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2018/12/27

以前ヒアリングで伺った中央公民館、小学校、出張所を訪問してみると、アルファ電通工事やエッジ社からは既に営業マンが訪問していた。
関根は、万事休すかと思い絶望的な気持ちになった。しかし、それぞれの責任者から訪問時の様子を聞いてみると、意外なことにあまり良い印象ではなかった。

どうやら、エッジ社のファクシミリとプリンターの商品紹介をしただけで、すぐ帰ったようだった。各出先の実情を聞いて、それに合わせての使い勝手、市民の利便性向上についての説明はなかったようなのだ。

関根からは、現場の責任者に、今まで把握していた各出先の業務に照らし合わせながら、エッジ社のファクシミリとプリンターのセット提案は、スペースを取ること、ファクシミリの画質が荒いこと、アフターサービスへの不安があることを伝えた。特にアフターサービスについては、シェアが低いエッジ社には京都府内に拠点がなく、大阪からメンテナンス要員が来ることに対して、3拠点とも大きく不安を感じたようだった。この3点を現場の声として、改めて公害対策課へ要望をあげてもらうように依頼した。

関根はその足で、すぐ市役所を訪問した。まず、企画課の館林係長を訪ね、ここ数日の出来事を報告した。

「関根さん、公害対策課の来島さんからも聞いたよ。役所の購買は、目的としては住民サービスの向上を通じての市民への貢献・公務の効果性向上が求められ、手続きとしては公平性・透明性・論理的整合性が重視されるから、そこがクリアーしないとね。反対に市会議員からの推薦も同じだよ。有力な市会議員からの推薦だからと言って、それで通るってことはないから」。

「そうですか、しかしこんなやり方納得できないです」。

「まあ、そういきり立ちなさんな。アイディア盗用云々は市役所としては、関係ないことだし。しかし、現場から市民への貢献・公務の効果性向上のために、ヤマトさんが相応しいというような意見が上がってきたら、管財課も考えざるを得なくなるね。でも、なんとか声を上げてくれなんて依頼はしないほうがいいよ。さっきの公平性・透明性に反してくるからね」。

「そうですか、これ以上現場には働きかけない方がいいってことですか」。

「そうではなくて、なんとかお願いしますではなく、市民への貢献・公務の効果性向上のためになりますと訴求することだよ。もちろん心情的な気持ちはわかってくれているだろうけど、現場だって、君らと癒着していると思われるようなことは避けたいだろう」。

「わかりました。その通りですね。いつもいろいろとありがとうございます」。

関根は、すぐ先ほどの中央公民館へ取って返した。

関根が訪ねると館長は、驚いた様子だった。「関根さん、どうしたんですか」とちょっと迷惑そうな表情だった。
「お忙しいところ何度もお邪魔して申し訳ありません。是非お伝えしたいことがありましたので、戻ってきました」。

「何ですか」。

「私は先ほど、エッジ社の欠点ばかりお伝えして、大切なことをお話ししませんでした。今回の選択は、日々市民と接する現場の皆さんが、住民サービスの向上を通じての市民への貢献にどう繋がるかという観点で、考えていただけたらと思います。合わせて公務の効果性向上にどう役立つかも含めてご検討ください」と関根は一気に話した。

「関根さん、ヤマトさんから言われなくても、私どもも今の2つの観点から考えていますよ。明日にでも公害対策課と管財課には、各現場を代表して、私から申し入れするつもりです」。

「分かりました。僭越な発言ですみませんでした」と関根が謝ると、「ヤマトさんの熱心さも分かっていますよ。営業活動の熱心さも選択基準の一つですから。ヤマトさんが私たちの業務のことをよく知っていただいて提案してくれていることも分かっています。大丈夫ですから」と館長は、笑いながら言ってくれた。

館長にお礼して、関根は帰社した。

帰社すると、佐久間課長が待っていてくれた。関根から、今日の動きをかいつまんで報告すると、「関根、ご苦労様だったな。まあ、果報は寝て待てって言うじゃないか。やるべきことはやったのだからな」。

関根は、上司の言葉に癒され前向きな気持ちになれた。

「でも関根、今回のことは、相手の行動が想定外だったとしても、防止のしようもあったかもしれないな。今後のためにどうすればよかったと思う?」。

「うーん、そうですね。どうしたらよかったのでしょうか・・・」。

関根は考え込んだ。しばらく経ってから、ハッとして、「やっぱりアルファ電通工事へ提案書を渡した時ですね。あの時に秘密保持契約書を締結してからとすべきでしたね」と答えた。

「そうだな。今回の学びとして気づいたことだな。いい教訓になったな。今日のところはもういいだろう。早めに帰ってゆっくり休め。疲れただろう」。

「はい、そうさせていただきます」。関根はそそくさと帰り仕度を始めた。

帰宅すると、妻の明子が心配そうに待っていた。

「どうだった?」、心配そうに尋ねてきた。

関根は、「まるで上司が2人いるみたいだな」と笑いながら、1日の出来事をかいつまんで話した。

「そうだったの、現場に行ってみて良かったね。私も偉そうに言って申し訳なかったと思っていたの。良かったと言ってくれてほっとしたわ」と妻も安堵した表情を見せた。

「しかし、うまく行くかどうかは分からないよ。後は現場のみなさんがヤマトの動きをどう評価してくれているかで決まってくるね」。

明子とそんなやりとりをしていると娘の美里がよちよちとやってきて、「パパ、あっこ」と抱っこのおねだりをしてきた。抱っこした関根は、いつもの子煩悩な父親に戻っていった。

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著作:渡邊茂一郎

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