2022.06.21 (更新日:2023.01.05)

マネジメントノウハウ

フォーキャストとは?経営や営業マネジメントで意識すべきフォーキャストの5つのポイントと具体的な進め方を徹底紹介!

フォーキャスト[Forecast]とは、英語で予想・予測・予見・見込みという意味です。ビジネスにおいて、フォーキャストとは「予定されている売上と達成目標の間に生まれたギャップ(差異)を正確に予測し、対応策を計画・実行することで、そのギャップ(差異)を最小化していくマネジメント行動」と定義できます。

本記事では「確実に業績目標を達成する」ことにフォーカスをあて、部下と共に組織を運営しながら、戦略的な活動を進めていくフォーキャスト(業績目標管理)についてご紹介します。

フォーキャストとは?

先に述べたように、経営や営業におけるフォーキャストとは、各フェーズの早い段階でフェーズの業績着地をできるだけ正確に予測し、そこで見えたギャップ(差異)を埋めるために先手で対応策を計画・実行することによって、ギャップを最小化していくマネジメント行動です。

なぜフォーキャスト(業績目標管理)が必要なのか?           

下図をご覧ください。これは業種を問わず営業現場でよく見る光景です。
皆さんの営業現場でこのようなやりとりが起きていないでしょうか。

オフィスでの営業マネジャーとセールスの会話

このような事態になってしまったのは、何が問題だったのでしょうか?
様々な要因が考えられますが、営業マネージャーは、これが営業担当者だけの責任ではないことを認識する必要があります。

案件が見込んでいた時期に計上できず、翌期以降にズレることはよくある話ですが、ともすれば営業マネージャーは計上予定を聞く際に、良い報告は鵜呑みにし、結果が悪くなると営業担当者の責任にしてしまいがちです。
もちろん、メンバーの判断が未熟であるケースもありますが、メンバーの成熟度にあわせて確実なフォーキャスト管理(業績目標管理)を行うことが重要です。

フォーキャスト管理の目的

営業のフォーキャスト管理の目的は、ずばり「業績目標を確実に達成する」ことです。
営業チームにとって業績目標達成は至上命題です。
営業チームが、業績目標を確実に達成できるかどうかは様々な要素を見ていかなければなりませんが、その代表的に大きなものが「お客様の状況」と「営業パーソンの成熟度」、「時間軸」になります。このなかでコントロールできないのが「時間軸」ですので、これを絶対条件として、いかに「お客様の状況」と「営業パーソンの成熟度」をコントロールしていけるかが重要なカギを握っています。

ハイパフォーマーは、決まった時間軸の中で「ゴールから逆算思考」で、お客様にどのタイミングで、何を、どのようにしていけばよいかを決めて活動に反映させます。
ところが、多くの層は案件の積み上げ方式で、見えている案件の対応に注力し、結果として目標達成するかしないかは「時の運」という状態になっています。
営業マネージャーは、いかに「お客様の状況」と「営業パーソンの成熟度」を最大化していけるかを見ていかなければなりません。

そのためにも、結果ではなくプロセスにおいてメンバーが能動的にお客様にとっての価値提供を認識してもらう活動ができたのかが問われることになります。
業績目標は、イコール価値提供の総量という考えに基づいて営業のプロセスをきめ細かく見ていくことが問われるのです。

フォーキャスト管理(業績目標管理)の進め方            

営業領域において営業マネージャーが確実にフォーキャストするためには、正しい手順とポイントを理解する必要があります。

フォーキャスト管理(業績目標管理)の手順   

下図は、業績目標を達成している営業マネージャーが何に対して行動しているかを表しています。

【フォーキャスト】業績目標を確実に達成するマネジメント

チームに与えられた業績目標に対して、まず現時点での確定値(受注済みで当期内で計上できる案件の売上額)を積み上げます。次に、現状の見込み客の状況から、受注額と当期内で計上できる売上額(着地見込み)を予測し、ギャップを見える化します。

