2024.05.22 (更新日:2024.05.28)

組織開発

人材育成で大切なこと-目的、基本的な考え方を徹底解説!【人材育成シリーズ①】

どんなに経営者が優れていても、経営戦略やビジネスモデルが画期的な物であったとしても、それを実現する人材が不足していては元も子もありません。事業が発展し、組織を拡大させるときには必ず、人が必要になります。持続的に事業を発展させるためには、会社が一丸となって「人材育成」に力を入れることが最も重要と言っても過言ではないなのです。また、一度教育プログラムを構築したとしても、時代の変化によって、その時々で必要とされるスキルも変化していきます。

そこでこちらでは、企業が人材育成を行う目的をはじめ、人材育成に不可欠な体制づくりのポイントやこれからの時代に求められるスキルについて、全4回のシリーズで詳しくご紹介していきます。ぜひご覧ください。

【人材育成シリーズ】

人材育成とは

人材育成とは、在籍する社員を事業の発展や企業の成長に貢献できる人材として育てることを意味します。人材育成というと新入社員教育などの若手社員向けの育成制度をイメージしがちですが、キャリア採用、マネージャー層など様々なステージの社員に対して必要なことです。ここでは、人材育成の目的、人材育成を考える際にまず確認しておきたい「自社が求める社員の姿」について詳しくご紹介します。

人材育成の目的

企業にとって、人材育成とは様々なリソースを活用しながら、企業の人材を育てていくことを意味します。企業の経営資源である人材をより効果的に、そしてより効率的に活用することで、競合他社との競争力を高めて高い利益を上げることが最大の目的です。人材育成を行う目的として、次の3つが挙げられます。

ビジネスマインドの習得

人材育成を行うことで、企業理念はもちろんのこと、組織の一員としての心構え、さらには社会人として身につけておきたいビジネスマナーなど、仕事をする上で基本となる姿勢や考え方を習得できます。

仕事に対する姿勢や考え方をしっかりと教え込むことで、新人社員研修はもちろん、管理職の育成にも高い効果が期待できるのです。

社員のスキルや専門性の向上

担当する事業や所属する部署によって必要なスキルや専門性は大きく異なります。人材育成を通して、それぞれの分野で求められるスキルや知識を身につけることが大切です。専門的な知識をインプットするためには、社員研修はもちろんのこと、隙間時間を有効活用できる「eラーニング」などを活用していきましょう。

そして専門的なスキルを身につけるためには実践あるのみです。実務を通して様々なケースに触れながら試行錯誤を繰り返すことで社員のスキルや専門性は大きく向上します。

組織力の向上

社員1人1人の能力を上げ生産力を向上することは非常に重要であり、一人ひとりの活躍が企業を大きくしていくことは間違いありません。しかし、企業においてもう1つ重要なのは「組織で動くこと」です。様々な考え方や能力を持った社員たちがバラバラに動いてしまっては、その力が半減してしまうだけでなく、場合によってはマイナスに働きかねません。そのため、組織力の向上も企業にとって重要です。

個人の能力を高めつつ自分の役割を明確にし、1つの目標を目指す強い組織を形成することも人材育成における大きな目的です。

社員の離職を防ぐ

また人材育成には離職を防止するという目的もあります。現在、転職は特に若い世代において一般的であり、転職に伴う離職は増加傾向にあります。厚生労働省が昨年発表した「新規学卒就職者の3年以内の離職率」では大卒就職者では31.2%が3年以内に転職しているという結果となりました。転職の理由では「給与」や「職場環境」、「やりがい」などが挙げられます。

人材育成を行うことで、個人の能力を上げそれを評価したり、組織力の向上で職場環境が良好になったりするなど、転職の原因を減らすことも可能です。個人と組織の両方からアプローチを行い、社員の「やりがい」をしっかりと確保するためにも人材育成は重要と言えます。

