2022.06.28 (更新日:2024.04.02)

マネジメントノウハウ

営業プロセスマネジメントとは?課題を明確にし確実に目標を達成するマネジメント術を解説(図解あり)

営業活動とは、お客様と共にプロセスを前に進める活動ともいえます。

営業の目標を達成しようとすれば、必ずお客様が納得したうえで、自社製品・サービスの導入を意思決定していただかなくてはなりません。当たり前ですが、この意思決定をいただくためには、そこに至るまでの道のりをお客様とどのように進めていくのか、その過程が重要になります。

営業プロセスマネジメントとは

営業組織は結果ばかりに目が向きがちですが、結果だけに目を向けていても狙った成果にはつながらないことは明白です。そこで、営業マネージャーは、自チームの営業活動についてプロセスを見える化し、成果につながる可能性が高い行動を迅速・確実に実行させることで、限られた時間の中で、最大の成果を出すことをマネジメントしていかなければなりません。それが営業プロセスマネジメントです。

営業プロセスとは?

営業活動は、お客様に製品・サービスを紹介して購入していただくまで、いくつものプロセスを踏んでいきます。これを営業プロセスと呼びます。成果を出している優秀な営業パーソンはこの営業プロセスの理解がとても優れています。というのも、製品・サービスの購入に至るまでには、見込み顧客が仕様や価格、メリットなどについて納得していく必要があり、その理解を得るまでのプロセスを営業担当者とお客様で共有する必要があるからです。

営業プロセスマネジメントを導入するべき組織とは

基本的に営業プロセスマネジメントは、どの企業においても一定の効果を収めますが、特にその必要性が高い組織があります。こうした組織ではどんな課題が生じているのかを押さえておきましょう。自社における営業状況と比較して、導入の必要性が高いかどうかを判断しましょう。

営業活動が属人化している

営業活動が属人化している、つまり営業担当者個人の能力や経験に頼り、それぞれに独自の営業手法が存在している組織ではマネジメントが必要です。たとえ、会社やチームとして統一された営業手法を設けているとしても、それが現場では実践されていなかったり、検証する仕組みがなかったりする企業についても同じです。さらには、チームが同じ手法を採っているとしても、明らかにメンバーによる実績に大きな差が出ている場合も当てはまります。ここでの問題は、個人によって手法や成績に違いが出ているということです。営業活動を安定させるためには、手法の標準化を行い成績についてもバラツキをなくすことが求められます。

営業プロセスマネジメントを実践することで、チームが皆同じ手法や流れで営業活動を進めていくことができますし、その検証もSFAツールなどを通して実施できます。大まかな流れだけでなく具体的な行動内容や手法についても標準化しますので、成績の差が縮まり安定した成約率を保てるようになります。

営業マネジメントが属人化している

ここで注意すべきなのは、プロセスや手法についてはきちんと統一化されているものの、マネジメント手法については属人化されているという点です。つまり、マネージャーがメンバーの進捗状況の確認や目標達成率のチェックをする時に、自分の経験や感性で判断してしまうのです。これでは営業プロセス自体は良いものとなっているのに、管理や分析、検証のシステムが追い付いていきません。マネジメントそのものについても、標準化されたフローで進められるようにすべきなのです。

営業担当者の育成が進まない

新入社員が多い、また経験はあるものの、あまり効率が上がっていかない社員が多いといったケースでは、育成がうまく行っていない可能性が高いです。こうした問題が見られる組織についても営業プロセスマネジメントの導入が急がれます。こうした課題は往々にしてメンバー1人1人の目標達成率や手法の検証と分析がうまく行っていません。効率が悪い原因、もしくは進歩させるべきポイントが見えてこないため成長が遅れているのです。

営業プロセスマネジメントを導入することで、それぞれのプロセスにおいて営業担当者がどんな動きをしていて、どのくらいの目標達成率となっているかをすぐに把握できます。また、今そして次に何をすべきかが可視化されていますので、教育担当もシンプルに研修をすることが可能となります。

営業組織におけるプロセスマネジメントのメリット

営業プロセスを明確にしてマネジメントを実践することで得られるメリットはたくさんあります。そのいくつかを取り上げます。自社として伸ばしていきたい点、改善しなければならない点が合致するようなら、そのメリットを生かして営業活動の質を向上できるでしょう。

目標達成の確度を高めることができる

営業プロセスを見える化することによって、それぞれの過程で達成すべき目標もはっきりとします。これは最終的な成約ということだけでなく、細分化された目標もしくは短期的な目標を持てることを意味します。たとえば、テレアポ獲得数や商談数、商談トータル時間、資料請求や見積もり請求数、クロージング数などです。いきなりゴールを目指すというよりも、ステップを一つずつ踏んでいく地に足のついた営業活動ができるわけです。これにより着実に目標を達成していくことができます。

