2023.03.23 (更新日:2023.12.01)

組織開発

DX戦略とは?メリットや推進プロセス、導入する上でのポイントまで幅広く解説!

近年、様々な分野においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めています。ビジネス業界におけるDXとは、主にIT技術を駆使して従来のビジネスモデルをより良いものへと変革していくという意味合いです。

2021年に一般社団法人日本能率協会が発表した「日本企業の経営課題」において、DX化に取り組む企業が約45%に達しており、大企業においては60%以上の割合でDXを導入していることが報告されました。最近では、よりDX化の重要性を認識している企業が増えていることから、いよいよ自社でも取り組む必要性を感じている企業の方も多いのではないでしょうか。

ここでは、ビジネスにおけるDX戦略の概要をはじめ、DX戦略を導入するメリットをご紹介します。DX戦略の具体的な推進プロセスや実際の成功事例についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

DX戦略とは

DXはデジタルトランスフォーメーションの略語で、日本語では「デジタル変革」とも呼ばれています。

ビジネスにおいては「IT技術の導入により事業をより良く変革し、市場競争上の優位性を確立すること」という意味で使用されています。つまり、デジタル技術の活用によって、人々の暮らしやビジネスを変革するということです。

様々な意味で使用されるDXという言葉ですが、この後の章でご紹介する経済産業省の定義を参照することで、DXに関する正しい概念を理解できるでしょう。

顧客に新たな価値を提供するためには、これまでにはない収益獲得のシステムを構築する必要があります。このためには、既存のビジネスモデルを打破し、商品やサービス内容はもちろんのこと、企業全体の変革が求められるのです。

つまり、DX戦略とは、自社における課題を明確にし、その課題を解決する目的でDXを推進していく戦略を意味します。

DXの歴史とは

DXは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。元々は、デジタル技術が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることという意味で使用されていました。

このように、DXは本来ビジネスだけに関連した概念ではありません。しかし、時代の変化とともに、ビジネスシーンで多用されるようになり、経営や事業に踏み込んだ形で解釈されるようになったのです。

経済産業省におけるDX推進ガイドラインについて

自社のDX戦略を練る上で理解しておくべきなのが、経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)」です。DX推進ガイドラインは、大きく分けて次の2つの内容で構成されています。

1. DX推進のための経営のあり方、仕組み
2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

上記2つの内容を確認することで、DX戦略を進めるために必要な経営視点をはじめ、DX戦略を実行するためのポイントを理解できるでしょう。

上記のDX推進ガイドラインと併せて確認したいのが、経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」です。このレポートには、「2025年の壁」について記載されています。

2025年の壁とは、従来のITシステムの老朽化やエンジニア不足により、2025年以降に企業は大きな経済的損失を被るとされている問題です。こちらのDXレポートには、2025年までに企業が取り組むべきDX施策が具体的に記載されているだけでなく、万が一DX化せずに放置した場合のリスクについても語られています。

迫り来る2025年に向けて、企業は損失を最小限に抑えるために早急にDX化に取り組まなければなりません。DX化を推進するためにも、基盤となるDX戦略を練る必要があるのです。

DX戦略が求められている理由

DX戦略について理解できたところで、ここからはDX戦略が求められている2つの理由についてご紹介します。

ユーザーニーズの変革に適応していくため

DXは、市場の変化や新たなユーザーニーズにも柔軟に対応することが可能です。デジタル技術を業務に取り入れて最適化することで市場やユーザーニーズに変化があった場合に、変化に対応した新たなサービスは何かといった思考にリソースを割けます。

デジタル化によって作業効率を向上させるだけでなく、DX化を実現するための創造的思考力を身につけられるのも、DX戦略が求められる大きな理由の一つです。

DX戦略によって既存ビジネスから新たに誕生したサービスを考案し続けることで、DXのレベルを向上させる大きなステップとなるでしょう。

関連記事:潜在ニーズの見つけ方とは?お客様のウォンツから本当の目的を引き出す質問方法を徹底解説!

