ハウス食品が描く「営業力強化加速」への第一歩

――マネジメント力を次のステージへ

成果を「個で出す営業」から、仕組みで「成果を再現できる組織」へ。
営業現場では、成果を上げたプレイヤーがマネジャーに昇格するケースが多いですが、そこで求められるのは“自ら動く力”ではなく“人を支え、成果を引き出す力”です。 ハウス食品株式会社様(以下、ハウス食品様)では、この構造的な課題に真正面から向き合い、マネジメントの資質を育成する取り組みを進めています。

ハウス食品様は長年培ってきた営業の知見を組織的な力へと昇華させるため、営業人材育成基盤の構築に着手してきました。そして人と仕組みの整備を経て、いま求められているのは“個々の営業力を引き出し結集させるマネジメント力”。

そんな状況下で開催となったのが、2025年11月に開催された営業本部全国所課長会議での基調講演とパネルディスカッションでした。
今回は、ハウス食品株式会社 営業本部 営業企画推進部 営業企画二課長の西山 直人様に詳しいお話を伺いました。

マネジメント強化への転換点

──ハウス食品様では営業組織の基盤を「人」「仕組み」で整備されてきたと伺っています。そしてから今 、“マネジメント力の強化”が問われるに至ったのはどういった経緯があったのでしょうか。

ハウス食品株式会社 営業本部 営業企画推進部 営業企画二課長 西山 直人様

西山さん
はい、これまで当社では営業人材の育成段階を再設計し、その基盤を基に再現性の高い成果を上げ続けるための組織連携を強化することで、営業組織の基盤を「人(育成)」「仕組み(プロセス定義)」両面で整備してきました。一方で、成果を持続的に生み出すためには、現場を率いるマネジャー自身が標準化された仕組みの理解を体内化し、それを巧く活かすことができるマネジメントのリテラシーを強化することが不可欠だと感じていました。つまり、営業組織を支える「人」「仕組み」、そしてそれらを機能させる「マネジメント」の三位一体の関係の中で、今まさにマネジメント力の強化が問われている状況だったのです。

──11月に開催された全国所課長会議で基調講演とパネルディスカッションを行ったのも、まさにその「マネジメント力強化」にドライブをかけるねらいがあったのでしょうか。

西山さん
おっしゃる通りです。今回の基調講演・パネルディスカッションは、まさに「マネジメント力強化」のドライブを掛ける契機となりました。この全国所課長会議では外部講師による基調講演と、社内リーダーによるパネルディスカッションを実施しました。テーマは「支援と設計」です。プレイヤーからマネジャーへと役割が変わる転換点で必要となる支援・判断・育成のあり方について、外部講師の理論と実践の両面から捉え直す試みでした。事前にマネジャー層には著書『セールスマネジメントモデル』を課題図書として読み込んでもらい、この書籍で示された“成果を再現できるマネジメント”の理論を土台に議論を深めたのです。

1年かけて築いた「育成の土台」

──御社では約1年前から、営業人材育成のためのコンピテンシーと成熟度モデルの構築に着手されたそうですね。それはどのような取り組みだったのか、詳しく教えてください。

西山さん
はい、まず約1年前に営業人材の育成基盤となるコンピテンシーと成熟度モデルの構築に着手しました。個人の成長段階や行動指標を整理し、営業組織全体で“育成を共通の言葉で語れる”状態をつくったのです。続いて、日常の部下育成指導に「イネーブルメント(営業現場の実行支援)」の概念を導入し、仕組み面での支援体制も整備しました。当時実施したWilson Learning社の「価値創造イネーブルメント」では、“挑戦を支援する文化づくり”をテーマに掲げていましたが、今回はそこから一歩進み、マネジメントそのものの資質を再構築する段階へと入っています。“営業力を総合結集し、発揮する現場”をつくるための理論的・実践的アプローチが、いよいよ始まっているところです。こうして「人」と「仕組み」に手を打った上で、次の焦点として「マネジメント力」の強化に注力するフェーズに入ったのです。

所課長会議:基調講演とパネルディスカッションの狙い

──改めて、11月の全国所課長会議で実施した基調講演とパネルディスカッションの狙いをお聞かせください。

西山さん
今回の狙いは、外部の視点を取り入れながら“営業組織におけるマネジメントの在り方”を見つめ直すことにありました。前回のイネーブルメント施策では“挑戦を支援する文化づくり”に焦点を当てましたが、今回のマネジメント強化のテーマはまさに「マネジメントのあり方」そのものを再構築し、中間管理職層全員が共通の視野・視座を持った上でチームを導く力を磨くことにあります。

基調講演では、事前に読んでもらった書籍の理論を土台に、現場で実際に起きている「判断」「支援」「育成」の課題を重ね合わせながら、自社の営業組織を俯瞰した視点でマネジメントの在り方を再考しました。 続くパネルディスカッションでは、マネジャーたちが課題図書を通して感じた現場の悩みや疑問を率直に共有し、講師がそれに答える形式で進行しました。
外部の視点を通じて、自社の育成文化とマネジメントの課題を俯瞰し、「これからのマネジャー像」に求められる役割意識を再啓発することで、組織運営力を高めるきっかけとすることがねらいです。マネジメントの変遷を辿りながら理論と実践の往復することで、「プレイヤーからマネジャーへの壁」を組織全体で乗り越えるヒントを掴む場にもなりました。実際、参加者へのアンケートの結果からは、マネジャー層が「人や組織」に関する高い関心を持っていると同時に、それに主体的に取り組みたいという意欲があることも示されています。

