2022.09.11 (更新日:2024.09.10)
トスアップとは?ビジネス組織での部門連携を強化するトスアップ手法を徹底解説!
営業におけるトスアップとは、有力顧客の社内での紹介を指すこともありますが、世間話を通じてトスを上げ、お客様自身に「本題のテーマ」を認識してもらう場合にも使います。そこで、具体的に営業におけるトスアップとは何を指すのか、どうしてこれが重要なのかをこの記事を通して考えてみましょう。
目次
トスアップとは
トスアップの元々の意味は、バレーボールの中でセッターがボールを上げて、それを他の選手がアタックするように、次の人へ何かを上げる考えを含んでいます。マーケティングや営業の世界でトスアップと言った場合には、潜在顧客の中から見込み顧客を拾い上げて、それを次のプロセスに持って行くことを指します。テレアポを専属に行う担当者が潜在顧客の関心事を高め、ある程度話が進みそうだと感じた時に、営業担当者に引き継ぐという形です。
トスアップをするに当たっては、いくつかの要素が関係してきます。お客様に製品・サービスについての知識もしくは情報がない場合には、それを説明して情報を取り入れていただきます。同時に、お客様の関心を高めて、商談へとつながるようにします。このように、次のステップに移行できるように促す行動が求められるわけです。
同時に、潜在顧客のふるい分けも行う必要があります。話に応じてくれたお客様すべてを営業担当者に上げてしまっては、営業部門に大きな負担がかかってしまい、実際に購入に動いてくださるお客様を見逃してしまうこともあり得ます。そこで、購買の可能性が高い見込み顧客を見極めて、その方たちだけを次のステップに上げるのもトスアップの重要なポイントです。このフィルタリングをするためには、話を聞いてくれた上に資料請求やある程度の見積もりを求めてきたとか、具体的な話を自ら進めてきたといったサインを見つけて、購買意欲があるかどうかを検討することが求められます。
トスアップが必要となる背景
こうしたトスアップが必要となった背景には、ビジネスプロセスの分業化が進んでいることが挙げられます。以前は、ターゲット層の決定からテレアポや訪問先のリスト作成、そしてテレアポ、商談、クロージングまで、営業担当者がすべて行っていました。もちろん、製品・サービスの内容によってはそれでも良いのですが、ビジネスの効率化のために、フェーズごとに担当業務を分割する企業が多くなっています。
特に、テレアポや展示会における対応、ネットの問い合わせ窓口の受付などは特定のチームが行い、そこから見込みのあるお客様だけを抽出して、営業担当者に回す傾向が強くなっています。この作業こそがまさにトスアップとなっているわけです。
また、ネット広告やWEBメディアを使ったマーケティングが盛んになっているため、マーケティングから営業部署への引き継ぎも顧客獲得のためにスムーズにする必要があります。こうした部門を超えた営業活動の取り組みも、ある意味でトスアップの重要性を真剣に考えるべき理由となっています。
製品・サービスによっては、営業プロセスの最終部分で他の担当者に引き継ぐこともあります。専門性もしくは特殊性が高い製品・サービスではその傾向が強いです。たとえば、お客様個々の条件や要望に合わせて、細かく技術的仕様をカスタマイズする場合、営業専門の担当者では対応しきれないところがあるため、技術職の担当者に交代もしくは参加してもらうことで、よりニーズに合った製品・サービスを提供できます。他にも、法律上の複雑な問題が関係しているビジネスでは、法務に詳しい専門担当者に引き継ぐこともあります。こうしたプロセスの中で引き継ぎが求められる事情が生じた時も、最後の詰めとしてのトスアップが必要となるのです。
ビジネスでトスアップが注目される理由
多くの業界で専門性の高い製品・サービスを提供することが多くなっている今、トスアップの価値が注目されています。専門的な知識を持つ営業担当者は多くないため、1人でたくさんの見込み顧客に対応するのは無理があります。そこで、テレアポだけをする担当者や資料請求関連の対応窓口を務めるスタッフなどに最初の段階だけ担当してもらい、より可能性のある見込み顧客だけをトスアップしてもらうことで、無駄なく営業担当者が働けるわけです。
