2022.04.03 (更新日:2024.03.26)

マネジメントノウハウ

営業戦略のフレームワーク厳選6選と営業戦術やマーケティング戦略との違い、実行ステップを徹底解説!

営業戦略とは、新規顧客を獲得するためのビジョンや道筋、方向性を明確にして、それを達成するための全体的な指針を定めることを言います。

営業組織として営業効率を高めるためには、明確な目標や方向性を定め現場が実践できるようにする必要があります。そこで、営業戦略をどのように立てたら良いのか、どんな手法で分析を行っていくのかを解説します。自社に合った手法を見つけられるよう検討しましょう。

営業戦略とは

営業部署では、個人として営業担当者が目標を立てたり、自分の得意とするアプローチの仕方を確立したりします。しかし、全社として業績を上げていくためには、個の力だけでなく組織としての効果的なやり方を見出し実践する必要があります。そこで求められるのが、明確な営業戦略を立案することです。まずは営業戦略とはそもそも何を指すのか、マーケティングとのバランスをどのように保ったら良いのかを押さえておきましょう。

営業戦術との違い

営業戦略というのは、新規顧客を獲得するためのビジョンや道筋、方向性といったものを指します。このビジョンを明確にして達成するための全体的な指針を定めることも関係しています。このように、営業戦略というのは営業部署を方向付ける、大まかな道筋や目標と言うことができるでしょう。

この営業戦略と混同しやすいのが、営業「戦術」というものです。戦術という場合、より細かく狭い範囲のもので、個別の案件についてどのように対処するかを考えるものです。大枠で捉える営業戦略に対して、それぞれの顧客や商材に対して具体的な手法を検討する営業戦術という違いがあるというわけです。また、営業戦略は長期的な観点に立ったものであるのに対して、戦術は短期間における方策を意味するという違いもあります。

マーケティング戦略との違い

営業戦略と似ているものとして、マーケティング戦略を思い浮かべる人もいます。確かに、どちらも商材をアピールするという同じ行動をすることがあります。しかし、この二つには打ち出す目的の違いがあります。

営業戦略というのは、お客様を見つけて販売することが目的となっています。そのため、具体的な目標として新規顧客数や売上数といった数字を挙げます。一方でマーケティング戦略は、ブランドもしくは企業としての価値を高めたり創出したりすることや、新しい市場を作るといったことが主な目的となります。

営業戦略とマーケティング戦略の関係性

目的が異なるものの、営業戦略とマーケティング戦略を調和させることにより、最終的な業績向上、ブランド価値上昇につながります。マーケティング戦略では、不特定多数に対してアプローチすることが一般的で、ターゲット(=ペルソナ)を明確にするものの、個別の人や企業ではなく、一つの層として大きく捉えてアプローチをします。

こうして製品・サービスや企業としての知名度や関心度を高めた状態で、個別の見込み顧客にアプローチします。これが営業戦略となります。このように、まずはマーケティング戦略を実行することで、全体に対する働きかけをして、その中から関心を持った見込み顧客に対して、直接訴求するという営業戦略を実行するわけです。最近では営業担当者が営業活動を行う前にすでにお客様が購買プロセスの一部を終えているケースも増えており、両者を関連付け補完しあう戦略を立てることが重要となっています。

営業戦略立案から実行までのステップ

闇雲に目標や営業手法を決めても、いわば運任せの作業となってしまいます。こうしたことが起こらないように、根拠のある分析とそれに基づく方針決定をする必要があります。ここでは立案から実行までのステップをご紹介します。

ステップ1:内部環境・外部環境の分析

内部環境とは自社のリソースになります。自社のブランド力や組織体制、さらには製品の品質やコスト、拠点の配置状況などがそれにあたります。

外部環境とは、自社や顧客を取り巻く市場環境、競合、または関連する法規制や制度になります。内部・外部の視点から自社の置かれた状況を客観的に分析し把握することが戦略立案の最初のステップとなります。

ステップ2:上位方針を理解し目標を設定

フロントラインの営業戦略は、全社戦略から本部戦略、支店戦略へと連鎖した形でカスケード
(滝のように上位から下位へ展開)していかなければなりません。

単に、上位目標を下位に展開するのではなく、常に上位の役割・目標と下位の役割・目標との
連鎖を検証し、そのプロセスで上司と部下が役割・目標の内容を共有し合意します。これによ
り、常に一人ひとりの仕事が上位役割のどこに貢献し、どのように期待されているかをそもそ
もの役割に立ち返って実感することができます。

