2022.04.15 (更新日:2022.09.12)
ゴールドマンサックスの元トップ営業が語る「営業担当者に本当に必要なもの」|宮本剛獅氏
プロテニスプレーヤーからゴールドマンサックス・モルガンスタンレーの元トップ営業マ氏ンという華麗な経歴を持つ人材コンサルティング&カンパニーの宮本さん。
現在Twitterフォロワー数2万人越え、数々の出版社から執筆オファーが来ているそうです。
そんな話題の宮本さんに、トップ営業になった彼の「金融業界への挑戦」や「トップ営業のポイント」、「未来のマネージャーになる方々へのアドバイス」などをお聞きしました。
目次
プロテニスプレーヤーからの転身
(現地ではプロとして)大体ラケットだと50本、シューズも50足くらいもらっていました。生活費がないものですから同時に、そういうのを売って生活していたことも一時期ありました。けれどもやっぱりテニス選手としてはほとんど稼げないので、それで選手としては無理だと。
その後、日本に帰る前にプロのティーチング・ライセンスを取ったんです。教えるのが大好きなので、お調子ものですから(笑)。みんなが喜ぶことが好きなんです。
日本でテニス・ビジネスを始める
(日本に帰り)テニスを教えてみると、みんなすごく喜んでくれて。そのときに日本の「ティーチング=教える」という現場はものすごく遅れていることに気づきました。これはダメだと思って。というのも、当時いたアメリカでは全部マニュアルが用意されていたんです。構えるときのラケットの位置はここ、打つ時の位置はここ、打った後の位置はここ、といった具合に。
そうするとコーチングの資格がなくても教えられるわけです。そこで同じようにマニュアルをすぐに取り入れました。また、コーチたちには細かいアドバイスをしなくて良いと伝えていました。ただし、3倍ボールを打たせるという仕組みを作り、あとは笑わせる。だから面白いことを言ったり、ものまねしてみたり、声をかけるときは必ず名前を呼ぶことを徹底したり。汗をかいて「あー今日は楽しかったな」と感じてもらう。そういうことをやっていたら、すごい勢いで流行って大成功して。「テニス=天職だな」って思いなおしました(笑)
金融業界での挑戦を決意したきっかけ
実はその時期に、故・石原慎太郎さんや財界の方々にもテニスを教えていましたが、みなさんから「テニスやめてビジネスをやりなさい」と言われ続けていました。最初は「え?これだけ儲かって、成功してる人いないでしょ?」と思って聞いていました(笑) でも結果、25歳になったときにテニス辞めますと。(その代わり)一番厳しい世界に行こうと思いました。そこでモルガンスタンレーを選んだわけです。
(金融業界を選択した理由は)プロテニス時代から毎日毎日必死で考えて、必死にやっていたんですね。すべてのことを。だから「どうせやるなら厳しい世界でやってやろう」と思った、というだけの話なんです。ノリですね(笑)
入社時の面接もシンプルでした。
面接官:金融のことわかるのか?
私:いえ、わかりません
面接官:経済はわかるのか?
私:いえ、わかりません
面接官:大丈夫か?
私:大丈夫です
面接官:根拠はなんだ?
私:僕たちは毎日ぶっ倒れるまで頭と体を使って生きているのに、サラリーマンなんて毎日最低限のことだけやって帰っていませんか?だから勝てますよ
面接官:そうか、わかった。じゃあ来週から来い
そんな感じでした(笑)
金融時代、<戦力外通告>を受けて
入社した初日、直属の上司に「君、ここはプロが金稼ぐ場所だから、素人は邪魔なんだよ。だから辞めていいよ」と言われました。その時は「こいつにだけは絶対に負けない」と思いましたね。
その後は3つの部署に飛ばされて、それでクビになってないのもおかしな話ですけど(笑)。もうこの部署にいらないって言われたら、別の部署に行き、3か月くらいしたら次の部署に行けという感じでした。最後は吹き溜まりみたいない部署にもどってきて、空いている席の一番端っこに座れと言われて「そこで勝手にやっていいぞ」って。「え、いいの?やったー!」と(笑)
それからは隣の人の見様見真似で、とにかく電話ばかりしていました。(隣の人が)「資金部に回してください」というのを聞いて、なるほど資金部に電話すればいいんだって。「資金部お願いします」って伝えると「うちに資金部はありません」と言われたり(笑) 漫画みたいな世界でしたね。
地道な新規開拓からトップ営業に上り詰めたポイント
そうこうしているうちに、成績が上がりだしましたね。なんで結果がでたかというと、あきらめないでずっと電話していたから。
お客様からは「もう電話しないでいいっていったよね?」と言われて。「いや、僕もしたくないんですけど。給料もらっているから電話しないわけにいかないんです。お願いしますよー、ちょっとくらい付き合ってください」みたいなことを言っているうちに、なんだか仲良くなって。だから大事なのはやっぱり明るくいることと、あきらめないこと。すごく大事なんですよ。みんな暗いんです。断られたりすると「はぁ~(溜息)」みたいになっちゃう。
そもそも断られるに決まっているじゃないですか。先輩が既にアプローチしてダメだったリストばかりですから。しかも2回も3回もアプローチしているわけです。先輩がやってダメで、次の人がやってダメだったリストですから。当然うまくいかないという前提で電話していました。でも電話しないわけにいかないから電話するじゃないですか。話すことなんてないから金融の話しは一切しませんでした。スポーツの話とかゲームの話ばかりしていました。「あのテレビ観ましたか?」とか。だから特別なことをやっていたわけではないんです。でも、あきらめないでやるっていうことはすごく大事だと思っています。僕にはあきらめるっていう単語自体がないです。そもそもあきらめるという発想がないです。
