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2016/11/19
プロ野球の日本シリーズ。10年ぶりの日本一に輝いた日本ハムファイターズは「育てて勝つ」チームである。外国人を除き生え抜き揃いのスタメン。完成形の選手よりも肩や足などが光る個性派を発掘・獲得し、「超二流」まで育成・強化するチーム戦略が勝因であった。躍進の立役者の一人。大谷選手の劇画もどきの二刀流はまさに事実は小説より奇なり。
思い起こせば4年前のドラフト会議。大リーグ挑戦を公言し、他球団も入札を断念する中、敢然と1位指名した日ハム球団の英断は語り草である。困惑する本人はじめ頑なに閉ざしていた両親や恩師らの心をほぐし、翻意させた決め手こそ、そのチーム戦略にあった。
伝説のドラフトから遡る数年前。Get sports(テレビ朝日)でその戦略の一端が垣間見れた。白井ヘッドコーチ(当時)が語った日ハム流の育成システムの一部を紹介したい。
プロの世界では功績を残した一流選手が引退後、指導者(除く監督)の道へ歩む場合、現役時の専門領域のコーチとなる。投手コーチ、打撃コーチ、守備走塁コーチとして自らの経験にもとづく持論と情熱でプレーヤーを育て上げ、チームの勝利に貢献している。ところが、日ハムはその球界の常識を覆したコーチ会議と育成手法を導入した。ゲーム後に開く会議は、各コーチの担当分野を越えて選手一人ひとりの育成テーマや改善ポイントを自分事として真剣に議論し、解決策を合意するのだ。そこにはコーチの縄張り意識は存在しない。
さらに翌日、たとえば投手コーチがスランプに悩む野手に対して「実はピッチャーとしてはお前の●●が苦手なんだ。だから余り考え込まずに自分の持ち味として磨き上げれば敵には脅威だぞ!」とフィードバックするのである。この対戦相手の視点こそが担当コーチからは得難い(自分でも気づきにくい)、まさに一皮むける特効薬(目から鱗)なのだそうだ。
シェルパワークスでは、「営業のスポーツ化」を通じた ”わくわく熱血チームづくり” をめざしていますが、日ハム流の「育てて勝つ」をビジネスの世界に置き換えてみましょう。
多くの企業では競合を含む他社との採用戦線でも鎬を削り、苦労して獲得した次代を担う人材に対して、配属後は市場競争力を高めるべく早期戦力化に腐心しています。
たとえば、一昔前の営業現場のようなミスをしてもお客様に育ていただいた時代は変わり、新人を預かる営業マネジャーは業績目標と部下育成の同時達成を果たすのに試行錯誤しています。マネジャー自身プレーヤーも兼務するほど多忙な中、どだい「育てて勝つ」なんて無理な話、即戦力を採ってきてくれないのか、と途方に暮れることもあるでしょう。
その一因として、企業が部下育成をマネジャーに丸投げしていることはないでしょうか。
逆に、マネジャー自身も部下を所有物のように抱え込み、塩漬けにしてないでしょうか。
役割と責任を明確にすることに間違いはありませんが、多大なリソースを投入し獲得した人材の成長や活躍には、やはり組織一丸となって関心を払い、支援することは不可欠です。
打開の一手として、日ハム流コーチ会議を参考にしてみることをお勧めします。マネジャー同士が他チームのメンバーを含めた育成戦力化検討会を検討する価値はあると思います。
そのことによって、部下に対する固定観念を払拭し、新たな成長領域や課題克服のヒントをつかめるのではないでしょうか。さらには、組織横断的に戦力強化を考えることを通じて、自ずとワンランク上の視点に立てるので、マネジャー層の経営的視点を鍛える(発掘する)機会を得るという副産物も期待できるのではないでしょうか。
(シェルパ・黒子)