人材育成シリーズ②

人材育成における目標設定

人材育成を成功させるために重要なのが目標設定です。企業理念とリンクした「自社が求める社員の姿」を具体的に表し、それを実現するための指標を掲げることで、企業の方向性を社員に周知し、浸透させることができます。明確な目標設定をすること、そしてその要素を育てるトレーニング体制、それに向けての各人の努力と能力を正当に評価する評価制度、これらが揃うことで、社員を育てることができ、社員のモチベーションや生産性の向上に効果が期待できるのです。

このように、人材育成のプロセスは企業のビジョンを浸透させ、それを社員自身が体現することに他ならず、「人材育成なくして企業の成長は不可能」と言っても過言ではありません。人材育成は、経営層や人事部門のみならず、企業全体において取り組むべき最重要課題なのです。

人材育成における課題

ここまで、人材育成を考える上で不可欠なことについて説明してきました。ではこれらができていない場合や、当初はうまくスタートしたが、状況の変化により見直しやテコ入れが必要な場合にどういうことが起こるか、よくあるケースと共に解説していきましょう。

現状がしっかりと把握できていないまま、不適切な教育が行われる

人材育成において、現状把握は非常に重要です。まずは、現在自社にはどのような課題や必要性があるのか、社員の状況はどうなのか、しっかり確認しなければなりません。現状を把握することで「どのような対策を講じたらいいのか」「人材育成が本当に必要なのか」が明確になります。ピラミッド型、フラット型など組織内のシステムによっても、最適な人材育成方法は変化します。「現状が分からないがとりあえず一般的なものをやってみよう!」と動くことは時間やお金を無駄にする可能性が高く非常に危険ですので、行うべきではありません。

短期的な施策で分かりやすい効果を求める

何か施策を行うとき、きちんとしたビジョンにもとづいて計画を立てないとどうしても短期的な分かりやすい効果を求めてしまいます。しかし人材育成はスキルや能力の習得や育成が目的であり、成果が出るまでには時間が必要です。人材育成ではサポートや研修などの振り返りも重要な工程であり、非常に手間と時間がかかります。しかし、この振り返りを行うか行わないかでは、人材育成の効果にも雲泥の差が生じかねません。人材育成を行う際には長期的なスパンでじっくり時間をかけて実施する必要がありますので、十分な時間的余裕を持って取り組んでください。

人材育成のモチベーションが低くなる

人材育成のモチベーションは「行う側」と「受ける側」の両方に必要です。一般的には、人材育成を行う側は、企業の成長や生産性の向上を目的としているため比較的モチベーションが高い傾向にあります。一方、受ける側のモチベーションが低いことは珍しくありません。大きな要因としては「なぜ人材育成が必要なのか」「これをしたら自分たちにどんなメリットがあるのか」などが挙げられます。人材育成を行う人事部や管理職サイドは、人材育成を受ける側がメリットややりがいを感じ、モチベーションを高く保てるよう工夫しなければなりません。

人材育成に対する基準があやふやになり、モチベーションが下がる

「効果ありそうだからうちでも人材育成しよう!」となんとなく始めてしまい、基準が不明確なケースもあります。人材育成を行うには、しっかりとした基準を決めることが重要です。基準を明確にすることでこそ、人材育成を行う側も受ける側も「どこまでやればいいのか」「どんな方法が効果的なのか」が明確になり、より効果が期待できます。

基準がない状態で人材育成を行うのは、ゴールが分からない状態でマラソンを行うのと同じです。どこまで走ればいいのか、どこに向かって走ればいいのかが分からず、体力と精神力を消耗し途中で挫折してしまいかねず、モチベーションが下がってしまいます。人材育成を成功させるためにも、基準を明確に決めることが重要です。

