2022.05.05 (更新日:2022.07.30)
コーチングとは?コーチングとティーチングの違いやメリット・デメリット、コーチングに必要な4つのスキルを徹底紹介!
コーチングとは、上司と部下間において、相手の思考と感情を刺激して答を導き出す支援型の対話を指します。その時、相手が直面している課題について解決策を見出すだけでなく、成長につながるのが大きな特徴です。
企業活動をしていく中で、上司が部下を指導したりサポートしたりして、人材を育成していくことは重要な要素です。そのための手法としてコーチングとティーチングという2つがあります。それぞれの特徴を知った上でベストな方法を選択し、マネジメントに役立てましょう。
目次
コーチングとティーチングの違いとは
どちらも上司と部下とのやり取りによって、成長を促したり問題解決を図ったりするものですが、その基本的な方針や具体的な指導法には違いがあります。両者の違いを理解しておくと、より実践的で効果の出る人材育成ができますし、必要に応じた使い分けができるようになります。そのためには、それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解しておくのは大事なことです。
コーチングとは
前述したとおりコーチングとは、支援型の対話を特徴としています。上司と部下の間で対話をするのですが、あくまでも部下が自分で問題解決のための手段や改善点に気づくことを目標とします。そのため、上司は積極的に指示を出したり答を教えたりするのではなく、相手の思考と感情を刺激して答を引き出すという形を採ります。
相手が「気づき」を得ることで、直面している課題について解決策を見出すだけでなく、成長につながるのが大きな特徴です。コーチングを通して、論理的な思考パターンを身に着けられますし、対話の中でその手法を覚えることができるからです。こうして人材育成を図るという目的にも使えるのがコーチングというわけです。
実際のコーチングでは、上司が「こうした方が良い」と指示をすることは避けます。それよりも、「どこに問題の本質があるのか?」とか「目標とすべき状況とはどんなものか?」といった質問を中心とした対話をしていきます。相手に考えさせ、答を待つことで内省を促すことができます。こうした特性を持ちますので、コーチングは1対1の場面で行われることが多くなります。
ティーチングとは
ティーチングとは、指導型の対話を特徴としています。特定の問題について、初めから上司側に解決策という答があり、それを部下に対して提示することで直接的に指導をするわけです。そのため、ティーチングは指示や命令といった形を採ります。教える人のスキルや経験、知識などを部下に授けるという感覚の強い対話となります。
このようにティーチングでは答を伝えてすぐに理解させるということがポイントとなりますので、まだ考えるべき要素を把握できていない新入社員や、新しい部署に異動してきたスタッフなどに使うことが多くなります。
さらに、実践的な技術教育でもティーチングの考えが踏襲されることがあります。経験のない人では考えても分からないことが多いので、実際にやり方を見せて手本とさせ、それを真似させることで習得を促すのです。
このようにコーチングとティーチングでは目的が異なるため、進め方や取り上げるテーマについても意識する必要があります。(図1)
コーチングとティーチングのメリット・デメリット
このように、コーチングとティーチングでは、教育の方法や目的が違います。必然的に両者を比較した時に、それぞれにメリットとデメリットが出てきます。どんな場面でどの手法を使うかを判断するためにも、この点を理解しておくことは大事です。
コーチングのメリット
コーチングは、自主性を重んじ自分で答を出すようサポートするものです。そのため、思考力が身に着くことや、いわゆる指示待ち人間ではなく積極的かつ能動的な行動を取る人材に育っていくというメリットがあります。
教育現場では、どうしても教わる側は単に聞いていれば良いとか、言われたことをやっていれば良いという姿勢で、受動的になる傾向があります。結果として教育効果が薄くなったり、集中してくれなかったりといった問題にぶつかります。しかし、コーチングでは主体となるのは教わる側ですので、より前向きな態度で参加してもらえるのもメリットです。
上手に行えば、長期的な利益につながるという面も生まれます。場合によっては、指導する側よりも思考力が成長し実力を十分に発揮できるようになることすらあります。こうしたことから、企業の主軸を担うような優秀な社員に対しても、積極的に活用していくことができます。
コーチングのデメリット
基本的にコーチングは1対1、もしくはかなり少人数で実施します。それだけに、社員全員に対して行うとなるとかなりの時間と労力が取られてしまうというデメリットが生じます。
また、誰でも上手にコーチングできるわけではないという点にも留意すべきです。決まった答を教えるのではなく、相手の中にある思考や意欲を引き出すことが求められるからです。そのためには、巧みな質問力や相手についての分析力などが必要です。コーチングを実施する前に、まず指導者の育成から始めないといけません。
さらに、すぐに目立った効果が出ないことがあるというのもデメリットです。この手法では、相手の思考力を育てるのが主な目的ですので、能力の向上とそれが仕事に反映されるまで辛抱が求められることもあります。
ティーチングのメリット
