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2016/11/19

翌日は、12月にしては暖かい日和だった。関根は早めに営業所を出ると、あてもなく烏丸通りを北に向かって歩き出した。丸太町通りを過ぎると、右手は京都御所だ。御所は、小さな砂利が一面にひかれ、京都市民の散歩コースだ。ベンチもそこかしこにある。関根は、うつむきながら砂利を踏みしめて北に向かって歩いて行った。もう直ぐ今出川通りというところに、今出川広場がある。関根は疲れを感じて、そこの日当たりの良いベンチに腰掛けた。今思い出しても苦いものがこみ上げてくる。そのうち、昨晩寝ていない疲れが出たのか、ベンチでうとうとしだした。日差しが気持ち良く、風もほとんどなかったので、さらにベンチに横になってグッスリ寝てしまった。
お昼近くなって目が覚めた。冬の日差しだったが顔は日焼けしてしまっていた。「まいったな」とつぶやきながら、関根はのろのろと起き上がり今出川通りに出て、西の方に歩き出した。この辺りは同志社大学のキャンパスがあるため、喫茶店やレストランも多い。そのうちの1軒でランチを済まし、今出川通りをさらに西に向かって歩いた。
新規開拓の仕事は、お客様から呼ばれることや、アポイントがあることは少ないので、時間は自由に使える。それが裏目に出た。関根は、すっかり落ち込んで上京区と北区をフラフラと歩きながら、喫茶店をはしごしながらひたすら時間を潰した。新人研修での実習時と同じだった。どうしても力が出てこない。今までのようにコツコツ苦労することがバカらしくなったのだ。昨日の出来事が、関根がかかり始めたマンネリと諦めという病気を重くしていった。この日は1社も訪問することなく、だらだらと過ごし、暗くなってから、営業所に帰社した。松原係長の「おかえり、ご苦労様」との労いの言葉が、後ろめたく感じて、そそくさと退社した。
翌日からも、どうも力が出ず、松原係長に怪しまれない程度に、見込み客を訪問すると、喫茶店で時間を潰すことが多くなった。もちろんこんな仕事っぷりが楽しいわけはない。関根の持ち前の明るさと声の大きさも次第に影を潜めていった。
このような行動が、12月から続いた。この結果は、業績に反映しだした。今まで少ないながらも、ものにしてきた他社ユーザーからの切り替えが減ってきたのだ。
関根は、「このままじゃダメだ」と思い、なんとか自分の心を立て直そうとするのだが、一度折れた心は、なかなか元のバイタリティを取り戻せなかった。
新規訪問活動は、知らない会社に飛び込んでいくため、アウェーで1人戦うということだ。強い心のエネルギーと一歩踏み込む勇気を必要とする。そのエネルギーが減ってきたので、新規訪問自体がとても苦痛になった。見込み客を訪問する勇気が出ないのだ。仕事をしていない後ろめたさから、なんとか気持ちを奮い立たせて訪問しても、お客様から嫌な顔をされるのが怖いばかりに、担当者が不在だとホッとするようになった。関根はなんのためにお客様を訪問しているのか見失っていった。
関根は奈落の底に落ちていくように、売れない営業マンの暗闇に落ちていった。ここに落ちると、売れないプロセスを無意識に踏襲するようになる。たぶんダメだろうと思いながら行動すると、意識していないのだが、ダメになるような行動を取ってしまう。当然、結果も出ない。これを繰り返し、うまくいかないプロセスを無意識で心の中に強化してしてしまうのだ。
結果として、4月の半期の締めは、惨憺たる結果で終わった。関根の数字の不足分は、大山をはじめとした係の他のメンバーの奮闘で補ってくれたが、元気のない関根は係のお荷物となっていた。

その4「最下位」へ続く
著作:渡邊茂一郎

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