企業としても、このやり方を上手に運用することは業務効率化につながるということで、積極的に導入しようと努めています。営業スキルが高いスタッフをある程度購買に動いてくれそうな見込み顧客にだけ対応させることで、成約率を大きく伸ばせるからです。1人ずつにかかる負担も減りますので、仕事に対するやりがいも上がり、離職率を下げられるという効果も期待できます。
営業におけるトスアップとは
これまで紹介してきたように、営業部門もしくはお客様との商談を直接行う担当者への引き継ぎを上手に行うことが、成約率を高める重要な要素であることが分かります。これは、特に企業という組織の中でスムーズに適用される時に、より効果を発揮します。具体的に、どんな流れでトスアップがなされていくべきなのかをチェックしてみましょう。
営業と各部門の連携を強化する
同じ営業という組織の中でも、細かく部門が分かれていることがあります。特に、インサイドセールス制度を採用しているビジネスではその傾向が強いです。このインサイドセールスにおける効果的なトスアップの方法は後述しますが、重要な考え方はインサイドセールスとフィールドセールスもしくは商談担当者との連携を強化することです。
商談担当者がどんなことを見込み顧客に訴えかけるか、製品・サービスのどんな点を強調して購買へ誘導しているかを知らないと、両者の話が食い違ってしまいます。そこで、双方でしっかりと訴求ポイントや営業の目的などを話し合い、引き継ぎがなされた後もお客様が食い違いを感じることがないようにします。
多くの企業では、営業担当者と営業補助もしくは営業事務の部門とに分けています。営業担当者のサポートをする役割として営業事務がいるわけですが、企業によっては資料請求の問い合わせに対応するのが営業事務ということもあります。その場合、営業事務がお客様の関心のレベルを見極めて、それを担当者まですくい上げるかどうかを判断しなくてはなりません。誰かれ構わず営業担当者に流していては負担が大きくなりかねませんし、見極めがうまくできないと、逆にせっかくのチャンスを潰してしまうこともあります。それだけに、営業担当者と営業補佐がよく連携して、上手にトスアップできるようにしていくべきなのです。
マーケティングからのトスアップ
そして、マーケティング部門と営業部門の連携も重要です。たとえば、マーケティングで価格の安さを強調するような広告を出したとします。しかし、営業部門では納品の早さやアフターサポートの充実ぶりを強調するとなると、お客様のニーズとかけ離れたトークを進めてしまう恐れがあります。こうした事態に陥らないように、事前に両部門で同じ方向性を向いて潜在顧客にアプローチしているかを確認すべきです。基本的な点として、ターゲティングも両部門で協力しているかをチェックしましょう。訴えかける層そのものが違ってしまえば、効果が激減してしまいます。
関連記事:BtoBマーケティングとは?BtoCとの違いや基本概念とフレームワーク、戦略や手法を解説
マーケティングからの効果的なトスアップ業務のため準備
マーケティングと営業部門であっても、同じ営業組織の中であっても、トスアップをスムーズにするための準備は非常に重要です。両者が集まって話し合いや情報を共有する場を必ず設けましょう。その中では、まず誰をトスアップすべきなのかというスコアリング、もしくはフィルタリングの手法と評価基準を明確にします。
たとえば、ホームページから資料請求があった、セミナーや展示会に出席したというだけでは、実際に商談に応じてくれるかどうか分かりません。そこで、さらに見込み顧客にアプローチをして、顧客ニーズがどれだけあるかを測ります。
アンケートへの回答を求めるのも分かりやすい一つの手段でしょう。その中で、購入の意思があるとか、強い興味があると回答してくれた方に、高いスコアを付けます。もしくは、見積もり請求まで進んだら自動的にトスアップするといった、顧客行動によるフィルタリングも可能です。
どの方法であっても、明確にトスアップする人か、そうでない人なのかの基準を明確にして、見込み顧客の優先順位を付けるようにします。
