2022.10.06 (更新日:2024.04.03)

営業戦略

仮説検証の考え方や手順について!ポイント・注意点まで詳しく解説

仮説検証とは、実験や観察を通してデータ収集をし、予測した仮説の真偽を確かめることです。事業立案や商品企画の際などでも活用される考え方であり、ビジネスをする上でとても活用範囲の広い考え方と言えます。

仮説検証がしっかり行われることで、仕事のスピード感が高まるだけでなく、課題の精度をより高めることも可能です。
本記事では、仮説検証に関する基本的な考え方や手順についてご紹介します。仮説検証をする際のポイントや気を付けたい注意点も詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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仮説検証とは

仮説検証とは、記事の冒頭でも解説したとおり、予測した物事や状況の真偽を確認する思考プロセスのことです。仮説と検証を繰り返すPDCAサイクルを回すことで、仮説の精度を高め、高品質の製品やサービスを生み出すことができます。

仮説検証を行う際には仮説思考に基づき検証作業を実施します。仕事の能率が高い人や仕事とプライベートをしっかりと分けられている人の共通点としてこの仮説思考のスキルの高さが挙げられます。

仮説思考が高い人の特徴は、物事を先回りして考えるスキルに長けていることです。情報やデータの収集はもちろん重要ですが、限られた情報量から仮のゴール(答え)を作り出し、そのゴールから逆算するように根拠を探していきます。このように仮説思考は、逆算思考とも呼べる考え方だと言えるでしょう。

これまで、仮説思考はクライアントの問題解決をするためにコンサルタントが身につけるべきスキルとされてきました。しかし、これからの時代ではコンサルタントに限らず、すべてのビジネスパーソンが身につけておくべきスキルです

さまざまな分野でDX化が進むなか、企業やビジネスを取り巻く環境は日々一刻と変化しています。そのような多様な変化に対応していくためには、少し先の未来の状況に対する仮説を立て、主体的に動いていく人材が求められているのです。スピード感を持って意思決定できる個人がこれからの激動の時代を生き残っていくと言っても過言ではありません。

関連記事:仮説思考とは?効率的に高いアウトプットを出すための5つのコツとトレーニング方法を徹底解説!

仮説検証の目的

仮説検証は、企画や戦略立案、そして営業商談まで幅広いビジネス分野で活用される考え方です。仮説を立てずに行き当たりばったりで行動してしまうと、大きな損失を生み出し、貴重な時間を無駄にしてしまいかねません

そのようなことがないように、仮説思考のスキルを日々磨いていく必要があります。仮説検証を成功させるためには、何度も繰り返し検証作業を実施することが重要です。地味な作業であっても、何度も検証を繰り返して仮説の精度を高めていきましょう。

仮説検証の最大のゴールは、顧客の満足度を高めることです。商品開発であればより質が高く、コストパフォーマンスのよい商品を作ること、営業商談であれば顧客の目的や要望に合わせた商品やサービスを提案することなどが挙げられるでしょう。

このように、仮説検証を成功させることはビジネスを成功させることにもつながります。ビジネスが成功する確率を上げるためにも仮説検証は重要な工程だと言えます

仮説検証が必要な理由

ここからは、仮説検証の重要性を踏まえた上で、ビジネスにおいて仮説検証が必要な理由について見ていきましょう。仮説検証が必要である理由として「PDCAサイクルのスピード感を上げること」、そして「課題への精度を高めること」が挙げられます

スピード感を上げるため

仕事が早い人や決断力のある人であればあるほど、無意識に仮説検証を行っているケースが少なくありません。つまり、事前に仮説を立てた上で行動することで無駄な作業や仕事を削減することができ、結果的に仕事が早く終わるというわけです。

対象物が複雑になればなるほど、仮説検証のスキルが非常に役立ちます。難しいマーケティング戦略や事業戦略などを考える上でも、この仮説検証を活用することで労力を最小限に抑えることが可能です。

課題への精度を高めるため

少ない情報量で仮説を立てる仮説検証は、確かにスピード感を持って対応できますが、分析の精度がおろそかになってしまうのではないかと心配される方も多いかもしれません。しかし、短期間に仮説を立てることで、何度も繰り返し検証作業を行うことができるため、分析精度をより高めることができるのです。

