エンゲージメントとは?

2023.12.26 (更新日:2024.06.13)

マネジメントノウハウ

エンゲージメントを高める手法とは?効果的な施策を解説!

従業員のエンゲージメントが高い企業は、離職率の低下や生産性の向上に効果があるという研究結果も出ており、近年の注目キーワードのひとつです。
エンゲージメントを高めるにはどのような施策が必要なのでしょうか。
    

エンゲージメントとは

ビジネスにおけるエンゲージメントとは、「組織と従業員の関係性」や「自社と顧客との関係性」などを指します。社内でのエンゲージメントが高いということは、組織内のメンバーが仕事に対して強い関与や熱意を持ち、組織の目標や価値観に共感し、自発的に協力して働く状態。もっと言えば、従業員が仕事に対して心から本気で取り組み、自律的で、活力あふれる行動が持続し、チームや組織に対する建設的な貢献意欲が高い状態を指します。

弊社「人材マネジメントトレーニング」よりエンゲージメントを高める必要性

人財確保の難化

日本の人口は、2008年をピークに減少に転じています。少子高齢化の影響が懸念される中、総務省統計局が発表した労働力調査(図表1)を見ると、労働力人口は一定の水準を保てていますが、これは高齢者の就労促進や女性の活躍推進の国策によって底上げされており、今後の会社を担うポテンシャルを持つ人財の確保に苦戦を強いられる企業も増えています。2023年4月、中小企業庁発表の『業種別に見た、従業員数過不足DIの推移』からも、中小企業での人財不足DIはいずれの業界でもマイナスの傾向がより強まっています(図表2)。エンゲージメントの高い組織では、従業員の離職率が低くなります。これは、厚生労働省が令和元年に発表したワーク・エンゲイジメントと定着率・離職率についての資料を見ても確認することが出来ます。(図表3)

図表1:労働力人口・就業者数の推移

            ※出典:厚生労働省 労働力人口・就業者数の推移

図表2:業種別に見た、従業員数過不足DIの推移

     ※ 出典:中小企業庁 第1章 中小企業・小規模事業者の動向 第3節 雇用の動向

図表3:ワーク・エンゲイジメントと定着率・離職率について

※ 出典:厚生労働省 ワーク・エンゲイジメントと定着率・離職率について  



働き方改革への対応

2019年4月より施行された働き方改革関連法案により、「長時間労働の是正」、「正規・非正規間の格差解消」、「多様で柔軟な働き方の実現」の3つの柱を軸に組織の変革が求められてきました。
来たる2024年には、医師や自動車運転業務、建設事業にも時間外労働の上限規制が適用されるなど、さらなる変革が求められます(図表4)。
これまで同様のパフォーマンスを発揮するためには、量≒時間でカバーしてきた分を質≒生産性を高めていく必要が生じています。

図表4働き方改革関連法の具体的な施行スケジュール

出典:厚生労働省 愛知労働局「働き方改革関連法」の概要

エンゲージメントを高めるメリット

弊社「人材マネジメントトレーニング」

チームワークの強化

エンゲージメントが高い状態では、従業員はチームとして協力しやすくなります。コミュニケーションが円滑に行われ、メンバー間の信頼が構築されるため、プロジェクトの成功に向けた努力が強化されます。

イノベーションの促進

エンゲージメントが高い組織では、従業員が新しいアイディアや提案を積極的に出し合いやすくなります。これがイノベーションを生み出し、組織全体の競争力を向上させます。

前項に挙げた必要性を満たすだけでなく、社内エンゲージメントを高めることによって、主に2点のメリットが期待できます。これらのメリットによって、業務能力全体の向上に繋がります。

エンゲージメントに与える影響要因

Harvard Business Review analytic servicesの調査により、世界で模範とされる12のベストプラクティス企業の550人以上の幹部に対する『従業員エンゲージメント』に関するインタビュー調査の結果、エンゲージメントに与える影響が高い上位の項目が明らかになっています。

1. 高いパフォーマンスに対して承認をすること
2. 自分が会社の戦略に貢献しているかを認識すること
3. 上級リーダーが戦略について繰り返し伝え続けること
4. ビジネス目標の内容
5. 企業目標に沿った個人の目標
6. 企業目標に沿った評価、パフォーマンスレビュー
7. 企業目標の達成や成長に応じた報酬
8. 企業目標に沿ったトレーニングと能力開発

大まかに見ても、言葉として明確に伝え、成長に向けた行動や結果を承認し、評価し、フィードバックをしていくことが重要であることが分かります。

また、パフォーマンスレビューについても、フィードバックとフィードフォワードに分けられることをご存じでしょうか。こちらについては、関連記事で詳しくご説明します。

エンゲージメントを高める話法を行う上でのポイント

社内エンゲージメントを高めるためには、従業員のコミュニケーション、仕事への意欲向上、働きやすい環境の整備などが重要です。組織は従業員の声を聴き、適切なフィードバックや評価を提供することで、従業員が自ら成長し、組織全体が向上するプロセスを促進することが求められます。この内、働きやすい環境の整備や福利厚生、ライフワークバランスなどは、職場環境によっては組織全体の変革が必要となり、例えば経営層ではないマネージャー層などではすぐに改善をかけることが難しいかもしれません。ここでは、職位に伴わずに実践出来るコミュニケーションに絞ってポイントをご紹介します。

