2022.04.15 (更新日:2024.04.02)

マネジメントノウハウ

チームビルディングとは?組織活動における実践方法とマネージャーの役割を解説

チームビルディングとは、ビジネスでの目的を成し遂げるためにメンバーひとりひとりがスキルや経験を活用し、チームとして目標達成していく取り組みのことを指します。

これまで組織活動は、担当者個々の能力や経験に頼ることが多い傾向にありました。しかし、最近ではチームとして目標達成に取り組む動きが強くなっています。その一つの考え方が「チームセリング」と呼ばれるものです。
この「チームセリング」が機能するためには「チームビルディング」ができていることが前提となります。本記事では「チームビルディング」という考えのメリットと企業における実践について解説致します。

目次

「チームビルディング」とは?

冒頭で述べたようにチームビルディングとは、ビジネスでの目的を成し遂げるためにチームとしてまとまり、活動していくことを指します。これは、従来の部門や課といった枠組みだけの話ではなく、特定のプロジェクトや目的のために部署を超えた組織作りをすることも含んでいます。そのため、一つのジャンルの経験者だけでなく、異なるジャンルのプロフェッショナルが集まったり、新入社員から経営陣まで異なる役職が集まることもあります。

チームビルディングでは、従来の日本の組織とは違うリーダーシップが特徴となっています。つまり、従来は最も経験とスキルの高い人がリーダーとなり、チームを管理するという感覚が強いものでした。しかし、チームビルディングにおいては、メンバーそれぞれが異なる分野でスキルを持ち、すべてが同じように力を発揮することを求めます。そして、組織としての強みを生かして、全体で高い質の業務を達成することを目的とします。そのため、リーダーはあくまで調整役であり、それぞれの持ち味を最大限に発揮させたり、別メンバーとの良い調和を持てるようにしたりする役割を果たします。

ビジネス組織における「チームビルディング」の目的は?

個々の力を重視しつつも、組織としてまとまり個々の生産性を上げていくのにチームビルディングは大きな役割を演じます。特に、ビジネスではスピードが重視されますので、より良い意思決定を速やかに行える環境を作ることが求められます。こうしたことを達成するために、チームビルディングではそれぞれの担当者のスキルや蓄積されてきた経験を最大活用して、全体として効率の良い活動を目指します。そのチームビルディングの主な目的をいくつか考えて、基本的な指針を理解しておきましょう。

コミュニケーションを活性化させる

チームビルディングでは、個々のメンバーをまとめていきます。それにより、社内でバラバラに働いていたメンバーが、お互いにコミュニケーションを取る場を設けることができます。メンバー同士の信頼関係を高めることができますし、お互いから学ぶ機会を持てます。さらに、率直に意見を伝えることで、良い刺激が社内に生まれて士気が高まったり、成長を促す前向きな雰囲気が作られたりするのです。

例えば、営業において特にマーケティングや製品・サービス開発といった他部署との連携も重要です。しかし、企業として明確な取り決めを設けなければ、意思疎通が疎かになってしまうことが多いです。そこで、チームビルディングによって、異なる部署であっても、意見交換をしたり双方に役立つ情報を共有したりできるようになります。協力の精神が生まれることで、スムーズな情報収集や分析が可能となります。

方針と戦略を浸透させる

従来の営業スタイルだと、個々の力に頼りがちです。そして、それぞれのメンバーの独自の営業手法や顧客層というものができてしまいます。そうなると、組織としての統一された方針や営業戦略が重視されず、とにかく目先の業績を上げれば良いという意識になります。そこで、チームビルディングを取り入れることで、営業戦略を浸透させて高いレベルでの標準化につなげることができるのです。

こうした戦略の浸透は、業務効率のばらつきを減らして経営に安定感をもたらします。また、新入が入ってきても、共通の考えに基づく育成ができますので、早期の戦力化ができるというメリットも生まれます。

目標達成の確率を高める

とりわけ営業においては、ある程度長い期間に及ぶ商談の繰り返しや、複雑な営業プロセスを踏むことが多いです。そのため、アプローチは上手くできてもプレゼンテーションは今一つといった営業担当者のスキルに不確実性があると、せっかく案件化した見込み顧客を逃してしまうことがあります。しかし、チームビルディングでは、それぞれの分野で秀でた営業担当者を充てることができますので、どのプロセスでも効果的な活動ができます。

個々の営業担当者に頼る手法だと、組織としてのデータ収集が困難な状況になります。しかし、チームビルディングが機能している場合は、チームとしてデータを集めて分析することができます。どんな見込み顧客だと成約率が高いのか、どんなアプローチ法だとより訴求効果が高くなるのかなどを分析しやすくなります。こうして、データ収集と分析を効果的に推し進め、改善を図ることが可能となります。結果として、組織全体の成約率の底上げにつながり、目標達成の確率が高まっていくのです。

「チームビルディング」の5段階とは?

