれて、活発なコミュニケーションができるようになります。さらに、1on1ミーティングでは、上司に傾聴の姿勢が求められます。管理者として傾聴スキルが身につき、チームの中で意見を押し通すだけでなく、積極的に他者の意見を聞く土壌が作られていくことになるのです。

1on1のデメリット

1on1ミーティングは注意点を理解しておかなければ形式的で効果の低いものとなってしまいます。また、実践するに当たっての難しさもあります。そのデメリットを把握しマイナスの影響が生まれないようにしましょう。

時間の確保が必要

しっかりとしたコミュニケーションをするには時間が必要です。上司はチームのすべての部下とのミーティングをするわけですから、それなりの時間を使うことになります。本来業務とは別に1on1ミーティングのための時間を新たに作り出す必要が出てきますので、忙しい毎日を送っている管理者にとっては挑戦となるはずです。また、チームで共同作業をしているとか、外出が多いケースでは、なかなか上司と部下の時間を合わせるのが難しいこともあるでしょう。定期的な時間を決めて行うことが、1on1ミーティングを成功させる一つのポイントとなります。

効果を感じるまでに時間がかかる

上司が指示をして実行させるスタイルではなく、部下が対話の中で「気づき」を得て、自律心を磨いていくという方法ですので、すぐに効果が出るわけではありません。表面上の変化を求めるというよりも、内面的な変化から、業務効率や資質の向上を促すのが目的だからです。それだけに、経営者としても、上司としても、ある程度長い目で見ていく必要があります。また、一度1on1ミーティングを実施したから十分というわけではなく、すべての社員に対して定期的に繰り返していくことも求められます。当然、人による対応の違いもありますので、中にはなかなか変化を感じられない社員もいることでしょう。

上司のスキルによっては悪影響になることもある

1on1ミーティングは、従来の面談とは大きく異なるやり方、特に上司側の意識や技術が求められる手法です。そのため、上司が傾聴スキルや質問力がないと、逆効果になってしまうリスクさえあります。たとえば、情報を得るためと根掘り葉掘り質問してしまい、部下が引いてしまうことがあるかもしれません。また、部下が打ち明けた悩みに対して、完全なる個人的な意見を押し付けて、対話を台無しにしてしまうこともあり得ます。

1on1ミーティングの効果を高めるための3つのポイント

ここまでご紹介してきたように、1on1ミーティングは実施することで必ず効果が出るというものではありません。そこで、事前に効果的な対話をするためのポイントを押さえることで効果的な1on1ミーティングを実現しましょう。

目的を明確にし周知する

上司との対話と聞くと、人事評価面談のような緊張する場面、下手をすると怒られる場、としかイメージできない社員もいるはずです。そもそも、1対1で誰かに悩みを話すのを習慣としていない人も多いものです。そのため、事前に上司にも部下にも、1on1ミーティングの目的をはっきりと伝えておくべきです。また、話してくれたことでマイナスの評価を付けることはないという点や、プライベートな悩みは絶対に暴露されることはないといったことも、周知させる必要があります。安心感を持ってミーティングに臨めるよう、事前に理解を広めておくことが肝心です。

時間を決めて定期的に実施する

日々の業務に追われる仕事では、時間を取り分けるのは簡単ではありません。忙しさにかこつけて、次第にフェードアウトしてしまうこともあり得ます。また、ミーティングのせいですべき業務ができないといった不満が出るのも良くありません。こうした事態に陥らないように、十分前もって時間を決め、上司と部下の双方で予定を合わせておくことが大事です。また、1カ月に一度など決まった間隔で行うようにして、定期的なミーティングであるという意識を付けることもポイントです。

部下の自己決定を促す

この対話では、上司が教えるのではなく、部下が自分で結論に至るように誘導するのがカギです。そのため、悩みについての解決策を教えるのではなく、自分で考える時間にすることが求められます。上司は、問題の真の原因や取り巻く要素がどんなものかについて質問します。そして、どんな解決法の選択肢があるかを提示してもらいます。その上で、自分と業務において最も適した選択を挙げてもらうように導くのです。あくまでも上司は誘導係に徹して、部下が論理的に考えて自己決定できるように促します。その上で、決めたことを実行できるように見守っていくこと、次回のミーティングで問題の解決が図られているかを再確認していくプロセスを作ります。

