2024.02.27 (更新日:2024.03.25)

営業戦略

バックキャストとは?未来像や目標に近づく5つの効果的な方法を徹底解説!

バックキャストとは、未来から逆算して目標や計画を立てる戦略的思考のことです。

ビジネスにおいては、現状の課題を改善するために、目標や計画を立てる必要があります。そのために役立つ考え方はいろいろあります。ここでは、バックキャストという考え方がどのようなものか、フォーキャストと呼ばれる思考法とは何が違うのかを取り上げます。

バックキャストとは

前述した通りバックキャストとは、未来から逆算して目標や計画を立てる戦略的思考のことを指します。たとえば、20年後にはこんな企業にしたいとか、事業のこの面でこのくらいの数字を達成したいなど、先に未来における到達点を定めます。そして、そこから逆算して10年後、5年後にはどの程度のレベルに達しているかを考え、今すべきことを見つけるという考え方です。

「ビジョン型の思考パターン」と言うこともでき、企業や事業の理想的な姿を思い描いた後に、それを具体的に実現する方法を探る形で戦略を立てていきます。目標が明確になっていますので、そこから現状との比較をして足りない点を確認し、どの時点でどの課題を克服しているべきかを洗い出します。課題克服の順番も同時に決めて、それぞれをステップ化して時間軸で整理すれば、明確な計画ができることになります。

バックキャストが必要となる背景

どんな企業やビジネスパーソンでも、理想となる姿をイメージしていますし、将来こんなことがしたいというビジョンを持っているものです。しかし、現状に追われてしまい、どうしても未来志向の考え方ができなくなっているのが事実です。特に、現代社会はビジネスを取り巻く環境が厳しく、スピード感を持って現状にいかに対処するかということで精一杯という状況が見られます。そうなると、企業戦略も個人としての考え方も非常に狭いものとなってしまい、自由で創造的な発想が生まれてきません。現代は特に、このバックキャスト的な思考が求められているのです。

また、企業は社会やマーケットの大きな動きに合わせて行動していかないと、長期的に見て生き残りが難しいのが現実です。長期的な観点で戦略を立て、自社のブランド力や人材力、競争力を右肩上がりで高めていく必要があります。そのためには、今起きている課題に対処するだけでなく、あらかじめ未来の企業の理想像もしくは目標を定めて、そこに向かって達成するための具体的なアクションを取っていくことが重要なのです。

ビジネスでバックキャストが注目される理由

このように、バックキャストはどの企業でも必要とされるものですが、現代の日本のビジネスでは特に注目されています。その理由の一つは、SDGsへの注目の高まります。昨今注目を集めているSDGsはバックキャストの思考が基本となって作成されました。2030年に実現したい状態を定義したとりくみであるSDGsにはバックキャストの思考方法が活用されています。地球環境への配慮を企業として行っていく必要性が高まっており、社会的な責任を負う組織として、どの企業もSDGsを考えた戦略を立てるべき状況となっています。

SDGs戦略では、二酸化炭素の排出削減を筆頭に、将来における目標が掲げられていて、それを実現するために何をしていかなければならないかという考え方が取られています。SDGsは、未来から逆算するバックキャストの思考ですから、事業戦略の中にも未来を中心とした時間軸が取り入れられています。

バックキャストのメリットとデメリット

バックキャストを戦略立案、事業計画の設計に役立てることにはいくつものメリットがあります。一方で、この思考パターンでは立案はできても、実行の段階で挫折してしまうリスクが生じるといったデメリットとなる部分もあります。両方の要素を押さえて、バランスよく思考を進めていくことが重要です。バックキャストによるメリットとデメリットをチェックしてみましょう。

バックキャストのメリット

バックキャストを取り入れることのメリットは大きく、企業やビジネスパーソン個人の成長に大きくつながります。常に前向きに、先を見通す思考ができるようになるからです。具体的にどんなメリットが生まれるのかを見てみましょう。

ゴールや目標を先に設定できる

何事もゴールが見えていると、それに至るまでのステップを考えやすくなります。また、現状として起きている問題に追われるだけではなく、未来に向かって努力しようというモチベーションとともに、楽観的で積極的なマインドを持てるというメリットが生まれます。これは、現場で働く人にとってやりがいを与えるものとなりますし、たとえ負担となるような状況が生じても、ストレスを回避するのに役立ちます。結果として、社員の士気を向上させ、離職率を下げることにつながります。

また、目標が先に設定されることで、明確なステップが見えてきます。どの時期までに何を成し遂げたら良いのかが分かります。そして、それぞれのステップでどんなアクションを取るべきかもすぐに設定できます。

理想の姿を事前に共有できる

バックキャストは、ビジョン型の思考ともかなり似通ったところがあります。常に理想の姿や社会、企業としてのブランドイメージがあり、中期的な目標や現在すべきアクションなども、すべてその理想の姿になるための道のりという意識を持てるのです。

こうした明確なビジョンがあると、社員の自主性もしくは自発性が高まるというメリットが生まれます。というのも、目指すべき姿に近づくためには、今自分が何をしなければいけないのかを考えるようになるからです。

