2024.01.25
失注分析の方法や失注要因を特定するフォーマットやツールのご紹介
営業活動の効率化を図るためには、過去失注分析の方法や失注要因を特定するフォーマットやツールのご紹介と現在の営業についての分析をし、改善を続けることが重要です。いくつもの分析項目がありますが、失注分析はとても重要度の高い要素です。そこで、失注原因を見極める方法にはどんなものがあるかを解説します。
目次
失注分析とは?
失注分析とは、文字通り受注できなかった案件について分析することです。営業に限らず、マーケティングや販促部門などでもこうした分析を行っていて、お客様のニーズと自社で展開している戦略との乖離、マーケットの動きの把握をすることができます。
営業における失注分析
営業における失注分析は、直接成約率の改善につながる重要なものです。どの段階でつまずいてしまったのか、見込み顧客が離れた要因はどこにあるかを分析します。その上で、同じ失敗を繰り返さずに確実に受注につなげられるか改善方法を検討します。
失注分析が属人化され、勘や憶測で終わることがないように、データに基づいた分析をすることが重要です。そのためには、商談数と失注件数の把握、自社提供の製品・サービスの仕様と見込み顧客の要望、コストと見込み顧客の予算といった定量的なデータを取ります。同時に、数件のみの統計ではなく継続的にデータを取り続けて、信頼性の高い数値を求められるようにすべきです。
もう一つは、多様性のあるデータを取ることがポイントとなります。たとえば、競合他社との比較や、商品別の失注分析、営業担当者ごとの失注分析、見込み顧客の企業規模や業種などに分けた統計を取ります。こうすることで、異なる角度から失注分析できて、従来の見方では気付かなかった原因を発見できる可能性が高まります。
失注分析の代表的な要因
統計項目を設定する際に、闇雲に失注要因の指標を作るのではなく、ある程度理由の絞り込みができると効率的です。そのためには、失注要因の代表的な傾向を知っておくと解決に生かせます。ハード面とソフト面の両方の理由が考えられますので、両方の側面から統計・分析を行いましょう。
ハード面での失注要因分析
ハード面における失注分析とは、主に商品そのものが理由となる問題です。もしこの分野で問題が生じているのであれば、商品開発をはじめとして根本的な部分で改善を図る必要が出てくるかもしれません。その根本的なところに原因があるままでは、いくら営業担当者が努力してもなかなか成果率が伸びませんので、この面での失注要因ははっきりとさせる必要があります。
価格・コスト設定の妥当性
いくら製品・サービスが斬新で品質の高いものであっても、コストパフォーマンスの悪さが理由だと失注率を下げるのは難しいです。アイディアや質の良さに興味を持ち、見込み顧客となるかもしれませんが、商談プロセスが進み実際の価格を知った時に離脱してしまうのです。
そのため、見込み顧客の大半が希望する予算がいくらくらいか、その予算と実情の価格がどのくらい離れているかを知る必要があります。また、ライバル企業で提供している類似製品・サービスの価格はいくらかを調査します。多くの見込み顧客は、複数の企業の見積もりを比較するものですので、価格競争で負けてしまうと一気に失注率は上がる傾向があります。
サービスや機能の不足
製品・サービスそのものに不足があるかもしれない、という観点で失注要因分析をすることも重要です。商談プロセスを進めていく中で、特定の機能やサービスがないのか?と見込み顧客から質問されていないかを聞き取ることができるでしょう。もしくは、ライバル企業の類似サービスと比較して、欠けている機能がないかを調査するのも一つの手です。
サービスや機能の不足は、マーケットのニーズに応えられていないわけですので、失注要因の中では非常に致命的な点です。営業の方法を改善しても効果が出ない場合は、こちらの理由にも目を向けて客観的な失注分析をする必要があるでしょう。
顧客へのサポートの不足
一つの製品・サービスを売るためには、様々なプレ・アフターサポートを提供する必要があります。一定数のユーザーは何か問題や質問があった場合、サイトの問い合わせフォームやチャット機能を使って質問をしします。しかし、そもそもホームページにこうした問い合わせ対応サポートがないとか、あっても返答までに時間がかかるといった問題を抱えていると見込み顧客の離脱につながります。
