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2016/09/07

京都の10月は日が早い。夕方5時にもなると気温も下がり、寒さでぞくっとした。「今日は、30軒以上回ったから、そろそろ営業所へ帰るか」とつぶやき、関根は四条通り沿いの営業所への帰路に着いた。
営業所に帰ると、先輩営業マンの大山正志と直属上司である係長の松原秋人が待っていてくれた。大山が早速声をかけてくれた。「関根、どうだった。初日は!」
関根は浮かない顔で、「はあー、実は・・・」と1日の出来事を報告した。大山と松原は顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。係長の松原は「お前は、本当のアホとちゃうか。30件訪問して、面談時間0か! 実習で成果ゼロは伊達じゃないな。これは鍛え甲斐があるぞ。大山、これから頼むぞ」と笑いながら言った。
大山は「いいか、京都の老舗企業の受付はガードが固いぞ。このまま受付に通い続けても、ずっと担当者には会えないままだぞ。行く前に少し教えてやればよかったな」と自分自身に諭すようにつぶやいた。そして、「これから関根の明日の行動予定をチェックしてきます」と係長の松原に告げ、関根を会議室へと連れて行った。
会議室で、大山からまず質問された。「関根、毎日受付だけ行っているつもりか?」
「いいえ、それじゃ困ります」
「じゃ、どうしたらいいと思う?」
「うーん」関根は考え込んでしまった。
大山から「前任者の日報は見たのか?」
「いいえ、新規開拓での日報はあまりあてにならないと、実習中に聞いていたので」と答えると、大山は「そんなことはないぞ。前任者の日報は宝の山だぞ。ちょっと何枚か持ってこい」と指示された。
日報は、企業ごとにカード化された「お客様カード」になっていて、表面は企業情報記入部分、裏面は訪問時の状況を記入する日報部分になっていた。訪問を重ねるごとに、新しい日報シートが追記され、通い込んだお客様カードは、何枚も貼られ分厚くなっている。しかし、関根が担当する地区のお客様カードは、新規開拓先のため皆ペラペラだった。
大山は、関根が持ってきたお客様カードを見ながら、「ほらここに担当者の名前が書いてあるだろう。まずこの名前で呼び出してもらうよう受付で依頼するんだ。もしも担当が変わっていたら、意外と名前も教えてくれるぞ。いかにも何度か会ったような顔で『○○さんはおられますか?』と聞くと、受付は『○○は担当が変わりました。今は□□です』と教えてくれるもんだ」
関根はなるほどと思った。「さすが大山先輩はすごいですね」と言うと、大山から「何感心しているんだ。こんなことは研修中に覚えてくるもんだ。関根は研修中1台も売れなかったと聞いてたけど、無理もないな」との返事だ。
さらに大山は、「人は『事務機のご担当者のお名前は?』と問いかけられると警戒するが、『事務機ご担当の〜さんお願いします』と投げかけられると、もし違っていてもつい『担当が変わりました。今は〜が担当です』と答えてくれることが多いもんだ。もっと相手の心持ちを考えてみろよ。そうしたら30社訪問して、面談ゼロから、すぐ面談10件位に上がってくるぞ」と教えてくれた。
大山は自分自身にも言い聞かせるように、「営業の仕事って、相手の思いや気持ちを考え予測することが大切なんだ。自分視点だけで考えるといろいろなことが見えてこないぞ」とつぶやいた。
大山の言ったこの言葉が関根の頭の中を何回も駆け巡っていた。確かに今まで相手の思っていることや気持ちをあまり考えたことはなかった。どちらかと言うと、いつも「俺は俺だ」と自分本位に生きてきた関根だった。関根の中で、至極当たり前のことではあるが、他者の気持ちや考えを推し量るという大きな気づきと転換が起こっていた。

著作:渡邊茂一郎

第1話完

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