仮説思考のスキルが高くなればなるほど、必要な情報のみを収集できるようになり、仕事の質を自然と高めることができます。さらに、少ない情報から物事を考察することを繰り返すことで、問題解決のスキルも高めることができます。

関連記事:仮説立案と仮説検証の手順とは?提案力に差をつける2大スキルについて解説

仮説検証のフロー(流れ)

仮説を設定し、検証する流れには諸説あります。ここでは、仮説検証を行う流れとして以下の5つのステップについて詳しく見ていきましょう。

ステップ1:現状を把握し課題を洗い出す

まずは、目の前の状態や状況を客観的に観察、分析を行います。問題解決のためには、現状を把握することが重要です観察を通して、現在抱えている課題を洗い出していきましょう。課題の裏にある背景についてもしっかりと考察することで、仮説を立てる際に非常に役に立ちます。

万が一現状を把握するためにデータが必要な場合は、この段階である程度収集することも大切です。特に商品企画や営業商談などは、ターゲットのリサーチはもちろん市場調査も併せて行う必要があります。

ステップ2:仮説を設定する

現状の分析が完了したら、仮説を設定します。状況の全体像をしっかりと把握し、論理的思考で漏れなく、そして重複することなく物事を整理していくのです。

仮説を立てる上で重要なのが、観察や実験によって得た真偽を判断できるような仮説を立てることです。真偽が検証できる仮説でなければ、ただ予想しただけという結果となってしまいますので、注意が必要です。

さらに、仮説はただ設定をするだけでなく、その後何度も検証を繰り返すことが重要です。そのため、無理のない範囲で検証作業が行えるかどうかも考慮してください。

ステップ3:実験や観察によるデータを収集する

次に、仮説を実証するために必要なデータ収集を行っていきましょう仮説を設定する際にリサーチした内容よりもより踏み込んだデータ収集を行わなければ、仮説を検証することは困難です。短時間で量的にも質的にも優れた情報収集ができるよう、アンテナを高く張って情報収集を行ってください。

ステップ4:仮説を検証し改善を行う

収集したデータに基づき、立てた仮説を検証していきます。実際に試してみないと検証できない場合は、実践的に検証を行うことが大切です。検証を行いながら、改善すべきポイントを洗い出していきます仮説が検証結果と異なっていた場合は修正を行い、より検証結果に基づいた仮説を考え直していきましょう

ステップ1から4までの仮説検証の流れを「仮説検証サイクル」と言います。この4つのステップを1サイクルとして捉え、検証作業を繰り返し進めていくのです。

ステップ5:検証結果や事例を全社に展開し、動きやすい環境を作る

検証結果や事例を部署や社内に共有し、自分の立てた仮説に問題がないかをチェックしてもらいましょう。フィードバックをもらうことで、さらなる改善点が見つかるかもしれません。

第三者の意見をもらうことは仮説検証を行う上でとても大切な工程です。煮詰まってしまったタイミングやある程度精度が高まった時期にアドバイスをもらうことを忘れないようにしてください。

仮説と検証を繰り返し続けていく

仮説の精度を高めるためには、仮説と検証を繰り返し続けていくことが重要です。仮説検証のサイクルを繰り返すことで、初期仮説よりも格段に現状の真偽に合わせた仮説を生み出すことができます。

検証結果が想像していたものと異なってしまっても、決して一喜一憂しないことが大切です。はじめから100%正しい仮説を立てることは不可能に近いと考えてください。初期段階で70%前後の精度の仮説を立てられていれば十分と考えることで、少しでもストレスなく仮説検証プロセスを繰り返していけるはずです。

仮説検証で活用できるフレームワーク

フレームワークとは、日本語に直訳すると「枠組み」という意味ですが、ビジネスにおけるフレームワークとは、あらゆるシーンで共通して用いることのできる考え方や思考の仕組みのことを指します。