チームビルディングを推進するにあたっては、5つの段階に分けて捉えるとスムーズです。この5つのプロセスは心理学者のブルース・W・タックマンが提唱したもので、「タックマンモデル」とも呼ばれます。成果を出し続ける営業チームを創出するために必要なチームビルディングの発達段階を表した論理的な考え方ですので、詳しく紹介していきます。

第1ステージ 形成期

「形成期」とは、新たにチームを作りスタートしたばかりの段階を指します。異なる部署からメンバーが集められることも多いため、お互いのことを十分に理解できていない状態です。メンバーの属性などは分かっていても、それぞれの考え方や価値観、能力の幅、いざという時の対応の仕方などについては未知数です。お互いに自分について開示し、また相手から情報を引き出そうと情報交換をしている時でもあります。そのため、お互いに気を使い、「様子見」の状態が続きます。当然、組織としてまとまって大きなプロジェクトを進める段階ではなく、効率も悪い状態であることがほとんどです。

第2ステージ 混乱期

「混乱期」とは、チームとしてどんな方向性でやっていくのか、明確な目標は何かということが定まっていません。そのため、チームの中で意見や考え方の違いが出てきて、ぶつかり合いが生じやすい段階です。形成期が過ぎると、ある程度お互いに慣れてきますので、意見を言いやすくなるという状況にもなり衝突が発生しがちです。

また、実際に業務を進めていく中で、進め方や役割分担などがあいまいであったり、割り当てが適切でなかったりすることもあり、不満が出ることが多くなります。こうした様々な要素が重なり、チーム内の雰囲気が悪くなったり、極端に効率が落ちたりと混乱が見られるのです。

この状態自体は決して良いものではありません。しかし、チームを新しく作る上では、こうした混乱が生じるのは当然とも言えます。大事なのは、チームビルディングでは混乱期が来るということをあらかじめ知っておくことです。この意識があれば、慌てることなく次なるステップに進むための努力を払えるようになります。

そして、この段階を乗り越えられるかどうかが、今後のチームとしての成果に大きく影響していきます。

第3ステージ 統一期

混乱が生じるのは、チームにとっては悪いことばかりではありません。いわばチームに生じた困難を乗り越えることができれば、チームとしてのまとまりや連帯感が出てくるからです。そのため、混乱期をうまく乗り越えられれば、その後には「統一期」という段階が訪れます。

それぞれのスキルや得意分野、個性や価値観といったものをお互いに理解できるようにもなっています。それによって、信頼関係が強くなってきます。さらに、チーム内の役割分担が適正にできるようになりますので、能力が発揮しやすくなるのもポイントです。全体としてチームの雰囲気が良くなりますし、実務の効率も上昇していくのがはっきりと分かります。

それぞれが持っていた意見が集約されていき、チームとして統一した方針や戦略、細かな作業スキームができ上がっていく時期でもあります。この統一期には、今までとは違うプラスの動きが強く見られるため、それぞれがやる気ややりがいを感じやすくなるという特徴もあります。

第4ステージ 機能期

統一期を越えると「機能期」の段階になります。この段階では、組織として進んでいく方向が明らかになっていますし、メンバーそれぞれが自分の役割を理解して自律的に動けるようになります。リーダーは全体のまとまりや、作業プロセスの流れを調整するだけで、あとはそれぞれが効果的に働ける状態です。また、他の人が苦労しているところを見つけ、メンバー同士がサポートをすることもできるようになり、ばらつきの少ない業務進行が可能となります。

こうしたチームとしての成熟期を迎え、個々が主体的に行動ができる時期となります。メンバー同士が最も良いバランスを保つ時ですので、付加価値を高める視点や問題意識が一番高い状態となります。この状態を目指してチームビルディングを行っていくことが最大の目標と言えるでしょう。また、機能期をできるだけ長く持続していき、安定した状態にしつつもさらに向上を目指して営業チームとしての存在意義を高めていくことが重要です。

第4ステージ 散会期

チームとしての目的を達成することができたら、解散することになります。もしくは、定められた期限を迎えることで、やがて解散ということもあります。つまり、さらに上のレベルを目指してマネージャーやメンバーの異動などを経て新しいチームの形に昇華していきます。

「チームビルディング」がビジネス組織に与える効果は?

