2022.05.31 (更新日:2024.03.25)

マネジメントノウハウ

マネジャーが意識すべき目標設定のポイントとは?部下の成長を促進するSMARTな目標設定のコツ

企業という単位であれ、営業チームという小さな単位であれ、業績を向上させるには、組織としての目標設定が必要です。しかし、目標をどのように立てたら良いのか、難しいと感じるマネジャーも少なくありません。そこで、効果的な目標設定の要素をチェックしてみましょう。

マネジャーがすべき目標設定とは

目標を立てたつもりでも、それをなかなか達成できず、業績やチームの士気に影響を与えていない場合、そもそも目標についての考え方が間違っている可能性があります。チームのマネジャーは、目標設定とは何を指すのかを理解しておくことが必要です。

目的と目標の違い

目標は、チームや個人が業績や効率を向上させるために立てるものです。多くのマネジャーがこれについては理解しているものの、「目的」と「目標」を混同していることがあります。この2つはどちらも「将来達成したいこと」を意味しますが、その規模や詳細については明確な違いがあります。マネジャーは目的と目標の違いを理解した上で、使い分けることが重要なのです。

目的:最終的に達成したいこと

目的とは、最終的に達成したいこと、もしくは長期的な観点で成し遂げるべきゴールを指します。たとえば、「自社製品・サービスの認知を高める」や「業界トップ3に食い込む」といったことです。より大きな到達点であり、「ビジョン」という感覚に近いものがあります。

もちろん、こうした目的やビジョンを企業やチームとして持っておくことは重要です。全体としての方向性を示すものとなりますし、長期にわたって発展と改善を続けていくためのモチベーションとなるからです。また、共通の目的を持つことで連帯感を抱いたり、士気を高めたりするのに役立ちます。

しかし、目的は規模が大きく、抽象的になりがちです。そのため、マネジャーが目的しか提示しない場合、チームや個人として具体的に何をすれば良いのか、現在行っている努力がどのくらい目的の達成に役立っているのか、分からなくなるのです。マネジャーが目標を設定したと思っていても、それが実際には目的でしかない場合、チームのメンバーは混乱してしまうことがあります。今の状況が、目的の達成までにどのくらいの位置にあるのかが分からないので、努力をしようとする気持ちが起こりづらいこともあります。目的を立てることは大事ですが、それだけでは不十分です。

目標:目的達成に必要な複数の要素

最終的な到達点である目的に行くまでの道筋、もしくは途中経過地点として、目標が存在します。そのため、目標は具体的な期間や数字で表明される必要があります。たとえば、「1か月でアポイント獲得数を○○件得る」、「1年後の売上を現在の2倍にする」といった明確な目標です。

こうした目標は、企業やチームの中に1つだけ設けられるのではなく、複数設定されることになります。遠いゴールまでに、通過ポイントを複数用意しておくのと同じです。営業活動においては、プロセスごとに数値を設定するケースが多く見られます。「アポイント獲得目標は○○件、商談実行件数は○○件、見積もり提示は○○件、成約は○○件」という形です。

さらに、目標は同じ内容であっても、異なる角度から設定することも多いです。上記の例では、目標とする件数に加えて、成功率を別の目標として設定することができます。たとえば、「新規アプローチから商談につながる確率を○○パーセント」や「成約率○○パーセント」といった目標です。見た目の成績だけでなく、業務効率を上げることもできるからです。

営業マネジャーは、1つの目的に対して、複数の目標をいくつかの角度から設定することにより、取り組む社員は現在何をすべきなのか、改善すべきことは何かを明確にすることができます。自分やチームがどの程度まで目標を達成できているかも一目で分かりますので、モチベーションを維持するのにも役立つでしょう。

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マネジャーはなぜ目標設定が必要?

目標設定を意味あるものとするには、そもそもなぜ目標を設定しないといけないのかを理解しておくことも重要です。目的を持った上で目標設定を行えば、同じような数値設定であっても、チームとしての業務効率が上昇することもあり得ます。

目的を効果的に達成するため

目標設定は、最終的な到達点である目的があってこそのものです。そのため、単に「今月は契約を○○件取る」という、その場だけの目標だと、チームの成長には役立ちません。企業として、またチームとして、どんな目的を持っているのかを正確に理解して、それを達成するための道のりとして目標を考えるべきなのです。

こうした考え方をすると、目的に到達するためには、この時期までに何を成し遂げるべきなのか、今どんな改善が必要なのかという、逆算的な思考ができるようになります。目的の効果的な達成のために必要なことをリストアップして、それを目標として定めるのです。これができれば、目標は意味のあるものとなり、チームのメンバーも充実した営業活動ができるようになります。

チームでの目的達成スピードを上げるため

目標が的確に定められると、目的に到達するまでの道筋が最短距離となります。その分、目的達成が早くなるわけです。単にそれぞれの期間における数字をクリアするだけでなく、効率を高めるためにも役立ちます。結果として、同じ作業量であったとしても、営業スキルが向上し、洗練された営業手法を編み出せるようになって、より早く最終的なゴールまでたどり着けるようになります。

