2022.08.28 (更新日:2024.03.26)

リーダーシップ

サーバントリーダーシップとは?効果を発揮するための8つの方法とポイント、メリットやデメリットを徹底解説!

サーバントリーダーシップは、部下に対する奉仕を通じて、チームの自主性と協力を促進し、組織全体の生産性と満足度を高めることを目指しています。アメリカの経営・教育コンサルタントであるロバート・K・グリーンリーフによって提唱されたこのリーダーシップスタイルは自身が気づきを得ることと同時に、相手にも気づきを与え成長を促します。

サーバントリーダーシップとは

サーバントリーダーシップとは、「奉仕者」や「仕える人」といった意味を持つサーバントと、「指導」などの意味を持つリーダーシップを組み合わせた言葉です。一見すると相反する2つの言葉がつながっているように思えます。しかし、リーダーとは単に部下を使うだけであってはならず、部下のために率先して働くことが求められるものでもあります。

そうしたことから、リーダーは部下のために仕える、奉仕することから始めて、その後部下を指導したり指示したりするリーダー像を示すものとしてサーバントリーダーシップが提唱されました。これは部下のことを信頼し、能力のないものや意思を持たないものと見ることがないようにとの考えが含まれます。また、一方的に上から命令をするのではなく、組織の中で協力し合いお互いを尊重し合うことでプロジェクトを良い雰囲気を進行させる重要性を意識しています。こうして、単に一つの業務を効率よく進めるだけでなく、部下も含めすべてのメンバーが成長していくことを目指します。

サーバントリーダーシップが誕生した背景

多くの組織においてリーダーシップというのは、指導力が強く部下を引っ張っていく姿が求められる傾向にありました。しかし、1970年にアメリカのロバート・グリーンリーフが、新しい組織のリーダーとしてサーバントリーダーシップを提唱しました。その背景には、人々が望む目標を達成できることや、人々の考えや感情を考慮に入れた決定ができる、人々に寄り添ったリーダーを求められるようになったことがあります。

現代で注目される理由

サーバントリーダーシップは、IT化が急速に進んでいる現代でも非常に有効かつ多くの人に求められる考え方となっています。幅広い分野で大きな変化が急激に生じる現代では、1人のリーダーがすべての情報を把握・分析し、決定する従来のリーダーシップが成立しにくくなっています。そこで、メンバーすべての力や感性を集結させて、チームとしての能力とアイディアを活かしていくことが必要となっているのです。

サーバントリーダーの役割

サーバントリーダーシップの役割はチームに奉仕する、というものです。効果的に実行するには、様々な働きをしていく必要があります。たとえば、まずじっくりとメンバーの話を聞くことが重要です。何を求めているのか、どのような目標を持ちどのように達成に向かって努力しているのかを知るよう努めます。

そして、個人的な配慮によるサポートもしくは癒しを与えることも重要度が高くなります。多くの会社においてメンバーは身体的にも精神的にも負担を抱え疲れているものです。能力をうまく発揮できずにプロジェクトの進行に付いていくのが大変なこともあります。ただ𠮟咤激励するのではなく、サーバントリーダーシップでは配慮して慰め、助けることによって癒しを与えます。また、ある人が業務に難しさを感じているのであれば、お互いに補足できるよう調整をします。こうしてチームとしての成長やより良い結果を求めることができるのです。

関係作りも重要な役割です。リーダーと部下との関係だけでなく、メンバー同士での円滑で和やかな雰囲気を作れるようにします。そのためには、複数のメンバーで意見や気持ちを言い合える状況を設けたり、それぞれに対して誉め言葉をかけたりします。もし、メンバー同士で不和が生じているのであれば、積極的にその関係改善のために動くのもリーダーの役割です。

サーバントリーダーシップのメリットとデメリット

サーバントリーダーシップには、特有のメリットとデメリットがあります。それぞれをしっかりと把握しておくことで、効果の出るリーダーシップ発揮ができるようになります。

サーバントリーダーシップのメリット

メリットは、それぞれのメンバーの能力やモチベーションが上がるという点です。それにより総合的な成長を期待でき、結果も向上します。そして、チーム内の雰囲気も改善されていくメリットも見られるでしょう。それぞれの点について詳しくチェックしてみましょう。