すでにある答を直接教え指導するスタイルですので、相手が問題と解決策をすぐに理解できるのがメリットです。それだけスピーディーに問題解決ができます。
また、指導者としてもそれほど教えるスキルがなくても実施でき、場合によっては明確な指導マニュアルを用意するだけでも十分です。
さらに、1対1である必要がないので、大人数をまとめて指導できるというメリットも生まれます。結果として短期間かつ手間がかなり省ける効率的な指導法になります。
ティーチングのデメリット
部下は指導を受けるという立場になりますので、教育に対して受動的な姿勢になりがちです。こうした指導につまらなさを感じたり、集中力を欠いたりする人が出てきます。
やり方によっては上意下達の指導になってしまい、部下の自主性を奪ってしまう結果にもなりかねません。もしくは、自分で考える習慣や能力がなかなか身に着かず、自律心の少ない人材が増えるリスクもあります。
簡単に教えられるのは良い点ですが、逆に指導者が持っている知識や経験以上のことを教えられないという面もあります。伝えた情報のみが伝わり、能力向上という目的を果たすのが難しい方法だからです。
コーチングが効果を発揮するケース
コーチングはその特性上、実践するとより効果の出やすい場面があります。どちらの手法で教えたら良いか迷っているのであれば、コーチングが向いている条件を確認すると判断しやすくなります。
相手のスキルや経験が一定以上ある場合
相手が自ら考え、気づくことを促すのがコーチングです。これを成し遂げるためには、その人自身にも考えるためのベースがないといけません。今まで行ってきた業務を振り返ったり、他の社員もしくは企業との比較をしたりして、何が問題なのか、理想的な状態は何かなどを深堀りすることで気付き得るからです。
また、ある程度は論理的に考える力がないと、いくら質問を投げかけて思考を促しても、正しい方向に考えがまとまりません。
こうしたことから、考えたい課題に関係した業務において、一定以上のスキルや経験を持っている人に有効な手段と言えます。
緊急性は高くないが重要な内容を考える場合
コーチングはすぐに答を出すというよりも、考える機会を与えて問題解決能力を身に着ける場となります。そのため、すぐに答を出し行動すべき課題には向いていません。しかし、重要度が高く、段階的に改善を図っていくことや、将来的に解決しなければならないことについては効果的な方法です。
たとえば、これからどんなキャリアを積んでいくと良いのか、一般社員がこれから管理職となりどんなマネジメントをしていくべきかなどを考える際に、コーチングという手法は成果を達成しやすいものとなります。
こうして、能力そのものを底上げしていったり、徐々にスキルを伸ばしていくためのサポートができるのです。
ティーチングが効果を発揮するケース
直接的な指導を軸とするティーチングは、ストレートに伝えたい知識や指示を提示することができます。そのため、全体として短期間で誰に対しても効果を発揮する手法でもあります。具体的などんな場面で効果を発揮するのかを見てみましょう。
相手のスキルや経験が十分でない場合
新入社員や中途採用で入ってきたばかりの社員に、業務内容や会社の方針などを教える際に効果的です。伝えるべき内容が決まっていて、それを把握してもらうだけで十分だからです。
また、どの従業員であっても知っておくべき内容ですので、1対1にする必要はなく、新入社員全員を集めて同じタイミングで教えることもできます。業務経験が長い社員相手でも、新しいツールやシステムの導入時、今までとは異なる戦略で業務を始める際にもティーチングの方が適しています。
緊急性の高い業務を取り扱う場合
相手に考えさせるのではなく、ダイレクトに必要な情報を提示するのがティーチングです。そのため、すぐに情報を共有したり、特定の業務を実施してもらったりするなど、緊急性の高い事案についてはティーチングの方が優れています。
たとえば、お客様からのクレーム対応といった緊急対応を要するケースでは、できるだけ早く動くことが求められますので、明確な指示を伝えてすぐに行動させることが大事です。この点では、ティーチングを採用すべきです。
マネジメント(部下育成)にコーチングを活用するポイント
コーチングは長期的なマネジメントに有効な方法です。しかし、教える側にもスキルが求められる手法でもありますので、事前にしっかりとコーチングのポイントを押さえておくべきです。特に重要な3つの点を意識して実践していきましょう。
ポイント1:部下の状態を見極める
コーチングは相手の思考を刺激して、その人自身が答に行きつくように導くことが狙いです。それだけに、教える側は部下の考え方の癖や感情のパターンなどを知っておく必要があります。
もしくは、実際にコーチングをする際に、相手のことをよく知るようにヒアリングをしておくのも良いでしょう。相手に気づかせると言っても、やはり正しい方向に導かないといけませんので、部下が考えそうなことをあらかじめ予測して、上手に思考を引き出すことが重要です。
もう一つは、部下の成長度合いを見極めるということです。前述の通り、コーチングはある程度のスキルや経験がないと効果が出づらいので、いきなり高度なことをやっても意味がありません。そのため、取り組む課題に関係して部下がどのくらいの思考力や自主性を持っているのかを把握しておくべきです。そのレベルに合わせて、多少指導者がヒントを出してあげる、質問を分かりやすいものにしてあげるといった柔軟な対応をすることで成果が出やすくなるからです。
ポイント2:部下との信頼関係を構築する