チームビルディングは、ビジネス効率を上げるという効果の他にも、会社に対するメリットももたらします。ビジネス組織としてのレベルアップを進めるものとなるからです。具体的な効果を取り上げ、チームビルディングを検討する際の判断材料にすることができるでしょう。

メンバーの主体性を引き出せる

チームビルディングでは、いわゆる上意下達の指示・命令ではなく、メンバー個々の働きと考え方を尊重することを大事にします。そのため、意見の対立が生じることがあっても、しっかりとチーム内で対話をしていくことを促進します。その結果、たとえ経験が少ない営業担当者や年齢の低い人であっても、自分の意見を持ち発信できるようになります。

また、それぞれに明確な役割分担をすることもチームビルディングでは基本となります。もちろん、お互いにサポートし合う体制は作るべきですが、自律的に自分の役割を果たし、より質の高い活動ができるように自分なりの工夫をしていく姿勢ができます。それにより、指示待ちの人材ではなく、自分の担当市場に責任を持ち、主体性を持って働けるようになるわけです。チーム内と他の部署とのコミュニケーションも大事にしますので、メンバーの情報発信力や情報収集力が高まるという良さもあります。それは、積極的に情報発信をしていくという習慣を持つことにもつながります。

ナレッジを共有し組織営業力を強化できる

チームビルディングでは、コミュニケーション向上を重要な要素とします。そのためには、メンバー同士が積極的に意見を交換し合う環境を作ることが求められます。同時に、ナレッジ共有がしやすいシステム、もしくはツールを物理的に構築することも大事です。そのため営業の例では、SFAを始めとするセールステックなどの営業支援ツールを導入する企業が多く見られます。チームビルディングという枠組みだけでなく、全社的に情報共有と業務効率化を果たすために有用なツールですので、各分野に用いるツール検討の価値が十分にあります。

チームビルディングにおけるメンバー構成では、さまざまな部署から参画することも多いです。こうして、外の情報も共有できるようになり、総合力の高いビジネス組織ができ上がっていきます。たとえチームが解散しても、その後も豊富なナレッジは有効活用できますし、社内における組織力が向上します。このように、チームビルディングはチームが存在している時だけでなく、その後の長期間にわたって良い影響をもたらすものとなるわけです。

トラブルに素早く対応できる

従来の営業担当者が個人で活動を行うやり方には限界があります。しかし、チームであれば足りない部分を補完し合うことができます。それは顧客対応やトラブルの発生時に特に明らかになります。直接の担当者の予定が埋まっているとしても、他の人が情報を引き継ぎ対応にあたることが可能となるからです。また、ある人の専門外もしくは得意でない分野であっても、チームの他のメンバーが専門知識を持っているのであればすぐにプロとしての対応ができます。

このように、複数のメンバーで対処することにより、単純に時間を取りやすいというメリットが生まれますし、幅広いトラブルの内容に即座に応じられるという質の面でのメリットもあります。チームとして情報共有をするシステムができあがっていますので、効率よく対応できることは会社側にとっても利益となります。

「チームビルディング」に向けたマネージャーの役割は?

従来の部課組織とは違い、チームビルディングでは上意下達の指示・命令ではなくメンバー個々の力を大事にした環境つくりを重要視します。そうなると、巧みに個を活かしながらもチームとしてのまとまりを創るという、マネージャーの働きや能力が非常に重要なものとなってきます。チームビルディングの各段階において、マネージャーとしてどのような点を意識して働きかけていったら良いのかを押さえておきましょう。

形成期:メンバーと相互理解を促進する

形成期においては、お互いのことをよく知るという作業が何よりも重要です。そこで、単に仕事をしながら知り合うというだけでなく、一度立ち止まってお互いの心の中、つまり、価値観や信条など、普段の仕事の中だけでは知ることができない情報を共有しあうことが重要になります。自分以外のメンバーがどのようなことを人生の中で大切にしているのか、仕事に対してどのような価値観で取り組んでいるのかを深く理解することで自分との違いを感じることから始めます。多様な価値観を受け入れることが相手を尊重することにもつながっていきます。

混乱期:will-can-mustを浸透させる

タックマンモデルの5つの段階において、特に重要なのが混乱期です。混乱期は、チームとしての明確な方針やそれぞれの役割が分かっていない時期です。そのためマネージャーは、will-can-mustのサイクルを実行することで、チームの方向性をはっきりさせていきます。メンバー各自、そしてチームとして、まずwillつまりやりたいことを掲げます。その後、チーム内でそのためには何が求められるか、どうしたら実現できるかを話し合うcanという過程を踏みます。そして、具体的にmustつまり何をすべきかを時系列や重要度別にリスト化します。こうして出てきた内容を一つずつ実行していき、チームとして目標達成に向けた動きを取るのです。これにより、役割分担や長期的なビジョンなどが見えてきます。