チームの生産性が向上する

お客様や見込み顧客の現状や反応、傾向などを一番よく知っているのは、現場で働くメンバーです。しかし、上意下達スタイルのやり方だと、現場の声が吸い上げられずリーダーまで届きにくい状態です。当然、それぞれのメンバーが持っている有益な情報が、現場で働くメンバー同士でも共有されないため、せっかくの情報が無駄になることもあります。一方、サーバントリーダーシップはリーダーが部下の話を傾聴することで、お互いに情報交換をする環境を生み出します。お客様の利益や好印象につながるようなノウハウが共有、実践されるためチームの生産性向上につながっていきます。

メンバーが主体的になる

サーバントリーダーシップではメンバーの行動を尊重し促進するよう働きかけます。そのため指示型のかかわり方よりもメンバーが主体的に考え行動を決定する場面が多くなります。

こうした動きはモチベーションアップにもつながります。社員の意見が通ることで、自分が大事にされていると思えるようになりますし、リーダーへの信頼感が増します。居心地の良いチームやリーダーの下で働き続けたい、より良く答え応じたいと考えるようになりパフォーマンスが伸びていくのです。

コミュニケーションが円滑になる

サーバントリーダーシップはチーム内のコミュニケーションが円滑になるような環境作りを行います。そのため、お互いに様々な意見を話し合う習慣が生まれていきます。互いの信頼関係ができていると、建設的に率直な意見を出せるのもメリットです。こうした円滑なコミュニケーションは、情報交換を楽にしてくれ業務を効率的に遂行することにもつながります。

サーバントリーダーシップのデメリット

続いてサーバントリーダーシップを導入した際のデメリットを紹介します。

全体の意思決定まで時間がかかる

最終的にはリーダーが意思決定をしますが、それまでにはメンバーの意見を聞いたり調整したりすることが多くなります。その分、検討すべき事項が増えてきますし、単純にヒアリングなどの時間が多くかかります。そのため、全体として意思決定を下すまでに、今まで以上に時間がかかってしまうことが多くなります。もちろん、より良いアイディアを盛り込め、質の面では向上するかもしれませんがスピード感が求められる決定においては不利になる可能性があります。

また、全員の意見をその通りに反映させることは不可能ですので、それぞれについて調整したり後ほど説得したりする必要があります。意思決定に伴うプロセスが増えますので、前後の調整により時間が取られてしまうことになります。こうしたことから、時間をかけて決められることと、スピードが求められる決定を見極めて、どの程度メンバーとの話し合いをするかを決めるのもサーバントリーダーシップに求められる点と言えます。

メンバーの知識や経験によって効果が半減する

サーバントリーダーシップでは、メンバーの意見を重視することが基本となります。しかし、そもそもメンバーの経験が少ないチーム、知識が限られている社員ばかりだと、意見を吸い上げてもメリットにつながらないかもしれません。結局、良い情報を得ることができずにリーダーが自身の裁量で判断、決定を迫られることになるわけです。

特に、これは今まで従来型のリーダーシップのスタイルで仕事をしてきた会社に見られます。メンバーが自分で考え、提案していく自主性が育っていないからです。そのため、サーバントリーダーシップを導入したばかりのケースでは、こうした問題に当たることが多いでしょう。最初のうちはうまく行かないものだ、あまり目立った効果がすぐに出てくるものではないという意識を持つことが大事です。

その上で、リーダーが根気よくメンバーの自主性や能力、判断力を育てるよう努めます。そもそもサーバントリーダーシップの効果は即効性のあるものではなく、時間をかけて醸成していくスタイルであるという意識を持つことが重要なのです。

サーバントリーダーが持つ10の特性

NPO法人「日本サーバント・リーダーシップ協会」によると、サーバントリーダーに重要な特性は下記の10項目であるといわれています。それぞれの項目について解説します。

1.傾聴
2.共感
3.癒やし
4.気づき
5.説得
6.概念化
7.先見力
8.執事役
9.人々の成長に関わる
10.コミュニティづくり

1.傾聴

傾聴とは、相手の話を注意深く、そして共感を抱くように聴くことです。サーバントリーダーシップにおいてメンバーの「良き理解者になる」ことが欠かせません。「良き理解者になる」ためには、相手が言いたいことに耳を傾ける傾聴の姿勢が不可欠となります。