目標設定は、チームや個々の営業担当者のスキル・資質を向上させる意味でも役立ちます。通常、従来のやり方で仕事をしているのでは達成できない、少し高めの数値を目標として設定するからです。普段よりも努力し、今までとは異なる手法を試して、より迅速かつ質の高い営業活動ができるようになります。テクニックや姿勢の改善が生まれ、目的達成により近づけるのです。

メンバーのモチベーションを高めるため

ただ与えられた仕事をこなしていくだけでは、漫然と毎日働くだけになってしまうのが人間の性です。そこで、努力が求められる目標を設定することで、頑張ろうという気持ちを持たせることがマネジャーの役割となります。実際に目標達成のために働き、その努力によって目標が達成されつつある時や実際に目標を達成することができた時には、大きなやりがいを感じるものです。このやりがいが、次のプロジェクトや新たな目標に対しても、前向きな態度で取り組むことにつながります。

あまりに高過ぎる目標だと、最初から諦めたり、重荷に感じたりして、逆にモチベーションを下げてしまいます。一方で、極端に簡単な目標とすると、努力を払わなくても問題ないと思うメンバーが出てきますし、馬鹿にされていると感じることすらあります。努力や改善が求められるものの、十分達成可能だと思わせるレベルの数値を設定することで、モチベーションアップにつながる目標設定となるのです。

マネジャーが適切な目標設定するメリット

目標設定の意義を理解しておくと、組織として、個人として、様々なメリットを生み出すことができます。これを知ることで、目標設定の重要さをより深く理解できます。また、これらのメリットが実際に感じられているかどうかで、すでに設定した目標が適切なものだったのかを判断することもできます。

メリット①:個人と組織の成長を促進する

適切な目標は、単なるノルマとは違います。ノルマはチームや個人がクリアしなければならない義務であり、多くの場合、重圧を与えます。しかし、適切な目標はメンバー個人と組織の気持ちを奮い立たせて、やる気を起こさせます。そして、目標達成のために努力することで、成長できるというメリットがあります。前述のように、適切な目標は現状を改善し、新たなテクニックや手法を見つけてトライすることを促すからです。

今までのやり方では達成できないので、より効率的な方法を探そうという努力が、組織としての営業フローを効率化させたり、個人の営業スキルを向上させたりするわけです。今まで気づかずにいた、業務上の無駄を削り落とすことにつながるケースもあります

メリット②:必要なアクションが明確になる

目標は、短期的な数値設定でなされます。そのため、いつまでに何をしないといけないのか、今何をすべきなのかがはっきりします。特に、経験が浅い若手や中途採用で入社したばかりのメンバーは、とりあえず何に手を付けたら良いか分からないと感じることも多いはずです。しかし、それぞれに明確な短期目標があれば、すぐに必要な行動が取れるようになるのです。

ある程度プロジェクトが進行していってからの目標達成を検証するメリットも生まれます。設定した目標に対して、どのくらいの達成度が見られたのかを、小さな目標ごとに見ます。こうすることで、チームもしくは個人としてどこに弱点があるのかをはっきりと理解できるのです。

たとえば、アポイント獲得は十分にできているのに、見積もり請求数が少ないということであれば、商談における進め方が弱いのではないかと分析できます。そうすれば、商談力を上げるための工夫をすべきだと、改善点が明確になるのです。こうして、より総合力に優れた営業担当者を作っていけます。

メリット③:進捗状況を把握できる

目標を段階ごとに定めておけば、最終的な目的達成までの進捗状況がはっきりと見えてきます。こうすることで、プロジェクト完成までの期間を予測しやすくなりますし、現状で遅れが出ているようであれば、早めに調整をすることもできます。マネジャーは目標達成状況をプロジェクト全体から俯瞰的にとらえることができ、チーム管理に役立てられるというわけです。

目標達成度合いを見て、メンバー個々がやりがいを感じたり、さらなるモチベーションアップにつなげたりすることもできます。目標を着実に達成できているのであれば喜びを感じられますし、逆に遅れているようであれば、さらに努力が必要だと気持ちを引き締められるからです。

マネジャーの目標設定に効果的な「SMARTの法則」

適切な目標設定をする際に用いられているのが「SMARTの法則」です。ジョージ・ドラン博士が考案した法則で、1981年に発表されています。「SMARTの法則」とは、次の5つの要素を考えて目標を立てるというものです。

・Specific:具体的
・Measurable:測定可能
・Achievable:達成可能
・Relevant:関連性のある
・Time-bound:期限をもつ

これら5つの項目について、それぞれの詳細をチェックして、具体的な目標設定の手法を学び取りましょう。

具体的(Specific)な目標

働く人が理解できる、達成のための具体的な目標である必要があります。たとえば、「成約数を増やす」といったあいまいなものでは、どのくらいの件数を増やしたら良いのか分かりませんし、今何をすべきなのかも理解できません。達成したい内容の定義をはっきりさせることが重要です。「営業資料を自分一人で作れるようになる」と具体的な行動を指し示したり、「商談を○○件行う」と数値で目標を立てたりすることで、具体性を持たせます。

