営業DXとは?

2024.01.24 (更新日:2024.03.26)

営業戦略

営業DXとは?営業活動が加速する7つのカテゴリーと事例、営業変革を実現する6つのポイント!

営業DXとは、「データとデジタル技術を活用して、顧客のニーズを基に自社の営業戦略を見直し、そのための営業プロセスや営業体制を再構築すること」です。

社会・経済・産業構造だけでなく、市場や顧客など企業を取り巻くあらゆる環境でデジタル化が進み、その変化に対応するために、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。DXによってこれからの営業はどうなっていくでしょうか?DXと営業変革を考える前に、まず最初にそもそもDXとは何かについて見ていきましょう。

目次

DXの定義:デジタルでトランスフォーメーション

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省「DX推進ガイドライン」によると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品・サービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を言います。

この経済産業省の定義にもあるように、データとデジタル技術を活用することは単なる手段に過ぎません。DXの目的は、競争上の優位性を確立・維持できるよう企業を変革することです。言い換えれば、デジタル化社会に対応して、企業や組織が丸ごと生まれ変わることを意味するといっても過言ではありません。
もちろん、競争上の優位性を確立・維持するということは、激しい環境変化においても安定した収益を獲得し続ける組織を創るということにつなげなければなりません。

デジタルトランスフォーメーション

DXの広がり:X-Tech(クロステック)の誕生

あらゆる業界でX-Techが登場しています。クロステックとは従来の産業にITの技術を掛け合わせて、今までにない新たな価値を提供することを言います。例えば教育機関ごとに分散している教材や講師といった資産を一つのサービスで把握できるようになる等、既存機関では実施が難しいものの、消費者にとっては利便性の高いサービスが EdTech 事業者によって提供されるようになってきています。

X-Tech(クロステック)

営業DXはなぜ必要なのか

ここで、なぜ営業活動においてDX化が必要とされているのかを、よりMECEな状態にして整理してみます。整理してみると、いかにメリットが多いかを再確認できます。

顧客行動の変化

1.インターネット利用の普及: 顧客は製品やサービスについてオンラインで情報を入手しやすくなっています。
2.ソーシャルメディアの影響:ソーシャルメディアが顧客の購買意向に影響を与え、口コミや評価が重要視されています。

データ活用

1.ビッグデータ分析: 営業DXはビッグデータを活用し、市場動向や顧客ニーズを洞察し、戦略の根拠とすることができます。
2.予測分析: データ駆動のアプローチにより、将来のトレンドや取引の可能性を予測することができます。

コラボレーションと効率性の向上

1.クラウドベースのツール: クラウド技術を活用して、営業チームはリアルタイムで情報を共有し、柔軟かつ効率的なコラボレーションが可能です。
2.自動化プロセス: 営業DXは繰り返しの業務を自動化し、担当者がより戦略的な活動に時間を割けるようサポートします。

リアルタイムの情報提供

1.データダッシュボード: リアルタイムでのデータ視覚化により、営業担当者は重要な指標や進捗状況を一目で把握できます。
2.AI搭載アシスタント: 人工知能を活用したアシスタントが、必要な情報を自動的に抽出し、担当者に提供します。

顧客体験の向上

1.インターネット利用の普及: 顧客は製品やサービスについてオンラインで情報を入手しやすくなっています。
2.ソーシャルメディアの影響:ソーシャルメディアが顧客の購買意向に影響を与え、口コミや評価が重要視されています。

データ活用

1.ビッグデータ分析: 営業DXはビッグデータを活用し、市場動向や顧客ニーズを洞察し、戦略の根拠とすることができます。
2.予測分析: データ駆動のアプローチにより、将来のトレンドや取引の可能性を予測することができます。

コラボレーションと効率性の向上

1.クラウドベースのツール: クラウド技術を活用して、営業チームはリアルタイムで情報を共有し、柔軟かつ効率的なコラボレーションが可能です。
2.自動化プロセス: 営業DXは繰り返しの業務を自動化し、担当者がより戦略的な活動に時間を割けるようサポートします。

リアルタイムの情報提供

1.データダッシュボード: リアルタイムでのデータ視覚化により、営業担当者は重要な指標や進捗状況を一目で把握できます。
2.AI搭載アシスタント: 人工知能を活用したアシスタントが、必要な情報を自動的に抽出し、担当者に提供します。

