2024.03.20 (更新日:2024.04.15)

マネジメントノウハウ

マネジメント力を高める人材育成とは?必要なスキルや手法までくわしく解説!

人材育成をする上で、管理職や管理職候補のマネジメントスキルの向上は重要なテーマの一つです。しかし、企業によってはマネジメント力のある人材が不足していたり、管理職がなかなか育たなかったりと様々な課題を抱えているのではないでしょうか。

ここでは、管理職や中堅社員が人材育成をする上でマネジメント力を高めるべき理由や、マネジメント力を高めるための具体的な育成方法についてご紹介します。また、人材育成をする上で高めるべきマネジメントスキルについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

なぜ人材育成マネジメントは必要?

近年、社員の人材育成促進を目的としたマネジメントである「人材育成マネジメント」の重要度が高まっています。これは、少子高齢化による労働人口の減少や専門スキルを持つ人材の需要増加など、社会環境の変化に対応するためです。人材育成マネジメントは、組織の競争力を維持し、持続的な成長を達成するために不可欠な要素となっています。

人材育成とマネジメントとの違いについて

マネジメント力を高める重要性を解説する前に、まずは混同しやすい「人材育成」と「マネジメント」の違いについて見ていきましょう。両者の特徴や決定的な違いを理解することで、人材育成をする際に重要なポイントを理解できるはずです。

人材育成とはなにか

人材育成とは、上司、もしくは上の立場の人間が部下を指導することによって育成していくことを意味します。

人材育成をする際は教えられる立場の社員はもちろんのこと、指導する側の教育者をどのように育成していくかが重要になります。つまり、上司や上の立場の人間であれば誰もが人材育成に向いているわけではないということです。

人材育成では、ただ仕事のやり方を教えるだけでなく、企業が大切にしている理念やビジネス戦略、企業の風土について教育することも求められます。

若手社員のみならず、他部署から移動してきた社員に対しても新しい知識を伝えることが大切です。社員が困っている時にサポートすることも人材育成にとって大切な要素と言えるでしょう。

もう少し具体的にすれば、人材育成においては、現状把握、コミュニケーションスキル、現実的な計画、アフターフォローなどが求められます。これらによって、効果的な人材育成を進めることができます。特に、現状把握は、社員のスキルや能力、組織のニーズを理解するために重要です。また、コミュニケーションスキルは、社員との良好な関係を築き、育成プログラムの効果を最大化するために必要です。現実的な計画は、目標を達成するための具体的なステップを設定するために重要です。そして、アフターフォローは、育成プログラムの効果を維持し、持続的な成長を支えるために必要です。

マネジメントとはなにか

マネジメントとは、直訳すると「管理」や「経営」という意味を持つ言葉です。要するに企業におけるマネジメントとは、組織が成果を上げるために、経営や売上に関わる経営資源(人、金、もの)を効率的に活用することを意味します。

つまり、人材育成とはマネジメントの手段の一つです。教育を通して社員のスキルや能力を向上させることによって、企業にとって大きな利益や成果を高められるのです。

人材育成にてマネジメント力を高める目的

人材育成をする上で、なぜマネジメント力を高める必要があるのかと気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、人材育成の分野においてマネジメント力を高める目的についてご紹介します。

部下社員の成長促進

人材育成をマネジメントする際に最も大切なのが、部下社員の成長を促すことです。人材育成をすることで経営資源として大切な「社員」の業務効率を最大化し、最終的に事業の業績アップにつながります。

企業が求めるスキルを持ち合わせた人材を育てるためにも、社員のモチベーションを高めるような声かけや働きかけが重要です。社員の意欲ややる気を掻き立てるためにも、管理職や教育者のマネジメント力は必要不可欠と言えます。

持続的な組織力の向上

組織力とは、社員が一致団結して発揮する能力を指します。企業が成長し続けるためには、この組織力なしでは実現不可能です。

組織力を強化するためには、社員を育成する制度や風土を整える必要があります。例えば、新人研修やスキルアップ支援、さらには公平な人事評価制度などを正しく運用することで、同じ意識や目的を持った社員を育てられるのです。