ギャップフィルとは

ギャップフィルとは、予定されている売り上げと達成目標の間を埋めることを指します。上記で見える化したギャップに対して、ギャップを埋めるためにチームとしてのギャップフィルを立案し徹底して実行していきます。その結果、ギャップが縮小し業績目標の達成が可能となるわけです。

このようにフォーキャストを達成するための活動を確実に遂行していくためには、予測の的確さ、ギャップフィルの妥当性、実行の徹底度が重要なカギとなります。
そこで、これから予測の的確さ、ギャップフィルの妥当性、実行の徹底度を中心に解説していきます。

時間軸を大切に捉える

フォーキャストにおいて、時間軸の捉え方は非常に重要です。

業種業態によって受注までの商談期間が異なるため、個社ごとの商談期間を踏まえて、いつまでに案件をいくら増やしていかなければならないのかをゴールから逆算して捉える必要があります。

つまり、期中において目標とのギャップを常に図りながら、時間軸を見据えたタイムリーな対応策を講じなければなりません。
営業マネージャーは、自ら率先してチーム全体のギャップ対策を講じるとともに、メンバー個々が同じ視点を持って日々の営業活動を進めるように指導・支援していく必要があります。

【フォーキャスト】時間軸を常に意識する

 着地見込みの精度を高める5つのポイント

フォーキャストにおいてまず大切となるのが、着地見込みの精度を高めることです。ここでは5つのポイントを取り上げ、営業マネージャーが業績の着地精度を高めるために整えておくべきことについて解説します。

予算に影響する要素と進捗を明確にする

これまで営業の世界は、属人的でブラックボックス化しやすいと言われてきました。特に営業マネージャーの着地予測は、勘と経験がものを言う領域でした。

「A君は、慎重に判断するから彼の見込み客は7割程度は見込めるが、B君は常に楽観的に判断するので、3割くらいで見込もう」などのようにベテラン マネージャーが職人芸的な予測を行ったものでした。

勘と経験はもちろん今でも重要ですが、ベテランの職人芸のような経験値が少ないマネージャーにも着地予測の精度を高めてもらわないと、営業本部全体のフォーキャストはままならなくなります。

その意味で、より属人的な要素を減らし、より科学的な要素を中心にフォーキャストを行うことが求められます。その構図が下のチャートです。

【フォーキャスト】着地予測の構図

着地見込みを予測する要素は、案件化数と提案数となります。まず、チーム内の総案件のプロセス(アプローチ・案件化・提案・構築)上の進捗段階を明らかにします。

次に、チーム全体の案件化・提案のプロセス上に存在する案件額と提案額を把握して、それぞれに掛け率をかけて、受注件数と受注額を予測します。
従って、各見込み客が営業プロセス上のどの段階にあるかの判断が予測精度を高める上で重要になります。

営業プロセスの基準を明確に定義する

予測精度を上げるためには、営業プロセス上の進捗段階を把握するための基準が大切です。この基準が的確であることとチーム全体で共有されることが求められます。

下のチャートは、アプローチ➡案件化➡提案の各プロセスを達成した段階を記述した例です。

【フォーキャスト】着地予測精度を上げる

それぞれのプロセスで営業担当者が実行することを記述した「定義」と、そこでのお客様の反応(言動)を記述した「ゴール基準」から構成されています。
定義は、営業担当者を主語にして、営業担当者としてこのプロセスで行うべきことが記述されています。

ゴール基準は、お客様を主語として、商談が今のプロセスを完了して次のプロセスに移行したことを判断する目安とします。ベースになるのは合意の裏付けとなる、お客様の反応・行動です。営業担当者が主語になっている表現もありますが、その場合であっても、お客様の合意が得られることが前提となります。

ゴール基準が、お客様との合意をもとに判断されると、人による判断のバラツキが少なくなり、商談の進捗段階の把握精度が増します。この基準が営業担当者に徹底され、SFA(Sales Force Automation=営業支援システム)などにインプットされることで、マネージャーはチーム全体の商談の進捗段階が把握できるようになります。

