
2022.10.12 (更新日:2022.11.22)
シェアド・リーダーシップとは?特徴やメリット、組織環境についてまで解説
リーダーシップを発揮する手段として、シェアド・リーダーシップというあり方が今、注目されてきています。この記事では、シェアド・リーダーシップの特徴やメリット、必要となる組織の環境について、押さえておきたいポイントなどを解説します。
目次
シェアド・リーダーシップとは
シェアド・リーダーシップ(shared leadership)とは、リーダーを共有する、分散するといった意味を持つ言葉です。
具体的には、所属している組織のメンバー全員がリーダーの役割を担うことを指します。メンバーすべてがリーダーとして動くことで、一人ひとりが組織のことを考え責任を持てるようになり、活躍できる環境を整えることが可能です。ベンチャー企業などで採用されていることが多いと言われており、近年新しいリーダーシップのあり方として注目されています。
シェアド・リーダーシップの目的
シェアド・リーダーシップを取り入れることの目的は、メンバー一人ひとりが主体的に動けるようになること、そして目標達成のためにパフォーマンスを向上させることです。
組織にシェアド・リーダーシップを取り入れることで、すべてのメンバーがリーダーの役割を担うと同時にすべてのメンバーが他のメンバーのサポートに回ります。自分だけでなくすべての職務について責任を持てるようにチームを促すことができます。
他のリーダーシップとの違い
これまでに知られているリーダーシップは、主に2種類あります。
・カリスマ型リーダーシップ
カリスマ型リーダーシップとは、組織に所属しているメンバーのうち、他を率いる素質をもったカリスマ性のある1人がリーダーになります。目標達成のために他のメンバーを引っ張っていくことでリーダーシップを示します。命令系統が上から下へと伝わりやすいことがメリットで、組織の変革や新しい事業を起こす際などに有効です。トップダウン型と呼ばれることもあります。
・サーバント型リーダーシップ
サーバントは「召使い・使用人」といった意味を持つ言葉です。リーダーは他のメンバーに対して奉仕やサポートを行い、そのうえで他の人たちを目標に向かって導いていきます。上から部下を引き上げていくカリスマ型リーダーシップと反対に、下から部下を支えていく、逆ピラミッドのような図式となっていることが大きな特徴です。
サーバント型リーダーシップは、組織のメンバーがリーダーに支えてもらい大切にされることで、仕事のモチベーションが上がり、職務へのパフォーマンスの向上が期待されます。
シェアド・リーダーシップの効果
シェアド・リーダーシップを導入することは、組織のメンバーがそれぞれ主体性を持って行動できる効果が期待されます。
全員がリーダーを担うので、その場の状況や環境などに応じて、もっとも適していると思われる特性を持ったメンバーがリーダーシップを発揮できます。それと同時に、他のメンバーは周囲に対してフォロワーシップを発揮し、メンバー全員が全体を見て自分の意思で動くことで、より早く効果的に目標達成できると考えられています。
シェアド・リーダーシップが求められる背景
「シェアド・リーダーシップ」という考え方が生まれたのは、どういった時代背景が影響しているのでしょうか。この形が求められるようになった背景について解説します。
時代の変化が激しくなった
一昔前と比べて、近年における時代の変化を非常に激しくなってきました。2019年からのコロナショックによって世界の常識が一変したことでもお分かりのように、経済の動向や、世界情勢は目まぐるしいスピードで刻一刻と変化しています。
また、テクノロジー技術も急激な進化を続けています。AI(人工知能)や、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)といった技術がさらに進めば、単純な作業だけではなく、AIが自分で考えて複雑な業務をこなせるようになる日も遠くありません。そのため、組織のメンバーがそれぞれ主体的に考えて行動することが求められてきています。時代に対応できるシェアド・リーダーシップ体制を取ることが注目され、求められているのです。
リーダー1人では限界がある
以前は、1人の選出されたリーダーが存在し、リーダーが各メンバーに指示をすることで成り立ってきた組織が大半でした。
リーダーが1人だけの組織では、その1人だけにすべてを頼ることになります。しかし、時代が変わり不透明かつ複雑な状況においては、これまでには問題なかった技術や経験、価値観だけでは通用しなくなってきています。
リーダーが1人だけでは、時代や情勢の変化に即座に対応することが難しくなっているため、すべての人が主体的に動ける組織作りが必要となってきており、シェアド・リーダーシップへのニーズが高くなってきているのです。
日本では、組織にリーダーが複数存在していると指示系統がバラバラになってしまい、組織が上手くまとまらないのでは、という考え方が以前からありました。しかし、これは限られた数人のリーダーが命令し、他のメンバーが命令通りに動く、という組織内でのみ通用する考え方です。
シェアド・リーダーシップでは、すべてのメンバーの考えが同じ目標に向かい、一人ひとりがリーダーシップを発揮してそれぞれのスキル、得意分野などを活かしていきます。そして、他のメンバーを支え合いながら自主的に動いていきます。
そのため、メンバーが多ければ多いほど作業がしやすくなり、組織が潤滑に動くことが可能になります。

シェアド・リーダーシップのメリット
シェアド・リーダーシップの体制を整えることのメリットについて、様々な視点から見ていきましょう。
年次に関係なくリーダーシップを発揮できる
従来型のリーダーシップでは、選ばれた1人がリーダーとなって、組織の他のメンバーを率いていきますが、ほとんどの場合は組織の中で年次の高い人がリーダーに選ばれることになります。一方、シェアド・リーダーシップでは、全員がリーダーシップを取るため、年次が低い人でも能力に応じてリーダーシップを発揮することが可能です。