当日の様子(PRTimes 「『セールスマネジメントモデル』著者、ハウス食品の全国会議に登壇──大手企業が採用した“営業マネジメント理論”」より)

パネルディスカッションで交わされた“現場目線”の問いと示唆

──パネルディスカッションでは、現場目線の具体的な問いもいくつか挙がったとうかがいました。印象的だった問いや講師からの示唆について教えてください。

西山さん
はい、いくつか重要な問いが出ましたので、その一部をご紹介します。一つ目は、戦略と現場の理解をどう一致させるかという問いです。あるマネジャーからは、「戦略の意図は理解しているが、現場の状況や顧客特性によってそのままでは機能しないと感じることがある。」という声が挙がりました。これに対して講師からは、戦略が現場で実行されない背景には、「上位方針の意図と現場での体感の間に差分がある」ことが多いと指摘がありました。マネジャーはその橋渡し役として、自部門の市場特性に合わせて“チーム戦略”に再設計し、現場での実行まで責任を持つ存在になると良い、という示唆でした。

もう一つは、支援と管理のバランスをどう取るべきかという問いです。あるマネジャーから「メンバーを支援したい気持ちと、自律的に任せたい気持ちのバランスをどのように取るべきか悩むことがある」という悩みが共有され、講師からは「支援と任せる範囲は、感覚ではなく“基準”で整理できる」とのアドバイスがありました。成熟度モデルのような共通指標を用いれば「この段階のメンバーにはどの程度の支援が適切か」が明確になり、基準に基づいた支援はメンバーの成長を促し、組織全体の一貫性も高まるという内容です。

これらの問いはそれぞれ個別の悩みではありますが、まさにマネジャーとして日々直面するテーマの本質を映し出しています。結果として、「仕組み」「判断」「支援」「育成」といった今後強化すべき領域とも接点を持つ論点が浮かび上がりました。

営業力強化の加速に向けて

──イベント後のアンケートでは、現場マネジメントに関してどのような課題や示唆が得られたのでしょうか?

西山さん
事後アンケートのコメントからも、多くの気づきが得られました。まず、多くのマネジャーが「若手比率の高い組織構造」に言及しています。例えば「現状の営業メンバーの構成は、求められる役割が“支援マネジメント”にあると感じる。若手やキャリア採用が多く、育成のために担当企業業務への関与度が高くなる」との声が寄せられました。支援と任せるバランスが難しく、“境目”が曖昧になりがちな現場のリアルが浮き彫りになっています。

次に、マネジメントの再現性に対する問題意識も多く見られました。「一方的な指示ばかりでもダメですし、現場任せだけでもダメ。自分でも塩梅を意識しながら、質を高めていきたいと思います」というコメントが象徴的ですが、属人化しやすい「判断」「支援」「育成」の基準を、できるだけ揃えていく必要性が示されています。

また、若手増加に伴う組織運営の難しさを指摘する声もありました。「今メンバーに20代が多くいることに有難みを感じ、属人的な営業ではなく組織営業ができるようにチャレンジして参ります」との声もあり、個々の経験に依存しない“組織全体の育成力”の必要性が改めて浮かび上がりました。

成熟度モデル構築のための成熟度マップ

こうした声を受け、1年前から取り組んできた「成熟度モデル」の意義も再確認されました。もともと成熟度モデルは個々の育成と成長を支援するための共通言語として設計したものですが、今回の気づきを踏まえると、支援・判断・育成といったマネジメント基準として活用してこそ、より大きな効果を発揮する段階に来ていることが改めて明確になったのです。つまり、成熟度モデルは完成形ではなく、育成とマネジメントをつなぐ“土台”そのものであり、営業力強化を加速するための鍵だと言えます。

成熟度モデルとの接続──「人が育つ仕組み」の上に「チームを牽引するエネルギー」を

──今後、その成熟度モデルをどのようにマネジメントに活かしていくお考えですか?

西山さん
現在、この成熟度モデルは、個人の成長を支援するための共通言語として機能しています。今後はそれを、マネジメントが部下を支援・判断する際の基準軸としても活用していきます。つまり、成熟度モデルは終点ではなく、マネジメント力強化を支えるベースになるということです。

私たちハウス食品のこれから

──来期以降、マネジメント力強化に向けてどのような展開を予定されていますか?

西山さん
当社では来期、マネジメント力強化に向けた取り組みを順次展開していく予定です。
“判断できる現場”を実現するために、中長期の視野、俯瞰的な視座で自ら戦略を策定し、能動的に実行に移せる力を養うことをゴールとしています。当社の挑戦は、マネジメントの進化を通じて「営業が変わる」ことを証明しようとしているんです。

まとめ──チームを束ねるだけでなく、牽引し、花開かせるマネジャーへ

営業は、時代とともに変化します。
だからこそ、育成もまた進化し続けなければなりません。
人材育成と仕組みづくりで整えた土台の上に、これからは「能動的な自主創造・行動の文化」を育てていく。
ハウス食品様のマネジメント強化は、単なる研修や制度ではなく、“自分達で決めたことを正解にしていける現場”をつくる挑戦です。
その歩みは、リーディングカンパニーとしての責任と誇りを示しています。
ハウス食品様の挑戦は、これからも深化を続けていきます。