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2016/10/19

翌朝10時の約束時間に西山銘木損保を訪問し、岩田専務と面談した。今度は、提案書を見せながら、新しいコピー機が西山銘木損保の業務の改善にいかにつながるかを説明した。営業研修で習った提案だ。関根は一生懸命、機械の機能によってお客様により大きな効用をもたらすことができることを説得していた。岩田専務は「ふんふん」と聞きながら、たまに質問をしてきた。このようなやり取りを30分くらい続いた後、「関名君、あんたにゃ負けたわ。根負けや。改めて、このコピー機を買うわ」と言ってくれた。「うちの業務が改善されるし、なにより社員が君を応援してるしな」関根は、なんとも言えない充実感を感じていた。しかし、舞い上がることなく、「では、岩田専務、契約書を用意してきましたので、ご捺印いただけますでしょうか」と契約書を取り出した。事務員のみなさんから拍手が起こった。関根は感動し、目を潤ませながら「みなさん、ありがとうございます」と挨拶した。
岩田専務からも「関根君、よう頑張ったな。君の提案は、ただ業務改善になりますだけじゃなくて、うちのお客様の満足やリピート購買まで、踏み込んでいた。今取引しているところじゃ、新旧の機能比較と見積だけだからな。全然違っていたよ。その上事務員さんからも応援されていたら、外堀がみんな埋められた感じだよ。」と労われた。そして、「これからもよろしく頼むな」と言っていただいた。お客様と一体になった感じがした。
こうして関根は、1号機の販売にたどり着けた。同期より遅れはしたが、思い出深い1台となった。もろもろの契約手続きを終え、営業所へと帰る道すがら「やっぱり、お客様の業務を把握して、業務改善から業績拡大にまでつながる効用を訴えることが一番大事だったな」と振り返った。「そういえば、営業研修でこれもやったな。すごい研修を受けていたんだ」。関根は、今まで面白いとは思えなかった営業という仕事が、これほどのドラマと喜びをもたらすものなのかと思った。営業という仕事を好きになる第一歩を踏み出した1日だった。
尚、この西山銘木損保の岩田専務とは、これから長い付き合いとなった。この時の関根の粘り強い活動と明るさを大いに買ってくれ、東京に転勤した後も、コピー機を替えるときには、必ず連絡をくれ、「これからもよろしく頼むな」と言ってくれた関係は、関根の退職後まで続いたのだった。
第2話完

「第3話 自分を直視する」へ続く

著作:渡邊茂一郎

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