持続的な組織力を高めるためにも、管理職や中堅社員のマネジメント力は非常に大切な能力です。

関連記事:組織の成長段階について知りたい方はこちらをご参照ください→「組織開発とは?目的やフロー、効果的なフレームワークについて解説」

次期管理職の育成

組織を継続、発展させるためには、次世代のリーダー育成が重要です。マネジメント力を高めることによって、次期管理職の育成強化にもつながります。

現場で働く新入社員や若手社員の研修は充実しているものの、年次を重ねるごとに研修の機会が減少してしまいがちです。しかし、どの企業においても次期管理職候補としての人材育成は、企業の存続に関わる重要なタスクとして捉えてください。

候補者の選抜から育成計画の設計、トレーニングの実施や改善策の検討など、次世代のリーダーを育てるためにも管理職のマネジメント能力を高めていきましょう。

マネジメント力を高めるために大事にすべきこと

ここからは、マネジメント力を高めるために大切にすべき2つのポイントについてご紹介します。

マネージャーとしての役割を理解する

マネジメント力を強化するためにも、マネージャーとしての役割をしっかりと理解することが大切です。

マネージャーは、リーダーを含むチームのメンバーが個々のスキルや能力を最大限に発揮できるように調整、管理することが求められます。そのため、チームとしてのゴールや方向性の決定、目標を達成するための人材配置、チームメンバーのモチベーション管理やメンバーの人材育成や能力開発など、マネージャーには様々な役割があるのです。

これらの役割をしっかりと果たすことでマネージャーとしての実績を上げることができます。自分に与えられた役割を踏まえて、どのようにアクションを起こすべきかを考えなければなりません。

マネジメントについてプロセス・サイクルを理解する

企業やチームの業務プロセスを理解することはもちろん、マネジメントを効果的に機能させるためのプロセスやサイクルを理解しておきましょう。

組織としての運営方針や運営計画を作成した上でそれぞれのメンバーの業務タスクを設計する、設計したタスクをメンバーに割り振り、業務の進行をコントロールするといった基本的なマネジメントサイクルをしっかりと理解することが重要です。

さらに、「評価」や「コンプライアンス」、そして「メンタルヘルス」などマネジメント業務を行う者として知っておくべき最低限の知識も習得しなければなりません。社内の人事制度や法令を把握するとともに、最新の情報や知識を常にアップデートすることが求められているのです。

関連記事:営業マネジャーに不可欠の7要素についてはこちらで解説

人材育成で高めるべきマネジメントスキル

マネジメントスキルは、組織が成果を上げるために経営資源を効率的に活用するための能力です。人材育成に取り組む際には、複合的なマネジメントスキルが求められます。ここからは、人材育成において高めておくべきマネジメントスキルについて見ていきましょう。

目標管理能力

目標管理能力とは、多くの企業で用いられている組織をマネジメントする際の手法です。要するに、自分や他の社員の目標を達成させるために導く力のことを指します。

具体的には、業務を担当する社員それぞれに業務目標を設定させ、申告した業務目標の進捗状況や達成までのスケジュール調整、そして必要に応じて支援を行いながら管理します。

この目標管理能力は若手社員のうちから身につけておくべきスキルの一つです。ただし、マネジメントをする立場になると自分の所属するチーム全体や他チームと連携をとりながら目標管理をする必要があるため、より高度な目標管理能力が求められます。

進捗状況を事細かにチェックする必要はありませんが、部下によっては細かくチェックしてもらいたいと感じる場合もあります。そのため、それぞれの社員に合わせて進捗状況を管理することが大切です。