統一期:メンバーの内発的動機に働きかける

チームとしてまとまりが出てくる統一期では、全体のバランスを取ることがマネージャーとして求められる点です。メンバー個々の主体性や個性が失われてしまうことがあっては、今までの組織構造と変わりません。そこで、各自の内発的動機付けをはかっていくことと、引き続き相互に率直な意見交換ができる環境と雰囲気を作っていくことが大切です。営業会議などでは、上長の意見にそのまま従うという様子が見られないかを観察し、発言を抑えている若手がいるようなら、指名して発言の機会を与えたり事前にコメントを準備させたりします。こうして、主体性を高めるための意識付けをしていき、最終的にチームとして意見を統合できるようにバランスよくまとめていくのです。

機能期:メンバーのリーダーシップを引き出す

機能期では、それぞれの役割をしっかりと意識し、スムーズに業務が進められるようになります。チームビルディングでは、それぞれのプロセスで最もスキルが高い人が主導的な役割を担い協力し合う体制を作ります。そのため、たとえ年齢が若いとしても役職が低いとしても、自分の得意分野においては積極的にリーダーシップを取れるように意識付けさせることが大事です。常にコミュニケーションを風通しの良いものとして、グループチャット機能などを上手に使い、細かな点でも遠慮なく各方面から上げてもらうようにします。こうすることで、個々の士気と能率を向上させられますし、何らかの問題が発生しても、即座に対応できる体制を作れます。

「チームビルディング」を行う際のポイントとは?

単にメンバーを集めてチームを作れば、チームビルディングが成功するというわけではありません。成功のためには、従来の組織作りによく見られた考え方とは異なる見方をすることが求められます。どんなポイントに注意すべきかを確認しておきましょう。

ポイント①:目標と役割を明確に設定する

チームとしての目標を決めて、全ての人が理解できるようにします。同時に、個々の社員がいつ何をすべきかを理解しておく必要もあります。目標や役割を可視化するために支援ツールを使ったり、文書にして示すというのも一つの手です。それにより、お互いに協力すべき点なども分かり、結果としてまとまりが出てくるのです。

ポイント②:一方的な目標設定をしない

当たり前ですが目標設定は絶対に必要です。しかし、売り上げ目標は決まっているもののそれ以外の目標設定を経営陣やマネージャーが一方的に設定することはしません。それはチームの主体性や柔軟性を失わせる原因となるからです。売り上げに至るプロセスの目標については基本的にはチームに一任するようにします。つまり、自分たちで最終目標を実現するための、途中経過における一里塚を設定していくということです。そうすれば、押し付けられた目標という意識がなくなりますし、実現に向けた責任感も出てきます。

ポイント③:メンバーの多様な価値観を受容する

相互理解が成功のカギですので、マネージャー自身がそれぞれの個性や能力の差を理解し、受け入れることが大事です。無理に考え方を変えようとしたり、限界以上の役割を振ったりしてはいけません。メンバー各自が最もパフォーマンスを発揮できる範囲を見極めて、適切な内容と量の作業を割り当てることがカギとなります。

ポイント④:自由裁量と放任は違う

主体性を重んじますが、放任することはありません。マネージャーとして、それぞれの活動や意見をしっかりと把握しておくようにします。その上で、適性や任せられる責任や業務の限界を評価します。多くの場合チームビルディングでは密にコミュニケーションを取り合いますので、その内容も把握し、メンバーがどのような意見を持っているのかを知ることも重要です。

【まとめ】リーダーシップを発揮して自律した営業組織を実現する

組織としてまとまりを持ちつつも、自律してそれぞれが得意分野でリーダーシップを発揮できるというのが、チームビルディングで目指すところです。従来のやり方とは違い当初は戸惑うところもあるかもしれませんが、混乱を乗り越えれば良い結果を期待できますので、積極的にこの手法を取り入れていきましょう。

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ミッション・ビジョン・バリューという理念体系は、社員にとって会社のありたい未来を導く羅針盤としてなくてはならないものです。ありたい姿という感覚的なものを社員が心の底から実現したいと思えるように描くためには、ビジョン策定に至る想いの共有を体系的な流れに沿って進めていく必要があります。

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