仮説検証において活用できるフレームワークとして「MVP」「ストーリーボード」があります

MVP

MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)とは、Minimum Viable Productの略で、必要最低限の機能という意味を持ちます

完成された製品やサービスではなく、顧客が必要とする必要最低限の機能を搭載した状態で提供される商品やサービスのことです。近年は、新規プロダクトを開発する際や新規事業のスタートアップなどが、このMVPを積極的に採用している傾向があります。

このMVPを行う上で重要なのが「仮説検証」の実行です。必要最低限の機能だけを搭載した試作品をベータ版としてリリースすることにより、本当に必要な機能を把握し、改善や修正を行います。ユーザーが求めるニーズはもちろん、現状の課題などを把握することでよりよい商品やサービス開発につながるのです。

MVPを行うメリットとして、「コストを抑えながら検証作業ができること」「顧客ニーズを把握できること」、そして「よりスピード感を持って商品開発ができること」が挙げられます

ストーリーボード

ストーリーボードとは、商品やサービスの完成予想図のことです。製品やサービスを利用するユーザー体験をイラストや画像を用いることでよりイメージしやすくなり、仮説検証をする際に非常に役立ちます。

ストーリーボードを作成していくなかで、商品やサービスが抱える問題や課題が浮き彫りになり、仮説や検証作業内容をはっきりさせることが可能です。個人の頭の中で展開していた内容を可視化することで、第三者に伝えやすくなるというメリットもあります。

いくら正しい仮説であっても、その内容が相手に伝わらなければ意味がありません。ストーリーボードでは、文章やテキストでは伝わりにくいイメージを共有する際に非常に役立つフレームワークなのです。

仮説検証を行う上で気をつけるべきポイント

仮説検証を成功させるため、そしてより精度の高い仮説を立てるためには、いくつか気をつけなければならないポイントがあります。これから仮説検証を行う方は次の3つの注意点を念頭に置いておきましょう

必要以上に情報を収集しすぎない

仮説検証を行う上でデータ収集は欠かせません。収集したデータに基づいて仮説を立てて、検証作業を繰り返していくからです。しかし、集めたデータすべてが検証に役立つわけではありません。

ほとんどの情報は検証作業に必要ないと考えても過言ではありません。効率よく検証作業を行うためにも必要以上に情報収集しすぎないように注意が必要です。

検証に必要なデータとは、ネットで検索して収集できるようなありふれたデータではありません。顧客や社内ヒアリングで得た情報や仮説に基づき分析した財務情報など、自分の力で収集したデータが最も信用できると考えてください

間違えることを恐れずに進める

仮説検証を行う際に重要なのが、間違えることを恐れずに行動し続けることです。はじめから間違えないように仮説を立てようとすればするほど心理的なハードルが高くなるため、行動力や実行力、そして決断力が鈍ってしまいます。初期の仮説を立てる際に、間違いのない定義を打ち出すことは不可能に近いと考えましょう。

仮説はあくまでも仮説であることをしっかりと認識することが、スピード感のある仮説検証を進めるために重要なポイントです。間違っても大丈夫だという意識改革を行うことから始めてください。

思い込みを排除し客観的に判断する

仮説検証をする際は、主観や思い込みを排除し、客観的に物事を判断することが重要です。仮説検証をする際は、収集したデータをもとに論理的思考で検証を進めるべきですが、場合によっては過去の経験や私情、さらには思い込みで判断してしまうこともあるかもしれません。

しかし、自分の固定概念などに執着してしまうことで、正しい検証ができなくなる可能性がありますので、十分に注意してください。自分だけで判断するのではなく、必ず第三者の意見に耳を傾けることが正確な検証を行う上で非常に大切と覚えておきましょう。

仮説ありきで調査を進める

仮説に関連しない調査を進めるのは時間の無駄です。目隠しをした状態でゴール地点に向かっているのと同然です。作業効率が悪いだけでなく、作業のゴールが見えないため、いつまで経っても検証作業を終えることができなくなります。

精度の高い仮説を立てようと奮闘するあまり、調査が進まないというケースも少なくありませんこの場合、検証作業に必要以上の時間を要してしまいます。仮説が立てられないとお困りの場合は、ざっくりとした内容で構わないのでざっくりとした仮説を立てて、検証作業を進めていきましょう。この作業を「Quick & Dirty」と言います。