組織の意思決定がしやすくなる

企業という組織の単位でも、バックキャスト型の戦略立案をすることは大事です。経営者は常に現状打破だけではなく、未来のビジョンを持って戦略を作っていくべきだからです。そして、将来こんな企業になるように成長したい、こんな数値を達成したいという目標が見えていれば、細かな課題についての意思決定がしやすくなります。その決定によって、ビジョン達成に近づくことができるのか、それとも遠ざかってしまうのかというロジックで判断できるからです。

そして、全社的に一つのイメージやビジョンを共有することができていれば、他者の納得と協力を得やすいのもバックキャストのメリットです。取締役会であっても、チームメンバーであっても、皆が共通するビジョンを持っていれば、それを軸にして判断できますので、意思決定が早くなるわけです。

大きく飛躍させることができる

バックキャストは、成長誘導型の思考パターンでもあります。そもそも、この思考方法は今よりも高いレベル、成長した姿になることを目指して、現在そして途中のプロセスで何をすべきかを考える仕組みです。全てのステップやアクションは、成長を着実にしていくための道のりとなり、常に成長過程を踏んで行けるというわけです。

また、バックキャストは自由な発想を生み出す土壌を作ります。現実に追われて仕事をこなしていくのではなく、大きな目標に到達するためにどうしたら良いかと考えながら働くことになります。広い視野で物事を見るようになりますし、事業の進め方も長期的な観点で判断できるようになります。さらには、多少の失敗やミスがあったとしても、長期的に見れば取り返すことができるとか、逆にその失敗が将来の成長につながるという見方ができます。こうしたポジティブなバックキャスト思考は、社員一人一人の努力や独創的な発想を促すものとなり、個人としても、企業としても、大きな飛躍につながるのです。

バックキャストのデメリット

バックキャスト的な戦略立案と現場における実行は、時にデメリットをもたらすことがあります。その実情を知ることで、具体的にどんな対策をして、リスクを回避できるかを学べます。

現実とのギャップに中断してしまうこともある

バックキャストでは理想の姿もしくはビジョンが前面に出ますので、常にそれを意識して決定や行動を行うことになります。しかし、その未来の姿と現状とのギャップが激し過ぎて、目標は現実的ではないという思いにとらわれてしまうことがあります。もしくは、途中までは努力して実行してきたものの、設定期間内に到達するのは難しく過ぎると気付き、そこで努力がストップしてしまうことも考えられます。SDGs戦略で多いのですが、経営陣トップがビジョンを打ち出しても、社員がそんなことは無理だと最初から諦めてしまっていることも、会社組織ではよくあることです。

長期計画でモチベーション維持が困難になる

バックキャストを成功させるためには、最後までモチベーションを維持することが不可欠です。しかし、途中で息切れしてしまうことが多いのも事実です。特に、進捗状況が振るわない時や、何らかの環境変化が生じてそのビジョンそのものに疑いを持つようになると、モチベーションは一気に失われてしまいます。そこまででなくても、立案時には熱意にあふれていたものが、次第に熱が冷めていくことは、どの組織でも十分起こり得ることと言えます。

バックキャストとフォーキャストの違い

バックキャストの対義語とも言えるのがフォーキャストです。フォーキャストは、現時点を軸として、先に思考を進める考え方です。現状で起きている課題を解決するためにはどうしたら良いのか、その後どの課題に取り組んでいくか、どんなリスクが生じ得るかなどを予測しつつ、対処していくことを目的に戦略を練ります。

このように、バックキャストは将来から逆算して計画を立てるのに対して、フォーキャストは過去や現在の課題から将来へと向かって計画を立てていくという違いがあります。また、バックキャストはビジョン的な目標に向かっていき、何かプラスの目的を達成するために進んでいく傾向が強いです。一方のフォーキャストは課題解決のため、つまりマイナス要因を改善することが主眼となっていることが多いという違いもあります。

関連記事:フォーキャストについてより詳しく知りたいかたはこちらもどうぞ

バックキャストを実現させる具体的な5つの方法

漠然と将来のことを考えればバックキャストができるわけではありません。体系的な思考方法を身につけましょう。

未来のありたい/あるべき姿を定義する

理想像や企業のブランドイメージ、個々の社員の最終目標、SDGs目標といった未来のあるべき姿、もしくはこうありたいというイメージを描きます。その際には、あいまいなものではなく、他の人に説明して理解できる、客観的な情報を提示することが大事です。

関連資料:組織のビジョンを描くステップについてはこちらの記事から↓

ビジョンとは?ミッションやバリューとの関係、ビジョンマネジメントにおける6つの実践ステップを徹底解説!