顧客体験の向上

1.パーソナライゼーション: デジタル技術により、顧客に合わせた個別化された体験や提案が可能になります。
2.オムニチャネル対応: 顧客は複数のチャネルを利用しやすくなり、シームレスな体験を期待します。

競争力の維持と強化

1.デジタルトランスフォーメーション戦略: 営業DXは継続的なデジタルトランスフォーメーションを推進し、企業の競争力を向上させます。
2.イノベーション: デジタル技術の積極的な活用は、新しいアプローチやサービスの創造を促進します。

DX化の多くはうまく進んでいない?

企業のDX化は、ある程度の投資は行われるものの、実際のビジネス変革には繋がっていないという状況が多くの日本企業に見られます。

下記は、前述の経済産業省が公表している「DX 推進ガイドライン」になります。DXを推進する際に下記の5点について確認してみてください。DX化に取り組んでいこうとする企業の中で、ここにある5項目すべてが満たされているという組織はまだまだ少ないという状況です。先にも述べたように、単にデータとデジタル技術を活用することに留まらない包括的な取り組みが必要になります。

1.経営戦略・ビジョンの提示

想定されるディスラプション(「⾮連続的(破壊的)イノベーション」)を念頭に、データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減等)を生み出すことを目指すか、そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきかについて経営戦略やビジョンが提示できているか

2.経営トップのコミットメント

DX を推進するにあたって、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中、経営トップ自らこれらの変革に強いコミットメントを持って取り組んでいるか。仮に、必要な変革に対する社内での抵抗が大きい場合は、トップがリーダーシップを発揮し、意思決定することができているか

3.DX推進のための体制整備

戦略やビジョンの実現と紐づけられた形で、経営層が各部門に対して、データやデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを構築する取組について、新しい挑戦を促し、継続できる環境を整えているか

4.DXで実現すべきスピーディーな変化への対応力

ビジネスモデルの変革が、経営方針転換やグローバル展開等へのスピーディーな対応を可能とするものになっているか

5.投資等の意思決定のあり方

DX 推進のための投資等の意思決定において、
① コストだけでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか
② 他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか
③ DX投資ができないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか

DXの目的:技術は手段、ビジネスをどう変えるか

企業がDXを推進する際、主に3つの階層で議論がなされています。

価値創造・ビジネスモデル変革:顧客価値を革新する

最初の議論は、ビジネスモデルをデジタル最適につくり変えるというものです。最新のテクノロジーを活用して、顧客の体験価値(Customer Experience)を向上する。スマートフォンを中心に、テクノロジーを活用することで、ビジネスにおける顧客の経験・体験が抜本的に変化する可能性があります。

業務効率化・働き方改革・生産性向上:業務をデジタルで変革する

次の議論は、AIやロボティクスなどで自動化や省力化を進めるというものです。デジタルテクノロジー活用による業務効率化・コスト削減を実施する。働き方改革への具体的な処方箋として、DX推進をファーストステップとして検討するというものです。

意思決定力向上:属人的な判断や意思決定を高度化する

最後の議論は、最適なコンテンツを、最適なタイミング、最適な方法で届けるというものです。今までは、「経験と勘」で実施されてきた意思決定をデジタルテクノロジーで収集した「精度の高い・速報性のある」ビッグデータで、質の高い意思決定を可能にすることにつながります。

これらの議論から見えてくるのは、様々な領域でこれまでのビジネスと大きく異なってくるというものです。20世紀に世界を動かした資源は石油でした。21世紀に入り、常時接続社会が誕生したことにより価値の中核をデータが担うようになります。DXがこれまでのビジネスと比べて、どのような差異をもたらすのかについて見ていくと、下記のようなイノベーション要素が見えてきます。