分析力と問題解決力

マネジメント力を高めるためには、自分や企業が置かれている現状を分析する力はもちろん、課題に対する問題解決能力が必要不可欠です。

マネジメント力が高い人であればあるほど、周囲の状況をよく観察して必要な対策や行動を常に模索しています。この洞察力がなければ、部下に正確でわかりやすい指示を出せません。

さらには、組織として成長していくためには抱えている課題を解決することが求められます。どのような課題があり、どのような方法で解決していくか瞬時に判断し、メンバーに周知していくためには「ロジカルシンキング」が必要です。

ロジカルシンキングでは感覚や経験則、感情で物事を判断するのではなく、論理的思考に基づいて客観的に問題解決することが求められます。

テクニカルスキル

ビジネススキルの一つであるテクニカルスキルとは、業務を遂行する上で必要な専門的な技術や知識のことです。テクニカルスキルはそれぞれの業界や業種、さらには置かれている立場によっても大きく異なります。

例えば、販売職や接客業の場合のテクニカルスキルは、接客技術や説明力、商品知識などですし、営業職の場合は、コミュニケーションスキルやマーケティング技術、そして商品知識などがテクニカルスキルに該当します。

業務を効率よくこなしていくためには、テクニカルスキルとその他の汎用性のあるスキルをバランスよく身につけることが重要だと考えられています。

コミュニケーション能力

部下の魅力や才能を最大限引き出すためにはコミュニケーションスキルが必要不可欠です。

コミュニケーションスキルとは、相手と正しく情報共有したり、互いの意思疎通をスムーズに行ったりするために必要な能力を意味します。コミュニケーションと聞くと、どうしても自分の考えや思いをわかりやすく伝えることが重要と捉えられがちですが、実は相手からの情報を正確にインプットすることも大切です。

さらに性格に関しても、明るい性格の人の方がコミュニケーションスキルをもっていると考えられがちですが、実はこれも一概にそうとは言い切れません。寡黙な方であっても、相手の話にしっかりと耳を傾けて、相手の気持ちを察知しようとする姿勢があれば、コミュニケーションとして成立するからです。

コミュニケーションスキルの中でも特に人材育成の分野で重要とされるスキルが「コーチングスキル」と「ティーチングスキル」です。

コーチングスキル

コーチングスキルとは、相手との対話の中で相手の能力やモチベーションを引き出し、自己成長や自発的なアクションを起こすように促すスキルのことです。人材育成におけるコーチングでは、上司が部下の能力を引き出すために、コミュニケーションを大切にしながら、部下の主体性を引き出すことを目的としています。

コーチングでは部下に業務指示をするだけでなく、部下に何かしら気づきを与えるような質問や問いかけをしたり、自己成長を促すような目標設定を指示したり、さらには目標を達成するためのアドバイスを行ったりします。

コーチングでは上司と部下の関係性であっても、あくまで対等な関係を維持することによってよい信頼関係を築くことができると考えられているのです。

ティーチングスキル

ティーチングスキルとは、経験や知識が豊富な人からそうでない人に向けて知識やノウハウ、技術などを教えるためのスキルです。新しい学びを得ようとする人に対して、自分の知識や経験の引き出しの中から必要な情報を共有し、習得できるようサポートすることを指します。

コーチングでは対等な関係性で接することが求められたのに対し、ティーチングではあくまでも上下関係のある指導方法のもと教育を行うのも特徴です。先生と生徒の関係性のもと教育活動が展開されます。

ただ単に教えるだけでなく、アドバイスをする役割や相手に気づきを与える役割も求められます。さらに、もわかりやすく説明するスキルや手本や具体的を提示するスキルも必要です。

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングとは、物事の本質を見極めるためにあえて疑いを持って考える思考のことです。批判的思考とも呼ばれています。決して批判をするために欠点や間違いを探すのではなく、物事の本質を見極めて改善点やリスク回避につなげていくために必要な考え方です。

