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2019/09/04

営業マネジメントシリーズ
人材マネジメント

目次

 

人材マネジメントの中核は人材育成です。人材は「人財」とも表現されるように、企業にとっての大きな財産です。営業組織を預かるマネジャーにとっても人材育成・部下育成は大きな役割であり、重要度の高い仕事です。なぜなら、与えられた業績目標を達成することはマネジャー一人では不可能だからです。

また、人材育成ではメンバーのスキルや知識を向上させるだけではなく、社会人として成長させ、さらには次世代のリーダーを育んでいくことも組織の持続的成長には欠かせません。

しかし、実際には「重要性はわかっているけれども、やってもどうもうまくいかない」「自分もプレイングで、なかなか部下育成まで手が回らない」というケースも少なくないようです。

業績達成ともども責任の伴う困難な挑戦ですが、メンバーの成長はチーム力の向上でもあります。

また、メンバーが営業目標を達成していく姿を見ることは喜びにもつながります。今回は、チーム力の底上げに欠かせない人材育成および人材活用のポイントを解説します。

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人マネジメントは日々のコミュニケーションから

人マネジメントにとって重要な前提条件は、人と人との信頼関係づくりにあります。成功循環モデルでも関係性の向上を説いています。それらの出発点が日々のコミュニケーションです。
ここでは「ストローク」というキーワードを紹介します。一般的には水泳やテニス、ゴルフなどで耳にしますが、交流分析では「存在承認のメッセージ」という意味で用いられ、わたしたちにとって心の酸素のように必要とされています。

「おはよう、ありがとう、お疲れさま」などの日常の挨拶から「信頼できる、よくやったね」などの肯定的メッセージの交換が望ましいですが、「ダメだ、嫌いだ」などの否定的メッセージもストロークされない(無視)よりマシです。

コミュニケーションの総量が確保できてきたら質の向上をめざします。その際、ジョハリの窓のフレームに照らしてマネジャー自身そして、メンバー同士が「開放の窓」を広げていくことが大切です。そのためには、自己開示を行うと同時に知らない自分に気づき得るフィードバックし合うことで相互理解を促進しましょう。

特に、マネジャーの自他認知がズレていると「伝えたツモリ」「聞いてたツモリ」など意思疎通が捗らず、仕事はもちろん信頼関係を阻害する要因となるので気をつけましょう。

 

人材育成こそがチーム力向上の最大の鍵

「人は自ら成長する力がある」という考え方を信じた上で次のポイントを意識して取り組んでいきましょう。

  • 育成計画を立てる
    まず初めに、メンバーの成長イメージを共有することが重要です。いつまでに・どんな能力を・どのくらいまで高めるかという「育成計画」をメンバー個々に策定します。大事な点は、メンバー本人と話し合って決めていくことです。
  • 部下のキャリアプランを踏まえる
    キャリアプランとは、仕事(キャリアビジョン)と人生(ライフビジョン)の両面から実現したい働き方を描くことです。人生で望むライフビジョンと、仕事を通じて成し遂げたいキャリアビジョンはつながっています。したがって、ライフビジョンと結びつけて、キャリアビジョンを支援することが重要です。
  • 仕事の習熟レベルで関わり方を変える
    中堅やベテランであっても、新たな市場や顧客、販売方法に取り組む際は成熟度は低い状態です。業務に不慣れな段階では、「ティーチング」が必要となり、業務に慣れてきた以降は「コーチング」によって本人の自発的成長を促します。

以上のポイントをマネジメント行動に置き換えた次の6つのフレームをご紹介します。

  1. 目標設定
  2. 期中支援
  3. 業績評価・プロセス評価
  4. コーチング
  5. 営業同行・フィードバック
  6. モチベーション支援
  7. 能力向上支援

 

 

1.目標設定

評価の納得感と公平感は目標設定時に決まります。それを担保するためにスマートの法則があります。また、メンバーとのコミュニケーションでは以下の3つの原則を意識することが大切です。

 

第1原則 マネジャーの意思を毅然と伝える
上位方針にもとづく目標は十分検討して整理せず伝えると重要性が伝わらないばかりか、マネジャーの存在意義を疑われます。また、メンバーの反応によって軸がブレることなく、マネジャーとしての意思をわかりやすく伝えることは、メンバーとの信頼構築の土台となります。

第2原則 メンバーの見解を傾聴する
メンバーの意思を尊重して積極的に引き出す際には、メンバーの見解を傾聴します。このプロセスを経ることで、メンバーにとって目標が“自分事”となり、達成意欲が高まります。話を聴く時は話の腰を折らず、表面的な反応と感じた場合、深堀りして本音を引き出します。

第3原則 否定的な思考を前向きに変える
メンバーがネガティブな反応を示した際は、真意を聴き出します。そして、内容に応じてメンバー自身に考えさせながら、否定的な思考を前向きに変える有効な情報を提供します。それによって、目標に挑む意義をメンバー自身が実感し、結果として自己決定できるようにリードすることになります。

 

