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2021/08/25

学ぶ姿勢と素直な心

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ある町の小さな道場での話

ある町の小さな道場での話です。
稽古を教える先生に話を聞いたところ、伸びる子は、第1に教える先生の顔をしっかり見ているそうです。いいかえれば、先生に心を向けています。伸びない子は、よそ見をしたり視線が下がっていたり、先生の顔を見ていません。

第2に、伸びる子は、自分が受ける指導だけでなく、他の学生が受ける指導もよく見ているそうです。伸びない子は、他の学生が受ける指導は自分に関係ない、と思っています。

第3に、伸びる子は、わからないことやできないことをそのままにせず、わかるまで、できるまで稽古(自己研鑽)します。伸びない子はわからないことやできないことを放置します。

第4に、伸びる子は自分の理解が正しいか確認をするためよく先生に質問をします。伸びない子は、自分の理解が正しいと信じ込んでいるようで、全く質問をしません。

第5に、伸びる子は、先生の心の状態を、身体の状態をよく見て真似をします。伸びない子は、先生の心の状態、身体の状態を全く見ず、自己流で稽古して真似をしません。

これらはすべて学ぶ姿勢の違いです。

世の中では“何を学ぶ”か、は教わりますが、“どのように学ぶか”は、意外に教えられてはおりません。しかし、このような学ぶ姿勢をもつ人が社会人となり、仕事をはじめて数年、数十年の月日が経つと、それぞれにどんな差が生まれるのかは、想像に難くありません。

学ぶ姿勢は建物でいうところの土台です。土台がしっかりしていれば、上に大きな建物が建っていても盤石です。土台が弱く、もろい状態であれば、上に大きな建物を支えることはできません。人生は平静な人生ばかりではありません。逆風や嵐が来ても盤石な土台をもつことで、荒波を乗り切る術を得ることができます。

学び方を教えることは、“何を学ぶか“の前に大切となる教育の第1歩ではないでしょうか。

 

究極の学ぶ姿勢「素直さ」

そしてもうひとつ、究極の学ぶ姿勢があります。それは「素直」であることです。これは年齢や性別、経験などは一切関係ありません。

「素直な人」とは、相手が伝えることを自分の考えや解釈ではなく、そのままを受け入れ、理解する姿勢を持つ人のことです。私はまわりにいる目上の方から、よく「素直さが大切だぞ」、「素直なやつは伸びる」と言われてきました。

それでは、なぜ素直さが大切なのでしょうか。
そのことにしっかり向き合ったことがありませんでした。これを機に少し考えてみたいとと思います。

「素直さ」とは、・・・

松下幸之助翁は「素直な心」を次のように定義されています。

「素直な心とは、寛容にして私心なき心、広く人の教えを受ける心、分を楽しむ心であります。また、静にして動、動にして静の働きのある心、真理に通ずる心」

 

「素直な心」は真理に通ずる心だとおっしゃっております。「真理」とは辞書によると
【いつどんなときにも変わることのない、正しい物事の筋道】とあります。「素直な心」をもつことで「正しい物事の筋道が見えてくる」ことにつながっていくのかもしれません。

「素直な心」を持つ人はどういう人でしょうか。

❶ 話に謙虚に耳を傾ける

❷ 私心を持たずに物事の事象をありのままに見る

❸ 謙虚に学ぶ姿勢をもっている

❹ 現状にとらわれることなく新たなものを吸収する

❺ 私心をはなれた態度、行動がとれる

 

「素直な心」を持つ人の学びにおいて下記の特長があるのではないでしょうか。

❶「話に謙虚に耳を傾ける」ことで、多くを学ぶことができる

❷「私心を持たずに物事の事象をありのままに見る」ことができるので、何が正しく、何が正しくないかといった区別をつけることができる

❸「謙虚に学ぶ姿勢をもつ」ことで、ものごとを前向きに吸収し続けることができる

❹「現状にとらわれることなく新たなものを素直に受け入れ、吸収できる」ので、様々な環境変化にも対応できる基本姿勢をもち、成長や順応することができる

❺「私心をはなれた態度、行動をとる」ので、常にものごとの原理原則や真理に向けた」視点で見ることができるので、物事の本質的な真理の追究やその解釈ができる

 

私たちは子供のころ、親に質問責めをしていました。それは素直に知りたいという欲求があったからだと思います。(NHK番組の)5歳のチコちゃんじゃないけれど、「それはなんで?」と子供に問われた時に答に詰まってしまった経験は誰にもあるのではないでしょうか。

「学ぶ姿勢」をもつということは「自ら学ぼうとする学習意欲」つまり「学ぶ力」をもっているということになります。その「学ぶ力」を持つことが成長する上でとても大切になります。

一方、「素直な心」をもつということは、「ものごとを正しく見る力」と「その解釈を正しくできる力」のように感じます。

「素直な心」をもつことと「学ぶ力」は、表裏一体のものだと思います。

「素直な心」で疑問を持ち、自ら知りたいと思う欲求が「学ぶ力」となって、「素直な心」で物事を正しく見て善悪の判断をもちながら主体的に学ぶ。そういった主体的な学びが物事の本質を見極められるようになり、視野、視座を高くしてくれるのだと思います。

常に学習意欲を持ち続け、どこまでも仕事の能力を磨き続けている人を「プロフェッショナルワーカー」と呼びます。この「プロフェッショナルワーカー」とは「子供が本能的になんで?と素直に感じ、その謎解きを行う」ことと、「素直な心」で物事をまっすぐに見てその「真理」をつかみ、解を解くことのできる力をもつ人のことだと思います。

常に高みを目指してチャレンジを行い、成長し続ける人、そしてこの原理原則を行動に移して物事の本質を見極め、期待に応え続けられる人が「プロフェッショナルワーカー」となっているのではないでしょうか。

(山田隆規)

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