潜在ニーズの見つけ方とは?お客様のウォンツから本当の目的を引き出す質問方法!

潜在ニーズとは、表面的には明確になっていない、あるいは認識されていないニーズのことです。営業活動においては、お客様自身が認識していない隠れたニーズということになります。営業担当者はお客様のニーズを引き出すことが重要だとよく言われますが、潜在ニーズに近付くほど、お客様の理解が深まり関係性強化につながります。

潜在ニーズとは

記事冒頭で述べたように、潜在ニーズとはお客様自身がはっきり自覚していないニーズのことです。一方、潜在ニーズに対して、既に自覚しているニーズもあり、それを顕在ニーズと言います。

また、ニーズと似た用語に「ウォンツ」があります。まずはこれらの定義について確認しましょう。

ニーズは目的、ウォンツは手段

そもそもニーズというキーワードは英語の「needs」、つまり「必要なもの」や「必需品」との訳語からもわかるとおり、必要とする具体的な欲求のことを示します。また、それを必要と感じるということは、現時点ではその欲求は十分に満たされてないことを意味します。端的に言えば、欠乏状態と言ってよいでしょう。

たとえば、次のような事例を考えてみます。ある人がのどが渇いて仕方がないのに、その欲求を満たすことができない状況です。この時、その人は水を飲みたくてたまらないに違いありません。

では、この「のどが渇いている」というニーズにある状態の人は、具体的に何を欲しているのでしょうか。考えるまでもなく「水」です。つまり、今欲しくてたまらない「水」こそがこの人のウォンツになります。要は、「のどが渇いている」というニーズに対して、「水」という具体的なものがウォンツというわけです。

このようにコンテンツを辿ると、ニーズとウォンツの違いを理解するのは難しくないはずです。ただし、一つのニーズに対し、常にウォンツも一つだけとは限らないことに注意しましょう。一つのニーズに対して最初から複数のウォンツがあることもあれば、一つのウォンツから次々と新たなニーズとウォンツが連鎖していくこともあります。

上記のことを簡単に整理すると、ニーズが目的で、ウォンツが手段となります。わかりやすいのは手段の方、ウォンツではないでしょうか。たとえば、お客様にヒアリングした時、返ってくる答えはイメージしやすい方、ウォンツであることが圧倒的に多いはずです。

他方、ウォンツという手段によって実現したい目的、すなわちニーズについては、はっきり言語化されないことも珍しくありません。のどが渇いて水を飲みたがっている人に要望を尋ねると、「水が飲みたい」とウォンツを答えるだろうことは容易に想像できるはずです。「のどが渇いて仕方ないので」というニーズの部分をはっきり言葉にして表現する人は多くないでしょう。

顕在ニーズと潜在ニーズの違い

さらにニーズには2種類あります。一つは顕在ニーズで、お客様自身が認識しているニーズを意味します。明確に欲しいものが思い浮かんでいる状態で、お客様の購買行動にもつながりやすいと言えるでしょう。

何かしらの課題があり、その解決のために具体的なものを思い浮かべているわけでから、もし特定の商品を見て、費用対効果が高いと思えば、購買行動に至りやすくなります。

もう一つは潜在ニーズと呼ばれるもので、お客様自身でもはっきりそれが欲しいという自覚のない状態です。ニーズを感じていない状態ですから、このままではお客様が購買行動を取ることはないでしょう。

しかし、そこに誰かからヒントが与えられれば、今まで潜在していたニーズが突如顕在化して、購買行動に移ることは十分に考えられます。お客様自身が意識していない潜在ニーズを営業担当者が顕在化させることができれば、競合他社が行っていない価値を提案できることになります。営業担当者は仮説と質問を繰り返しながらこの潜在ニーズにたどり着くのです。

【図1】潜在ニーズ

最初の要望はウォンツ

お客様がニーズを営業担当者に説明する場合、まず最初に出てくるのはウォンツであるケースが多くなります。ウォンツとは顕在ニーズを実現するための手段ですから、お客様自身が具体的に意識しているからです。たとえば、お客様がシステム開発を希望する事例の場合、すでに顕在化している課題を解決するための手段として、あるシステムの開発を欲しているわけです。

顕在ニーズに関してユーザーは自ら解決方法を探すことができます。自分で情報を収集し、その情報をもとに、品質やコストを比較検討して、自ら最終決断を下すでしょう。比較検討する際に不足している情報があれば、その場合に営業担当者に質問するだけで決定することが可能です。

一方、お客様が営業担当者との対話や関りを通じて、意識できていない潜在ニーズに気づくこともあります。意識していたニーズ=目的よりも、そちらの課題の方が優先度が高いと判断する場合もあるでしょう。

真に必要なものに気づいた場合、お客様がどこでその商品を購入するかと言えば、潜在ニーズに気づかせてくれたその営業担当者からとなる可能性は非常に高いです。自分を真に理解する人物としての信頼が生まれるため、たとえ競合他社があったとしても、理解度や信頼度の面で有利になります。

