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2017/04/10

解約通知の3日後、関根はヤマトのコピー機の搬出立会いで京都西染工に来ていた。予定時間より早く着き、搬出作業を行う運送会社を待っている間、京都OAの真新しい機械の横に、薄汚れた自社の機械がぽつんと置かれている状況をボーっと見ていた。
京都OAの機械は新しい機能もあり、たくさんの社員の方が、使いに来る。でもたまにヤマトのコピー機を使ってくれる人も居た。
「ありがとうございます」と挨拶すると、「私はヤマトさんのコピー機が好きでした。無骨なところもあるけど、故障しないし、なんか頼れる感じがしてました。今日で終わりですか。残念ですね。」と慰めてくれた。
関根は、自社の機械がたまらなく愛おしくなった。今まで一人ボッチで廊下の隅っこで奮闘してくれて、お客様からも愛されていたんだなと思うと、「よく頑張ってくれたね」と思わず声をかけた。
機械からも「今日で終わりですかー。寂しいです」と言っているような気がした。
関根は、何を思ったか洗面所に行き、ハンカチを濡らしてきつく絞ってきた。そして、ほとんどの人が使わなくなった自社の機械を拭き出した。2年間の使用だったが、コピー機はトナーというカーボンの微細粉体を使うので、黒ずんでいる。
この機械は、搬出されて、再利用する部品を取り出したら、後は廃棄される。その前に綺麗にしたところでどうなるものではない。しかし、綺麗にしてやりたかった。2年間頑張ってくれたのだから。
ハンカチはトナーと埃でみるみる黒ずんだ。もう使い物にはならない。でも関根は、「よく頑張ってくれたな」とつぶやきながら、ゴシゴシと磨いていった。
磨くうちに関根のひたいに汗が滲み出し、機械に滴り落ちた。よく見ると汗だけではなく涙も混じっている。
頑張った機械への感謝と解約にしてしまった自分自身への不甲斐なさから、思わず涙があふれてきたのだ。関根は夢中になって、磨いた。
この様子を、2人の男が廊下の隅で見ていた。一人は、関根に解約を通知した取締役総務部長の河瀬、もう一人は、京都OAに代えろと指示した会長の長崎その人だった。
「河瀬、今回は私の指示で、解約してもらったが、あんな営業マンもいるのやな」。
「そうですね。もうすぐ搬出するというのに自社の機械を磨くとは、驚きました」
「うちの営業もあそこまで自社の商品を思い込んでいる奴はそうおらんやろ。今回は京都OAの会長とのこともあって、解約したけど、あの営業マンのこれからの活動を見といてくれ。名前はなんていうんや」
「関根さんです。コピー機での取引は無くなりますが、これからどう出るか、よーく見ておきますわ」
やがて、運送会社がきて、作業員が、関根が磨いたコピー機を見て「なんか綺麗になってますなー」と言いながら、搬出作業を進めていった。コピー機がトラックに積まれ、運ばれていく姿を関根は見守り続けた。そして、トラックが動き出すと深々と頭を下げ、「今までありがとう」とつぶやきながら見送った。
関根は、取締役総務部長の河瀬役員に挨拶して、丁寧に今まで使ってくれたことへの感謝を伝え、しんみりと去っていった。

著作:渡邊茂一郎

その5「京都OA」へ続く

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