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2021/01/09

12.忘れてはならない営業現場の実態(今こそ心が通い合う環境づくりが必要)

夢野株式会社の営業本部長の人事は、若手からの大抜擢を社長は決めたようである。

2021年4月、夢野株式会社営業本部は新体制が発足する。並行して進めている営業支援システムの構築と合わせて営業部門の改革における一つのゴールを迎えることになる。

言い換えるとそのゴールは、夢野社長が抜擢する営業本部長を核とした新生・営業本部のスタートであり、営業支援システム運用のスタートでもある。

多くの苦難を乗り越えて営業改革を断行し、大きな一歩を踏み出せる地点まできた背景には夢野社長のリーダーシップ、厳格な判断、揺るぎない方向性の明示があった。更にはそれらの方針を受けて愚直に実践してきた営業幹部、つまりエリア統括部長たちの存在があったことは紛れもない事実である。ここ数年で徹底して甘えの排除を断行し、体質改善に取り組んできた。今まで許されていたことが許されなくなった例も少なくない。また、新たに取り組み始めたことも多々ある。例えば案件管理がその一つである。

これまでは結果管理のみだったことが、案件の進捗管理を導入することで成果に繋がるプロセスが厳しく管理されるようになった。日本の多くの企業では当たり前に行われていることだと思うが、夢野株式会社においては新たなチャレンジであった。会議においても案件進捗について、どのようなプロセス管理をしているのかが問われる。その中で上手く進捗していない点を突っ込まれるとその答えに窮してしまい、しどろもどろになってしまう営業所長も一人や二人ではなかった。各現場で今まで通りお客様と向き合い、自分なりの手法でメンバーをマネジメントしている営業所長たちからすると、この急激な変化に戸惑いを覚えるのも至極当然のことである。しかし、そこに言い訳や甘えは許されない。

目標が達成できないのは、案件管理ができていないためであり、案件管理ができないのは所長のやる気、マネジメント能力の欠如が原因であると判断され始めている。4月に発足する新体制において、数名の所長がその座から降りることが既に検討され始めていることからも、営業本部における変化の様子はおわかりいただけるだろう。

利益を出し、存続し続けることが企業の使命であると言われる。その使命を果たすために甘えが存在してはならないことは当然のことであるが、果たしてこのやり方が本当に正しいのだろうか、正直に言って私自身も不安に苛まれることがある。

今の所長たちはマネジメントに関する指導や教育を受けることもなく、個々の感性や手法で我流のマネジメントスタイルを築き上げてきたのでる。今まで容認されてきたマネジメントスタイルがある日を境に部分的にではあるが否定され始めている。

確かに所長を入れ替えることでその営業所の業績が向上するかもしれない。また、降格になる所長の中にはプレッシャーから解放され、実はその方がよかったと思っている者がいるかもしれない。ただ、本当のことは誰にも知る由はない。

昇進・昇格、降格の人事が発表されたわけではないが、営業本部が変化する空気を感じ取っている社員が徐々に増えてきている。会社の変化を受け止めている社員の中にも変化と共に不満や不安を抱き始めている社員も少なくない。その社員たちも営業本部の改革を否定しているわけではなく、このままでいいと思っているわけでもない。では、何に不満を抱き、何に不安を感じているのだろうか。

社員目線で言うならば『改革に向けての方法』に不満を抱き、『これまで努力して積み重ねてきたことが否定されてしまうのではないか』という不安を抱えているように感じている。勿論、生半可な方法で改革などできるわけがない。痛みを伴ってでも断行しなければ変えられないこともある。

決して社員の思いを軽視しているわけではない。ただ、改革に対する経営トップ、経営幹部の熱量が社員に伝わっていないだけである。それこそが、夢野株式会社営業本部の最大の課題である。

『営業改革』は経営トップと経営幹部だけで成し遂げられるものではない。それは誰もが頭ではわかっていることである。だからこそ経営トップの思いを現場の社員にまでしっかり浸透させていくことが必要なのである。

営業改革についての説明会を開催すれば、改革に対する経営トップ、経営幹部の考えや思いは浸透するのか。現場で上司が部下と対話さえすれば浸透するのか。そんな甘いものではない。改革の成否、その本当の答は一年や二年で出るものではなく、数年後に売上・利益が大幅に改善できて、社員が「夢野の企業風土が変わった」、「夢野の社員であることに自信と誇りが持てる」と心から思えるようになって初めて浸透したと言えるのだろう。

つまり、営業本部長が新しく擁立されても、営業所長の入れ替えをしても、営業支援システムが新しく構築されてもそれは改革のゴールではなく、スタートラインに立ったに過ぎないということである。

スタートラインに立ったとはいえ、現状で夢野株式会社の社員は改革を促進するレベルには達していない。まず、その事実を直視して受け入れた上で、並行して社員の育成に真剣に取り組まなければ未来はない。改革を断行するためには、社員が成長する環境づくり、更に言えば人材育成がどの営業所でも当たり前に行われている企業風土を作り上げなければ、営業改革は経営トップ、経営幹部が旗を振るだけで終わり実現できないだろう。

社員が会社に夢と希望を抱き、なりたい自分、ありたい自分のイメージを描けるようになる。それに向けて自身を成長させたいと思える。そんな人材育成こそが営業改革に取り組んでいる今の夢野株式会社には必要であると強く感じている。

人材育成とは育成する側だけでは成り立たない。育成される側が夢野で成長したいと思わなければ成り立たないのである。そのために必要なことは、社員の声、社員の思いを経営に伝えること、そして経営の考え、熱き思いを社員に浸透させていくことである。つまり経営と社員をしっかり繋いでいくことこそ今の夢野株式会社には不可欠である。では、それを誰がどうやって繋ぐのか、その繋ぎ役こそ私の使命であると思っている。そして、それが夢野株式会社における私の最後の仕事になるであろう。

今では私が夢野株式会社に招聘された10年前とは別会社になった。入社当時、予想もしなかった仕打ちを受け、その後も常識では考えられない数々の出来事と向き合うこともあった。当時は、驚き、不安、悲しみ、怒り等々、自分に押し寄せる複雑な感情をコントロールすることにかなりパワーを使っていたことを思い出す。しかし、それらの出来事と向き合う中で学ぶこともたくさんあった。今だから言えることであるが、このような環境に身を置けたことは、もしかしたら幸せなことだったのかもしれない。

『夢野株式会社の営業改革』も何とか緒につくところまでは辿り着いた。『この改革が成功した』と言える日が来るために、私が今なすべきことをもう一度伝えておきたい。

それは、人材育成が当然のごとく行われる社風、企業文化を作り上げることである。まだまだ夢野株式会社営業本部の改革からは目が離せない。

 

著作:厚樹 重茂

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