1Updatability - アップデート可能に

出荷時の状態が完成系ではない。ソフトウェアアップデートによりハードの提供価値を随時更新が可能になる。

2Personalization - パーソナライズ

顧客データを精緻に取得可能にすることで、個人最適化したサービスの提供が可能になる。

3Scalability - 拡張性

既存アセット(例:住宅や家)をデジタルプラットフォーム上で扱うことで、ハードウェア製造よりも拡張性をあげられる。

4Data - データ

意識的・無意識的にデータを獲得。データはサービス改善のみならず、次期プロダクトの開発にも使用可能になる。

5Continuity -連続性

長期に渡り一人のユーザを観察したりすることも可能。また、プログクトもバージョンを重ね累積的改善を行う。

6Low Cost -低コスト

プロダクト配布のコストは実質ゼロに。

このように見ていくと、モノの価値は、ハードウェアからソフトウェアへ、そしてサービスへとシフトしていきます。つまり、ハード+ソフトがネットワーク接続し、モノとクラウド・サービスが一体化し、システム全体で価値を生成するという流れになってきました。

営業DXのより具体的な内容はebookでご説明致します↓

営業DXとは?

営業DX(営業領域におけるDX)とは?

ここまでDXの取り組みについて一般的な視点について見てきましたが、ここからは営業DXについて解説してゆきます。
営業DXとは、「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に自社の競争優位性を高めることを目的として営業戦略を見直し、自社の営業プロセスや営業体制を再構築すること」です。

最近よく聞くセールステック(Sales Tech)もDXの一つの要素ということになります。セールステックとは、ITを活用して営業活動の生産性を高め効率化を図る手法及びツールのことを指します。Sales(営業)とTechnology(技術)をかけあわせた造語であり、営業領域のイノベーションを生み出す概念です。代表的なものが営業活動の見える化及び生産性向上を行うために利用されるSFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)や、顧客との良好な関係構築を築くために用いられるCRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)です。

株式会社矢野経済研究所が2018年に日本国内の528社を対象として行ったアンケート調査によると、2012年には22.5%であったCRM・SFA導入率ですが、2014年には29.0%、2016年には29.8%と増加、2018年には33.8%と、約3社に1社の割合でCRM・SFAを利用しています。

営業DX7つのカテゴリー


CRMやSFAはセールステックを実現するための代表的ツールですが、営業領域のDXには大きく分けて7つのカテゴリーがあり、欧米を中心に多くの企業がこの分野に参入しています。

1.営業促進・加速(Sales Enablement &Acceleration)

営業活動を効率化し生産性を上げるためのツールです。SFAはこのカテゴリーに属します。この分野のツールは対応範囲が広く、営業活動の記録や日報のストック、商談進捗状況の把握、営業数字の予測、案件管理、クレーム管理、およびこれらの情報の部門間共有など様々な機能が付加されているのが特徴です。

2.カスタマーサポート(Customer Support)

インバウンドセールスの効率化を図るためのインサイドセールスシステムなどが含まれます。顧客とのやり取りを音声だけでなくテキスト化して保存する機能や、最適なタイミングで顧客にメルマガを送付する機能など多彩な営業活動を自動で行うことができます。

3.インテリジェンス・解析(Intelligence & Analytics)

営業活動によって得られたデータを最大限に活用するためのツールです。高度なデータマイニングによりネクストアクションを支援したり、ビッグデータと結び付けて顧客の課題を抽出したりという高度な戦略性を持たせたツールが多く存在します。AIを搭載し専門知識がなくとも比較的簡単にデータ分析を行うことがITの活用により実現するというのが大きな利点です。

4.顧客関係管理(General CRM)

顧客データベースの構築と管理、プロモーション履歴の蓄積など企業と顧客との関係性を見える化するツールです。CRMがこのカテゴリーの代表です。カスタマーセンターやプロモーション部門などとデータを共有し、ネット通販と連携させるなどさまざまな場面で活用可能です。クラウドとの親和性も高く、特にBtoC企業において多く活用されています。

5.顧客体験(Custmer Experience)

顧客の購買プロセスの途中で、感動体験や疑似体験という付加価値を付け、売上げの増加を図るツールです。顧客の体感価値を最大化するために、例えばサイトに訪問したユーザーの訪問回数や流入経路に合わせて適切なポップアップを配信するWeb接客ツールや、チャットツールなどが当てはまります。顧客のオンライン体験を素晴らしいものにすることで、売上をさらに伸ばしていくことを目的としているツール群です。

6.コンタクト・コミュニケーション(Contact & Communication)

顧客とのやり取りやインバウンド対応の最適化を図るためのソリューション領域です。コールセンターシステムや顧客からの電話内容を分析してオペレーターにベストアンサーをサジェストするツールなどを用いて、お客様との直接のやり取りの質を向上させます。BtoCだけでなく、Web会議システムを利用したビジネスミーティングといったBtoBでの活用も可能です。