検証作業をするなかで、課題や問題点が炙り出される可能性が大いにあります。仮説検証を行う際は、必ず仮説ありきで調査を進めるように心がけてください。

考えること・行動することをやめない

ビジネスシーンにおいて基本的なスキルである「ロジカルシンキング(論理的思考)」では、行動する前にしっかりと考察して考えることが求められます。もちろん、今回ご紹介している仮説検証を行う上でもロジカルシンキングのスキルが求められますが、考えすぎるあまり行動に移せなければ大きな弊害が生じかねません。

仮説検証をする際は、考えることと行動することの適度なバランスを取ることを大切にしてください。特に、仮説検証に慣れていない方の場合は、初期仮説を立てることに労力を費やしてしまいがちです。仮説思考のスキルをつけるためには、初期仮説を立て、スピード感を持って行動に移すことが必要不可欠だと言えます

フットワークの軽い人はそうでない人に比べて仮説検証のスピードが数倍速くなるため、結果として正確でより内容の深い仮説を立てられる可能性が高いです。

仮説を高めるために意識すること

仮説検証の精度を高めるためには、仮説思考力を高める必要があります。仮説思考力をつけるために意識すべきポイントは次の通りです。

仮説を立てて物事を考える習慣をつける

ビジネスシーンではもちろんのこと、日常生活のシーンにおいても、あらゆる物事に対する仮説を立てて、考える習慣をつけることが大切です

仮説を立てて物事を考えるトレーニングとしておすすめなのが、ネットニュースや新聞の記事に対して仮説を立てる方法です。ニュース記事をチェックする際に「なぜそのような出来事や事件が起こったのか、そのことから今後どのような影響が考えられるのか」を考えながら、自分なりの仮説を立ててみてください。

考えた仮説をそのまま仮説で終わらせるのではなく、実際に検証作業を行うことも大切です。時事ニュースであれば、ネット検索をすることで情報収集ができるでしょう。

因果関係について掘り下げて物事を正しく捉える

論理的思考で物事を考える上でとても大切なのが、物事の因果関係を正確に捉えることです。仮説思考に慣れていないと、結論ファーストで物事を考えることができずに困惑してしまう方も少なくありません。慣れないうちはなんとなくでも構いませんので、仮説を立てる努力が大切です。

仮説検証に慣れないうちはSo What?(だから何?)Why So?(なぜそうなのか?)という2つの思考方法を常に意識してください。この2つの思考を繰り返すことで、物事の全体像問題点、さらには因果関係を把握することができるだけでなく、物事をより深く考える習慣も身につきます

仮説に対するフィードバックを受ける

仮説を立てた際は、自分一人で考察や検証をするのではなく、必ず第三者からのフィードバックを受けることが大切です。フィードバックを受けることで、自分では気づけなかった問題点をはじめ、見落としてしまっていた問題解決のヒントを見つけることができます。

さらに、フィードバックを受けることで、自分の思考のクセを修正できるだけでなく、論理的思考力を向上させるきっかけにもなります

仮説検証を進める際は、検証期間中にどれだけ多くの学びを得られるかが重要なポイントです。そのため、同僚や上司、そして顧客からの意見をしっかりと受け入れ、仮説の精度を高くすることを優先してください。

表現力を磨く

仮説思考力を高めるためには、論理的思考や行動力以外にも、表現力が欠かせません

仮説を文章やテキストにする際に、わかりやすく相手に伝わりやすい表現ができるかどうかが重要です。表現力を磨くことで、より精度の高い仮説検証を行うことができますし、さらには組織内やクライアントにも仮説の内容を共有することができるでしょう。

まとめ

本記事では、仮説検証に関する基本的な考え方や手順について詳しくご紹介しました。仮説検証を行う際は、正しい手順で行うこと、そして注意すべきポイントをしっかりと意識してください。そして、仮説の提唱と検証作業を繰り返し行って、仮説の精度を高めていくことをおすすめします

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