2.期中支援

マネジャーは業績目標達成のため、各メンバーに役割分担をして目標設定しています。マネジャーの役割は人を育てながら組織の業績目標を達成させることです。すなわち、期中におけるマネジャーとメンバーとの関わりが業績目標達成と成長実感をもたらし、納得感の高い評価を行う上で重要になります。

目標達成に向けた実行段階では、定期的に組織のミッションをふり返り、「全メンバーが目標達成に向けた施策を実行しているか」進捗状況を確認する必要があります。期中の関わりを積み重ねていくことで、目標達成に向けたメンバーの自立的行動や問題解決、そして一人ひとりの能力開発を支援することができるのです。

また、期中に生じる大きな環境変化に対しても適切な対応が求められます。必然性と公平性を担保し、目標設定を再検討する場合もあります。つまり、組織の業績目標を達成させるためには、環境変化への対応と並行して、一人ひとりの目標に対する達成状況を定期的に把握し、タイムリーなサポートを行うことが求められているのです。詳細は後述のコーチング、営業同行・フィードバックを参照してください。

 

3.業績評価・プロセス評価

納得感と公平感の高い評価をすることで、評価される人の高い満足感と業務遂行への意欲や能力を引き出すことができます。加えて、能力開発における気づきも得られます。このようなサイクルを回すとメンバーの成長と高い成果がもたらされ、チームの業績向上にもつながります。

また、業績評価だけに焦点を当てず、どのようなプロセスが成果に寄与したのか、あるいは至らなかったのかという着眼点も大切です。そうすることで、成果の再現性が高まり、改善課題の対応策が明らかになるのです。評価の際には次の留意点を意識してください。

①評価内容に興味をもつほど妥当性は上がる
②自分自身を正しく知れば妥当性も上がる
③評価に確信がもてる具体的事実を収集する
④判断基準の具体性・明確さが重要である
⑤親しい部下に対する評価ほど厳しく行う

なお、評価者にも「評価する」行為の中に陥りやすい落とし穴があります。それを避けるためには、下図の傾向がないか確認した上で、それぞれに応じた防止策を意識する必要があります。

評価は業績達成のマネジメントツールであり、部下育成のコミュニケーションツールでもあります。

メンバーの業績と育成の同時達成をめざすことを意識しましょう。詳細は後述するモチベーション支援・能力開発支援を参照ください。

 

4.コーチング

コーチングの語幹であるコーチ(Coach)の語源とは、ハンガリーのコチ地方で製造されていた「乗り合い馬車」に由来し、今日でも乗り物の類がコーチという名称で呼ばれています。乗り合い馬車は、大切な人々を現在地からその人が望む目的地まで送り届けることが目的であり、コーチングの本質を物語っています。

現在では、ある人が最大の成果を上げるために、その人の潜在能力を解放することを言います。コーチングとは、単なる知識や技術ではなく、人の持つ可能性を信じる人間観が本質です。

期中支援で見てきたようにメンバーが設定した目標や施策を具現化するために、マネジャーはメンバーごとの育成課題を見極めながら、必要なかかわりを行う必要があります。

そのかかわり方において特に重要になるのが、メンバー自身が深い気づきを得られるような内省支援です。この内省支援を形にしたのがコーチングになります。コーチングには、前提となる人間観、コーチに求められること、コーチングの3原則というものが存在します。マネジャーはコーチングを単に表面的なスキルとして捉えるのではなく、先に述べたベースとなる考えをしっかりと押さえておく必要があります。

 

コーチングとはメンバーに問いかけ、解決策を見つけられるよう促すことです。そこで、メンバーの力を引き出す手法としてGROWモデルで紹介します。

G:Goal(目的・目標)
メンバーのめざす状態を明確にします。例えば「クロージング力向上」なら「受注確率30%」「意思決定者面談10回」など数値化することです。数値化しにくい場合、自他評価の両方で判断できる客観的指標を設定する工夫が必要です。

R:Reality(現状)
現状の目標達成レベルを確認します。たとえば「受注率30% 」が目標なら「現状は何%なのか」「案件数はどのくらいあるか」などです。それによって目標とのギャップを明確にします。

O:Options(行動の選択肢)
次にギャップを埋めていく方法について考えます。「既にやっていることは?」「達成に向けたアイデアは?」など本人からできるだけ引き出すようにします。この際、現実的か、実行可能かなどの上司判断を挟まないことが重要です。

W:Will(自己決定)
目標達成の方法を引き出したら、どれを実行に移すか本人に決めさせます。「まずやりたいのはどれ?」などと投げかけ、こちらの考えを押し付けず、あくまで本人に選ばせることが主体性や持続的実行力を育みます。また、 GROWモデルは目標設定場面でも有効活用できます。

 

5.営業同行・フィードバック

前述したコーチングは、あらゆる場面で実施捗の重要局面で確実に前進させる効果が見込めます。もう1つは、メンバー育成のための同行で、3つのスタイルがあります。3つのスタイルとは、“オブザーブ同行”・“サポート同行”・“モデル同行”で、それぞれの説明は下図を確認してください。

