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2020/04/20

10.営業幹部が核というがそれは本当なのか(営業幹部に逃げるな)

前回(第9話 営業改革とは何を変革することなのか/営業改革は企業変革そのもの)、夢野株式会社は史上最高の売上を確保したことを書いた。同じくその末尾に『営業改革は現場からのアプローチでは実現できない。経営トップのコミットメントと情熱のもと、経営からのアプローチではじめて実現できるものである』とも書いた。

今回、第10話のテーマを改めて見ていただきたい。今回のテーマは『営業幹部が核というがそれは本当なのか』である。これに違和感を覚えた読書がいるのではないだろうか。

第9話で『改革には経営トップのコミットメントと情熱が必要』と結論めいたことを書いているにも関わらずなぜ、再び営業幹部に焦点を当てるのか。改革には経営トップのコミットメントと情熱が必要であると感じていることに私自身、揺らぐことはないが、経験上『2つの視点』を踏まえておく必要があると思っている。更に『改革』のゴールを明確にしておくことも合わせて重要であると思っている。『2つの視点』と『改革のゴール』、夢野株式会社の営業改革はまだ道半ばであることから、現時点で結論めいたことを言うべきではないが、あえてそこに踏み込んでみたいと思う。

『2つの視点』の1つは、経営トップのコミットメントと情熱が向けられる方向と質。2つ目は、経営トップのコミットメントと情熱に対する営業幹部の受け止め方と行動の在り方である。この2つが曖昧であれば当然のことながら改革には繋がらない。今回はまず、この2つの切り口から夢野株式会社の営業改革の現状をふり返ってみたい。

夢野社長が掲げる理想を実現するために始めた営業改革。この改革に対して社長自身がどれだけの情熱を持って取り組むか、一見当たり前のことであるが、この点が極めて重要であると実感している。夢野社長が改革に向けてコミットしたことに一切のブレはない。少なくとも私にはそう映っている。しかし、社長が改革のために自ら具体的アクションを起こすわけではない、実際に動くのは我々営業幹部であり、現場の社員である。特に営業幹部に対しては現場の事情などおかまいなく、鋭い指示が容赦なく飛んでくる。まさに夢野社長のコミットに対する情熱は営業幹部に注がれていることを実感する。

営業改革が軌道に乗り、新たに出発する時に夢野株式会社の営業部隊を牽引するのは誰なのか、社長と同じレベルの熱量を持って営業部隊を牽引することができる人材をつくりあげることに夢野社長は注力している。つまり、営業改革と合わせて営業部隊を託せる人材、営業トップに相応しい人材の見極めと育成にも着手しているのだ。

現時点で社長のお眼鏡に叶う人材が営業部隊に存在しているのか、はたまた候補人材に営業トップとしてのポテンシャルがあるか見極めようとしているのかは定かではないが、営業改革と営業トップを託せる人材の選抜、育成を同期化させた取り組みは明確である。

1つ目の視点として、夢野株式会社の営業改革は売上偏重からの脱皮による働き方改革と生産性向上、営業支援システム構築、コンプライアンスに則った基本ルール再構築、営業トップ人材づくり、という方向性が明確になっている。その方向性を明確にしたうえで、改革に向けて社長から下される指示、改革テーマごとに人材を選抜してチャレンジさせる仕掛け、様々な局面で営業幹部の熱量、真剣さを確かめる問いかけは、一つひとつが鋭く、厳しいものであり営業幹部に対する関わりの質はかなり高いと感じる。

2つ目の視点は、経営トップのコミットメントと情熱に対する営業幹部の受け止め方と行動の在り方である。実は、1つ目よりもむしろ2つ目の方が私は重要だと思っている。

自分のことは棚に上げて言わせていただくならば、夢野株式会社の営業幹部は良く言えば「従順」、悪く言えば「言われるがまま」である。

夢野社長のコミットとそこに向けた情熱が改革に不可欠な要素であることは言うまでもない。しかし、夢野社長の情熱が営業幹部から中間管理職を介して社員にどう伝わるかの方が重要だと思っている。実は、ここが夢野株式会社のウィークポイントである。