潜在ニーズの収集におけるマーケティングの重要性

潜在ニーズをお客様から引き出すためには、「マーケティング」も重要となります。

ピーター・ドラッカーなどの著名な経営学者によると、お客様にどんな価値を提供すればそのニーズを満たすことができるのかを考え、それを実際に提供することで利益を得るのがマーケティングです。

つまり、お客様が真に求めている価値を提供することができるなら、こちらから売り込みをせずともお客様が自然と買いたくなってしまうと言ってもよいでしょう。お客様の潜在ニーズを引き出すのに、マーケティングが重要なことがよくわかるはずです。

わかりやすい事例を挙げましょう。あるユーザーは、仕事中に睡魔に襲われ、それを抑えるためにコーヒーを飲みたいと思いました。この時、眠気を払うことがこのユーザーの顕在ニーズです。

この時点では「コーヒーを飲む」ことがユーザーにとっては解決手段ですから、眠気を覚ます効果の高いコーヒーを宣伝することで需要を喚起できます。

一方、仕事中に睡魔に襲われるのは睡眠の質が低いためであり、睡眠の質を改善することで仕事に集中できると提案した場合はどうでしょうか。それまで、仕事に集中したい→けれども眠気がある→コーヒーを飲んで眠気を覚ましたい、と考えていたユーザーの中に「睡眠の質を高めて仕事に集中したい」というニーズが生まれます。

お客様のニーズを発見することがマーケティングですが、顕在ニーズのみに注目していては十分なマーケティングとは言えません。お客様の抱える本当の課題に気づかせ、それを解決するための最適な価値を提供するためには、潜在ニーズを引き出すマーケティングが欠かせないのです。

潜在ニーズを引き出すためのマーケティング活動

では、どうやってお客様の潜在ニーズを引き出すことができるのでしょうか。マーケティングでは、そのためのリサーチ方法がいくつかありますが、ここでは「エスノグラフィー」と呼ばれるリサーチ方法を紹介します。

エスノグラフィーとはマーケティング用語の一種で、日本語では「行動観察調査」と言います。一般的には、調査員がお客様の生活空間に入り込み、その行動を観察し、どんな商品をどんな用途・頻度等で利用しているかといった情報を調査するのが目的です。お客様が実際に生活する環境に身をおいて観察することによって、お客様自身が意識していないニーズや価値観を明らかにするのに適したリサーチ方法と言えます。

エスノグラフィーは、BtoB企業や製造業にこそ効果が得られやすい方法と言えるでしょう。こうした企業にはすでに社内に多くの情報や経験が蓄積されているため、エスノグラフィーによって、社内の部門を超えた共通のコンテンツ、背景理解につながるからです。競合との差別化や競争力の高い商品の開発にも役立つでしょう。

潜在ニーズの引き出し方

ここまでマーケティング活動の中で潜在ニーズを発見する手法について紹介してきましたが、ここからは営業活動の中で営業担当者が潜在ニーズを引き出す手法について取り上げます。

潜在ニーズを引き出すメリット

営業担当者によって潜在ニーズが引き出されることで、お客様は自分自身が意識していなかったニーズに気づかされることになります。気づいた後では「確かにこれこそが真の課題だ」と深く納得できるでしょう。

その場合、課題に気づかせてくれた営業担当者に、自然と信頼を寄せるようになります。「潜在ニーズを顕在化してくれたわけだから、それを解決する最適な手段も提供してくれるだろう」と、自社で購入してくれる可能性が高まるわけです。

また、実際、営業担当者はこの過程でお客様のことを深く理解できるわけですから、競合相手が多数現れたとしても、理解度の点で圧倒的に有利になります。

営業における潜在ニーズの見つけ方

潜在ニーズの見つけ方の一例として、新しいサーバーの購入を検討しているお客様を考えましょう。お客様のウォンツに対して、「サーバーは現在、何台ありますか?」と現時点の状況を把握するための質問をします。具体的かつ客観的な情報を収集するためです。

次に、現在のサーバーの台数を踏まえて、たとえばその容量について尋ねます。満足しているのか、そうでないなら具体的にどのような不満があるのかなど、お客様自身がどう考えているのかを確認するための質問です。前段では、お客様の語ることは「新しいサーバーが欲しい」というウォンツに過ぎませんでした。しかし、こうして深掘りする質問をすることで、お客様自身が明確に意識していなかったニーズが出てきます。これが潜在ニーズです。

ただし、潜在ニーズが見えてきたところで、課題解決のための商品紹介を急ぐ必要はありません。お客様自身、まだそのニーズを解決する必要があるのか、本当に理解するところまで進んでいないためです。この時点で先を急いでも、成約には至りにくいと考えられます。

そこで、潜在ニーズが見えてきたところで、今度は「その課題を放置すると、どんな影響が考えられますか?」という質問を投げかけます。こうしてお客様自身に気づいていなかった課題を深掘りさせ、潜在ニーズを意識の表面に顕在化させるのです。

上記の例のように、最初のウォンツを契機に、「なぜその手段が必要なのか」「その目的は?」と手段と目的を連鎖的につなげていきます。これが潜在ニーズを引き出すのに有効な方法です。