7.人材開発・コーチング(Peaple Development & Coaching)

営業活動を担当する人材の教育と育成を行うためのツールです。営業パーソンの教育やモチベーションの向上を図るツールやシステムが当てはまります。例えば、教育資料の動画プラットフォームや、オンラインでロールプレイング、その評価が出来るツールなどがあります。

営業DXの具体的な進め方

営業DXの具体的な進め方は、企業の状況や業界により異なりますが、以下に一般的な進め方のガイドラインを示します。ポイントについては後述しますが、まずは以下を参考にして、企業のニーズに合わせて調整することが重要です。

現状の評価と目標設定

1.現状の分析: 現行の営業プロセス、システム、ツール、データの利用状況を詳細に評価します。
2.目標の明確化: 営業DXの導入によって達成したい具体的な目標を設定します。例えば、収益の増加、効率の向上、顧客満足度の向上などが考えられます。

デジタルツールとプラットフォームの選定

1.ニーズの分析: 営業活動における具体的なニーズに基づいて、適切なデジタルツールやプラットフォームを選定します。CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェア、セールスオートメーションツール、分析ツールなどが含まれます。
2.統合性の確認: 選定したツールやプラットフォームがシームレスに統合できるか確認し、データの一元管理を実現します。

データの整備と活用

1.データクレンジング: 不要なデータをクリーンアップし、正確で信頼性の高いデータを確保します。
2.データの活用計画: ビッグデータやリアルタイムデータの活用方法を計画し、洞察を得るためのデータ分析戦略を策定します。

自動化の導入

1.業務プロセスの特定: 自動化が有益な業務プロセスを特定し、優先順位をつけます。
2.ワークフローの設計: 選定したツールを使用して、自動化されたワークフローを設計し、人的エラーを減少させるための仕組みを構築します。

トレーニングとチームの準備

1.トレーニングプログラム: 従業員に対するトレーニングプログラムを実施し、新しいツールやプロセスの使用方法を教育します。
2.変革への参加: チームメンバーを変革に参加させ、意欲的に新しいデジタル環境に適応できるようにサポートします。

モニタリングと改善

1.KPIの設定: 成果を評価するためのキーターゲットパフォーマンスインディケータ(KPI)を設定します。
2.モニタリングと評価: 実装後にプロセスや成果を定期的にモニタリングし、課題や改善点を特定します。定期的なフィードバックループを確立します。

顧客フィードバックの統合

顧客エクスペリエンスの向上: DXの進捗を定期的に顧客にフィードバックし、顧客のニーズに合わせてプロセスやサービスを改善します。

セキュリティとコンプライアンスの確保

1.データセキュリティ: デジタル環境のセキュリティを確保し、データ漏洩やセキュリティリスクから企業を守ります。
2.法的要件の遵守: 地域や業界の法的要件に準拠し、コンプライアンスを確保します。

成功事例:ある営業組織における営業DXの段階的な進化

バリューチェーン全体で情報を見える化・共有化し、設計から生産、流通、販売、保守に至るまで統合したり、逆に従来つながっていたバリューチェーン要素の分離も進んだりしています。DX は多様な業態のバリューチェーン要素の統合と分離でもあるのです。
ここにあるのはある企業の実際のDX化に向けた取り組みの事例概要となります。一足飛びに進めるのは難しいため、段階的な取り組みとして参考になればと思います。

第一段:文書のデジタル化

第一段階は、提案書・契約書・リストなどの「文書のデジタル化」でした。目的は、情報の利活用を促し、提案の生産性を上げることと、情報を一元化し、営業担当の機動性を高めることにありました。そこで、営業部門独自のプラットフォーム構築、モバイル支援環境の整備、電子印・電子帳票などの整備、コンビニ出力などの運用などを主な施策として展開していきました。

第二段:管理のデジタル化

第二段階は、施策・商談・活動・人などの「管理のデジタル化」です。目的は、マネジメントを標準化し、バラツキを無くすこと、ベストモデルを発見し全体レベルを上げることです。そこで、標準営業プロセスとマネジメントプロセスを標準化、商談を継続的に確保するマネジメントサイクルモデルを構築しました。