また、SFA活用によって、それぞれのステップで目標達成率を確認していきますので、どこに弱点があるのかも発見できます。その改善に力を入れることによって、後のステップにも良い影響が出て全体としての成果率が向上することにもつながります。

営業活動のボトルネック(課題)を発見できる

営業プロセスマネジメントの大きなメリットの一つは、ボトルネック、つまり課題の発見がしやすくなるということです。すべてのプロセスが可視化されますので、交渉が失敗するケースでは、どの段階でつまずくことが多いのかといったデータを取りやすくなります。契約件数自体は上がっているとしても、成約までの時間を短縮したい場合は、それぞれのステップにかかる時間を測ることで効率を下げている部分を確認することもできます。

その上で、課題を解決するための具体的な策を検討し、障害となっている要素を排除する方法を考えていきます。こうして、チームまた個人としてパフォーマンス向上のためのPDCAを回せるようになるわけです。

安定した営業成績を生み出すことができる

営業プロセスマネジメントの効果は、手法の標準化が図れるという点に出てきます。営業担当者個人や商材、時期によって大きな成果の差が生まれず、安定した営業成績を生み出せるのです。こうしたメリットは、売上予測の精度を上げます。また、将来的にマーケットや商材に変化が生じて、プロセスやツールを変える必要が出てきても、大きな業績低下を経験せずに済みます。業界によっては、営業パーソンの入れ替わりが大きいことがあります。属人化された組織では、人によって会社としての業績が左右されてしまいますが、営業プロセスマネジメントがしっかりとできていれば問題ありません。

効率的な人材育成ができる

営業プロセスマネジメントで行うことの一つに、フェイズごとに営業活動を分類し、誰もが理解できる形に示すという点があります。さらに、それぞれのフェイズに移行率や目標達成率などを設定します。これらのデータと実際の営業活動や行動量を分析することで、それぞれの営業担当者の課題が見えてきます。

また、営業プロセスを作成する際には、成績の良い営業担当者が実践している流れや行動を落とし込んでいきます。こうして完成した営業プロセスは、いわば成果が実証済みの質の高いものとなります。これを新人にも適用することで、経験が少ない人でも洗練された営業プロセスを踏めるようになります。

営業プロセスマネジメントの手順

営業プロセスマネジメントのメリットを理解し、自社でも導入する場合、どのような手順が必要でしょうか。本質的な点を理解して、自社のニーズに合わせて営業プロセスを組んでいくようにしましょう。

営業プロセスをデザインする

一般的なBtoB営業活動をモデル化すると概ねこのような流れになるのではないでしょうか。

先ずは、自社が関係性を深めたい商談のありそうなお客様を「ターゲティング(選択)」します。

次に、お客様を取り巻く状況から抱えているであろうと推察する課題について「仮説立案」します。

そのうえで、そのお客様と進むべき「ゴール」を設定し、そのゴールから逆算した最適な道筋を「顧客戦略シナリオ立案」として策定します。

そして、そのお客様にご満足いただけるような精度の高い「面談」を繰り返し進めていきます。

ただし、この営業プロセスは業界や企業特性によって少しずつ異なるため、具体的には自社オリジナルの標準プロセスを設計する必要があります。

お客様の購買プロセスを整理する

自社オリジナルの標準プロセスを設計するには、自社のお客様がどのような購買プロセスを経て採用に至るのかを見える化する必要があります。

お客様の購買プロセスを設計する

先ずは、お客様が自社商品を購入するまでのプロセスを設計していきます。その際の注意点は、どうしても自社都合で物事を考えてしまいがちになることです。お客様の立場になってみて、どのような購買プロセスをたどるのかを議論して決めていかなければなりません。

お客様の期待と心配事を抽出する

次に、購買プロセスの段階ごとにお客様はどのような期待、もしくは心配事を感じているのかについても明確にしていきます。特に、新規の取引先や取引歴が浅い先は、お客様の心配事を一つずつ解消していかなければプロセスが前に進まないので重要になります。したがって、この心配事をできるだけお客様の立場になってリアルに描けるかどうかがポイントになります。

自社の営業プロセスをデザインする

そして、お客様の購買プロセスと同期する形で自社の営業プロセスを設定します。購買プロセスと営業プロセスは相互に影響しながら進みます。
営業担当者としての活動を考えるときには、常にお客様が納得して次のプロセスへ進んでよいと感じるために期待に応える活動を行うことが求められます。その活動がお客様の満足を生み、ひいては自社の競争力向上につながるのです。
営業プロセスには、誰がみてもステージが進展したと客観的にわかる段階がいくつかあり、これを「フェイズ」と呼びます。