インサイドセールスからのトスアップ
インサイドセールスは、資料請求や問い合わせのあった見込み顧客のニーズや関心事を高めるまでを担当します。その後はフィールドセールスにトスアップして、商談、クロージング、成約まで持って行きます。
インサイドセールスは、潜在顧客に訴えかけて関心を引き起こすと同時に、成約まで至る可能性があるかを見極める大事な働きをします。トスアップがうまく行かないと、営業担当者の仕事量が一気に増えて、成果率が下がります。そのため、事前にしっかりと準備をして、お互いの連携を強めることがポイントとなります。
関連記事:成果を生み出すインサイドセールスのポイントについてご紹介
インサイドセールスからの効果的なトスアップ業務のため準備
インサイドセールスとフィールドセールスとの事前の話し合い、情報共有は欠かさずに行うべきです。そこでは、見込み顧客とどんな流れで話をして関心を高めてきたのか、どの程度まで話が進んでいるかを営業担当者へ漏らさず伝えることが重要です。相手企業の規模や業務内容、業務システムなどに加えて、相手の担当者の個人的な好みや盛り上がる話のテーマなどが分かるなら、それも伝えると商談もスムーズに行きます。
逆に、フィールドセールスからインサイドセールスにも、様々な情報を伝えておくと良いでしょう。契約上の制約や厳しい条件があるなら、事前にそのことを説明して、納得してもらっておくようにします。そうしないと、せっかく時間をかけて商談を進めても、最後の契約内容説明の段階で話がまとまらず、今までの苦労が無駄になってしまうリスクが生まれます。
コールセンターからのトスアップ
テレアポを主に営業戦略の中に取り入れている企業では、コールセンターから営業担当者へのトスアップが大きなポイントとなります。テレアポで話を聞いてくれるとしても、単に興味本位で聞いているだけで、購買意欲がほとんどないという方もいます。また、製品・サービスに興味があるものの、コールセンターでしっかりと代金や特性、注意点などを説明しておかないと、商談に入ってから「そんな話は聞いていない」というクレームが出て、話が終わってしまうこともあります。さらには、営業担当者へつないだものの、お客様としては製品・サービスの詳細を聞きたいだけだったという、目的の異なる話になるケースも見られます。
コールセンターからの効果的なトスアップ業務のため準備
コールセンターから営業担当者への引き継ぎは上記のような事態が生じやすく、よりトスアップ業務の綿密な準備が求められる体制と言えます。
まず、トスアップをする見込み顧客の優先順位の付け方を明確にしておくべきです。特定の行動や興味度からスコアリングする場合は、厳密にそれぞれのスコアの判断基準を示して、客観的にスコアリングできるようにします。フィルタリングする場合も、単に話をよく聞いてくれたというあいまいな判定基準ではなく、代金についての質問を相手からしてきた、資料が欲しいと言われたなど、興味の度合いがはっきりと分かる行動を基準とします。
また、営業担当者への引き継ぎがなされることをお客様に明確に伝えることも、お互いに確かめた方が良いでしょう。関心がありそうだからとすぐに営業担当者へ引き継ぐと、電話をしてみるものの、お客様としてはいきなり違う人から電話がかかってきて、不快に思うことがあり得るからです。
部門間のトスアップ業務を効率的に実現させる方法
営業組織が大きいと、異なる部門で1つの企業へアプローチしていくことが多いです。また、商品開発、マーケティングと営業部門が協力して働くことで、より効果的な営業ができるものです。それだけに、部門間でのトスアップ業務をより効果的なものとなるように取り組んでいくことが非常に重要です。具体的にどんな取り組みができるのかを考えてみましょう。
共同でペルソナ・カスタマージャーニーを設定する
商談を行う営業担当者が引き継ぎについてクレームを出す多くのケースは、想定していた見込み顧客ではなかったというものです。これは、そもそも誰をターゲットとしているかという認識のバラツキが、部門によって生じているからです。そこで、関係するすべての部門で、ペルソナ・カスタマージャーニーの設定を共同して行うべきなのです。