第三段:プロセスのデジタル化

第三段階は、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスなどの「プロセスのデジタル化」です。目的は、製品・サービスの利用度やCSを解析して顧客状態を判定し対応すること、BI(統計処理)を活用し問題分析することです。そこで、営業活動から生じるデータの中に意味のあるパターンを見出し可視化して伝えること、人間の知的活動の生産性を高めるための手段を明確にしました。

第四段:ビジネスのデジタル化

第四段階は、お客様とのビジネス・取り引きの「ビジネスのデジタル化」です。目的は、内外の複数情報から需要を予測し、更新やアップグレード、乗換防止を顧客に勧めることです。そこで、見込み客の自動抽出、営業実行の自動化。メールの依頼内容を解釈し提案書を自動生成、人間の知的能力を機械によって増強することで商談の質向上と効率化をはかりました。

DXの段階的進化

営業DXで変革を実現する6つのポイント

営業DX6つのポイント

1.営業DXの必然性理解

これまで見てきたように企業の活動はアナログだけのスタイルには限界があります。営業組織もこれまでの非効率な世界を効率的に進めるためにもDXの必然性を理解、納得し、実行につなげて定着させることで営業生産性を向上させていかなければなりません。ところが、多くの営業組織は、今までは感情を持つお客様の心をどう動かすかということに意識を強く向け、人間関係の構築に依存してきました。ある意味では対極に位置づけられるデジタル化に関しては心理的な抵抗感が強く出てきます。これは営業経験が長ければ長いほどその傾向が強く出てきます。

そこで、営業担当一人ひとりの意識を変えていくためにも、いまの営業を取り巻く世界がどのように変化しているのかを具体的なデータエビデンスを示して共通認識を持つことも効果的でしょう。下記のデータを見ても営業のあり方が大きく変化していることが見て取れます。

1. 1か月間にパイプライン(管理マネジメント)に追加される商談の数と売上目標の達成率の間には相関が見られます。HubSpot Research社の調査によると、1か月間の商談数が50件以下の企業では、収益目標を達成できない割合が72%なのに対し、51~100件の会社では15%、101~200件の会社ではわずか4%にとどまります。
2. 米国とイスラエルに拠点をもつ営業プラットフォーム企業Gongのデータ サイエンス チームが15か月分のデータを分析したところ、平均的な営業担当者は、四半期の最終月度にそれ以前の2か月より多くのセールスコールをかけていました。しかも、このような「駆け込み」のセールスコールの成功率は、他の月に比べて低迷していることが多かったのです。
3. プロスペクト(見込み客)の6割近くが、最初の電話で価格について聞きたいと考えています。
4. 営業担当者は通常、プロスペクト(見込み客)が有望かどうかに最も関心がありますが、買う側にとっては重要なことではありません。予算や購入決定権、購入スケジュールについて話をしたいと考えているプロスペクト(見込み客)は4人に1人しかいません。
5. プロスペクト(見込み客)の19%は、カスタマージャーニーの認識ステージ(製品について初めて知る段階)から営業担当者とやり取りしたいと考えています。
6. プロスペクト(見込み客)の60%は、検討ステージで営業担当者とやり取りする前に、自分で選択肢を調査して、ある程度絞り込みたいと考えています。
7. 営業メールは24%しか開封してもらえません。
8. 少なくともプロスペクト(見込み客)の50%は、自社で販売している製品に適していません。
9. 米国企業2,200社以上を対象に調査を実施した結果、リードからの問い合わせに対して60分以内に返信しようとした場合、返信が60分後になった場合と比べ、意思決定者と有意義な会話ができる確率が約7倍に及ぶことが判明しました。
10. 経営陣ばかりに電話をかけるのは、もはや効果的な戦略とは言えません。経営幹部の64%が最終的に契約書に署名する権限を握ってはいますが、経営幹部以外の従業員の81%が購入の意思決定に何らかの影響を与えています。

2.顧客行動の見える

顧客の購買行動が大きく変化してきている中で、営業部門は自社都合ではなく、顧客の購買プロセスを見据えて適切な活動していかなければなりません。そこで、できるだけ顧客行動が見えるよう着手します。カスタマージャーニーマップにあるように顧客自身がデジタルで情報収集する中で顧客の行動が把握できるようになります。MA(マーケティングオートメーション)などで顧客行動が把握できれば、それに対する最適な活動が見えてきます。また、顧客行動に対応するだけでなく、顧客行動を喚起するという能動的な取り組みも重要になります。ここは、マーケティング機能と連動してい進めるという活動になります。

顧客の購買プロセスとは?