現在と未来のギャップ(課題・可能性)を徹底的に洗い出す

当然、未来の姿と現状とは大きな差があるはずです。中期目標を作るには、その課題や可能性を徹底的に洗い出して、それを克服するためのプランを練る必要があります。

人材・資金・スキル・時間等あらゆる課題を洗い出す

具体的にどんな洗い出しをするかどいうことですが、やはり体系的にジャンルを分けをして分析をすべきです。たとえば、事業推進のための予算はどのくらいになるのか、目標達成のためにどのレベルの技術が求められるのかなどです。また、果たして今いる人員数でやっていけるのか、専門職となる人材が現状で足りているのかなどを検討します。このようにして、徹底的に環境と課題を全ての部門で洗い出します。

可能性1:自社のリソースを最大限活用する

第一選択肢としては、すでにある自社のリソースを活用できないかを考えます。十分なポテンシャルを持っているものの、それを使い切れていないだけというのはよくあることです。もしくは、DX化を図るといった業務システムを改善することで効率が上がり、余計な人材や時間をかけずに今の体制のままでもやっていけないか、可能性を検討します。

可能性2:他社のリソースを最大限活用する

自社リソースだけでバックキャストが難しい場合は、他社の製品・サービスを活用することを考えます。具体的には、業務代行や人材派遣、設備リースなど、環境を効率よく改善する手段を採ることです。

可能性3:地域社会のリソースを最大限活用する

地域社会には大きなポテンシャルがあります。メリットが大きなものとしては、自治体からの助成金や補助金が挙げられます。また、地元のネットワークを生かして、技術協力や人材紹介などのケアを受けられないかをリサーチしてみるのも良いでしょう。

可能性4:協業することで得られるリソースを調査

他の企業や行政機関、専門職と協業することで、リソースを得られることも多いです。特に、業界での経験が豊富な企業と提携することで、ノウハウを吸収できます。受け入れ型のアウトソーシングを利用して、そのシステムや技術を学ぶという方法もあるでしょう。

未来のビジョンを設定し、全員で共有する

社内で徹底すべきことは、やはりビジョンの設定と共有です。ここができていないと、何をやってもバックキャストはうまく行きません。具体的にどんな形で共有ができるかをチェックしましょう。

時系列で目的・目標を書く

SDGs戦略を筆頭に、バックキャストはそれなりに長い期間で物事を考えなくてはなりません。そうすると、現実感がなくなってしまう恐れがあります。そこで、時系列でステップを区切り、それぞれの過程で成すべき目的や目標を設定します。そして、明確に文字化して、文書や表にします。

メンバーで詳細な部分まで共有する

全てのメンバーで目標を共有しますが、その際には詳細な点まで理解してもらうようにします。そのためには大まかな目的だけでなく、具体的な数値目標のような分かりやすい形で提示することが求められます。見える化をどこまで上手にできるかが、バックキャストの成功にかかっていると言えるでしょう。

行動に結びつく具体的なアクションプランを設定する

目標だけあっても、行動が伴わなければバックキャストの意味がありません。そこでアクションプラン、つまり実際に何をどのようにすべきかを示す作業も必要です。

具体的な施策を練る

目標達成に対して、どの分野でどの施策を取る必要があるかを、明確なアクション内容として考案します。その際には、どの設備やシステムを使うのか、誰が率先するのかなど、見てすぐに動ける内容にしておきましょう。

行動に優先順位をつける

バックキャストは長期的な行動目標となりますので、すべきことは膨大な点数となります。そこで、どのアクションがより重要か、もしくは先にすべきなのか、優先順位をつけます。その上で、それぞれに期限や予算などを割り振り、優先順位ごとに実行できるようにします。

未来のビジョンを忘れないよう定期的に確認する

振り返りと分析、修正は、バックキャストをスムーズにするために重要です。時には、大きな方向修正が求められることもあります。最終目標到達までに現在の進捗状況で間に合うのかという時間軸での分析と共に、技術や人員などのリソースの面での分析を行いましょう。それぞれのステップの中で分析の予定を組んでおき、間違いなく定期的に振り返りができるようにしておきます。

バックキャストの成功事例企業

スウェーデンのオーラライトという企業は発熱電球メーカーですが、LEDの登場によって、大きなビジネス変更を決意します。その一環として、新しい照明デザインの提供やコスト削減などの未来の姿を定めました。5年間で売り上げを2倍にするという目標を定め、営業エリアの拡大やデザインの見直しなど、サービス提供体制刷新のアクションを決めます。その実現のために、社員増員やビジネスモデルの転換などの具体的な施策を実行していきました。

それにより、ヨーロッパ市場で高いシェア率を確保できるようになり、その後もSDGsを達成するためのより長期的なビジョンを持ちながら、成長を続けている企業となっています。

バックキャストを学べる研修に参加する

従来の日本社会ではフォーキャスト型の思考が基本となっているため、バックキャストに切り替えるのは難しいのが現実です。そのため、体系的な訓練を受ける必要があります。様々な企業で指導を行い、多くの課題を目にしてきたプロ講師が実施する研修に参加してみるのも良い方法です。具体的にどんな流れで思考を進めたら良いのか、チームで共有するためにどんな行動に出たら良いのかを学ぶことができるはずです。

【まとめ】バックキャストを実践し、未来のありたい・あるべき姿に近づくには 

 バックキャストは、企業にとっても、個人にとっても、ぜひとも身につけたい思考方法です。未来のあるべき姿に近づくためには、正しい思考方法と共に、それに至るまでのプロセス設定を上手に行うことが求められます。研修を活用して、こうしたスキルを磨いていきましょう。