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2017/08/13

関根の西京区の新規開拓活動は、順調に回りだした。まずファクシミリで突破口を開く作戦は、図に当たった。ファクシミリが染物関連の企業に入り、その数か月後に、コピー機の商談になるケースが増えていったのだ。
計画したプラン通りに仕事が進むと面白くなる。関根だけ生き生きとした活動をしていた。半期の目標数値もなんとかギリギリで達成できそうな目途が立ってきた。
ちょうど1年前に解約となった京都西染工も、そろそろ行って見ようかなと関根は思い始めていた。
しかし、3課の他のメンバーはセットリースに邁進していて、驚くほどの販売台数を出していた。だから関根は3課の中では相変わらず最下位だ。田島からの口撃は止むことはない。この孤立した状況の中で、一人で新規開拓営業をことで、関根は逞しくなっていった。
特に変わったのが時間管理だ。西京区は四条のオフィスから移動すると、約1時間近くかかる。関根の住居は、京都市の西隣の長岡京市だったので、自宅から直行すると10分くらいで、担当エリアに入れる。この時間短縮は大きかった。午前中の活動量が大幅に向上する。反面、直行は朝会社で面談のための準備をすることはできない。前日もしくはもっと前にしっかりと準備をすます必要がある。必然的に、関根は次回の訪問でお客様とどのような合意をするか、狙いをきっちりと定めて行動するようになっていった。当然、明日の準備があるから、夕方の帰社時間は自然と早くなる。
以前は、田島と顔を合わせるのがいやで、遅めに帰社していたのだが、田島のことも気にしなくなっていった。
もちろん営業活動の質も向上してきた。「この面談で、こういう合意をいただくために、お客様からどのような情報を聞き出し、どう説得すればいいか」、このことを真剣に考えるようになった。合意を意識することで、各面談での目的が明確になった。また、同期の横山から教わった「相手の立場になりきって考え、作戦を立てる」スキルにも磨きがかかった。
厳しい状況のなか、一人で考え、一人で行動することは、関根にとってかけがえがない経験となった。営業活動は、こうしたほうがいいと考えたことをきっちり実行すれば、必ずそれに見合う結果はでる。しかし、忙しい、やらなくても大丈夫、面倒などの理由をつけて、行わないことが多い。結局、いいと考えたことを行わないで済ましてしまい、競合に負けるのだ。一人で活動することが、関根の心に自分への厳しさを熟成し、営業としての実行力を大きく伸ばしたのだった。
さて、3課は、販売台数だけは大幅に目標を超え、関根以外のメンバーでは、関西支社で販売台数第1位の成績を残した者も出た。当然、表彰される。関根は、目標値をかろうじて達成したレベルだから、表彰対象ではなく、拍手する方だ。
いよいよ、表彰式だ。販売台数の部が始まる。3位から表彰される。勢大な拍手で本人も嬉しそうだ。2位の表彰も終わり、1位だ。
表彰される3課の北島は一番忠実に田島の指示に従った営業だ。喜び勇んで表彰台に上がった。ところが誰も拍手しない。もちろん関根も拍手しない。同じ3課のメンバーですら会場の異様な雰囲気に飲まれて、拍手することができない。
1位のインタビューも盛り上がらず、白けた販売台数1位表彰となった。
他のチームも京都支店の3課の営業内容は知っていたのだった。
3課は、販売台数の部門だけは高い数字を残したが、他社のダウン、売上増分などの他の重要指標は全く達成できず、セットリースの対象先ユーザーが減るにつれ、販売台数の数字すら残せなくなっていった。
この半年後、京都支店3課長の田島徹は、静岡支店の事務課長として転勤していった。3課のメンバーも関根を除き、他支店へとバラバラに異動していった。
田島は反面教師として、関根に大きな学びを残したのだった。

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著作:渡邊茂一郎

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