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2019/06/11

1.予想だにしなかったこと(自分の立場を思い知らされる)

2010年、今から遡ること9年前、私は営業部長として意気揚々と仕事に取り組んでいた。細かなことを言えば会社に不満が無かったわけではないが、部下にも恵まれ毎日が充実していた。

当時まだ、取引のなかった夢野株式会社の夢野専務と初めて出会ったのは2007年の秋であった。私よりも一回り若い夢野専務に対して、私は『生意気な奴』という第一印象を持った。しかし、彼が放つオーラには一種独特な凄みを感じたのも事実である。それから幾度と無く面談しているうちに、私は『いつもそんな怖い顔をしているのですか?そんな表情じゃ、社員から敬遠されますよ!もっと笑いましょうよ・・・』とつい、本音を漏らしてしまったことがあった。そんな会話がきっかけとなり、夢野専務とは仕事のこと以外でも話をさせていただく機会が徐々に増えてきた。取引もさせていただけるようにもなった。

ある日、夢野株式会社の社長が急逝、夢野専務は何の準備もないまま社長となった。まだ30歳半ばでの社長就任である。彼は生まれながらにして社長の地位が約束されていた人である。本人、そして周りの人はそれをどう思っていたのだろうか?私は思う、社長になることが決まっているということは、自分で人生の選択をすることができないということでもある。社長という宿命を背負った人生は決して傍から見るほど楽ではないと。

新社長はただ社長になることを受け入れるのではなく、『どんな経営者』になるべきか、なりたいかということを真剣に考えていた人であった。

社長就任からしばらく月日が流れたある日、夢野社長から食事に誘われた。少しは落ち着いたのだろうかと思いつつ、約束の場所へと向かう。

「お久しぶりです、お元気そうで・・・」と何気ない会話の後、夢野社長の真剣な眼差しから、いつもと様子が違うなあと思っていた矢先、夢野株式会社への入社の誘いを受けた。私には今の会社を辞める選択肢はなかった。やんわりとお断りをした。

しかし、夢野社長は熱かった。その後、幾度と無くお会いするうちに自分の気持ちが徐々に変わってきた。夢野社長の会社を改革したいという熱い思いが、私の心に響き始めていることは誰よりも自分自身が一番わかっていた。市場も取り扱う商品も営業の方法も全く違う業界に飛び込んで、自分に何ができるのだろうか、今までの経験は通用するのだろうか、不安はとても大きかった。

目の前に真っ直ぐなアスファルトの道と、でこぼこくねくねして、先が見えない茨の道がある。皆さんならどちらを選択しますか?

私は、茨の道を選ぶことにした。この決断は生来、私が持って生まれた性分でもあるようだ。自分自身がどこまでできるのか、改めて自分自身を試してみたいと思った。

そんな時だった。会社にリストラの話が舞い込んできた。部下に早期退職を促すことになったのだ。これが引き金となり、夢野株式会社で新たにチャレンジすることを決めた。

退職から休む間もなく夢野株式会社の業務についた。実際に担当業務を引継ぐまでに3ヶ月ある。焦らずしっかりと現状把握をすることから始めよう。そう自分に言い聞かせていた。そしてその環境も与えていただいた。しかし、気のせいだろうか、どうも周りの視線が気になる。とても居心地が悪かった。

初めての幹部会議に出席した。今思えば相当気負っていたと思う。会議で何か発言しなければと思い、会議出席者一人ひとりの声に耳を傾け、自分なりに考えを整理した上で発言をした。ところが最も理解してほしいと思っていた営業幹部の様子がおかしい。何か変なことを言ったのだろうか?いや、そうではないと思う。しかし、私が発言することに対して全くリアクションがないのである。そればかりか、私が発言しようとすると皆が下を向く。そのことに気づかないほど私も鈍感ではない。

『社長が連れてきたのかどうか知らないが、業界のことも知らない奴がいきなり幹部として入社するなんておかしいと思わないか、あいつには気をつけろ。あいつには関わらないようにしよう・・』恐らくそんな申し合わせがなされていたのであろう、露骨に拒絶された。さすがに私も落ち込んだ。その拒絶には不安を通り越し、恐怖さえ覚えた。しかし、そんなことでは駄目だ、この人たちと良好な関係を築かなければならない。自分にそう言い聞かせ自分から歩み寄り、自分を理解してもらおうと思った。

会議終了後に思い切って、営業幹部の方々に声をかけてみた。「この後、飲みに行かれるのであれば、ご一緒してもいいですか?」返ってきた返事は「わからんな」「そんな予定はない」と、けんもほろろであった。休憩時間に幹部同士が誘い合っていたことを知っていただけにこの返事はショックだった。昨日まで、もしかしたら歓迎会でもあるのかな?と期待していた自分の愚かさを痛感した。そして、家族の顔が浮かんできた。これが夫であり、父親の姿だ。情けない・・・。

しかし何故、ここまで拒絶されるのだろうか、私には自分でも気づいていない人としての大きな欠陥があるのではないかと思った。夢野社長に助けてもらいたいと思った。ここから逃げ出したいと思った。

前の会社ではそこそこ出来ていると感じていたが、それは大きな勘違いであることを思い知らされた。ただ、周りのメンバーに支えられていただけのことであった。情けないほど自分自身の無力さを痛感した。自分は何故、ここにいるのだろうか、何のためにここに来たのだろうか。今、ここで改革などと口にしようものなら間違いなく総スカンである。

ただ、ここまできたら後戻りはできない。やるしかない。どうせやるなら、この現実から逃げずに直視しよう。全ての人の声に耳を傾けよう、全ての出来事を受け入れよう。今、自分にできることはそれだけである。一旦、改革などと大それたことから距離を置き、どうしたら自分が受け入れてもらえるか、それだけを考えることにした。

当時、ぼんやりと感じたことがある。これから自分に起こることは、その全てが自分自身の成長の糧である、と。

現在もまだ改革途上ではあるが、大きく変化を遂げるに至った背景と改革の実態、改革の重要なポイント、具体的な施策についてこれから順を追ってご紹介していきたいと思う。

著作:厚樹 重茂

続きは…

2.営業現場の実態(改革の必要性を実感する)

 

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