2.共感

サーバントリーダーシップにおいては誰も完璧ではないという姿勢で対話することが求められます。そのため、相手の意見や価値観を受け入れ気持ちを理解し、共感しようと努力することが重要です。

3.癒やし

メンバーの能力を最大限に発揮させるためには、メンバーの置かれた状況やメンタルへの配慮も欠かせません。業務の生産性を高め個々の能力を発揮してもらうためにも、傷付いたメンバーを癒し、本来の能力を取り戻してもらい、組織内で欠けている部分を互いに補足し合うことがより高い成長・結果をもたらします。

4.気づき

サーバントリーダーシップにおいては自身が気づきを得ることと同時に、相手にも気づきを与えることが効果的です。そのためには物事をありのままに客観的に把握し、その本質を捉える能力が不可欠となります。気づきは、状況をより俯瞰して眺めることにも役立ちます。

5.説得

役職の権限によって服従させるのではなく、相手の同意を得ながら納得してもらったうえで仕事を進めます。権限ではなく、説得することで意思決定を行うのがサーバントリーダーの大きな特徴といえます。サーバントリーダーはメンバーからの信頼を集め、それによってメンバーの共感を得るのです。

6.概念化

サーバントリーダーは組織のビジョンや大きな目標を持ち、周囲にわかりやすく伝えることが大切です。リーダーがわかりやすいビジョンやコンセプトを示すことによって、メンバーは向かう先を具体的にイメージでき、迷わずに行動できます。

7.先見力

先見力とは、過去の経験や事実、あるいは現在の状況から将来の出来事や状態を予測する能力です。サーバントリーダーはメンバーが進むべき道を示す必要があり、それには将来予測する予見力が不可欠です。

8.執事役

リーダー自身が利益を得ることを優先するのではなく、メンバーに利益を与えようと心がけ、相手から一歩引くことを心得る能力です。自分ではなく周囲の希望を満たすことに対して責任を引き受ける姿勢です。

9. 人々の成長に関わる

メンバー個々の成長を支えることに貢献しようとする能力です。そのためにはメンバーそれぞれの資質や特性を把握し、さらにはメンバーの可能性を心から信じることで、その成長に対して責任を持ちます。

10.コミュニティづくり

サーバントリーダーは、メンバーが働きやすく、成長できる環境やコミュニティを形成するよう努めます。そうしたコミュニティをつくるためには、メンバーに対する思い遣りや支援と同時に、メンバー同士の関係性を改善させることにも気を使います。

その他のリーダーシップについて解説した記事はこちら:リーダーシップとは?リーダーシップの種類やマネジメントとの違い、チームでの影響力を高めるための必須スキルを紹介

サーバントリーダーシップが効果を発揮するための8つの方法とポイント

表面上、メンバーの話を聞いたり協力をしたりするだけでは、サーバントリーダーとしての効果を上げることはできません。そこで効果的なサーバントリーダーシップの発揮方法について8つのポイントをご紹介します。

目標やプロセスを言語化し、見える化する

チームとしての目標やプロセス、そしてメンバー個々の目標は明確にしなければなりません。それぞれの意見を確認しますが、バラバラに動くようではチームとしての機能を果たせないからです。そのため、共通する目標とプロセスを言語化、見える化をして共有することが重要です。その上で、その目標に対してどんなアプローチができるかを、それぞれの考えにしてもらい達成に至るよう助けていきます。

また、個々の成長を助けるためにも、それぞれの目標も見える化してどのように近づいていけるかを話し合っていきます。漠然と聞き取りをしたり、協力をしたりするのではなく、体系的なサポートをすることが重要なのです。

短期目標と長期目標を設定する

成果を挙げるのがリーダーの役割ですので、目標実現のための道のりを示すことは欠かせません。大きな目標もしくはビジョンというゴール地点から逆算して、その長期目標に至るプロセスを短期目標として設定します。営業部門であれば、例えば3年後の売上目標や業績目標、あるいは個人として目指す姿が中期目標となり、そのために今期取り組む重点活動や月次で管理する指標、あるいは個人のスキル向上に向けた自己啓発などが短期目標となりえます。