また、製品・サービスによっては、定期的な点検やメンテナンスなどのサポートを必要とします。サポートが有償なのか無償なのか、どのくらいの頻度でなされるのかといった違いは、製品・サービスの品質そのものと同じくらい重要なポイントとなります。多少、ライバル企業のものよりも品質が良く価格が安いとしても、サポートで劣っていると、それが理由で長期間にわたる利用を前提とすることが多いBtoBでは不利な立場に置かれます。
ソフト面での失注要因分析
ソフト面での失注要因つまり営業戦略のミスや、営業担当者やチームに要因がないかを検証する必要もあります。製品・サービス自体はとても良いもので、競合企業にも負けていないことがはっきりしているのであれば、ソフト面での強化が重視されるはずです。そのために、以下のようなポイントを軸に徹底的に失注要因分析していきましょう。
企画・提案力の不足
営業部署としての方向性や全体的な戦略に問題がないかを分析します。マーケティング部門との兼ね合いもありますが、通常は特にアピールしたいポイントを事前に定めて、そこをプッシュして商談を進めます。たとえば、新機能や低価格、アフターサポート、デザインの良さといったポイントを取り上げて紹介していきます。しかし、強調しているポイントがマーケットのニーズと合っていなければ、関心度を上げるのは難しいでしょう。
また、営業担当者の提案力が低いと、見込み顧客の課題解決につながらず満足度を上げられないという結果に終わってしまいます。どのように自社提供のサービスが見込み顧客の課題にマッチして、導入によってどんな効果が及ぶのかを魅力的に提案しなければなりません。この部分は営業担当者の力量が問われるところで、競合企業との差を見せたいところでもあります。提案力が弱いのが理由で、たとえ良い製品・サービスであっても他社に負けてしまうのです。
関連記事:営業のクロージングとは?(BtoB営業におけるクロージングの基本的な流れと効果的なテクニック)
顧客理解・マーケット知識の不足
ターゲティングをする際には、見込み顧客とマーケットについての分析を徹底的に行うべきです。全体としてどんな顕在的また潜在的な課題があるのか、企業規模や業種、業務手法や現在使用しているシステムはなにかといった点を知っておく必要があります。具体的な商談プロセスに進む際には、個々の企業についての理解を深めるべきです。意思決定者は誰か、商談相手の好みや考え方のパターンなどを知っておくことで良いコミュニケーションを図ることができます。
マーケットについての知識という意味では、競合他社の情報も得ておくべきです。自社との価格や機能、サポート、営業方法の違いなどを押さえておくことで、見込み顧客からの質問に的確に答えられます。また、こちらからあえて他社との比較をして優位性を高めるという営業方法を採ることもできるでしょう。こうした知識が不足していると、効果的な営業ができずに失注となってしまうのです。
チーム力の不足
個人で営業をするものではなく、チームとして協力し合いながら案件をまとめていくのが理想です。商談相手についての情報を持っている人がいるなら共有して、商談を有利に進めるようにします。価格や機能・サポートについての稟議を上司が理解して承認するのも、チームとしてスムーズに営業を進めるポイントです。
しかし、同じチームの中で強い競争意識があったり、そもそもメンバーがバラバラに働いたりしていると、こうした協力関係から得られるメリットは生まれません。チームとしてまとまった働きをしているのかを冷静に分析しましょう。
失注要因分析により向上する営業売上
失注分析は、単に失注要因を知るだけで終わっては意味がありません。そこから改善策を提示し実行することによって初めて効果を生みます。その理由が製品・サービスそのものにあるかもしれませんし、営業担当者のスキルやチームとしての姿勢にあるかもしれません。いずれにしても、失注率を上げている壁を取り除くわけですから、改善策を実践することにより明らかな変化が見られるはずです。