フェイズの定義を明確にする

このフェイズはプロセスマネジメントをするうえで非常に重要な要素になります。このフェイズの解釈が人によって異なると、マネージャーはフェイズごとの案件保有量がわからなくなりますし、売上見込もズレることになりかねません。そこで、フェイズを全員がブレなく同じ認識を持つためにも「定義」が大事になります。

フェイズのゴールを定義する

そして、次のフェイズに進んでもよいかどうかを正しく判断するために、フェイズごとの「ゴール」も決めておきます。このゴールを明確に設定することで、人による感覚的な判断のズレをなくします。

さらに、フェイズごとの「お客様期待と心配事」が明確になれば、その内容を踏まえてお客様が納得してこの営業担当者とプロセスを前に進めてもよいと思っていただけるような重要行動を明確にすることができます。

この「重要行動」は、属人的営業から脱却するためにも組織にとっての必須項目になります。その際はハイパフォーマー分析を通じて明確にしていくことが一般的です。

フェイズの運用ルールを定義する

全体の営業プロセスが設計できたら、次はフェイズごとに詳細な運用ルールを決めておきます。

新しいプロセスをデザインし、それを根付かせるまでに様々な混乱が生じます。例えば、実際の状況にもとづいて「こういう場合はどう判断する?」ということがたくさん出てきます。

その際、常に拠り所になる具体的な基準を決めておくことで判断が明確になります。時には、ルール通りにはいかないこともありますが、その際も基準があるから明確な変更理由が必要となり、それをマネージャーとすり合わせることで共通のスタンスを持つことが可能となります。

このように全てのフェイズに案件を客観的にマネジメントできるように営業担当者と共通の運用ルールを決めておくことは、メンバー一人ひとりにセルフマネジメントの意識を醸成させていくことにもつながります。

関連記事:「営業プロセスの見える化」のメリットについてはこちらからどうぞ。

ファネルに落とし込む

営業プロセスは通常、進度が進むにつれて案件の数は減っていきます。これを図にすると逆三角形のような形になり、日本語で言うと「漏斗」のようであることからファネルと呼んでいます。

案件の進度を営業プロセスのステージごとに分け、各ステージの案件の量と質を見ていく必要があります。

下のステージに移行するにつれて案件の数が減っていくことを「ステージ移行率」と言いますが、自社のこれまでの実績でフェイズが進む度にどれほど減っていくのかは過去の実績からトレンドの数値として押さえておく必要があります。

ステージごとに移行率を設定すれば、単純に案件量に確度を掛け合わせると見込み額は机上で見えてきます。そのうえで、目標から逆算して各ステージでどのくらい案件が足りていないのかを明確にし、施策に展開していきます。

このファネルごとの案件をどのようにマネジメントしていくかで営業生産性も大きく変わってくるため重要な視点となります。

勝利の方程式を組み立てる

ファネルが設計できれば、売上目標を達成するための方程式を組み立てます。プロセスマネジメントで先ず見なければならないのは、売上目標に対してギャップがどのくらいあるかです。

その際、方程式を活用しますが、基本的には、量と質の掛け合わせで売上目標達成の構成要素を分解します。
この方程式を活用していけば、必要な受注額を逆算して割り出していくことが可能になります。
ただし、「質のマネジメント」は過去から現在のトレンドを見て数値を入れていかなければなりません。そのために、各フェイズの移行率と案件平均単価はマネジメントするうえで重要な指標となりますので、組織として明確にしていきましょう。

営業プロセスマネジメントに必要な3つの視点

プロセスマネジメントでは、主に3つの観点でマネジメントしていきます。

◆案件量マネジメント:ゴールから逆算してフェイズごとに必要とされる必要案件数を確保できているのかを見ていきます。
◆進捗マネジメント:案件のボトルネックとなるポイントについて見ていきます。
◆行動マネジメント:案件に対して適正に活動で来ているのかを見てきます。

案件量マネジメント

先ずは案件量マネジメントです。プロセスマネジメントでは、フェイズごとの案件保有量を明確にしていきます。

例えば、今期の目標50,000千円に対して、受注額が28,756千円の場合、GAP額が21,244千円となるので、案件単価が2,250千円だと、必要となる受注案件数は9件必要になります。
それをもとに逆算していくとそれぞれのフェイズごとの必要案件数が割り出せます。

それに対して、現在の保有案件数とのギャップ案件数を割り出します。
そうすると、いつまでに、どのフェイズの案件を何件増やさなければならないのかが見えてきます。そのための施策を講じていくという流れになります。

もちろん、机上の論理になりますが、基準があることが重要になります。
営業マネージャーは、目標達成のために常にメンバーに対して、この“ゴールからの逆算“を意識づけなければなりません。