 

営業同行とセットとなるのが同行後のフィードバックで、メンバーの成長はもちろんモチベーション向上にとっても非常に有効です。人は自身の行動を客観的に把握することが難しいものです。そこで、マネジャーがメンバーにとっての鏡になって現状の姿を映し出し、長所や短所を認識することを助けます。

それによって、メンバーは有能感や改善意欲を高めることが可能になります。この機会は同行後から間を空けないことが重要です。できれば商談メモなどをふり返りながら、客観的事実にもとづく課題を伝え、合意することは、成長実感と行動変容を促すチャンスです。

フィードバックの基本的な流れは、右図の通りメンバーの良い点を具体的に述べることから始めます。それによって、まずは長所に目を向け伸ばすという意識づけと同時に、その後の課題認識も前向きに受け止める効果があります。そして、気がかりな点についても具体的に述べた上で今後の改善課題(見解と理由)を説明し、最後にメンバーの見解を確認します。

 

その後、時間が許せば共有した課題認識に対する対応策なども検討しますが、次の訪問先など予定が詰まっている場合、別途スケジュールを調整し、話し合いを行います。その際は、前述したコーチングや後述するモチベーション支援、能力向上支援を参照してください。

 

6.モチベーション支援

マネジャーとしてメンバーを支援するためには、人がなぜそのように行動するかを知り、人の行動を深く洞察することが求められます。

まず、人の根源にある欲求を理解する上では、マズローの5段階欲求階層説が参考になります。

生理的欲求:生きる上で不可欠、根幹的な欲求
安全・安定欲求:安心な場や自己保存への欲求
社会的欲求:集団に帰属し、かかわりたい欲求
自我・自尊の欲求:他者から承認されたい欲求
自己実現欲求:なりたい自分、成長したい欲求

次に、それらの欲求がどのようなメカニズムによって動機づけられ、行動を起こすのかというプロセスを解明した期待理論を紹介します。

メンバーは目標達成する価値(意味)と期待確率(実現可能性)との掛け合わせで動機づけられます。そして、持てる能力や経験を発揮し、成果につながり、報酬(承認)を受けることで満足します。

それによって、欲求が更に高次化するとともに、能力向上(成長実感)が自信となり、期待確率も高まる好循環になります。

以上のことから、メンバーの動機づけは一律では捉えず、個人差があることを前提に働きかけることになります。具体的には、メンバー各人の根源的な欲求や働きがいなどを日頃から観察、対話することによってヤル気スイッチを探り、ストレッチした目標を与えた上に全力で支援し、成功体験と成長実感を促すことが求められます。

 

7.能力向上支援

メンバーの能力向上を支援する原則としては、通常のマネジメントと同様にPDCAサイクルを回すことが求められます。右図の通りメンバーと合意した育成計画【P】にもとづく育成支援【D】を行い、一定期間で評価【C】し、その課題解決策をフィードバック【A】します。

ただし、メンバーの習熟度は千差万別ですので、一人ひとりへのかかわり方には工夫が必要です。SL理論にもとづく育成方法を図表化しました。

第1段階)初めて行う業務に臨むと「自分にうまくできるだろうか」「できれば慣れ親しんだ仕事がいいな」という不安を持ちます。ここでの育成方法は指示・指導するティーチングです。

第2段階)ここからはメンバーの潜在能力を引き出すコーチングを活用します。ただし、まだこの段階では答(目標設定や業務の進め方)を暗示する説得的コーチングが有効です。

第3段階)業務に習熟し、それまで管理のもと業務遂行してきて窮屈感も出始め、自由に実力を発揮したい思いも芽生えてきます。ここでは、委任型コーチングにより自発的成長を促します。

第4段階)この段階では、自分の後継者として可能な限り委任します。放任ではないので定期的に報告を受け、委任型コーチングも行います。

 

まとめ

人材育成は長い時間が必要です。人の成長は直線ではなく、らせんを描くように上がっていくものと考え、粘り強く取り組んでいくことが大切です。期末・期初の面談はもとより、週次・月次・四半期といった節目を活かしてコーチングを実践し、メンバーの成長を促していきましょう。メンバー育成の場面は、そのほかにも営業同行、社内打合せ、会議や評価面談などあらゆるところにあります。そうした機会をうまく活用して、メンバーそれぞれの個性や価値観、ありたいキャリアプランなども考慮しながら根気よく人材育成に取り組んでください。チームの未来そして、会社の持続的成長に向けて。

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執筆者:米倉 達哉/シェルパワークス株式会社 代表取締役社長/1993年 大手旅行会社入社。企業・官公庁等の法人営業/2000年 ㈱パーソル総合研究所(旧:富士ゼロックス総合教育研究所)入社。法人営業、営業マネジャー。2008年より同社ヘルスケア事業の責任者/2016年 日本の中堅・中小企業の営業を変革するためにシェルパワークス㈱を設立し、代表取締役に就任


 

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