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2018/05/17

翌朝、9:30に京都メディカルラボの山西課長から電話が入った。
「関根さん、昨日寺田と話し合い、今回は御社で行くことに決まりました。これから継続的なコストダウン提案をくれぐれもお願いしますよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます」関根は、電話に向かって深々とお辞儀しながら何度もお礼の言葉を伝えた。
電話を切ると、佐久間課長が飛んできた。支店長の石井も寄ってきて労ってくれた。
「関根、大手営業課に来て早々に大変だったが、よく頑張ったな」
「今回は、本当にダメかと思いましたが、本当に良かったです。そして勉強になりました。現地現物現実の重要性が骨身に沁みました。でもサポートしてくれたみなさんのお陰です。ありがとうございました」
喜びも束の間で、早速、関根は佐久間と一緒に京都メディカルラボに向かった。
まだ勝負はついていないのだ。京都OAの最後の反撃も予想される。まずは、京都メディカルラボの意思を固めておくことが大切だ。
到着すると、寺田部長と山西課長が笑顔で迎えてくれた。
佐久間と関根が一通りお礼を述べると、寺田部長が切り出した。
「佐久間さん、熱心な方を部下に持たれましたな。ヤマトさんがここまでやるとは思ってもみなかったですよ」
「寺田部長、ありがとうございます。」
「関根さんの現場情報に裏付けられた熱心さには、負けました。ほとんど京都OAさんにお願いするつもりでしたので、大逆転でした」と山西課長も関根の努力を讃えてくれた。
「先ほど、京都OAさんには、今回もヤマトさんでいくと伝えたのですが、なかなか納得いただけず、大変でした。これから京都OAさんは役員さん同行で来られるみたいです。ヤマトさんがすぐ来られたのは、京都OAさんの動きを見越してですかな」と笑いながら山西課長は続けた。
関根は頭を掻きながら「いやー、そんなわけではないんですが、まずは、お会いして直接お礼をお伝えしたかっただけなんです」と答えた。
山西課長からは「電話でもお伝えしましたが、これからが大切だと思っています。御社との一括契約は3年間ですが、毎年提案いただけると期待しています」と念をおされた。
「もちろんです。これから保守部門と協力して、複写印刷状況を定点観測させていただきます。その上でトータルコストの観点からどしどしご提案させていただきます。弊社は、コピー機だけのビジネスではありませんので、ファクシミリなど通信機器、ワードプロセッサーなどのOA機器も含めて、幅広く提案させていただきますから」
「関根さん、お手柔らかに願いますよ。しかし、山西の良き相談相手になってやってください。山西も頼りにしていますので」と寺田部長も笑顔で応じてくれた。
この後、山西課長と契約締結に向けた事務的な打合せを行って、関根と佐久間は京都メディカルラボを後にした。
「関根、山西課長への最後のワンモアコールは有効だったな」
「はい、あれが山西課長への最後のひと押しになったと思います」
「関根、ご苦労様だったな。よくやった。関根の粘り無くして、この案件は成功しなかったと思うよ。今晩は祝杯を上げに行くか」
「ありがとうございます。ということは課長のごちですか?」
「ははは・・・、決まっているだろう。先斗町でも行くか。そうだ、支店長も巻き込むか。いつも行けない店に連れて行ってもらうか」
大手営業としての関根は、全面解約という大山を乗り越えることからスタートしたのだった。この後、関根は、継続的な業務効率化を通じてのコストダウン提案を継続して、寺田部長、山西課長との良き関係性を築いていった。3年後の東京への異動時には、個別の送別会を開いていただける仲となったのだった。

第9話 完

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著作:渡邊茂一郎

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