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2018/01/21

翌日、京都西染工の中井総務課長は、気が進まなかったが、「会長まで、そうおっしゃるんでしたら、一度連絡して見ます」と河瀬取締役に行った手前もあり、ヤマトビジネスマシンの関根という営業に電話してみた。また会長室に呼ばれて叱られるのはこりごりだったからだ。
「はい、ヤマトビジネスマシンの関根でございます。いつもお世話になりありがとうございます」、電話口からは小気味好い返事が帰ってきた。
「ヤマトさんに相談したいことがありまして連絡しました。一度お越しいただけませんか。ただし、何かを購入するといった要件ではないのですが、構いませんか」
中井は慎重に切り出した。ガンガン売り込みをかけられても、うっとおしいからだ。
「はい、承知いたしました。なんでも気楽にご相談ください。商品を売るためだけで動いているわけではありませんから」と関根があっさりと答える。
2日後の午前11時にアポイントメントが決まった。
中井は、つまらない営業マンだったらすぐ帰ってもらうつもりで、11時にしたのだった。
2日後、ヤマトビジネスマシンの関根がやってきた。大柄だが、人懐こい笑顔が人を安心させるタイプだ。「中井課長、おはようございます。今朝はまた冷え込みましたね」と気さくに挨拶してくる。ついつい手の内を明かしたくなる。
中井は「ダメダメ、気を許しちゃ」と心の中で気を引き締め、努めてビジネスライクな表情を繕った。
「実は、相談というのは、新市場開拓を軌道に乗せるために、経費を削減するようにとトップダウンで指示が出まして、管理経費を20%削減することとなりました。ヤマトビジネスマシンさんにもお知恵を貸していただけたらと思いまして、お声をかけました。弊社の河瀬取締役からもヤマトさんに声がけするように言われてまして」と切り出した。
関根は「それは光栄です。私も京都の友禅染業界さんの新市場開拓になんらかのお手伝いができたら、嬉しい限りです」と返してきた。
「中井課長としては、今どのような取り組みをされているのでしょうか。差し支えない範囲で結構ですから、取り組みをお聞かせいただけませんか」
中井は、総務・人事課が一丸となってとり組んでいる状況をかいつまんで話した。
「そうなんですか、中井課長はすごい方ですね。総務・人事課のメンバーが活き活きと経費削減に取り組むなんて、普通考えられないです。日頃からの信頼関係とチームの組織風土が豊かなんでしょうね」
「会社としての未来がかかっているんだから、当たり前だと思いますがね」
「そうは言っても、経費削減は痛みが伴いますから、なかなか本気では動いてくれないというお話を他社では聞きますよ。さて、せっかくご相談いただいたのですから、まずは経費削減の事例をお持ちさせていただきます。様々な業種の事例がありますが、一番詳しくお話しできる弊社の事例を先ずはお持ちさせていただきます。私以外にもう一人連れてきますけど、構いませんか。来週の月曜に伺いたいのですがよろしいでしょうか」
アポイントも決まったが、中井は拍子抜けした。
「こんなにあっさりと商売にならないようなことをやってくれるのか」と思ったわけだ。
「でもそんなはずはない。どこの営業マンだって商売につながらない時は、なんとかして逃げようとするばかりだ。今回の話を何らかの売り込みにつなげてくるに違いない」と疑いを抱きつつ、関根を見送った。

著作:渡邊茂一郎

その5 「関根からの答え」へ続く

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