潜在ニーズにアプローチするためのインサイト営業

お客様の潜在ニーズにアプローチする方法として、「インサイト営業」という営業手法があります。自身でも意識していない隠れた課題に気づかせて、それを解決するための商品を提供するというやり方です。

従来の営業手法は、すでにニーズが顕在化しているお客様に対して、それを解決する商品をプロモートするというやり方でした。インサイト営業は潜在ニーズを引き出すのに最適な方法です。

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お客様の潜在ニーズを引き出す質問

お客様の潜在ニーズを引き出すには、現時点で顕在化しているウォンツに対し、いくつか質問を繰り返すことで掘り下げていき、隠れている真の課題に気づかせる必要があります。表面的なウォンツの背後にどんなコンテンツが隠れているかを理解できれば、個々のお客様に最適な価値を提供しやすくなるでしょう。そこで潜在ニーズを引き出す効果的な質問方法を紹介します。

質問例①「何か変化がありましたか?」

自社に興味を持ってくれたお客様に対し、そのきっかけを尋ねる質問です。「何か変化がありましたか?」と尋ねることで、具体的なウォンツではなく、その背景にある真のニーズを探ります。

質問例②「具体的に課題に感じていることはありますか?」

具体的に何を課題に感じているのかを尋ねる質問です。お客様自身が認識している解決手段とは別により効果的な解決手段が発見できることもあります。

質問例③「〇〇を導入した理由は何ですか?」

現状に課題を感じていたとしても、最初にその商品を導入した時はそうでなかったはずです。その商品によって、それ以前にあった課題を解決できると思ったからこそ、導入したのでしょう。この質問によって、根底にあるニーズに近づくことになります。

質問例④「〇〇が解決したらどんな良い影響があると思いますか?」

ある課題を解決した姿をイメージしてもらいます。理想の状態を具体的にイメージしてもらうためです。潜在ニーズの段階ではお客様も必要性を感じていませんが、解決した状態を想像することで、その課題の優先度が高まることもあります。

ここまで紹介した質問を組み合わせることでお客様の潜在ニーズを引き出せるようになりますが、重要なのは「お客様を理解しサポートする」姿勢です。営業担当者が「自社品を販売したい」という姿勢で質問した場合、お客様にとっては効果的な質問とならないことを意識しておきましょう。

お客様の潜在ニーズを引き出した具体的な事例

最後にお客様の潜在ニーズを引き出した具体例をいくつか紹介します。

ランニングコストの低い社内システムを導入したい

これは一見、ランニングコストが課題のようです。しかし、なぜそう感じるのかを掘り下げていくと、ランニングコストは表向きの理由で、現実にはシステムトラブルの頻発により、それにかかる修繕コストを課題と感じていることがわかりました。

さらには、修繕のために余計な工数が発生してしまうことがより大きな問題でした。それらを解決して本業に注力できるようになるのなら、ランニングコストが少々上がってもいいことがわかりました。つまり、「手のかからないシステムを導入したい」というのがこの場合の潜在ニーズだったのです。

即戦力の人材を採用したい

「即戦力の人材を採用したい」のはなぜでしょうか。その理由を掘り下げていくと、実は社内の教育体制に問題があり、新入社員が定着しないことが真の課題であることがわかりました。

教育体制が整っていないために、新入社員の離職率が高くなり、それゆえ、その穴を埋めるための人材を採用し続けなければならないという状況に陥っているわけです。このケースでは、「人材が定着するように社内の教育体制を整えたい」こそが潜在ニーズでした。

営業事務員を増員したい

これは、営業事務員が不足しているからこその要望のように見えます。しかし、実際は、営業担当者の業務が属人的なゆえに、営業事務員がサポートしないと業務が回らないという課題がありました。

ということは、営業事務員を増員しなくても、業務マニュアルの作成や営業活動の可視化によって、業務効率を改善することは可能です。結果的にこの場合の潜在ニーズは、「営業事務員を削減するために、営業担当者の業務を標準化したい」でした。

確度の高い潜在ニーズを引き出すための企業研修

潜在ニーズを引き出すのは一朝一夕では実践できません。表面的な質問スキルを実践してもお客様の真のニーズに辿り着けません。自社にとって聞き出すべきニーズは何か、聞き出したニーズに効果的な自社の強みは何か、といったことも整理しなければお客様への価値提供にはつながりません。そうした場合には社内だけでなく社外研修などを活用して体系的にスキルを習得することも一つの手段です。営業組織内に共通認識が生まれ、組織的に実践できるようにもなります。

【まとめ】お客様の潜在ニーズを把握し、問題解決の本質的価値を高める

本記事により、ウォンツから潜在ニーズを引き出す重要性が理解できたはずです。お客様がウォンツを語る時は、必ずそれに至るまでの課題が隠れています。質問によってそれを顕在化させることで、お客様も真のニーズを理解し、価値の高い本質的な問題解決法を提案できるようになるでしょう。