測定可能(Measurable)な目標

前述の具体的な目標と関連のある点ですが、目標は数値化すると、より効果が増します。もちろん、目標の中には数字に表せないものもありますので、すべての目標について数値化すべきということではありません。それでも、目標が達成されたのか、達成に向けての進捗状況はどのくらいかが分かる内容にすべきです。

数値化できるものであれば、それは測定可能なものでなければいけません。たとえば、「営業トップになる」といった目標はあいまいで、測定がしづらいものです。そうではなく、資料請求数や売上額、既存顧客のリピート率といった明確な数字を出すことが重要です。こうした目標があれば、ある程度営業活動が進んでから、実際にそれぞれの数値が達成されたのかがはっきりしますし、足りない点を検証するのにも役立ちます。

達成可能(Achievable)な目標

マネジャーとしてやってしまいがちなのが、あまりに高い目標を作ってしまうことです。目標を見た時に、もしくは実際に手を付けた時に、達成できないとメンバーが感じてしまうと、一気にモチベーションは下がってしまいます。逆に、簡単ではないものの、努力すればクリアできそうな目標を立てると、士気は上がります。こうした目標を設定し、達成するというサイクルを繰り返していくうちに、徐々にチームと個人の営業スキルが向上していくことになるのです。

マネジャーとしてはチームやメンバー各自の能力や環境をよく把握して、バランスの取れた目標を出すべきです。そのためには、まずは現状の把握と可能性を確実に理解しておくことが求められます。

関連性がある(Relevant)目標

目標の定義でも見たように、目標は最終到達点である目的に向かうための一つの道のりとして作ります。そのため、最終目的、そして目標同士で関連性がなくてはなりません。多くの場合、ビジョンや長期目標は経営陣が決めて提示します。チームのマネージャーとしては、こうした会社としての目標や目的を理解した上で、それに合わせた目標設定を行うことが求められるのです。チームとしての目標を作ってから、メンバー個人にも目標を作らせるのであれば、全体の目指す方向に適った目標を立てているかを確認することも重要です。

期限を定めた(Time-bound)目標

いつまでに目標を達成するのか、期限を切ることは絶対に必要な要素です。これがなければ、明確な行動計画を決めることができないからです。いつになってもやる気が起こらず、ダラダラと現状を引きずる原因ともなります。1年間、四半期、月間などの周期で、細かく期限付きの目標を定めましょう。大きな目標への進捗状況が分かりやすくなりますし、途中で軌道修正をするのにも役立ちます。

マネジャーが知っておくべき目標設定の注意点

目標設定は、マネージャーの仕事です。それだけに、チームが目標に向かって努力できるように、よく配慮して設定する必要があります。効果的な目標設定のために注意すべきポイントを押さえておきましょう。

組織のビジョンや戦略とリンクしていること

自分のチームの成績が上がれば良いということではなく、あくまでも会社組織の1チームとしての機能していることを意識します。会社として進めるビジョンや戦略に貢献できるような目標設定をするべきです。そうでなければ、せっかくの努力が会社から評価されなかったり、他部署からの支援が得づらくなったりするからです。途中で上層部から、すでに立てた目標の変更を迫られることもあり得ます。企業としての目的を成し遂げるためにチームの目標設定することを、マネジャーとして意識しましょう。

結果だけでなくプロセスも評価すること

目標達成は重要ですが、数字を追って、達成できたかどうかだけを評価するのは、マネジャーとしてふさわしくありません。もちろん、結果が出た時にそれを褒めることは重要です。しかし、それ以上に大事なのは、メンバーが達成のために払った努力や成長してきた過程です。こうした点を評価して褒めることで、よりやる気がアップしますし、さらなる目標へのチャレンジを促すことができます。

全員にとって公平な目標設定であること

メンバーごとに目標を与える場合、他の人とのバランスを取るべきです。ほとんどの営業担当者は、自分の目標と他の人の目標を比較します。もし、それが不公平だと感じれば、やる気を失ってしまいます。

これは、単に同じ数字を設定するのではなく、経験年数や役職などに見合った、公平な設定をするということです。それぞれのメンバーに合った目標があれば、納得して仕事に励むようになります。可能なら、それぞれの特性や性格なども考慮に入れて目標を作ると、よりやる気を促す助けとなります。

【まとめ】マネジャーの目標設定はメンバーと組織をつなげる効果的なツール

チームや個人がより効率の良い営業活動を行うために、そして成長を続けるために、目標設定は欠かせないものです。マネジャーとしては、目標を立てることの意義と目的を理解した上で、適切な目標を設定する必要があります。こうした目標は企業全体が掲げる目的にリンクして、チームや個人を会社とつなげる重要なツールとなり得ます。目標設定のための効果的な手法を学び、メンバーの特性を把握して、意味のある目標設定を行いましょう。

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