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2019/10/01

5.無力感にさいなまれる(私を救ってくれた部下の言葉)

夢野株式会社に入社してから5ヶ月間の研修を終え、正式に配属された。下半期がスタートするタイミングだった。上半期の業績は悪くない。もちろん6営業所全てが順調というわけではなかったが、下半期の動き次第では十分に年間目標の達成も可能な状態であった。

今の夢野にメスを入れることを期待していると私にエールを送ってくれた森所長、私を営業所に入れてくれなかった木村所長、この2人が所長を務める営業所は共に好業績であり、この2つの営業所こそが私が担当するエリアを牽引していることは確かだった。あとの4拠点は年間目標を達成することができるのか、未達成で終わるのか、やり方次第ではどちらにも転ぶ可能性があり、これは私にとってはありがたい状況であった。この4拠点の年間目標達成イコール担当エリアの目標達成であるならば、これからの半年間をどこに注力すべきかが明確だったからである。

本来であれば全社の目標達成を視野にいれるべきであることは理解していたが、私がおかれた立場、状況を考えると、まずは担当エリアの目標達成が絶対条件だった。他のエリアの面々もポーカーフェイスを装いながら私の担当エリアの業績推移には注目しているはずである。『結果』、何が何でも目標達成という結果がその時の私には必要であった。

配属後、最初に実施したことは各営業所への巡回であった。最初の巡回を終えると仕事がないことに気づいた。営業部長という立場上、承認業務や会議などはあるものの、お客様と接点を持つことがないのである。座して待っていてもお客様への同行依頼などが入ることはない。ここは現場に遠慮して待つ時ではない。入社後の全国巡回研修で営業活動の実態やお客様の状況も概ね理解できているつもりだったこともあり、自ら所長に連絡を取り、お客様への同行を申し出た。各営業所に在籍している営業メンバーの力量、仕事に対する考え方、方針の浸透度合いを把握したい。また、夢野株式会社に対するお客様の期待も確認したいという理由を添えて同行を申し入れたのである。

実際に現場に足を運ぶと全国巡回研修の時とは違うことに気がついた。やはり、研修の時は私に対して相当気を遣ってくれていたのだろう、私が各営業所メンバーと同行した際には比較的商談の場面が多かったが、実際は多くのメンバーが普段の活動とは違う姿を私に見せようとしていたことがわかった。4ヶ月間の研修で私が感じた営業の実態(お客様のニーズを把握しようとしない、プレゼン力が低い、カタログのみで提案書が存在しない、商談は価格の話が中心など)が間違いではないばかりか、なぜそのレベルに留まっているのかも見えてきた。そもそも、営業担当者が行っている仕事は『営業』とは言い難いものであった。

実際は販売した製品のアフターメンテナンスが彼らの主な仕事となっている。これは営業の仕事ではなくサービス担当者の仕事ではないか、私はそう思った。しかし、夢野にはサービス担当者が存在しておらず、アフターメンテナンスも営業担当者の重要な業務になっているのである。本来、営業としての主な役割は製品を販売することであるが、販売した製品のアフターフォローをしっかりと行っていればリピート受注に繋がるのである。営業としてのスキルよりメンテナンススキルの方が重要視される理由もこの実態を知れば、容易に理解できた。

このような実態であるが故にお客様のニーズを把握しようとしない、プレゼン力が低い、カタログのみで提案書が存在しない、商談は価格の話が中心というような営業活動になっているのも当然のことである。

そんな状況の中、もうひとつ見えてきたことがあった。夢野においては、メンテナンススキルの高い社員が優秀な営業として認知されているという実態である。メンテナンスで信頼されることが製品の販売に繋がるというロジックを考えれば、メンテナンススキルの高い人材が高く評価されるのも必然のことである。

このような実態が存在する営業組織のなかで、私にはメンテナンスの経験はない。メンテナンスができる人材が認知される社内で、メンテナンスができない私が周りからどのように見られるかは言うまでもないことである。メンテナンス重視、商談軽視。このような社風の中で商談の在り方を語ったところでメンバーには響きもしない。逆に部長のくせに、簡単なメンテナンスすらできない、メンテナンスもできない上司の姿は悪い意味で大いなるインパクトを与えるのである。

私が依頼をすれば、メンバーもお客様先に同行させてはくれるが、営業活動の7~8割が製品のメンテンスであることを考えるとメンバーにとって私と同行することによるメリットはなく、むしろ負担でしかないこともわかってきた。このような状況で時が流れていく。すると研修期間中の何とも言えない冷ややかな空気とは違う風が自分に向かって吹いてくることを感じ始めた。メンテンスもできないくせに・・・、口ばかりだ・・・という逆風を感じ始めた頃、幾度となく山本五十六の言葉を思い浮かべていたことを今でも思い出す。『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ』
自分でやってみせるこができないもどかしさを感じながら悶々とした日々を送っていた。

メンテナンススキルの高い人イコール優秀な営業。この社風を変えることは容易ではない。夢野では私のこれまでの経験は役に立たない。自分自身が無力であることを思い知らされた時期であった。

私が一人の営業担当者として一からメンテナンスができるよう取り組む、それが私に与えられた役割なのか、いや違う。では、メンバーから認められるためにはどうしたらいいのか、そんなことばかり考える日々を過ごしている中で、メンテナンスができない私に対する批判が徐々に蔓延しはじめていることを感じ始めていた。そんなある日、森所長が私に話をしたいと言ってきた。森所長は私が研修で営業所を訪問した際、唯一プラスの言葉をかけてくれた所長である。

話を聞いてみると、森所長は『いい会社にするために力を貸してください、私たちのことを客観的に見て、何処に問題があるのか、何を変えなければならないのか、変えるためにはどうしたらいいのかを教えてください』と言ってくれた。今回の面談で森所長は開口一番『厚樹さんはメンテナンスをする必要はありません、むしろしてはいけないと思っています。厚樹さんが夢野に来られたのは、メンテナンスをするためではないはずです。厚樹さんの力で夢野を変えてください。私も一緒にがんばります。』

私は、森所長のこの言葉に救われた。一人でもこんなふうに自分のことを見てくれている人が存在していることが心強かった。森所長の存在、森所長のこの言葉があったからこそ、自分自身が夢野に留まれたことは間違いない。今でもそう思っている。

この後、森所長が「夢野を変えてください」と言ってきた理由が見え始めてきた。このままでは夢野は本当に駄目になる。そう思えるとんでもないできごとが次から次へと発覚したのである。

著作:厚樹 重茂

続きは...

6.知れば知るほど不思議な実態(これで事故は起こらないのか?)

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