期待を伝える

人は「期待されている」と感じると、使命感が高まり、その期待に応えようとポジティブな思考が働きます。期待にあふれたメッセージを具体的かつ明確に伝えることが重要です。

逆に、期待を感じないと自分は必要とされていない、重要な存在でないというネガティブな思考になり、前向きな挑戦意欲や創意工夫へのエネルギーが出せません。

価値を検討する

人は自分が価値ある存在でいたいと願う本能があるので、それを満たすために仕事も価値の高いものにしたいと思うようになります。そこで、メンバーに積極的に仕事に取り組む気持ちを抱かせるためには、担当させる仕事の重要性、必要性をわかりやすく伝え、認識させることが大切です。

また、新しいことや難しい課題に挑戦することは、自身の成長機会にもなり、仕事の醍醐味、やりがい、取り組む意味に気づくことで存在意義を実感することになります。

成功確率を上げる

仕事に価値を見いだしても、それが明らかに達成できないようなものだと前向きに取り組もうという意欲は湧いてきません。目標設定や取り組む課題を決める際は、こうしたら達成できそうだ、周りからこんな支援があれば大丈夫だ、という成功をイメージすることが大切になります。その際、メンバーの強み、今までの成功体験などをもとに、それらをどう発揮すれば成功に近づけられるかを一緒に考え、自信を持たせることがポイントです。自分の能力が生かせるという「存在承認」にも寄与します。上司として最大限サポートすると伝えることも重要です。こうした取り組みの結果、新たな成功体験を味わえればメンバーの自信と意欲はさらに高まり、より高いレベルの仕事へ挑戦することで、成長スパイルに入ります。

自己決定を促す

人は自分が決めたことに関しては、自ら積極的に取り組み、責任を果たそうとします。また、主体的に決めると、自ら考え、行動するので実行段階での学びも深くなります。

しかし、人から押し付けられたことや、心から納得しなかったことは、創意工夫をしたり、周囲に働きかけることが少なくなります。また、取り組む途中で直面する困難にも逃げずに、最後までやり切る持続的実行力も低下します。そして、失敗した場合も他責になりがちで、内省も不足するため、結果として成長にはつながりにくくなります。そこで、期待や本人が選択できるような情報を伝えたら、「価値」と「成功確率」を一緒に考え、自分で決めさせるような働きかけやサポートが重要になってきます。

承認する

人は自分が考えたり、行動した結果がどうであったかに深く関心を持つものです。これは、結果を確かめることを通して、周囲への影響力や自分の存在意義、自分の能力、あるいは自分の成長度合いが実感できるからです。

ここで、配慮する必要があるのは、結果の良し悪しだけをフィードバックするのではなく、結果に至るプロセス(活動状況・創意工夫)をきちんと観察し、認めることです。これらを通して本人の「存在承認」が満たされます。

ふり返りを促す

新たな取り組みの成功あるいは失敗体験はメンバー本人にとっても、組織にとっても貴重な財産です。ところが、多くの人がその体験を次に生かす学びに変えることができていません。常に環境が変わっていく中、成功であっても失敗であってもその意味をきちんとふり返り、その次に生かせるように働きかけることが成長するためには重要です。

よかった点は「なぜ、達成できたのか」「期待に応えられたのか」、課題については「やろうと思えばできたのにやらなかったことはないか」「こうしておけば改善できたと思うことはないか」という観点から自責でふり返る習慣づけることは、自律性向上の第一歩となります。

エンゲージメントを高めるために注意したいこと

逆を行うとどうなるか(ピグマリオン効果とゴーレム効果)

前項で、相手に期待を伝えることの重要性について紹介しました。では、これに逆行する形で期待しない(≒見放す)とどういったことが起こるのでしょうか。これは、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが提唱しているピグマリオン効果とゴーレム効果でも言及されています。上司が部下に対して期待をかけることによって、相手の能力やパフォーマンスが向上していくピグマリオン効果に対して、ゴーレム効果とは上司が部下に対して“能力がない”とレッテルを貼ってしまうと、その部下は何をしても無意味であると感じ、業績や能力が下がっていくというものです。ここで注意したいのは、個人に対する評価(絶対的ゴーレム効果)だけでなく、部下本人は評価していても配属先チームが落ちこぼれ集団の烙印を押されてしまっている場合、自身もそこに属することによって落ちこぼれになってしまう現象(相対的ゴーレム効果)も起こり得ます。

傾聴する

対話、コミュニケーションで重要な傾聴。エンゲージメントを高める上でも例外ではありません。特に、善悪や好き嫌いなど評価をせず、否定せず、肯定的な関心を持って聞くことが重要です。心理学者であるカール・ロジャースが提唱する「傾聴の3原則」にも同様の記載があります。

まとめ

昨今はVUCA時代と呼ばれ、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という時代背景から、社員の悩みは「このまま今の会社でやっていて、どこでも通用するキャリアを描けるだろうか…?」、「自分は正しい評価をされているのだろうか…」など自身の悩みから、「自分の仕事は、会社や世の中の役に立っているのか…」など理念や信念に沿っているかなど多様です。これからは「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源の適切な管理だけでなく、従業員一人ひとりの力を最大限に引き出す「ピープルマネジメント」が必要となります。自他ともに、そして組織全体で、エンゲージメントの高い状態を維持して職務を遂行していきたいですね。