営業担当者としても、営業プロセスがスムーズに行き、次のフェーズに進みやすくなっていくのを感じられるはずです。さらには、営業コストが減少するという効果も感じられます。こうした結果についてもデータを取り、失注分析をする前後での違いをはっきりと押さえておきましょう。そうすることで、失注理由を分析した結果と行動が正しかったのか検証ができます。もし効果があまり出ていないようであれば、再度失注分析と改善策の検討をする必要があります。
失注要因を分析する方法
失注要因がどこにあるかを分析するためには、いくつかの異なる角度で比較する必要があります。ある分野では問題がないと判断されても、他の視点で見ると大きな壁となっているケースも見られるからです。
利害関係での比較を行う
利害関係つまり受注する自社と購入してくれるお客様との間に関係する要素に注目します。この面で重要なのがコストです。自社として利益を出すためにどうしても下げられない最安価格というものがありますし、見込み顧客としても予算の関係上求める価格があり、多くの場合両者がいくらか妥協しなければなりません。その折り合いをうまく付けられる価格設定や、機能・品質の高さが実現されているかをチェックするのです。
これは相手の企業規模や業種によっても違うので、見込み顧客を分類して、それぞれのカテゴリーでどの程度の失注率となっているかを比較することで、営業の弱点が見えてきます。
先方課題での比較を行う
先方が持つ課題に解決できているか、そもそもどんな課題つまりニーズがあるのかを分析します。もしかすると、自社で考えている課題と実際に潜在顧客が感じている課題が異なることがあります。その乖離が生じていなか、どの課題にリーチできなかったのかを失注要因分析することが重要です。この理由が分かれば商談を先に進めやすくなるからです。
企業が持つ課題にはある程度傾向というものがありますので、課題の内容ごとに比較してみることも大事です。特定の課題については受注率が高いものの、他のニーズには対応しきれていないということもあるでしょう。
関連記事:提案力を上げる効果的な質問の仕方とは?「SPIN話法とは?メリットやポイント、営業を加速させる4種類の質問内容まで徹底解説!」
提案内容での比較を行う
商談プロセスの中では案件ごとに異なる提案をすることになります。ある企業には特定の機能を強調し、別の企業には価格面を強調するといった具合です。営業担当者に提案した内容について情報を上げてもらい、内容ごとに失注率を出します。これにより、どの内容だと効果が高いのか、あまりお客様の心に響かない原因は何かを判別できるというわけです。
提示条件での比較を行う
クロージングに近いプロセスでは、価格や付帯サービス、アフターサポートなどの提示をします。その条件ごとに比較分析をしてみましょう。提示金額が安くても受注率が高くないとか、価格よりもアフターサポートの充実した条件の方が効果があるといったことが分かってくるはずです。これを実際の営業プロセスと比較して、無駄になっている提案がないかを確認することができます。
マーケットでの比較を行う
マーケット全体の中でどのくらいのシェアなのか、自社の製品・サービスの価格や機能のレベル、顧客層の傾向はどうなっているのかを比較します。それにより、マーケットに求めるお客様のニーズと合っているかを確かめられます。さらに、自社としてマーケット全体の流れに合わせた方が効果的なのか、それとも独自路線を進んだ方が良いのかを判断する材料を得られるでしょう。
競合情報での比較を行う
競合情報を得て、コスパや機能の差を比較します。同時に、営業プロセスの違いや強調点、営業コストなどについても比較してみましょう。ほぼ同じような製品・サービスなのに明らかに失注率が違うのであれば、営業方法に何か差があるはずです。失注原因が何かを知るのにライバル企業との比較はとても効率的なのです。
失注要因を分析するフォーマット例
ファネル分析
失注要因を分析するには、客観的に定量データを取れるようフォーマットがあると助かります。こうしたフォーマットはSFAやCRMツールに組み込まれていることが多く、それぞれに合わせてカスタマイズできます。特に役立つフォーマットがファネル分析です。このフォーマットは、営業プロセスをファネル表示して営業担当者ごとの案件獲得数を一括表示できるものとなっています。どの営業プロセスで見込み顧客が離脱することが原因なのか、それぞれの営業担当者にとってうまく行かない理由を知る手段の一つとなります。