これは、営業マネジャーにとって最も大切な責任領域であり、漫然と数字を追いかけるのではなく、上位戦略の意義をマネジャー自身がしっかりと腹落ちした中で自チームのビジョンにもとづく戦略を策定しなければなりません。

もし、営業マネジャーが上位戦略を自分の言葉でメンバーに説明できない場合は、納得するま
で上司と確認する必要があります。

カスケードダウン

ステップ3:具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定

方針が明確になると、次は具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIとは、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、その達成状況を定期的に評価することで戦略の進捗度を把握できるようになります。たとえば、商談獲得数、資料請求数、成約数といったものです。KPIについては戦略に応じて設定する必要があり、設定した目標とのギャップを可視化することで戦略に実行が順調に進んでいるかどうかを見極める視点となります。

ステップ4:モニタリングしPDCAの実行

戦略を立案し評価するKPIの設定ができると実行プロセスへ移行します。ここで重要なのは定期的にモニタリングすることと、必要に応じて軌道修正を行うことです。

実行プロセスではチーム単位、部門単位でPDCAを実行します。設定した指標をベースに分析と改善、検証を繰り返し戦略の精度を高めていくことが重要です。

フレームワークとは

上位戦略を受けて自チームの戦略へと反映していきますが、自分たちを取り巻く環境も適切に捉えておかなければなりません。それによって、上位戦略の真の狙いが理解することができるのです。取り巻く環境は全社視点でのものと自チームが担当するエリアや市場特性などの視点でも見ていく必要があります。

営業戦略を策定しPDCAを回していくためには、いくつもの分析点や考慮すべきポイントがあります。複雑になりがちな営業戦略を効率よく、また漏れがないものにするためにフレームワークの活用が効果的です。ここではフレームワークを活用して営業戦略を策定するメリットと注意点についてご紹介します。

フレームワークを活用するメリット

フレームワークは、特定の要素を重視して分析をする手法です。何を対象とするのか、どの指標で分析をするのか、分析された結果から何が分かるかといったポイントが決まっています。いわば、営業戦略立案と分析のフローチャートや、すべきことのリストができあがった状態なのです。そのため、上手く活用することで営業戦略策定を効果的に進めることができます。

フレームワーク活用時の際の注意点

複数のフレームワークがあり、それぞれに目的や特性が異なります。そこで、まずは様々なフレームワークの特徴を知ることから始めることをお勧めします。その上で、自社にとって適したものを使うとよいでしょう。また、それぞれの特性を理解し組み合わせて活用することも有効です。

営業戦略で役立つフレームワーク厳選6選

ビジネスの現場で用いられている代表的なフレームワークを6つ取り上げます。
外部環境をマクロとミクロの両面からその動向を捉えていきます。マクロはPEST分析というフレームワークを使うのが一般的です。ミクロは3C分析を使います。外部環境が整理できれば、次に内部環境として会社の状態を7S分析などを使って整理していきます。それぞれの特徴と目的を理解し自社に適したフレームワークの選択に役立ててください。

3C分析

3C分析とは、「Company(自社)」、「Customer(顧客)」、「Competitor(競合他社)」という3つのCについて掘り下げて分析を行う手法です。
顧客(Customer):顧客のニーズがどうなっているのか。その取り巻く市場環境の変化はどうか
競合(Competitor):競合が顧客や市場環境の変化にどのような対応を行っているのか
自社(Company):顧客と競合の分析から、自社が勝てる要因はどこにあるのか
3つの要素は互いに影響しあっており、その関係性から自社を客観的に把握することで営業戦略の方向性を判断することができます。

PEST分析

PEST分析とは、政治・経済・社会・技術の4つの視点から自社を取り巻く外部環境を分析する手法です。P:Politics(政治)、E:Economy(経済)、S:Society(社会)T:Technology(技術)の頭文字を組み合わせたもので、4つの切り口から分析することで自社の置かれた外部環境をマクロ的に把握することができるため、営業戦略に影響を及ぼす要因を特定できるメリットがあります。
環境分析が十分でない場合は営業戦略を実行しても効果が出ないなどのリスクが生まれるため、営業戦略の策定にあたっては十分な分析が必要となります。

