2024.02.06 (更新日:2024.03.25)

マネジメントノウハウ

フィードフォワードとは?メリット・デメリットを踏まえて効果的に実施するポイントをご紹介

人材マネジメントを進める上で、なかなか人が育たないとか、部下たちのモチベーションが上がらないという事態に陥っているのであれば、フィードフォワードへの取り組みを検討してみる価値があります。フィードフォワードとは、過去の行動を振り返り修正を加えていくフィードバックと異なり、未来の行動に目を向けていくアプローチです。チームの統率や効果的な指導に役立つ手法についてご紹介します。

フィードフォワードとは

部下との対話を通して、チームや部下自身が設定した目標に向かって行動できるようにサポートすることを「フィードフォワード」と言います。
特に、これから先にどのように行動していったら良いか、どんな意識を持つべきかなど未来志向の対話を行うことがフィードフォワードの大きな特徴です。過去の行動に注目し、改善すべき点に注意を向けるのではなく、将来に向けてすべきことを探り、前向きな行動を取るよう促すために行います。フィードバックとの違いや、それぞれのメリット・デメリット、効果的に行うための具体的な手法をお伝えします。

世界に比べて、日本のビジネスパーソンの仕事におけるエンゲージメントは低い傾向にあります。ただ、それを放置していては、企業や部門の成長はありません。メンバーのエンゲージメントを高い状態に持ちあげるかかわりを習得します。

フィードバックとの違い、メリットとデメリット 

ィードフォワードとフィードバックにはいくつかの視点で明確な違い、それぞれを利用する際の注意事項があります。(図1)

未来と過去

フィードバックは過去の出来事や行動を振り返って分析と反省をする機会となります。もちろん、過去の行動には良いものもあれば、悪いものもあります。しかし、過去のことから学ぶという視点だと、どうしても改善点つまり欠点に注目してしまう傾向があります。そのため、人によってはフィードバックが非常にネガティブに受け取られてしまい、士気を下げる原因ともなるのです。

一方でフィードフォワードは将来の目標達成のために、今そして、これから何ができるかを重視して考えます。もちろん、これから生じ得る課題について考えることはありますが、壁を乗り越えるという視点で考えますので、あくまでも前向きな思考でいられます。

フィードバックが過去の行動からの改善に対し、フィードフォワードはこれからの未来の行動に向けた戦略提案

「問題」の指摘と「解決への手段」の提示

フィードバックでは、問題を指摘することで解決のための手段を見出します。どうしても打破しないといけない弱点や問題がある場合は絶対に必要です。しかし、問題にばかり注目すると、単に失敗やトラブルを引き起こさない仕事の仕方を優先する恐れがあります。ミスはしないものの、本人やチームの成長を促す点では難しいことがあります。

一方でフィードフォワードは、もう一回り大きくなる自分やチームを目指すことを重視します。そのため、自発的にやる気を持って取り組む姿勢を促せます。

「未来思考」と「過去分析思考」

フィードバックでは、すでに起きたことについて分析し、改善点を探します。例えば上司が部下の行動に対して指摘する場合、改善点を伝え今後の行動に焦点を当てたとしても、指摘を受けた部下は「指摘された行為」を意識してしまいます。結果、「過去の行動を改善しなくては」という気持ちが強くなり、新しい発想につながりにくくなってしまいます。

一方でフィードフォワードの場合、目標に向けてこれから何をするのかに焦点を当てるため、過去の行動や発想にとらわれない新たな考えを生み出すことにつながります。その際には、目標達成のためには何が必要か、組織の中で求められていることは何かという観点で論理的に考えるとチームの成果につながりやすく、より効果的な未来思考の対話が得られます。

フィードフォワードとフィードバックの違いを分かりやすく表記載

フィードバックの難しさ

フィードバックにも一定の効果と役割があります。しかし、適切に行わないとマイナスの影響をもたらしてしまうこともあります。フィードバックを取り入れる企業は多いものの、意図した成果を上げられず、逆効果になっているケースもみられます。

モチベーション低下につながる

フィードバックでは、部下としては過去の問題点を指摘される場という意識を持ちがちです。そのため、上司との対話をするのを憂うつに感じますし、自分は評価されていないというネガティブな思考に至ることも多くなります。

結果として、頑張っても良いところは見てもらえず指摘ばかりされるということで、仕事へのモチベーションが低下してしまう恐れがあります。さらに、自分以外の人への見方や評価もネガティブになってしまって、人間関係が悪化することもチームとしての士気低下につながります。