ただし、「徹底しろ」と部下に一方的に指示するだけでは、達成できるものではありません。
それぞれの基準について「なぜ、基準が大切なのか」、部下の考えを聴いて話し合うことで、部下に納得・理解してもらうことが重要です。

予算達成についてはこちらもご覧ください:予算達成に必須のプロセスマネジメント

パイプラインを設定する

チーム全体の商談の進捗レベルが把握できるようになったところで、次に掛け率(減衰率)をどう設定するかが、重要になります。

例えば、商談が提案実施まで完了したとします。個々の商談はどれくらいの確率で受注になるかは千差万別ですが、チーム全体として見ると、提案を完了した商談が受注に至る一定の掛け率(減衰率)が存在します。
この掛け率を想定して、以下のような計算を行い、現在進行形の商談から見込める売上額を予測します。

では、この掛け率をどう想定するかについては、過去の経験にもとづく推定値ということになります。
ただし、個々のマネージャーの勘と経験から割り出すのではなく、会社全体もしくは事業全体での過去の受注データと経験知によって割り出すことになります。
なお、この掛け率はあくまで平時の環境時を前提とします。戦争・自然災害・経済恐慌・疫病蔓延などの大規模な環境変化・非常事態ではあてはまりません。

重要案件リスクを捉える

前述のように、当期計上売上予測額は算定できますが、精度を上げるためには、業績への影響が大きい案件について、個別でセールスとマネージャーが商談内容を精査する必要があります。
精査することは、以下の2点です。

・受注に向けてどのような失注リスク/売上減リスクがあり、その発生の可能性はどれくらいか。
・逆に売上増の機会が発生する可能性はどれくらいか。

上記の2点が見えたら、着地見込み額を修正します。
案件の精査でよく見られるのが、部下のできていない点について粗探しをするような話し合いに陥ってしまうケースです。前向きなコメントを挟みつつ、部下の意見を聴き、尊重しながら、部下と共に案件を良い方向に進捗させるための話し合いになるよう進めましょう。

BANT-C情報で案件を評価する

案件を評価する視点を明確にすることも、着地見込みの精度を高めるためには不可欠です。「この案件は受注できそうだ」という担当者の感覚によって案件の受注確度が認識されてしまうケースも少なくありません。BANT-Cとは、予算・決裁者・ニーズ・導入時期・必然性の英語の頭文字を合わせたもので、これらの項目で案件を評価することで客観的で精度の高い着地見込みを立てることができます。

フォーキャストの詳細はebookで御覧頂けます

Budget(予算):そのものズバリ、予算確保です。
Authority(決裁者):意思決定する人と意思決定ルートの関係者が的確に捉えられていて、意思決定者と影響者と直接面談・交渉できているか、ということです。
Needs(ニーズ):お客様の要望を背景となる経営課題も含めて的確に捉えているかどうかです。お客様が話してくれたことはもちろんですが、潜在的な要望も含めて的確に質問して捉えることが重要です。
・Timeframe(導入時期):検討する必然性、案件を実行すべき逼迫度があるかどうか、を問うています。法令で期限が決まっていたり、経営トップの方針で完了期限が明確になっている場合などの優先順位が高い案件ですと、提案に対する意思決定が迅速・確実になされます。
Compelling event(購入必然性):課題を解決することはお客様にとって必然性があるかどうかです。

フォーキャストミーティングで対応策を検討

着地見込みの精度が上がり、ギャップが明確になると、いよいよギャップを埋めるためのギャップフィルの検討です。営業マネージャーは業績達成を妨げる要因を予測しながら早い段階で対策を講じ、予算管理の精度を高めることが求められます。具体的には定期的にフォーキャストミーティングをメンバーと開催し、要因と対策を連動させチーム内に共通認識として浸透させていくことが必要です。

業績目標を達成するための4つのギャップフィル(対応策)