7S分析

7S分析はコンサルティング会社で代表的なマッキンゼーが考案した組織マネジメントのフレームワークです。
企業を構成する要素を7つに分け、企業の問題点を多面的に洗い出すというものです。3つのハード要素「戦略(Strategy)」「組織(Structure)」「社内の仕組み(Systems)」と4つのソフト要素「人材(Staff)」「社内のノウハウ(Skills)」「経営スタイル(Style)」「企業の価値観(Shared Value)」で構成されています。
この7つの経営資源を分析したうえで改善・修正を考える分析手法です。1つの観点からではなく、各要素の整合性とバランスが重要と考えられています。

営業戦略 フレームワーク

STP分析

STP分析は「S=セグメンテーション」(市場の細分化)、「T=ターゲティング」(ターゲットの絞り込み)、「P=ポジショニング」(自社の市場における立ち位置)の視点から営業戦略を導く手法です。これらの分析を要素ごとに行うことによって、市場での自社の優位性を知り、競合他社との差別化を図るべきポイントを見定められるようになります。
また、細かく市場やユーザーを分けて考えることも重要なポイントとなります。ターゲットを分類して整理することで、より自社が攻略すべき顧客層を発見することができます。自社の営業リソースを効率よく最大限に活用するために役立つ分析手法です。

SWOT分析

SWOT分析とは、内部環境(自社リソース)と外部環境(市場・顧客・競合)をそれぞれ自社の事業にとってプラスとマイナスの両面で整理する手法です。内部環境にあたる自社のリソースを、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」に分類し、外部環境である市場・顧客・競合に関する情報を「Opportunity(機会=自社にとってのチャンス)」「Threat(脅威=自社にとってマイナス要因」に落とし込むことで、自社がとるべき戦略を導き出すことができます。
プラス要因とマイナス要因の両側面から分析するため、マイナス要因となりえるリスク(弱みや脅威)を補完する戦略の策定や、チャンス(機会)に対する戦略の検討を行う際に効果的です。

クロスSWOT

*「機会×強み」は、強みを活かして機会に乗じるためにリソースを集中投下して進める戦略項
目を抽出します。
*「機会×弱み」は、弱みを補強して機会に活かす戦略項目を抽出します。
*「脅威×強み」は、強みを活かして脅威を乗り切る戦略項目を抽出します。
*「脅威×弱み」は、最悪の事態を避ける影響を小さくする戦略項目を抽出します)

ロジックツリー

問題について論理的に、その原因を探るプロセスと解決策を見出すプロセスを繰り返していく手法です。問題について「なぜ」と「どうやって」という疑問をぶつけていくことで、本質をシンプルに見極めていくのが特徴です。要因や課題、解決策をツリー上の図を描いて考えていきます。こうすることで、客観的な思考ができ、他の人と共有しやすいといったメリットが生まれます。また、一見複雑に見える問題も、一つずつ図にすることでシンプルに考えられるという利点もあります。

営業戦略を立てる際の注意点とは?

営業戦略の立案は自社としての方向性を決める重要な作業ですが、注意すべき点があります。効果的な営業戦略の立案と実行のために、注意するポイントを確認しておきましょう。

戦略作りに時間をかけすぎない

分析と検討、そして立案をしていく作業は簡単ではありません。しかし、あまりに時間をかけていくと、それによって失われる営業機会が大きなものとなってしまいます。また、目まぐるしく情勢が変わる現代社会においては、時間のロスが戦略そのものに変化を迫ることもあります。そのため、できるだけスピーディーに戦略作りを行い実行へと移すことが重要です。

実行後のレビューと修正が大事

戦略を立案した時点では仮説にすぎません。戦略立案は実行が伴ってはじめて効果を発揮することになります。このため、大きなリスクを伴う実行は慎重に準備することが必要ですが、一般的には実行段階で修正しながらより良い戦略に練り直していくことが重要になります。機動的かつ柔軟な取り組みをすることによって、現場の声が反映された営業戦略が出来上がります。そのためにも、戦略立案のプロセスでは明確なKPIを設定し、PDCAサイクルを回す仕組み作りが大事になります。

【まとめ】フレームワークを活用して効果の高い営業戦略を策定する

BtoB営業においては方針やビジョンを浸透させ、営業チームや営業担当者が共通の方向性をもって活動することが不可欠となります。そのための共通言語が「営業戦略」です。営業戦略を策定することに高い壁を感じているマネージャーや組織のリーダーもいますが、代表的なフレームワークを活用することで抜けもれなく、体系的に営業戦略を立案することができます。ここで取り上げたフレームワークは代表的なものですが、それぞれの特徴を理解し、組み合わせて活用することで効果的な営業戦略を立てることができるでしょう。

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