各自の特性に合わせ生産力が向上
組織に所属しているメンバーの持っている能力や特性などは一人ひとり異なります。
たとえば、ある人はパソコンのプログラミングスキルに突出しているものの、電話で交渉をすることが苦手といった具合で、それぞれ得意な分野、不得意な分野を持っています。
組織全体で考えて、苦手なところや足りないと思われる箇所をその部分に秀でている人を始めとする周囲が補っていくことによって、パフォーマンスの向上を図ることが可能です。
今までにないアイデアが生まれる
シェアド・リーダーシップにすることで、組織のメンバーが連携を取っていく必要が生じるため、必然的にメンバー同士での話し合いが活発に行われるようになります。
従来のトップダウン型リーダーシップ体制では、部下にあたるメンバーは、上から言われたこと、決められたノルマをこなすこと、単純作業やルーティーンを繰り返すことが正しいという認識があり、自分からリーダーへ意見を出すことはほとんどありませんでした。
シェアド・リーダーシップでは、全員がリーダーとなるので、言われたことではなく、自分で考えて動く必要があります。さまざまな視点、立場、経験、特性を持ったメンバーが、それぞれ思っている意見を出し合って活発な議論をすることで、多種多様なアイデア、革新的なアイデアが生まれやすくなります。多様なアイデアは、組織の目的を遂行するための技術や生産性の向上が期待できます。

シェアド・リーダーシップに必要な組織環境
シェアド・リーダーシップならではのメリットをより大きく引き出すためには、組織としてどのような環境を整えておくことが必要なのでしょうか。以下の3つの視点から解説します。
目的や情報が全員で共有されている
シェアド・リーダーシップは、組織のメンバーがすべてリーダーシップを取ることになるため、一人ひとりが自分から動く主体性が求められます。
もっとも基本的な段階として、メンバーすべてが組織の目的やビジョンの方向性に一貫した認識を持っている必要があります。そして目的を達成するのに必要となる情報も、すべて共有しておかないといけません。
この認識がずれているとメンバーがバラバラの方向に進むことになってしまいます。各々がどれだけ主体性を持って行動していても、目的からどんどん遠ざかってしまいます。
お互いの特性を把握できている
組織のメンバーが持っているそれぞれの特性や考え方、スキルを、メンバーがすべて把握しておくこともシェアドリーダーシップの体制を整えるためには、欠かせない要素です。
目標達成のために必要なスキルが不足している人がいれば、突出している人たちがフォローアップしていく必要があります。メンバーの特性をお互いに把握することで、作業の進捗が滞っても適切なフォロワーシップが取ることが可能となり、結果的に効率がアップするのです。
コミュニケーションを取り合える土台がある
シェアド・リーダーシップを取っていくためには、積極的に意見交換ができる、風通しの良い土壌が必要です。また、不明な点は他のメンバーに聞いてアドバイスを求められること、自分でできる作業を探せる環境も大切です。
風通しが良くない組織だと意見交換ができません。意見を出すよりも一人ひとりが好きなように自分の作業だけをした方が良いという状況になりかねません。また、ミスをしても誰にも相談できない、互いの作業に関心がないという状況だと、トラブルに対しての初動対応が遅くなり、甚大な被害につながる可能性もあります。
シェアド・リーダーシップをより効果的にするにはメンバー同士のコミュニケーションを欠かさないように心がけ、それぞれの進捗状況やスケジュールをきちんと確認できる環境整備が必要です。
シェアド・リーダーシップを行ううえで注意すべきこと
シェアド・リーダーシップにはメリットと言える良いところもたくさんありますが、注意すべき点や課題もあります。以下の視点から見ていきましょう。
目的が浸透していないと動きがバラバラになってしまう
組織のメンバー全員に目的が浸透していないと、お互いの状況を報告し合って把握することや、他のメンバーに相談をすることが難しくなります。連携が取れていない組織では、それぞれの動きがバラバラになってしまいがちです。
食い違いやミスが多くなり、結局は自分の仕事だけうまくやれば良い、という考えが広がってしまうとますますバラバラになってしまうでしょう。
シェアド・リーダーシップを効率よく進めていくためには、組織にいるメンバー全員の結束がどれだけ強いかが重要です。チーム全体の力を結束させることで上手に連携でき、組織のメンバー一人ひとりが目標を意識できるようになるため、バラバラに仕事をするよりも、仕事の効率が上がるのです。
経験の浅い人をフォローする体制を整える
すべてのメンバーがリーダーシップを取っていくことは、経験の多寡に関わらず、組織としての目的を理解する必要があります。
ただし、組織にいるメンバーは、得意としている分野や、知識、経験など同じではなく様々です。リーダーの経験そのものがない人もいれば組織に配属されたばかりという人もメンバーになっている状況も当然起こりえます。
所属している組織の仕事や作業内容によって、進め方、簡単な知識などはある程度教えられることで身につけられます。しかし、周囲の人との関わり方やスキルのブラッシュアップ方法など、その人が仕事をしていくなかで習得するしかないスキルもあります。周囲の人が強制したところで、そういったスキルは身につきません。
経験値の浅いメンバーがいる場合には、周囲にいる経験豊富なメンバーが適切なサポートをする体制づくりを整えたうえで、すべてのメンバーが主体性を持って取り組んでいく必要があります。
【まとめ】組織のコミュニケーションを活発化させ生産力を向上
シェアド・リーダーシップとは、組織に所属しているメンバーすべてがリーダーとしての役割を持ち、リーダーシップを発揮する体制です。シェアド・リーダーシップの特徴やメリットについて理解し、必要となる環境を把握しておくことで、組織のコミュニケーションを活発化させ生産力を向上させることが可能となるでしょう。