2024.04.10 (更新日:2024.04.18)

組織開発

成次世代型組織モデル「ティール組織」とは?導入事例を徹底紹介!

ティール組織とはフレデリック・ラルー氏が提唱した組織の形で、上司や経営者が細かくマネジメントをしなくても、個々の人材が自主的に考え行動し進化する組織のことです。

ティール組織(Teal Organization)とは?

ティール組織とは、2014年にフレデリック・ラルーの著書「Reinventing Organizations」で紹介された概念です。ラルー氏は組織の特徴や形態を5段階に分類し、ティールはそれまでの段階における進化を内包した組織形態であるとしています。

ティール(進化型)組織の特徴

ティール組織の大きな特徴は、個々の人材による意思決定ができることです。といっても、それぞれが勝手気ままに振る舞うということではありません。組織としてのビジョンや目的、目標がはっきりとしていて、個人がそれに賛同しているため、上司が締め付けをし、細かく指導をしなくても、現場のメンバーが目標に合わせた思考と行動を取れるという意味です。

そのためには、現場に一定程度の強い意思決定権が委ねられる必要があります。こうした環境が整うと、上司と部下の関係はフラットなものとなり、お互いに敬意や気遣いが生まれる雰囲気も強くなります。また、現場の多様な人材も複合的な要素を観察した上で物事を俯瞰した判断ができ、その決定を実行できる技術や経験を持っている必要があります。こうして、ティール組織ではメンバー同士の良い雰囲気が醸し出されると共に、高いスキルや判断力、行動力が培われていることが特徴と言えます。

ティール組織が注目されている背景

ティール組織の必要性が増しているのは、ビジネスの世界における多様性とテンポの迅速化です。多くの人員が関係する組織では、一つの課題やトラブル、目標に対して、解決策を決定するのに幾つものプロセスを踏む必要があり、時間が余計にかかります。また、上級職に情報が伝わるまでにデータや観察点が歪んでしまう可能性もあります。IT化が進む世界ではスピーディーな決定と実行が欠かせないため、できるだけ現場に裁量権を与えることが求められているのです。その点で、決定と行動までのスピードが速いティール組織が必要とされているのです。

ティール組織5つの組織モデル

ラルー氏は、組織の分類を大きく5つに分けています。最初から「ティール組織」の形態になるわけではなく、ティール組織を形成するためには、5つの進化の過程を経ることが必要だとされています。進化の過程によって生み出されたものを内包していくことで、ティール組織が作られていきます。

ティール組織に至るまで、組織形態はレッド(衝動型)・アンバー(順応型)・オレンジ(達成型)・グリーン(多元型)・ティール(進化型)の5色になぞらえた5段階の進化を遂げていきます。組織に新たな変化が起こることで、次の段階へと進化していくのです。

ティール組織

レッド組織(衝動型)

レッド組織は衝動型とも言われていて、上司や経営者などの個人が大きな権限を持ち、社員を支配するのが特徴です。力によって管理がなされ、下位メンバーは特に自分で考え、決定する機会を持ちません。言われた命令や指示に従うことが業務の主軸となります。

こうした組織の観点は短期的で、今をどう生き残るかということが主な考え方となっています。経営者もしくはリーダーに組織が依存していますので、個人が力を失った時に、組織そのものも壊滅する恐れがあります。

コハク組織(順応型)

力による管理という傾向は変わらないものの、コハク組織はレッド組織よりも長期的な見方をします。より長く効率的な活動ができるようにと、論理的な組織作りがなされます。

その組織構造は軍隊にもなぞらえられていて、完全に上意下達のシステムです。上から下に向かう階級システムができていて、その階級ごとの差が大きく開きます。下の階級のメンバーは上司の指示に厳格に従い、それぞれの役割を超えるようなことは許されません。経営者一人に集中しない組織構造となっていますが、変化を嫌い、階級もしくは役職に固執する風土が生まれやすい傾向があります。

オレンジ組織(達成型)