明確でわかりやすくメンバーに説明する

新しい業務手法やシステム、目標などについてはメンバーで共通理解を持たなければなりません。そのためには、リーダーが分かりやすく明確に説明する必要があります。多くの場合、会社が提示するビジョンや大きな目標は、抽象的な面が含まれているものです。それを誰もが同じ理解となるように、かみ砕いて具体的な形で説明してあげましょう。その際には、実行に当たって必要なプロセスも示し、それぞれが何をすべきかを理解できるよう助けることも含まれます。

チームの一体性を維持する

個々のメンバーへのサポートを重視するあまり、メンバーがバラバラにならないように気を付けます。個性の重視と共にチームとしてのまとまりや、統一された目標とビジョンの維持は外せないものです。そのためには、メンバー同士の会話ができる環境を作ることや、一緒に業務を進めるシステムを設けることができます。また、特定の人だけに偏って責任を与えることや、いわゆるお気に入りの人を作らないことも意識しましょう。

メンバーの業務評価とともに成果を共有する

業務評価は公正で透明性のあるものとすべきです。自分がどのように評価されているのか、そしてどのような基準でその評価がなされかを知ることで、自分の働きに満足感を覚えたり改善点をはっきりさせたりできるからです。そして、チームとして成果を出すことができたら、特定の個人の働きによるものだと強調するのではなく、チームとして成し遂げたことだという意識を持たせるようにします。これにより、さらに連帯感と協力関係が強まっていくのです。

メンバーのモチベーションアップを計る

効率を高めることは重要ですが、それと同時にメンバーの感情に配慮することも重要です。人は情と理によって行動を起こすといわれます。理屈だけではなく、メンバーの内発的な動機を高めるためにも、気持ちや思いに対する共感がモチベーションを高め、自主性向上につながります。

適切な業務割り当て、適材適所を心がける

メンバーの成長を促す働きかけは大切ですが、あまりにも過度な業務量や苦手な業務の押し付けは逆効果となります。公平な扱いを受けていない、リーダーは自分のことを考えていないという意識を持たせてしまうからです。定期的に業務割り当てを検討して、適材適所となっているかを確かめましょう。

指示だけにならないよう、信頼を勝ち取る

リーダーが単に命令して終わるようなことがあってはいけません。具体的にどんなやり方で進めたら効率が良いのかを一緒に考えたり、時には自分で手本を示したりします。そして、定期的に進捗状況を見守って、よくやっていれば褒め、うまく行っていないのであれば共に改善点を探すようにします。ポイントとなるのは一緒に行うこと、手本を示すことです。こうすれば信頼を勝ち得て、着実に指示を遂行するチームとなっていくことでしょう。

サーバントリーダーシップの成功事例

スターバックスコーヒーでの事例がサーバントリーダーシップの一つのモデルと言えるかもしれません。社長自らが多くのスタッフと直接対面して話を聞く場を設けたり、マネージャーに対して現場スタッフを重視する姿勢を培うための「奉仕型セミナー」を実施したりしています。また、現場で働くスタッフの方が経営陣よりも大事であるという考えを公表しており、それがアルバイトを含めたスタッフの居心地の良さや、自主的なサービス向上の努力につながっています。さらに、スタッフが株式を取得しやすい制度など、経営に関わる重要な点でさえ従業員重視の姿勢を貫いています。

良品計画も社長自ら全国の店舗を回って、現場の話を聞くことで業績再建の方針を定めました。その後も、店舗業務を見える化するシステムを作ると同時に、現場スタッフが意見を気軽に主張できる全社的なシステムを作っています。こうしてお客様のニーズに合った製品・サービスを現場の力で提供できるようになっているのです。

【まとめ】注目されるサーバントリーダーシップでチーム全体を底上げする      

時代によって求められるリーダー像は大きく変化します。この個が重視され、グローバル化が急速に進む現代では、リーダーがメンバーに奉仕するサーバントリーダーシップは大きな注目を浴びています。個々の能力と士気を高めると共に、チーム全体の力を底上げできるからです。メンバーが真の意味で能力を発揮できる環境を作っていきましょう。

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チームビジョン策定方法がわかる<ビジョンマネジメント>