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2016/12/10

京都の5月は一年で一番爽やかな季節だ。ゴールデンウィークの後は、観光客も減り、街の喧騒も収まる上に、気候が一番過ごしやすい。仕事に身が入る時でもある。
奈落の底から、立ち直った関根は、上京区での営業活動に勤しんでいた。
4月に学生時代から付き合っていた彼女と結婚した関根は、張り切っていた。
他社ユーザーの切り崩し(ヤマトビジネスマシンではこのことを他社ダウンと呼んだ)は、かなり進んできた。関西地区全体での他社ダウンコンテストには入賞するようになり、関根は営業所のメンバーからも他社ダウンでは、一目おかれる存在となっていた。しかし、営業マンの評価の中心は、あくまでも換算ポイントだ。換算ポイントとは各コピー機に設定されているポイントのことだ。大型機は高く、小型機は低い。このポイントでは、同期の横山はもとより、1年後輩の太田にも後れをとっていた。関根はユーザーを担当していないし、上京区はお呼び(自力で決めたもの以外)も少ない。関根は、半期の目標値を達成するには、他社ダウンを今以上に増やしていくより他に手はないと考えた。
関根はコツコツと1年間、他社ユーザーを訪問しながら上京区の実態をつかんでいた。関根の担当する事業所は、約300社。もちろんここには自社のユーザーは含まれない。この内他社コピー機を使用している企業は、約200社だ。残り100社は、小規模商店などでまだコピー機を使用していないところだ。この商店にこれからコピー機を使ってもらうことは、難しいし、使ってくれても使用量が少ないので、ビジネスとしての魅力度も薄い。したがって、今他社を使用している200社の約250台の他社コピー機が関根のメインターゲットだ。
通常、250台のコピー機は平均して、だいたい3年強で代替される。ということは、250÷3で、おしなべて概ね毎年80台強が代替されることになる。1対1の代替だけでなく、コピー機の増設もある。この増設も含めると上京区で年間100台程のコピー機が荷動き(切り替え)する。この内の40台を自社のコピー機にできれば、他社ダウンも含めて年間の目標値は達成できる。荷動きからの獲得率は40%だ。だから、1年間で荷動きする100台の動向を察知することが重要だ。
ところがこれがなかなか難しい。お客様がいつ代替を検討しだすかのタイミングは、予測しづらい。代替が始まる要因は、お客様の事情によって様々だ。故障が頻発した場合もあれば、お客様の仕事の仕方が変わりコピー機の機能が合わなくなった場合もある。だから、荷動きしそうなところを中心に、自分が担当する200社に常に目を光らせていなければならない。とは言っても、いくら通っていても、関根がお客様から認知されなければ、ヤマトビジネスマシンは検討の対象とはならず、知らない間にコピー機が入れ替わっていることになる。ヤマトビジネスマシンはブランド力もあり、その後の競争相手との競争は対等以上に戦えるのだから、まずは荷動きの時に、お客様から「ヤマトさんも検討するよ」と関根に声をかけてもらうことが大切だ。
どうしたら、お客様から声をかけてもらえるようになるか。「今のままのやり方ではダメだ」と関根は強く思った。今は、とにかく元気良く訪問して、コピー機に関する状況を聞き出す。その上で、自社の商品を紹介して、持ち込みデモの許可を取る。デモ機を持ち込んでから、お客様のコピー作業を詳しく聞き出し、具体的な効用を盛り込んで提案に持ち込む。今まではこんなやり方だ。持ち込みデモが取れヤマトビジネスマシンのコピー機の良さを理解いただいたお客様は、その後の荷動き時に声をかけてくれる可能性は高まる。しかし、せいぜい週に1社くらいしか持ち込みデモは取れないのだ。また、持込デモは手間もコストもかかる。このやりかたのままでは、上京区のお客様の荷動きの大半に参画できないままとなる。目標値達成は難しくなるのだ。

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著作:渡邊茂一郎

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