オレンジ組織の基本は、コハク組織のような明確な階級システムです。しかし、そこに達成度に応じた階級の変動という要素が加わります。つまり、個々の人材の努力や能力によって高い実績が達成されれば、出世しやすい人事ルールが設けられているのです。コハク組織よりも個人に焦点が合った環境と言えるでしょう。

しかし、その評価は実績という数値でなされることが多く、数字のみを追うメンバーが増えます。また、変化やチャレンジを求めるよりも、人事評価のためのスコア獲得を目的とした働き方が中心となってしまう傾向が強くなります。

グリーン組織(多元型)

グリーン組織は多元型とも言われ、より社員個人の多様性を重視します。ラルー氏はグリーン組織を「家族」と表現し、それぞれの役割は明確にあるものの、個性や主体性のある意見などが重視され、その人らしい活動ができる組織としています。営業成績目標を達成するだけの組織ではなく、それぞれのやりがいや個々の生活を守るという人間らしい組織となります。

ただし、メンバー個人の能力や意思決定システムなどが成熟していないため、合意形成に時間がかかるといった非効率的な面が出てくることもあります。社員にとって心理的に働きやすい面と、さらに成長が必要な面が見られる組織と言えます。

ティール組織(進化型)

今までの組織の最終形態として進化したのがティール組織です。この組織では、いわゆるリーダーやマネージャーといった役割、上司や部下という関係性が存在しません。もしくは、肩書上は存在するものの、現場ではフラットな関係となります。上意下達な命令がありませんので、自分なりのルールや考え方、習慣などを考えながら行動することになります。企業としての最終目的は明確にありますので、それに至るまでの行程はチームや個人で自由に決めて動くわけです。

人材ごとの能力や発想が最大限発揮されますので、メンバーがお互いに啓発し、刺激し合える環境となります。ここに至るまでには、組織としても、社員個人としても、高度なマインドとスキルを身につける必要があります。

関連記事:一般的な組織開発のプロセスとフレームワークについてはこちらの記事で(組織開発)

各国で多いそれぞれの組織タイプ

こうした異なる特徴を持つ組織タイプは、国や地域による差によって傾向が異なります。日本の場合は、総じてオレンジ組織が非常に多いのが特徴です。企業の中に明確な役職、権限と支配力を持つ階級が存在します。そして、部署ごとに定められたリーダーやマネージャーの下に部下が一定数配置され、決まったルールに従って業務をします。とはいえ、個人のスキルや実績もある程度評価される人事考課制度がありますので、昇進の可能性が十分にあります。この評価は数字によって見られる実績がメインとなり、人となりや理念、やりがいといったものは評価されづらい傾向にあります。

一方で、欧米は個人の権利や自由が強調される風土があるため、グリーン組織が多い傾向が見られます。そして、先進的な企業運営を目指す会社の中には、ティール組織となるように改革を進めているところも増えています。

ティール組織のメリットとデメリット

進化型とされるティール組織にはたくさんのメリットがあります。

ティール組織のメリット

ティール組織の大きなメリットは、マネジメントに柔軟性がある点です。その部分を具体的に、記事の後半から考察してみましょう。

メンバーの主体性が発揮される

個々で判断し、行動することができる組織ですので、自然と主体性が発揮されます。もちろん、メンバー同士で刺激し合い、アドバイスを与えることはありますが、それは指示や命令ではありません。そのため、責任も個人に強くかかることになり、責任感を持って自分でアイディアを実行していく必要性が強まります。

セルフマネジメントが可能になる

上位からの指示系統がないため、社員が自分で業務手法やルールに工夫を加えてマネジメントをしていきます。自分で過去データを分析すると共に、現在の進捗状況を確認して、何が足りないかを見極めながら、随時修正をして効率の良い方法を選びます。上司に管理されるのではなく、セルフマネジメントをすることが習慣となるのです。