部下としては、自分の思考や感情など内面と向き合う場ともなります。それを可能にするのは、上司との信頼関係です。自分が述べたことを普段から否定されてばかりでは、萎縮してしまって自由に考えを主張することができません。こうしたことが起こらないように、普段から部下の意見を聞く姿勢や見解を尊重する態度を示すことが大事です。
また、コーチングでは論理的な思考ができた時や、分かりやすく考えをまとめて話してくれた時などに褒めることが成功のカギを握ります。機械的に対話を進めるのではなく、モチベーションを高めるためにも部下の良い点を見つけて、肯定的に評価したりストレートに褒めたりしましょう。
ポイント3:部下の目標達成や成長に視点を向ける
部下の成長を促すためには、部下自身が変化を認識できることが重要です。対話の中では部下が目標達成に向けて何を実行し、どの程度できるようになったか、以前と比較して成長した点は何かといった「変化」に目を向けることが必要です。そうすることで、当座の課題解決をすることよりも、部下自身の成長や目標達成に役立つスキル向上が可能となるからです。
もちろん、コーチングの機会を通じてすぐに問題を解決できれば越したことはありませんが、そうでなくても対話を通じて自主性や考える癖が付いてきたのであれば、その点を肯定しましょう。そうすれば、次につながる有意義な対話となるのです。
コーチングに必要な4つのスキル
コーチングを成功させるためには、指導者側にもスキルが求められます。決まったマニュアルがあってそれに従えばうまくいくというものではありませんので、まずは指導する側を育成することから始めましょう。ここでは必要なスキルのうち4つを取り上げます。
1.聞く(傾聴する)力
相手の意見や気持ちを汲み上げるためには、傾聴力がとても重要です。部下は、自分の話を真剣に聞いてもらっていると感じると、より積極的に考えて意見を主張するものです。そこで、部下が話し終わるまではさえぎることなく、最後までしっかりと耳を傾けるべきです。
また、目線を合わすことや適切な相槌をすること、意見を述べてくれた時に積極的なコメントをするといった反応も重要です。さらに、意見に対してすぐに答を述べたり、締めくくったりするのではなく、さらに話を続けるよう促すことも活発な話し合いのために役立ちます。
2.質問する力
自分からなんでも話してくれる部下というのは、そう多くはありません。そのため、指導者側で巧みに意見や感情を引き出す必要があります。また、答を見つけるプロセスの中で、考えが行き詰ってしまうこともあるでしょう。そんな時に、方向性を示すようなヒントとなる点を、質問の形で提起することができます。直接正解を教えるのではなく、質問して答えさせるというやり方を徹底しましょう。
考えて答を出したにも関わらず間違っていることもあるはずです。もちろん、それほどひどい答でなければ、それで良しとすることもできます。しかし、上司として修正しておくべきだと感じたなら対話を続けるべきです。その際には、間違っているとダイレクトに指摘したり、正しい答を説明したりはしません。
部下が出した答について、不十分な点を明らかにしたり、矛盾しているポイントを指摘したりするための質問をします。そうすることで、部下自身が自分の答が間違っていると気づき、他の視点から考えるようになります。
3.伝える力
相手に気づきを与えるのが主軸ですが、やはり上司として明確なメッセージを伝える必要もあります。その際は、相手にとって分かりやすくイメージしやすい表現を用いることが欠かせません。
特に、人間関係や顧客志向、業務上の姿勢といった抽象的なものについて、漠然とした話で終わらないようにしましょう。明確に言語化し、できるだけシンプルな言葉で伝えられるようにします。
また、上司からの肯定的評価や褒め言葉を伝えるという意味でも、このスキルは伸ばすべきです。ともすると、改善点や指摘事項はストレートに言うものの、褒める点を明確に伝えない上司となってしまいがちです。それでは心を開いてコーチングはできません。
モチベーションを高めるためにも、褒める時にははっきりと言葉や表情、口調に出すことが重要です。自分としてはしっかりと伝えたつもり、で終わることがないように気を付けましょう。大事なのは、相手がどのように受け止めたかということです。そのためにも、相手目線で情報の選択や伝え方を考える習慣を身に着けることが求められます。
4.承認する力
コーチングはある一つの答にたどり着かないとダメ、というものではありません。大事なのは、思考プロセスです。
場合によっては、同じテーマで対話をしても社員によって答や考え方が全く違うということもあるでしょう。そんな時にも、人はそれぞれ思考の仕方が違うということを認め、出てきた答を承認することが求められます。時には、自分の考えとはかなり違うので、肯定しづらいこともあるでしょう。
しかし、コーチングを継続的に進め効果を生み出すためには、相手が真剣に考えて答えたこと自体には承認する姿勢が欠かせないのです。部下との信頼関係を培うためにも重要なスキルですので、日頃から意識して身に着けたいものです。
【まとめ】コーチングとティーチングを上手く使い分けることが重要
コーチングは相手が自ら考え、答に行きつくよう支援することで思考力や自発性を高めるのが目的です。一方、ティーチングは直接答を提示するものです。それぞれの特徴とメリットを踏まえて、相手やシーンに合わせて上手く使い分けるようにしましょう。
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