営業担当者の意見が取り入れられることも多いですが、場合によっては経営トップがすでにターゲティングをしているため、その決定をすべての部門に通達するという方式が採られることもあります。そこを踏まえて、部門同士で集まって細かなペルソナ設定をしていきます。マーケティングではかなり細かくペルソナ設定をする習慣があるはずですので、営業担当者が描くターゲット像と合わせながら進めていくと効果的です。
見込み客の育成(ナーチャリング)を相互で行う
ナーチャリングは、潜在顧客もしくは関心度の低い見込み顧客を育成し、購買意欲を高めるために欠かせません。正確な情報提供や他社との比較、自社の優位性の説明と同時に、人間関係の構築や信頼の醸成といったものもナーチャリングの大事な要素です。
ここでのポイントは、見込み顧客の関心をどこに向けるかになります。製品・サービスの優位性のどの部分を強調するか、部門間で話し合って共通意識として持っておくと、トスアップがなされても統一感のある訴求ができます。
部門間の業務プロセスを明確化する
情報共有に問題が生じないように、業務プロセスを明確にしましょう。せっかく高い見込みを持つ方を発見できても、それをうまく営業担当者につなげられなければ、機会損失となります。こうしたことが起こらないよう、引き継ぐ見込み顧客が出たら、すぐに営業部門に情報を流せる仕組みを明確にするわけです。その見込み顧客について情報も詳細に伝えられるように、内容を見ればすぐに商談に移れる形を作ります。また、見込み顧客に対しても、別の担当者に代わって詳しく説明をする旨を上手に伝える方法を考えておきましょう。
相互のボトルネックを理解し最適なオペレーションを構築する
ボトルネックがどこにあるかを知っていれば、自分たちのすべきこと、次のステップで求められることが明確になります。そのためにも、トップで何を成し遂げたいのか、どんな流れで成約まで至るのか、トップからボトルまで逆算してオペレーションを考えるのが効率的です。それぞれのステップで達成しておくべき点などを文書化しておき、それができたら自動的に次に渡すという流れを作っておきましょう。
トスアップの成功事例をみる
企業がセミナーを主催して、そこから見込み顧客を発掘する営業手法を用いた企業の事例を紹介します。この企業は参加者リストからインサイトセールスがDMもしくはテレアポにより、フォローを行っています。しかし、営業担当者に引き継いでも商談が続かないなど、効率が悪い状態でした。
そこで、ニーズの内容や顕在化を明確にレベル化して、それをインサイドセールスがスコアリングして、一定レベル以上になったら営業管理システムで営業担当者にトスアップする仕組みを作りました。また、営業管理システムを新たに導入して、テレアポ時の細かな反応や相手が述べたことなどを記録して引き継ぎできるようにしました。
それにより、より関心レベルが高い見込み顧客だけを担当者に引き継げるようになりました。また、引き継ぎ作業が効率化され、次のフェーズに進むまでの時間を短縮できたことで、お客様の関心が下げることがなくなり、継続して良い商談ができるとの観察が得られました。
確度の高いトスアップを実現するための企業研修
トスアップの効率を上げるためには、企業内で研修をすることが重要です。今までに取り上げたような準備を、部門としても、個人としても、徹底できるように指導します。スコアリングやフィルタリングはそれぞれの判断力が問われるところでもありますので、見込み顧客の見極めができるように教育することも重要です。そして、自分の仕事が他部門の効率に大きく関わること、最終的には成約率に影響する意識を持たせることで、業務がスムーズに進み、効率化がなされていくのです。
【まとめ】効果的なトスアップを実践し、部門連携を強化する
この記事では、トスアップが営業効率を高めるために、いかに非常に重要な業務であるかを説明してきました。効果を出すためには、それぞれが役割を理解して働きを全うすると同時に、部門間の協力体制とシステム作りが不可欠となります。企業を挙げて、この課題に取り組みましょう。