3.営業の機能分化

マーケティングとフィールドセールスをまとめて営業と一括りにしていた時代から、機能が細分化されてきました。なぜなら、それぞれの機能の専門性を高めていかなければ、先に見たように顧客に主導権を奪われ、放っておくと結果管理になってしまうからです。10年前と比べるとアポイントがなかなか取れないという課題に直面している営業組織が劇的に増えてきています。そこで、優良な見込み客に対してインサイドセールス部隊が専門機能に特化してアポイントの確立を高めていくなど、営業組織を再定義する必要が出てきました。
そして、機能分化した専門部隊がデジタルツールを駆使して、次工程に見込み客をトスアップしていくことで営業生産性向上につなげていくのです。

営業の機能分化

4.営業課題の抽出

より高いレベルに向けて機能分化したとしても、お客様との取引には常にボトルネックが生じます。そこで、SFAやCRMなどのセールステックを活用して営業プロセス上のどこにどのような課題が生じているのかを常に把握し、その都度最適な対応策を検討して進めることが重要になってきます。

飛行機の操縦席にあるコックピットを確認しながら確実に目的地に到着するかのごとく、顧客行動とセールス活動の最適なタイミングとアクションを見出すなど、常に飛行状態を明確にしたうえでコントロールしていくことが重要になるのです。そのために、BIを活用して目的地に辿り着くまでのギャップを常に把握しながら操縦する必要があります。

営業課題の抽出

5.営業マネジメントの重点化

営業変革は、“人・しくみ・マネジメント”の三位一体で進めていかなければ定着しません。DX化によって営業マネージャーがそれをどうマネジメントに活かしていくかが重要なポイントになります。あるべき姿に対して現状とのギャップを意識しながら確実に目標達成するための対策を講じていく必要があります。

しかし、それだけでは組織はなかなか意識と行動を変革していきません。そこには、人のもつ感情というものがあるからです。営業マネージャーは、人と組織は必ずしも合理的にだけ物事を進められるというものではないという前提認識に基づいて「戦略系のマネジメント」と「人・組織系のマネジメント」を両輪でうまく回していく必要があります。

下記リンクから営業マネジメントに必要とされる構成要素の全体像を参考にしてみてください。

営業マネジメント全体像

営業マネジメントについて詳しく知りたい場合は、こちらをどうぞ

6.営業人材の育成

製品の機能やメリットを紹介するだけの営業やお客様が認識している課題(顕在ニーズ)の解決策を示すだけの営業は生き残れなくなります。より高度な営業が具現化できるための人材育成が必要になります。

ソリューション営業の実践には、顧客ニーズを聞き出すことが基本とされてきました。お客様は課題が何であるかを認識されていますが、有効な解決策が分からないために、営業のよい提案に期待を持っているからです。

しかし、インターネットの発達や、スマートフォンの普及により、お客様自身が必要な情報を、余すことなく収集できるようになりました。商談の主導権はお客様に移り、コストダウンに応じるか、特別条件がないと受注が困難になりました。

これからの営業に求められるのは“インサイト力” です。インサイトとは直訳すると「洞察」、「物事を見抜く力」などを意味します。インサイトセールスは、お客様自身が何をすべきかを、先回りして見つけ出し、ニーズと認識されていない提案を行い、お客様の変革を助けるのです。

営業の進化

おわりに:自社の営業価値を再定義することの重要性

営業を取り巻く環境変化は、今後ますます加速するものと思われます。とりわけ情報の蓄積が進むことで、セールステクノロジーの利用価値は高まるでしょう。単純な営業活動はいずれ機械がこなすようになるに違いありません。

しかし、営業は極めてハイタッチな仕事であり続けています。信頼関係に基づいてお客様を未来に導くことは、洞察力と創造力にあふれる人間にしかできないことが、改めて明らかになりました。

テクノロジーに翻弄される前に、貴社の営業の価値を再定義してみてはいかがでしょうか?

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