競争優位性を築いていくため

現在、多くの市場はグローバルに拡大をし続けており、企業が存続していくためには競争優位性を確立していかなければなりません。DXは、企業の組織や業務プロセスを変革するだけでなく、古くからあるレガシーシステムからの脱却にもなります。変革を続けることで、企業の優位性の向上に大きく寄与するのです。

グローバル市場で競合他社と戦っていくためには、企業の様々な仕組みを変革した全く新しいサービスが必要です。

DX戦略導入におけるメリット

ここからは、DX戦略を導入する3つのメリットについてご紹介します。

業務効率化と生産性の向上

DX戦略の基本は、企業内にあるアナログデータをデジタル化することです。膨大なデータをデジタル化する作業は手間と時間を要しますが、デジタル化する過程で業務の棚卸をすることによって、業務の自動化や無駄な業務の削減などが行われます。その結果、業務の効率化や生産性の向上に繋がるのです。

デジタル化が推進されることによって、従業員の業務負担や残業時間の削減をはじめ、在宅勤務の実現など、従業員の労働環境の改善にも大きく貢献するでしょう。

新しいビジネスモデルの創出

私たちを取り巻く環境やビジネス市場は、刻一刻と変化し続けています。市場やユーザーニーズの変化が激しい環境下においてDX戦略を導入することで、市場ニーズにマッチした自社商品やサービスを打ち出す取り組みがより活性化されます。

その結果、これまでにはない画期的で独創的なビジネスモデルを生み出すことができるのです、

事業継続性を確保できる

現在は、多くの企業においてBCP(事業継続計画)が策定されています。BCPとは、災害など不測の事態が起こった際に、損害を最小限に留めて事業を継続させるため計画のことです。このBCPを策定する上で、DX化は必要不可欠なのです。

例えば、電子印鑑システムやジュラウドサービスの導入、さらにはテレワークに対応したコニュニケーションツールやセキュリティシステムを構築するなどの対策をすることによって、オフィスが被災した際も従業員が自宅やそれ以外の場所から業務を行えます。

DX戦略の推進プロセス

DX戦略は、具体的にどのようなプロセスで推進していけばいいのでしょうか。ここからは、DX戦略を成功に導く推進プロセスについてご紹介します。

DX戦略におけるゴール・ビジョンを共有する

DX戦略では、事前に話し合いの機会を設けて、DX戦略におけるゴールやビジョンを明確にし、共有することが重要です。ビジョンを共有する際は、経営者やマネジメント層だけでなく、社内全体に対して行わなければなりません。

DX化は、社員一人ひとりの行動によって成り立ちます。そのため、DX戦略のビジョン共有は社員全員で行うことが重要です。

関連記事:パーパス(Purpose)経営とは? 次世代企業のビジネスモデルと社会貢献で成功する事業戦略

自社の課題や強み、ノウハウなどを把握する

DX戦略を推進するためには、自社全体が抱えるリソースを把握する必要があります。人材やノウハウや技術などの必要なリソースが散財している状態では、企業として有益な情報を所有していないに等しく、DX化で重要な社内変革を起こしにくい環境と言えるでしょう。社内にあるリソースを集約して、いつでもDX戦略を推進できるよう準備を進めてください。

さらに、社内が抱える課題も洗い出すことも、DX戦略を策定する上で重要なポイントです。リソースと共に課題の洗い出しも並行して行っていきましょう。

DXに合致した人材を組み込む

DX戦略を推進するためには、DX人材の確保が必要不可欠です。IT技術に精通した専門的な知識やスキルを持つ人材を選定しなければなりません。

DX人材が不在のままでは、戦略を推進していく中核的人物がいない状態のため、戦略が途中で頓挫してしまうケースも考えられます。さらに予期せぬトラブルが起こった際も迅速に対応できずに、より大きなトラブルに発展してしまいかねません。

DX人材は、社内にいる人材を育成する方法と新たに採用する方法、さらに社外の人材に依頼する方法があります。社内リソースを確認した上で、どのスタイルが適しているか検討してください。

課題に合わせてDXを推進していく

自社が抱えている課題に合わせて、できるところからDX化を実践していくことも大切です。

まずは、目の前にある課題に対して「すぐに対応できる課題」と「時間を要する課題」の2タイプに区別し、「すぐ対応できる課題」に対して素早く対応してください。僅かでもDX化を推進できれば、徐々にノウハウが蓄積されていき、DX化の速度も徐々にスピードアップしていきます。

課題が多すぎる場合は、アナログデータをデジタル化する作業からはじめましょう。

効果検証を行い改善を図っていく

DX戦略を成功させるためには、PDCAサイクルが欠かせません。現状、どの程度目標に近づいているかを定期的に検証し、実績を確認していきます。検証の結果、目標との乖離が認められた場合は、問題や課題を放置せずに改善策を立案してください。