1on1ミーティングを成功させるために必要な3つのスキル

1on1ミーティングの成功には上司のが必要なスキルを身に着けておくことも必要です。そこで、代表的な3つのスキルを取り上げます。

傾聴力

傾聴力とは、相手の話にしっかりと耳を傾けるスキルです。部下の気持ちに寄り添い共感しながら、深く理解して、丁寧に耳を傾ける姿勢が傾聴の基本となります。傾聴力は訓練すれば身につけられるものです。目線や相槌の仕方、質問の口調や言葉の選択などを工夫してみましょう。また、自分にとって、話をよく聞いてくれると思う人の反応の仕方などを分析して、自分に当てはめてみることもいいでしょう。

フィードバック力

部下の成長を促すためには適切なフィードバック(振り返り)ができることも重要です。フィードバックとは、部下の行動に対して改善点や評価を伝え軌道修正を促すことです。適切なフィードバックを行うためには、上司が部下の行動を正しく評価し客観的な視点でアドバイスすることが求められます。客観的な視点で部下が自ら気づきを得ることによって部下が成長意欲を高めていきます。

共感力

問題を聞いていると、上司として理解しづらいことを打ち明けてくる社員もいるはずです。そもそも一人一人考え方や感じ方は違うものですから、すべての意見について納得するのは不可能です。しかし、理解しようと努め、共感を言葉や態度で示すことはできます。この共感力があると、部下はより詳しい内容や深い感情を話したいと思うようになります。

1on1ミーティングでモチベーションを上げるための実践ステップ


導入アイスブレイク


場の雰囲気を和ませて発言しやすい空気を生み出したり、お互いを知ることで能率を高めたりするために用いられます。話しやすい雰囲気をつくるという意味で、いきなり本題に入るのではなく、お互いのコミュニケーションを図りましょう。最近あった出来事や気になるニュースなど、普段の業務では話題にあがらないことを上司から提案することで、相手を深く理解でき、今のコンディション、モチベーションを把握することにもつながります。

部下の認識・考え・提案内容を引き出す


メインで話したい内容について現状を整理します。上司が聞き手に回り、部下が主体的に話せるような場をつくることが最優先となります。
言葉に詰まる場合やもう少し深く状況を知りたいときにのみ、質問してサポートすることで、相手も話しやすくなります。
傾聴のスキルがこのタイミングでは重要です。どんな提案がでたとしても、まずは
部下の話をさえぎらず、頷きや相槌を打つことで、相手の話を聞く姿勢を目で見えるようにしましょう。

上司・部下で一緒に対応・対策を考える


一通り状況把握できたら、これからの対応・対策を一緒に考えていきます。
重要なのは、相手を質問攻めにせずに原因を受け止め部下が主体的に答えや方向性を導き出せる流れを作ることです。「なぜそうなったと思うか?」「どうしたらよいか?」と思考を深めるプロセスをサポートすることで、自発的な気づきや学びを促します。

次回1on1ミーティングまでの具体的なアクションを決めて共有する

だいたいの方向性が見えたら、次回の1on1までにやるべきことを明確化します。
「〇〇までに○○を終わらせる」「次回のミーティングまでには○○な方法を試して結果を出してみる」など、限られた期間のなかでリアルに進めることができるアクションに絞っていきます。

次回の1on1で達成・未達成の共有をする

2回目以降の1on1ミーティングでは、前回決めた行動目標がどれだけ達成できたのかをヒアリングします。1on1の振り返りでは、できなかったことより、できたこと、形になったことをまずは認め合うことが大切です。そこから実行できなかったことを分析していきます。物理的に難しいのか、課題にそもそも無理があるのかなど、仕事の進め方や部下のおかれた環境を鑑みながら課題を分析しましょう。
1on1ミーティングをPDCA化し、記載シート、分析シートなどを用意し書き出していくのも次回の振り返りの際に役立ちます。

【まとめ】1on1を活用して新たなリーダーシップスタイルの確立を

上司と部下の絆を強めるためにも、人材を育成するという観点からも、1on1ミーティングは非常に優れた手法です。1on1ミーティングの目的やメリットを正しく理解することで効果的な対話を生み出すことができます。

コミュニケーションの課題は漠然としているため何から取り組めばいいのかわからないという声を耳にします。そこで、コミュニケーションの改善によって社員の行動変容につなげた企業の事例をご紹介します。社内での人間関係がよくなっただけでなく、お客様への質問力も高まることにつながりより質の高い提案ができるようになったケースもあります。

こうした企業事例について知りたい方はこちらを参照ください。