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2016/10/03

恐る恐る電話口に出ると「関根君、今借りてる機械な、悪いけど返すから」と言ってきた。「はあ、明後日には新品に取り換える段取りしていますが・・・」と答えると、「そうじゃなくて、買うのはやめたってこっちゃ」との返答。
がーんと殴られた感じだ。心の片隅で薄々感じていた不安が現実のものとなったのだ。
「えー、どうしよう。みんなからもお祝いしてもらったのに・・・」この言葉が関根の頭を駆け巡った。
早速、西山銘木損保に駆けつけてみると、岩田専務は他社の営業マンのような人と話し込んでいる。会議室で30分ほど待たされてから、岩田専務が入ってきた。
「いやー、今回は悪かったねー。実は今使っている北浦機械の保守の人が、昨日あんたが帰った直後に点検に来てな。『まだしばらく使えますよ。急いで替えると損しますよ』と言ってくれたんや。その上、夜になってから営業の人も来てな。『もしも替えるのだったら、特別な得意先割引も適用するから、今使用のメーカーの北浦機械のコピー機も検討してください』と頼まれてなー。今もその営業マンが見積書持ってきていたんや。もう往生しているんや。そんな訳で、一旦は買うのは中止や。かんべんしといてな」
岩田の話を聞いているうちに、関根は冷静になってきた。「自分があの時点で契約書をいただいていなかったからこんなことになったんだ。すべては自分の責任だ。よく考えれば、競争相手が来ることだって想定できたんだから」と思った。そして、頭をかきながら「分かりました。ただし、せっかくデモンストレーションで使っていただいているコピー機ですので、当初の予定通り後2日は使ってください」と話して、岩田との会話は終わり、一旦外に出た。
次の面談先まで15分ほど歩く中で、これからのことを考えた。
「まだ、この商談は終わったわけではないぞ。営業研修で教わったことを愚直にやってみよう。まずは、サーベイ(調査)だ。西山銘木損保でコピー機がどう使われていて、何に困っているのかを使っている皆さんに聞いてみよう。」
営業所に戻り、今日のいきさつを松原係長や大山に報告した。みんなびっくりしたようだったが、関根が詫びると、頑張れと励ましてくれた。

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著作:渡邊茂一郎

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