DX戦略を成功させるために意識したいポイント

今後、企業経営においてDX化は必要不可欠なものですが、自社に適さないITツールを導入するなど、やみくもにIT化を進めても、満足のいく結果は得られません。ここからは、DX戦略を成功させるために意識したい3つのポイントをご紹介します。

目的や方向性を明確に浸透させる

DX戦略を策定する際は、DX戦略を策定する目的や進むべき方向性を明確にすることが重要です。

DX戦略を成功させるためには、社内の協力が欠かせません。社内全体の協力を得るためには、DX戦略を推進する理由やDX戦略を策定させることで実現したいビジョンなど、目的や方向性を提示し、従業員の意識をまとめる必要があります。

そのためにも、社内で抱える課題や問題点を洗い出し、DXを用いてそれらの課題や問題点をどのように解決していくか具体的に示すことが大切です。あらかじめ目指すべきゴールを設定することで、方向性も明らかになっていきます。

長期視点で考えスモールスタートする

DX戦略を成功させるためには、社内のシステムや業務すべてをいきなり刷新するのではなく、影響の少ない分野からITシステムを徐々に導入することが大切です。

大規模なITシステムを先に導入してしまうと、何かトラブルが起こった際のリスクも大きくなってしまいます。途中で軌道修正をしようとしてもなかなかうまくいかないケースも多いため注意が必要です。

DX推進をする際は、多少の混乱を招くことは必至です。混乱を最小限に抑えるためにも、まずは小規模な分野からITシステムを導入するなどして、段階的にDX化を図ってください。

データを一元化し一貫性のあるシステムを構築

DX戦略を推進する際は、社内全体のデータを一元化した上で、一貫性のあるシステムを構築しなければなりません。

従来から使用し続けているシステムは、老朽化や複雑化が進みブラックボックスとなっているケースも多い傾向です。旧システムを維持するために多額のコストがかかるだけでなく、複数のシステム間でデータの共有や連携ができずに、各種データがうまく活用できていないことも少なくありません。

企業資産であるデータを各部署でスムーズに使用できるように、会社規模で一貫性のあるシステムの構築が必要不可欠です。

関連記事:営業DXとは?営業活動を加速させる7つのカテゴリーと事例、営業変革を実現する具体的な6つのポイントについて解説

DX戦略の成功企業事例

ここからは、DX戦略で成功を収めた主要企業のうち3社をご紹介します。

日本航空

日本を代表する航空会社である日本航空は、DX推進の一環として「JAL Innovation Lab」を設置し、オープンイノベーションの拠点を構築しました。JAL Innovation Labとは、会員のアイデアをいち早く具現化し、検証までできる施設です。さらに、100社以上の外部パートナーと連携をし、新サービス開発にも取り組んでいます。

パイロット訓練ノウハウを活かし、ドローンオペレータの育成事業も推進しており、無人航空機を安全に操作できる人材の育成にも力を入れています。

長谷工コーポレーション

マンション建設最大手の長谷工コーポレーションは、「HASEKO BIM」を導入しています。BIMとは、コンピューター上にある様々な属性のあるデータが追加された3次元建物モデルを構築する先進的な建設手法のことです。

長谷工では、マンション建設に特化した長谷工版BIMを展開し、設計、施工から販売はもちろん、管理に至るまで、マンションのライフサイクル全域でDXを活用しています。

クボタ

建機や農機の製品を主軸とし、世界各国位トータルソリューションを提供する株式会社のクボタは、2020年12月に「Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)」をリリースしました。3DモデルやAR機能を活用した故障診断ができる革新的なアプリケーションサービスとして大きな反響を集めています。

経験や知識に頼らない故障診断のフローの提供することで、迅速かつ誰にでもわかりやすく故障診断サポートが受けられるようになりました。その結果、建機の稼働率低下による収益減少によるダメージを最小限に抑えることに繋がったのです。

【まとめ】DX戦略の目的やゴールを明確にしよう

2025年の壁問題や市場やユーザーニーズの変化に柔軟に対応するためにも、企業のDX戦略は急務となっています。DX化を推進するためには押さえるべきポイントがありますが、最も重要なのはDX戦略の目的やゴールを明確にすることです。設定した目標やビジョンを、社内全体に共有して、理解と協力を求めていきましょう。

ITシステムを導入する際は、企業の課題や既存のシステムなどの状況に合わせて最適なシステムを選定しなければなりません。IT技術に精通したDX人材を選出し、自社に合ったDX戦略を策定することをおすすめします。

関連資料:営業組織におけるDX戦略を検討している方はこちらをご覧ください