素直に受け入れにくい

明らかなミスはともかくとして、部下として一生懸命頑張ったのにもかかわらず結果が出ず、それを改善するよう指摘することも出てきます。そうなると、部下としては素直にその意見を受け入れにくくなります。

現場を見ていない上司の個人的な見方だろうとか、自分たちが払った努力を認めてくれないという不満を持たせる結果につながりかねません。単純に、過去のことを取り上げても、すでにあまり記憶にないというケースもあります。

上司から部下への一方通行になる

やり方にもよりますが、どうしても上司が問題となる数字や行動を取り上げて、そこから改善点を提示するという形になるため、一方通行のコミュニケーションとなりがちです。対話の中で一緒に成長に向かってできることを考えるというよりも、押しつけているといった印象を与えてしまう恐れがあります。部下としては問題と認識していない点を上司が問題だと指摘しますので、指導が一方向になるわけです。

上司があるべき姿を理解している必要がある

正しいフィードバックを行うためには、フィードバックを与える上司が「理想の状態」を理解し、論理的に説明できる必要があります。上司自身が理想の状態を整理できていない場合、自身の経験や勘に頼った指摘となってしまい、フィードバックを受ける部下にとっては適切な内容となりません。


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フィードフォワードの目的

未来志向のフィードフォワードは、意味のあるやり方で行う時に大きな効果を生み出します。その目的を理解して、日常のマネジメントの中で、どこでどのように取り込んでいけるかを考えましょう。

人材育成の促進

常に視点を未来に向けるのがフィードフォワードです。個々の部下の状況を上司が把握したうえで行うことはもちろんですが、「次はこの目標に取り組もう」とか、「この目標を達成するにはどんなスキルが必要か?」と投げかけることで、部下は自分が何をすべきか、どんなスキルを磨くべきかが分かってきます。

自分で考える機会を設けることになりますし、目標達成のために前向きに努力する気持ちを培えます。結果として、思考力や主体性を持った人材を育てることができます。これがフィードフォワードを実践する一つの大きな目的です。

コミュニケーションの活性化

問題点を指摘されるばかりだと、叱られるのを恐れて情報共有をしたいと思わなくなってしまいます。しかし、フィードフォワードでは、これからの仕事を成功させるために何ができるか、積極的に自分の意見を述べる機会を増やします。

さらに、モチベーションが高くなったり、スキル向上を実感できたりするので、上司との対話が有用なものであるという意識を持たすことができます。こうした動きを上司と部下との間だけでなく、チームメンバー同士でも促進し、積極的なコミュニケーションを醸成するというのも重要な目的となります。

新たな事業の創出

未来志向のフィードフォワードは、企業における新しい事業や製品・サービスの開発という目的でも取り入れられます。単に従来の製品・サービスの手直しをするのではなく、今までにないアイディアにもとづいた新製品・サービスや事業を生み出すためには、柔軟で過去にとらわれない思考プロセスは重要だからです。

未来思考の組織づくり

企業風土や社員の思考パターンを変化させるという目的でも役立ちます。とにかくミスのない業務だけしていれば良いという考え方に縛られず、個々のスキル向上と業績アップ、自由な発想にもとづく画期的な製品・サービスの開発を目指す姿勢ができ上がります。特に若手の育成に役立つ手法なので、将来を担う人材を指導できるという意味でも、組織づくりという目的に適います。

人材育成にフィードフォワードを導入するメリット

フィードフォワードはチームとしての業務遂行に役立つ考え方ですが、人材育成の分野でも取り入れられています。

提案を客観的に受け入れ成長する

フィードフォワードはネガティブな要素は少ないですし、批判的な指摘を受けることもありません。また、上司が部下を指導するという関係ではなく、未来に向かってどのように成長していけるかを一緒に考える場となります。そのため、客観的に提案を受け入れられるというメリットがあります。

批判されているという雰囲気がないため、部下からも意見を出しやすく、それを基に思考を進めていくため、自分で考えたプランを取り入れて実行していくという意識を持てます。こうした当事者意識は、提案を実行に移す面でも積極的になれます。対話が無駄になることなく、チームとしての行動としても個人の努力という意味でも生かされて行きますので、大きく成長に寄与するのです。

組織風土の変化を生む

これからの会社のあり方や、一人ひとりの成長にフォーカスしますので、変化を求める意識が強くなります。具体的に将来ビジョンを考えると共に、それに至るまでのプロセスや手法も検討しますので、組織としての変化の道筋もはっきりと見えてきます。