夢野社長のカリスマ的な影響力があまりにも強いためか、営業幹部たちは社長からの指示、要請を受け止めることでいっぱいになっている。また、トップの考えに対して、自分の考えや意見を主張しようとしても最終的には言い込められてしまい、それらが受け入れられることはほとんどない。また、夢野社長は常々「会社の考えと同じ方向を向くことが出来なければ会社を去ってくれて構わない。いや、そういう社員はむしろ去るべきだ」と明言していることから、社長の顔色を気にする社員が大半である。営業幹部の中にも夢野社長の考えに違和感を抱きつつも同じ方向を向いているかのように振る舞い、自分の身を守ることを選択している人が存在している。

夢野社長に言われるがまま、対峙できない営業幹部に問題が無いとは言わないが、オーナーでもある社長の言うことに従う風潮になっていることは否めない。実際、夢野株式会社の営業改革は社長と営業幹部との間でとどまっており、社員に浸透させていくまでには至っていない。多少、時間が掛かっても社員に浸透させることができればいいが、私は浸透させるプロセスに大きな不安を感じている。

間もなく夢野株式会社には営業部隊を牽引する新たなリーダーが生まれる、その営業トップに選ばれるのは、夢野社長に近いカリスマ性、影響力を有した人材が有力である。そのこと自体に異を唱えるつもりはないが、その時に営業部隊が一枚岩になれるかどうか、私が懸念するのはそこである。

先述した通り、夢野株式会社は営業幹部ですらそうであるように、ほとんどの社員が社長の顔色をうかがって行動している。それが社風になっていると感じる。だから、一枚岩に見せかけることはできるが、本当に一枚岩になれているわけではないことが起こってしまう。営業改革も同様に改革に理解を示し、納得しているように振る舞うことはできるだろうが、現状では営業幹部も社員も『振る舞う』ことで終わってしまうような気がしてならい。

それはなぜだろう、何かが欠けている、それは何なのかを私なりに考えてみた。答えは、『社員の声に耳を傾けること、社員と対話することの欠如』である。

夢野株式会社の営業幹部・中間管理職は、その多くが社長からどう見られているかを意識しすぎている。オーナー社長を意識することは当然で、決して悪いとは思わないが、そうであれば、同じように部下にも関心を向け、部下を見ることに意識を向けなければならない。しかし、部下の声に耳を傾け、彼ら彼女たちの思いや考えを吸い上げようとするとそれは甘いと言われ、厳格さが足りないと言われる。挙句の果てに管理者としての資質が問われる。このような状態であるが故に部下の声を聴いたとしても、上司は上層部には挙げられない。聴くだけで何もしてくれないと部下は不満を募らせ、上司を問い詰める。それを繰り返す中で営業幹部、中間管理職は部下の声を聴くことをやがて諦めてしまう。これが、いつの間にか夢野株式会社の社風になってしまったと私は思っている。

夢野社長が営業をより強くしようとして取り組む『営業改革』であり、決して悪い方向に向かうことはない。しかし、営業部隊の社員はなぜ、改革に取り組むのかなど自ら確かめたり、上司から聞かされたりすることも無く、言われるがまま取り組むことになるだろう。それで本当に営業改革が実現できるのだろうか、私の答えはノーであり、大いに不安である。

営業改革を成功に導くためには、営業幹部が「なぜ今、営業改革に取り組むのか、今のままでは将来どうなるのか、営業改革の先には何があるのか、皆に協力して欲しいことは何か、不安はないか、疑問はないか・・・」と営業改革の目的を理解してもらうために、中間管理職及び社員とじっくり対話をすることが必要である。今のままでは手段が目的になってしまう。そうさせないために、さらに改革に魂を込めるために必要なことは社員としっかり向き合い、徹底的に対話をすることである。

最後に、『改革のゴール』の設定であるが、私は、夢野株式会社の『社風を変える』ことだと考えている。今回の営業改革を通じて夢野株式会社の社風を変えることができなければ改革を成功に導くことはできない。そう感じている私が今、やるべきことは夢野株式会社の社風を社長に認識してもらうことである。私が感じている社風が及ぼす悪影響を社長に伝え、納得してもらうことである。また、社風を変えることができるのは幹部社員ではなく、社長自身であることを理解していただくことだと考えている。これを私の夢野株式会社における最後の仕事とし、これから先も『営業改革』を見守っていきたいと思っている。

著作:厚樹 重茂

続きは…

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