主なギャップフィルとしては、下のチャートの4項目です。

【フォーキャスト】ギャップフィルの構図

これらをより具体的に落とし込むと以下のようになります。

【フォーキャスト】ボトルネックの案件を増やす

1.受注確定案件に付加サービスを提案する
2.受注促進活動を強化して、案件の受注率・額を上げる
3.現案件に付加提案する
4.案件(数・額)を増やす
5. ユーザー内新規領域に戦略商品でアプローチする 
6. 新規開拓アプローチを戦略商品で実施する

対策実行の事例~戦略商品のケース~

予算と着地見込みのギャップを埋めるための方向性が明確になると、次は対策実行段階です。ここでは、「案件(数・額)を増やす」にフォーカスし、戦略商品のケースを取り上げて具体的な実行手順をご紹介します。

対策実行前に押さえておくべきポイント

「ユーザー内新規領域に戦略商品でアプローチする」と「新規開拓アプローチを戦略商品で実施する」を実行するためには、対象先の抽出が必要です。下記の要件から、適合する対象先の条件を抽出する項目を明確にしていきます。

戦略商品の主な機能
製品そのものが持つ機能(ハードとソフト)と付帯サービス機能(営業活動・物流・据付・アフターメンテなど無償サービスも含む)
お客様の効用
製品を受け取る前・受け取って活用・活用後のそれぞれの段階で、お客様のシーンを思い描き検討する
競争優位性
明らかに競合に優っている機能を明確にする(複数の機能を組み合わせて考えても良い)
適合するお客様の条件
お客様の効用と競争優位性から推測する
生産ラインの状況・規模・最終製品のタイプ・工場のタイプ・現場責任者のニーズ・経営層のニーズなど適合する対象先の条件を抽出したら、チャートの中央と右下のように、実行シナリオ・重点実施計画を作成します。
ギャップフィルの検討は、マネージャーが一方的に指示せず部下と一緒に検討しましょう。実行の主体は部下ですので、彼らの納得感が最も重要です。前向きに対話し「よし、やろう」という意欲を引き出します。

対策実行段階でのチェックポイント

部下を巻き込んでギャップフィルが立案できたら、実行です。
実行段階では、重点実施計画書を活用してPDCAを回し実行度を高めましょう。
・決めたことがどこまでできたか?
・お客様の反応はどうだったか?
・目指す成果に近づいたか?
・うまくいかなかった要因は何か?

また、以下のカテゴリーを確認しながら探りましょう。
・自分自身の行動
・自社のサポート
・お客様の変化
・競合の活動
・外部環境変化
・要因に対する対応策は?
・そもそもの計画の見直しは必要か?

実行段階も常に部下を巻き込むことを意識して、部下とのポジティブな対話を心がけてください。

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【まとめ】変化が激しい時代だからこそ、マネジメントの質を高める

変化が早く、その規模が大きくなった現代社会は、計画を立てて実行することが難しい時代かもしれません。しかし、計画があればこそ、臨機応変な修正も可能になります。変化が激しい時代だからこそ、営業マネージャーの存在意義がより高まってきています。

そのような環境下で、営業マネージャーが意識すべき3つの時間軸があります。
「今日の糧」:今期の業績を達成し、生き永らえることです。目の前の見込み客の刈り取りとニーズが顕在化する可能性が高い見込み客への即効性あるアプローチが中心となります。
「明日の仕込み」:来期以降の業績達成のための見込み客の発掘と育成です。
「明後日の種まき」:来年度以降の見込み客づくりのために顧客との関係性強化や自社の競争優位性強化の施策および人材育成を実行することです。

本記事では「今日の糧」、すなわち今期の業績をどう達成していくかという短期施策に絞って述べましたが、営業マネージャーは短期施策を考える時も「明日の仕込み」と「明後日の種まき」も見通すことが求められます。これが戦略的であるということにつながります。

部下を巻き込みながら短期施策を実行し、未来もしっかりと見据えている。このような存在こそが「頼れるマネージャー」と言えるのではないでしょうか。