具体的な目標設定もさることながら、社員自身が成長し変わっていこうというモチベーションが高まりますので、組織全体が成長する原動力となります。また、変化や挑戦を恐れない姿勢を身につける機会ともなります。

フィードフォワードでは、批判ではなく個性を尊重する姿勢を重視します。そのため、部下が自信を持って意見を述べたり、実行したりできるようになります。こうした変化も積極的に組織風土を改革していく動きにつながっていきます。

社員同士の関係性が改善する

フィードフォワードを行うと肯定感が強くなります。スムーズなコミュニケーションが上司と部下、社員同士で行われるようになりますので、活発な意見交換も進んでいきます。こうした関係性は、仕事上抱えるフラストレーションを発散するものとなったり、相互理解につながったりします。

上司が積極的に部下を承認したり、関与したりするので、それが良い手本となり社員同士でも思いやりを示し合う姿勢が強くなります。チームの中での絆が強くなれば、それに応じて協力関係や情報共有の質が高まり、業務効率が向上するというメリットも得られます。

将来のマネージャー育成につながる

フィードフォワードを推進することによって、単に特定の解決策を提案するだけでなく、思考プロセスを教えることができます。また、上司が部下にどのように接するべきかという模範を示すこともできます。こうした機会を通じて、教えられる側が今度はマネージャーとしての立場で、誰かを指導するスキルを身につけていけます。

長期的な人材育成にも役立ちますが、同時に企業への人材定着を促すというメリットもあります。せっかく育成した人材が流出してしまうようでは意味がありません。深い関係性を作り、モチベーションを高めるので、自社への愛着を強めるきっかけともなります。優秀な人材がマネージャーとして活躍できるという意味でも重要な役割を果たしてくれるのです。

フィードフォワード実践のステップ

フィードフォワードは3つのステップを意識することで、より高い効果を得ることができます。

ステップ1 相手の許可を得る

相手が心構えできるように、フィードフォワードすることの許可を得ることから始めます。いきなり提案したり、指摘したりしても気持ちがついてこないと受け入れるのは難しくなってしまいます。そこで、対話を始める前に「今度のプロジェクトについて話したいのだけれども、ちょっと時間いい?」などと声をかけてみましょう。

唐突に指摘するのではなく「ちょっと提案したいことがあるのだけど、聞いてくれるかな?」と投げかけてワンクッション置くようにします。そうすれば、気遣いが示されていると感じられますし、心の準備がしやすくなります。

ステップ2 事実を具体的に伝える

フィードフォワードは未来志向でこれからの成長に目を向けるものですが、そのためには客観的な現状把握が不可欠です。現状を共有しないまま対話を進めるだけではフィードフォワードの効果を発揮することはできません。

事実は抽象的な言葉であったり、漠然とした考えではなく、具体的で客観的に伝えるようにしましょう。たとえば「このプロジェクトの目標は●●だけれども、実際には▲▲に留まっているようだね。このままだと、1年後の想定は■■という認識で合っているかな?」といったように、客観的な事実として論点を提起します。

注意するのは、上司から見た主観的な感想と捉えられないようにすることです。具体的な伝え方をすることで、相手も納得しやすくなりますし、何かを変えなけなければという気持ちになりやすくなります。

ステップ3 未来の行動と結果に注目する

現状と目標とのギャップが共有できると、続いてこれから取るべき行動について対話を進めます。ここでは部下に質問をしながら進めていくのが効果的です。

「現状を変えるのにはどうしたらいい?」とか、「どんな目標を持てると思う?」といったように投げかけます。部下は自分の意見を述べますので、それについてさらに深掘りする質問をして具体化していきます。さらに最終的な目標やビジョンを実現するまでの、段階的なプロセスや手法などについても一緒に考え、具体的な手段に落とし込んでいきます。

「それを実行したらどんな結果になると思う?」と結果について予測させることも効果的です。結果を鮮明にイメージすると行動への意欲を高めることにつながります。

こうした質問をしていくと、時には自分が考えることとは違う回答が出てくることもあるはずです。その時は否定することなく、まずは見解を受け止めるようにしましょう。もし、それが明らかに間違っているのであれば、やはり質問をすることで自ら矛盾点を理解できるように助けます。

【まとめ】フィードフォワードを活用してチームの活性化を!

フィードフォワードは、未来志向の人材マネジメントであり、チームの思考を刺激して肯定感を強めるために行われます。個々のスキルや判断力を高めることにつながりますし、チームとしてのまとまりを生むのにも役立ちます。力強い個人やチームを育てるためにも、フィードフォワードを取り入れてみましょう。