人材育成を始める前に準備しておくべきこと

よく陥りがちなケースについて説明しました。ではここからは、具体的にどうすればよいのか、人材育成を始める前に準備すべき2つのことについてご紹介します。

その1|現状の問題点や課題を把握する

人材育成をする上でまずやるべきなのは、現場の抱えている問題点や課題をすくい上げることです。

まず、人材育成のおけるニーズや課題を把握するために組織全体の仕事内容や役割分担を把握します。どのような部署があって、どのように機能しているか、さらにどのような社員がどの程度の人数が配置されているかについても確認してください。

組織全体の様子を把握できたら、社内のミドル層や現場の若手に対してヒアリングを行い、解消すべき課題や問題点を把握しましょう。それらの課題が教育をすることで解決するかについても考えていきます。

その2|課題に合った解決策を確認し、明確な目標を設定する

課題や問題点が明らかになったら、経営方針など企業にとっての理想像や将来像を照らし合わせながら、「誰を」、「いつまでに」、「どのような人材に育てるか」といったような具体的でかつ明確な目標を設定します。

この目標設定があやふやなまま人材教育を行なってしまうと、人材育成計画が立てられないどころか、目標が設定されていない社員のモチベーションも維持できません。

どのようなスキルを持った人材がいつまでにどの程度の人数必要なのか具体的に設定してください。

人材育成シリーズ④

人材育成を成功させるためのポイント

現状の把握、目標設定などの準備が整ったら、次は社内に展開していきます。その際に必ず押さえておきたい4つのポイントについてもご紹介します。

ポイントその1|人材育成の目的を共有し目標を明確にする

まず重要なポイントが人材育成の目的を明確にすることです。「自社が求める社員の姿」と表現することもできるでしょう。これは企業理念を体現する形でリンクしてくるはずです。目的が定まったら、その目的を達成するために必要な要素も明らかとなり、目標や方向性までもがはっきりとしてきます。

最終的な目標が明確にするだけでなく、段階的な目標やゴールを設定することも大切です。教育を受ける側のモチベーションを維持するためにも、社員の年齢や役職、スキルなどを総合的に考慮した人材育成プランを作成することが大切です。

ポイントその2|社員の自主性を引き出す環境を整備する

どんなに素晴らしい研修や教育プログラムを提供し、社員の仕事に対するマインドやスキルが高まったとしても、それぞれの現場で学んだことを実践できないと意味がありません。

教育プログラムで学んだ内容の業務を任せてみたり、権限を委託してみたりなど、社員一人ひとりが学んだ内容を定着させるためにも社員自身で実践できる機会を用意するよう心がけてください。

そして社員が何かにチャレンジする姿勢を称賛し、たとえ失敗したとしても責めすぎない環境や新しいことを受け入れる風土を整えること、さらにはわかりやすい評価基準や制度を作ることも大切です。社員のモチベーションや自主性を自然に引き出す環境づくりに取り組んでいきましょう。

ポイントその3|会社全体で人材育成に取り組む

人事担当や教育担当のみが人材育成に関わるのではなく、企業全体で人材を育てるという意識を持つことが、人材育成をする上で非常に大切なポイントです。経営陣をはじめ、人事や部門責任者たちと共通認識を持つことで、互いに連携しながら人材育成を推進できます。

社員に対しては、ポスターやメール、社内報などを活用して社内で人材育成に関する周知やPRをすることで、企業として人材育成に力を入れていることをアピールしていきましょう。企業の制度として人材育成に取り組んでいる姿勢を示すことで、社員のモチベーションにもいい影響を与えるはずです。

【まとめ】人材育成を行う目的や目標をしっかりと認識する

今回は、企業が人材育成を行う目的をはじめ、人材育成をする際に押さえるべきポイントを解説しました。人材育成を行う目的や目標をしっかりと認識することが非常に重要です。

人材育成は、企業や組織が長きにわたって成長し続けるために重要な基盤づくりです。まずは自社の状況や課題を把握し、今回ご紹介した手法を参考にしながら自社にとって最適な人材育成を実践していきましょう。

資料リンク:営業部門の人材育成に着手したい方はこちらを活用ください