採用時、どのように人材を見極めるのか
(現在は人材業界に移りましたが)人を見抜くとか、見るときは(その人の)全部をみています。目の動き、手の動き、雰囲気、話すスピード、それら全てから読み解いています。
僕はブラックボックスと呼んでいますが、性格も行動もブラックボックスを通して表れていると考えています。
ブラックボックスは過去のトラウマと生まれ持った性格が半々くらいだと思います。僕はブラックボックスを読むわけです。パッと見て違和感があるなと思ったらその人のブラックボックスを読みます。その人の本当の姿を見ます。相手がやっている態度・行動をすべてブラックボックスを含めて逆読みして表現する。だから全部見ています。すべてのことを。占い師より当たります(笑)
成功体験がありながらも柔軟性をもつことについて
僕の世代から柔軟性をとると何も残らないと思っています(笑)
柔軟でなければ変化が激しい社会なのでついていけないですよね。これでも全然ついていけないですから。だから本もかなり読みます。今、僕の周りには20代が多いですが、彼らのほうが最先端のことを知っています。だから彼らから最先端のことを教わり、僕は代わりにビジネスのことなどを教えて交換しています。
柔軟にやっていかないと本当に生き残れないと思いますよ。柔軟さが全てですね。
これからの組織、社会についての考え
いろんな人たち、例えばアグレッシブな人たちもいればそうじゃない人たちもいる、そういう人たちそれぞれが生きていけるような社会であればいいなと。一言で言えばダイバーシファイ(多様化)みたいなことを言われていますけど、まさにそうだなと思います。画一的に「ブラック企業がダメ」で「ホワイト企業がいい」ということではなく、企業の方針や求める人材を明確に情報発信し、いろんなひとたちが自分たちで選択できるようになればいいなと思っています。
だからどういう社会がいいかというのは、僕は政治家でもないのでわかりませんけど、いろんな人たちがいるので、自分に合った働き方とか望むものを、どこに行けばそれが得られるかというのをわかりやすく提示してほしいなと思いますね。
未来のマネージャーになる方々へのアドバイス
例えば20代から30代で営業をやってマネージャーになる。けれどもマネジメントできない人が多いです。もちろんすぐできる人もいるけれども、苦労している人が多い。(それは)当たり前の話でスキルがないからです。
だから「スキルを身に着ける」ことが大切です。マネージャーとしてのスキルを。マネージャーとしてのスキルは会社のレベルや、売る商材、営業担当者のレベルなどによって変わります。マネージャーになったから人格的に優れていなくてはいけないと勘違いしている人が多いように感じます。そう思わせることがそもそも間違いだと思っています。
マネジメントをやる目的の一つは、チームが効率的に売り上げを上げることです。「(ここを上手くやるためには)どういうところに問題が起きそうか」「こういう問題が起こりそうだよ」と。「(こういうことが起こったら)こう対処しましょう」とか。「何をしないといけないのか明確にしましょう」とか。「問題が起きたらちゃんと報告する仕組みを作りましょう」とか。(マネジメントは)仕組みだから、スキルの問題なんです。
そこからリーダーシップを発揮するとか、カリスマになろうとすると少し違う要素が必要になるんですけど。小さなグループのマネジメントをやる場合は大体がスキルで補えると思っています。(以前にツイートでも書いたと思いますが)まず目的を明確にするとか、やる事を明確に決めるとか、何をどうするかというルールを作ることが大事です。それを教えてあげないからマネージャーになる人が困るんです。マネージャーに向くかどうかではなくて、大切なのはスキルなんです。
だから誰でもマネージャーになれます。いつでも教えますよ(笑)
Sherpa~営業を元気にするメディア~編集部あとがき
赤いドアのインターホンをドキドキしながら押すと迎え入れてくれたのは、とびきりチャーミングな笑顔。テニス界から金融の世界への転身を「あきらめたのではなく“選択をしただけ”」。そうお話ししてくださいました。前向き過ぎる⁉︎捉え方に衝撃を受けましたが、そうやって未来志向で進んでいくのが宮本さんの強さなのだろうなと思いました。インタビュー後、「私のブラックボックスを読んでください!」とお願いしてみました。「今のままでいいと思うよ。がんばり過ぎるから、ポキッと折れる前に自分自身を緩めることが大事だね。そのがんばりを染み込ませると思って、積極的にボーっとする!」。じんわりと心に染み入りました。誰かの言葉が誰かの勇気の素になる。まさに魔法の言葉でした。宮本さんの魔法の言葉は、Twitter(@JCCmiyamoto)で!
聞き手:かもゆき(@Sherpa_KamoYuki)
(取材/撮影:Sherpa~営業を元気にするメディア~編集部 伊藤・田門)
宮本剛獅氏 著書『1%の超一流が実践している仕事のシン哲学』
モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスのスーパーエリート達の思考法が満載です!
宮本氏ならではの鋭い感性で綴る「シン哲学」をお楽しみください。