フェイズごとのギャップがみえてきたら、次はそのなかで今のタイミングで優先すべきフェイズを決めて、組織としての対策を検討していきます。

進捗マネジメント

進捗マネジメントでは、ボトルネックに対する要因を見極めることが重要になります。
その際、全社的な傾向とメンバー個々の特性の2つの視点で要因を明確にする必要があります。
そして、要因が明確になれば営業担当者の成熟度を考慮した対応策につなげていきます。

全体傾向を把握する

例えば、案件化のフェイズから提案実施フェイズへの移行率は、全社的にトレンドベースで大きく落ち込むような状態だったとすると、なぜそうなのかという要因を徹底的に明確にしていく必要があります。それを改善することができれば生産性が大きく向上するからです。

案件ごとの滞留状態を把握する

次に、案件ごとの滞留状態を見ていきます。

フェイズごとに滞留日数の上限を決めておき、その日数を超えた案件が営業担当者ごとにどのくらい存在するのかを確認します。

そして、なぜそのような状態になっているのか要因を明確にしていきます。

ここでは、個別の案件の中身を検討するというよりも、全体として保有している案件の進捗状態を俯瞰的に捉えます。それによって、セールごとの課題が明確になりますので、対応策を講じやすくなります。

行動マネジメント

最後に行動マネジメントを見ていきましょう。ここで確認するのは行動間隔とリソースの適正配分です。

案件の行動間隔を確認する

ここでは、メンバーごとに案件のコールインタバーバル(行動間隔)が適切かどうかを見ていきます。

お客様の選択肢は今や豊富にあるので、せっかくのホットリード案件でも、タイミングを逃すといつの間にか消えてなくなっているということはよくあります。

行動マネジメントでは、そういった機会ロスが無いようしっかりとマネジメントしていく必要があります。

リソースの配分を確認する

さらに行動マネジメントでは、限られたリソースの配分が適正かを見ていきます。ここでは先ず、お客様を「魅力度」と「取引度」の高さからA~Dの4つのゾーンにマトリクスを構成します。

成果の出る営業担当者の特徴

一般的には、成果がでない営業担当者は右図のCゾーン(魅力度:低い×取引度:高い)に活動が集中してしまいます。なぜでしょうか?その理由は営業担当者が本能的に「行きやすい先」に行くからです。魅力度が低く、自社の取引が高いということは競合の存在がほとんどなく、お客様側も自社を頼りにしている状況だからです。

一方で、優秀な営業担当者は、いかにCゾーンに投下しているリソースをBゾーンへ振り分けるかを強く意識して活動配分を設定しています。

なぜなら、Bゾーン顧客に手厚く活動することを通じて、結果としてAゾーン顧客にまで育てていくことになり、営業生産性を大きく向上させることを知っているからです。

行動マネジメントでは、限られた工数を生産性が高まるところに配分することを教えていくことも重要です。

メンバーの成熟度に合わせたかかわりが必要

行動マネジメントの目的は、メンバーが限られた時間を効果・効率的に営業活動に投入できているかどうか、営業プロセスを確実に進められているかどうかを把握することです。

ただし、営業マネージャーは複数のメンバーをマネジメントしなければなりません。ここが営業マネジメントの難しいところと言えます。

そのため、営業マネージャーもメリハリが必要になります。そこで、営業マネージャーは営業担当者の成熟度を見極めながら、プッシュ型とプル型でかかわりを持っていきます。

プル型とは、メンバーからの求めに応じて相談にのるという考え方です。一方で、プッシュ型とは、下記のように重点のお客様に限定して、積極的に次のアクションを確認しながら、適切な次回アポイントを設定させ、訪問後の振り返りも行うことで、メンバーに重要顧客への活動配分と質の向上を意識させます。

成熟度が低いメンバーであっても、C・Dゾーンに顧客に中途半端に関わる時間を割くなら、A・Bゾーン顧客に絞って丁寧にかかわることをお勧めします。それによって、有効な商談の進め方を確実に習得していくことにつながります。

【まとめ】営業活動をプロセスとして可視化し、お客様の購買行動と期待に応える

営業活動をプロセスとして可視化し、お客様の購買行動と期待に応える営業活動ができるようになれば結果はついてきます。成果につながる可能性の高い行動を迅速かつ確実に実行して最大の成果を生み出していく。それが活動プロセスを設定する目的です。また、成果を得るには、日々の営業活動を担うメンバー個々のモチベーションや活動へのコミットメントも重要なポイントになります。メンバー自身が気持ちを入れて活動できるよう、メンバーを巻き込み、メンバーと共にプロセスを進めていくことも、ぜひ大事にしてください。