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2016/09/06

さて、就活から研修までの回想をしていると、あっという間に15分位も歩いていた。もうすぐ丸太町通りだ。担当地区の北のはずれだ。いよいよ逃げられない。「もう研修じゃないんだ。本番なんだ。やるしかない」と関根は自分を鼓舞した。「それじゃまず京都らしい会社から始めるか」。丸太町通りから、西に二筋行き、室町通に入り、南に向かって、ずらっと並んだ呉服関連の問屋に飛び込み訪問を始めた。
目に入ったのは、大きな看板。株式会社木村十兵衛商店と書いている。京都らしい会社名だ。門構えも立派だ。早速中に入ってみる。
「こんにちは」と大きな声で挨拶した。「おいでやす」ときれいな受付嬢がにこやかに応対してくれる。「これは名古屋や東京とは違うぞ」関根は心が躍った。
「ヤマトビジネスマシン京都営業所の関根と申します。事務機の担当者の方にご挨拶に参りました」と大きな声で来意を告げる。
「はい。少しお待ち下さい」にこやかでとにかく優しい。「申し訳ありません。総務の担当者は、今外出しております。改めてお電話いただいてから、いらしてくださいますか」。とても丁寧だ。関根は自分がポーとしていることに気づいた。「わかりました。それでは、改めてお電話しますので、御担当者様のお名前を教えていただけますか」。
すると「申し訳ありません。社員の氏名は本人の許可なくお伝えすることができません。お電話いただく時も総務の事務機担当者とお申しつけ下さい」との返事。
関根は、それもそうだと思った。「ではまた改めて寄せていただきます。ありがとうございました」。
「また、おこしやす」と受付嬢はにこやかに返してくれた。
「京都言葉はいいなー」関根はすっかり気持ちよくなってこの会社を出た。なんか心が癒される感じだ。「やっぱり京都は違うな。頑張ってどんどん行くか」と、次の会社に入った。
この後、どの会社も門構えは立派で、感じの良い受付の対応だった。ただ、1人の担当者とも会えなかった。この日の関根は、終日このパターンを繰り返した。室町通沿いのたくさんの呉服関連の会社を訪問したが、受付としか話ができなかったのだ。すっかり気持ち良くなっていた自分が現実に引き戻された。 「あれ、このままいったら、毎日何もできないぞ」。冷静になって1日を振り返ると、京都言葉の優しげな語り口にのぼせていた関根にまたもや暗雲が立ち込めた。 実習中サボったツケが出たのだった。関根は受付突破さえできなかったのだ。

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著作:渡邊茂一郎

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