PESTLE分析
Political(政治的)
国内外の政治的な状況や政府の方針が影響を与える可能性があります。例えば、法律や規制の変更、政府の安定性、外交関係の変動などが挙げられます。
Economic(経済的)
経済的な要因は、景気、インフレ率、為替レート、雇用状況などを含みます。これらの要因は、企業の売上や収益性に影響を与える可能性があります。
Social(社会的)
社会的な要因には、人口動態、文化、価値観、ライフスタイルの変化などが含まれます。これらの変化は、商品やサービスの需要や市場のニーズに影響を与える可能性があります。
Technological(技術的)
技術の進化やイノベーションは、産業や市場に大きな影響を与えることがあります。新しい技術の導入や競合他社の動向を考慮することが重要です。
Legal(法的)
法的な要因には、法律や規制、特許、労働法などが含まれます。これらの法的な変更は、企業の運営に直接影響を与える可能性があります。
Environmental(環境的)
環境への影響や持続可能な事業慣行が重要な要因となっています。企業は環境への配慮や社会的責任を考慮する必要があります。
PESTLE分析を通じて、これらの要因がどのようにビジネスに影響を与えるかを理解し、戦略や計画を立てることができます。
営業活動における失注分析においては、失注の要因をこれらの視点からも検証し、将来的な展望に対するリスクを評価するのに役立ちます。
SWOT分析
強み (Strengths)
失注したプロジェクトや契約に関連する強みを特定します。なぜその案件に取り組んでいたのか、成功していた要因は何だったのかを明確にします。これにより、同様の強みを持った案件を見極めることができます。
弱み (Weaknesses)
失注の原因や要因として特定された弱みを評価します。例えば、競合他社と比較して技術的な不足点、提案の誤算、顧客対応の問題などが挙げられます。これを踏まえ、改善点や学ぶべき教訓を洗い出します。
機会 (Opportunities)
失注から得られる機会を探ります。競合他社が成功したポイントや市場の変化によって新たな需要が生まれる可能性などを考慮します。これにより、将来の提案や営業活動において活かすべき機会を見つけることができます。
脅威 (Threats)
失注に関連する脅威を分析します。市場動向、競合他社の動向、技術の進化などが将来的な脅威となる可能性があります。これに対処する戦略を検討し、対策を立てます。
SWOT分析を通じて、失注の背後にある要因や状況を包括的に把握し、今後の戦略に反映させることができます。これは単なる失敗の原因を理解するだけでなく、組織の内外の要因を総合的に分析し、改善点を見つけ出すための手がかりとなります。
関連資料:企業収益を出し続けるアカウント営業
失注要因を分析するツール例
営業管理システムとしてCRMやSFAツールを導入している企業が多いですが、失注分析という面で見ると「Senses」などは統計データを一括収集して、すぐにフォーマットに落とし込んで表示してくれるので管理がしやすいツールと言えます。
SFAやCRMツールはそもそも営業活動を可視化することが、一つの大きな目的となっています。SFAやCRMには、個々の営業担当者が上げる報告をカスタマイズできる機能がありますので、失注分析で使用したいデータや情報を組み込むことで有効活用できます。新たにSFAやCRMといったツールを導入・変更したいと思っているのであれば、分析機能に優れているツールを選ぶことも重視してみましょう。
【まとめ】適切な失注分析でその理由を深く掘り下げ、次につなげる
営業は時代によって変化が求められます。それだけに、今までうまく行っていた方法を継続すれば良いわけではなく、常に進化をしてチームとしての力を強めていく必要があります。それには、失注分析をしっかりと行い受注を落としてしまった理由を把握すること、適切な改善策を講じることが欠かせません。理由分析に役立つSFAツールを有効活用して、より良い営業プロセスを編み出せるようにしましょう。