変化に対応しやすい

固定化された階層を持つ組織や、会社全体を貫く制限や規則が少ないため、柔軟かつ迅速に変化に対応できます。個人レベルで変化を察知して、施策やターゲットを変えることもできますし、チームとしての方針を修正していくことも楽になります。最終的な目標を達成するために、柔軟にプロセスや手法を変えていくことができる組織なのです。

組織本来の目的にフォーカスできる

ラルー氏が提唱するティール段階よりも下の組織だと、階級やリーダーの力に社員の注目が集まる傾向があります。「何のために仕事をしているのか」と問われて、「出世のため」と答える社員が多くなるのはその典型です。しかし、ティール組織ではそもそも階級が存在しませんので、企業が掲げる目的にフォーカスしやすくなり、意識と思考が一方向にマネジメントされていくのです。

自社をティール組織として進化させるために

自社をティール組織として進化させていきたいと願っているのであれば、以下の3つの構成要素を日々意識し、もし充分でなければ強化しておくことが重要です。従来の組織からティール組織に変容するために経なければならない要素だとされています。

①エボリューショナリーパーパス(組織の目的)

企業という組織がどうして存在するのか、何を目指して活動をしているのか、という根本的な要素です。「存在目的」と表現されます。これを組織のメンバー全てが理解しておくことで、個々で判断するとしても、同じ目的を持って活動することができます。ティール組織はメンバーがそれぞれ自分勝手に動くということではなく、組織の目的を共有した上で独立して動くことができる組織ということですので、そのベースとなるものを通常の組織より強く意識させ、中心に据える必要があります。

②セルフマネジメント(自主的経営)

個人に強い裁量権が与えられることを指します。その実現のためには、企業が持つ情報やナレッジを一部のマネジメント層でなく、メンバーに広く共有して、社員がより的確なマネジメントができるように助ける必要があります。これで、メンバー同士の信頼と敬意によって、社員が自律した経営ができるようになります。

③ホールネス(全体性の発揮)

多様性を認め、誰もがフラットな関係を維持して、組織としてマネジメントがなされる必要があります。組織の中で自分らしさを発揮し、それが評価される会社だという理解を持てるようにしなければなりません。評価制度もこれに伴って刷新する必要があるかもしれません。ホールネスの姿勢が浸透すれば、自主性が伸びていき、自由に考え情報発信する社員が増えてきます。そして、お互いが敬意を示すことで、不毛な競争ではなく、多様な人材から良い点を吸収し合うという良い循環が生まれます。

ティール組織の事例

オランダの非営利介護支援団体ビュートゾルフは、ティール組織として機能することで、事業を成功させた良い事例です。

導入前の課題

在宅介護は対象者のニーズによって求められることが異なるため、本事例の組織では統一した手法や規則を作るのが難しい状態でした。そして、非営利という特性から、非常に多くの人材が活動しており、それを上意下達でまとめるのは非常に困難な状態となっていました。

導入後の成果

この事例の団体はチームを850ほどに分けて、それぞれのチームを12人で構成させています。それぞれのチームは同じ組織に属し、介護支援を推進するという目的の下にいますが、目標達成の細かなプロセスなどは、それぞれのチームが独立して運営をすることにしました。そして、そのチームにマネージャーを配置せず、全てのメンバーがフラットな関係としています。

これにより、現場における状況に臨機応変に対応できるようになったというプラスの成果が見られています。また、全てのメンバーが自由に意見を言い、改善点を試せるため、メンバーのやりがいが上がり、離脱率が下がるという結果につながっています。

【まとめ】変化を繰り返す進化形の組織で、最上級のチームを作り上げる

組織は様々な要素で変化・成長します。ならば、より質の高い製品・サービスを提供できる企業、社員全てが満足し、幸せになれる組織を目指した方が良いでしょう。その進化の最終段階にあるのがティール組織となります。強制的にこのスタイルに持っていくことはできませんが、リーダーが率先してこの姿勢と制度を浸透させていくことで、成功事例にあるような最上級のチームと人材を作り上げていくことができるでしょう。

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