従来の方法で本当に問題がないか、より良い方法はないかと疑いの視点を持って考えることでより良い成果が出ると考えられています。

リーダーシップ

効果的にマネジメントを行うためには、リーダーシップスキルが必要です。リーダーシップとは、一般的に指導力や統率力を指し、ある目標を達成するために個人やチームに対して具体的なアクションを促す力を意味します。

目標達成のための明確なビジョンを打ち出してチーム内に共有することはもちろんのこと、チーム全体の業務状況を把握・管理すること、そして何よりチームや社員からの信頼を集めることがリーダーとして必要なスキルです。

関連記事:リーダーシップについてはこちらの記事で解説(リーダーシップとは?メンバーの能力を最大限に引き出し、チーム目標を達成するためのリーダースキルを徹底紹介!)

マネジメント力を高める育成方法について

ここからはマネジメントスキルを習得し、マネジメント力を高めるためにおすすめの人材育成方法についてご紹介します。具体的な手法を解説しますので、企業やチームの状況に合わせてぜひ実践してください。

研修や勉強会の実施

マネジメント力を高めるためには、定期的な研修会や勉強会の場を設けることが大切です。外部から講師を招いた研修や外部研修などを実施することで、それぞれの社員が持つ知識やスキルのばらつきを防止できるというメリットがあります。

最低限知っておいてもらいたい基礎的な知識やスキルを伝えるのには、集団型の研修会や勉強会は非常に有効です。さらに、社員のレベルや階層に合わせたプログラムも組めるため、より専門性の高い教育を提供する際にも役立ちます。

特にマネジメントで必要な「ロジカルシンキング」や「リーダーシップ」などのスキルは、実務経験のみで習得することがとても難しいとされています。そのため研修会や勉強会のような体系的な学習法でインプットするのがおすすめです。

評価制度を整備しスキル習得の促進

人事評価制度とは、それぞれの社員の業績や能力、そして勤務態度や意欲などを客観的な指標のもとに評価する制度のことです。この人事評価制度をもとにして、給与はもちろん、賞与や昇格を決定するため、社員にとって非常に重要な存在です。

その人事評価制度の評価項目の中に「マネジメント」を入れ込むことで、マネジメントに関するスキル習得を促進させる効果が期待できます。「マネジメント力を身につけないとスキルアップや昇格が難しい」と感じることで、社員それぞれが能動的に、自発的にマネジメントスキルを習得しようとアクションを起こすでしょう。

OJTトレーナーへ任命

OJTとは、新入社員などを育成する際に多くの企業で取り入れられている手法のことです。上司や先輩社員が後輩に対して業務に必要なスキルや知識を、実務を通して実践形式で伝えていきます。

OJTトレーナーを務めることで、教えられる側はもちろん、トレーナー自身も一緒に成長できるというメリットがあります。後輩の育成のために教え方や伝え方を試行錯誤する経験は、通常の業務では得ることはできません。

育成対象者を育てるためには、目標管理能力をはじめ、コミュニケーションスキルなど様々なスキルが身につきます。この経験が必ずマネジメント力アップにつながると考えられているのです。

具体的な取り組み事例紹介

損害保険ジャパン日本興亜株式会社:「グループ人事ビジョン」と「求める人材像」を中心に、生涯を通した人材の育成に取り組んでいます。具体的には、「マイキャリアプラン」を年に一度作成し、上司と面談を実施するなどの取り組みを行っています。

株式会社ユー・エス・ジェイ:大阪にある大規模テーマパーク「USJ」を運営している同社は、社内大学である「Universal Academy」を通じて全従業員を対象に、さまざまな社内教育の機会を提供しています。

株式会社ニトリホールディングス:『教育こそ最大の福利厚生』と考え、キャリア支援に力を入れています。2〜3年で配置転換を行い、配置転換で得られた経験を技術に替えていく教育体系をとっています。また、近年ニトリ大学を設置し、グローバルな世界でも活躍できるスペシャリストの育成に力を入れています。

【まとめ】人材育成においてマネジメント力を高めていくことが求められる

今回は、管理職や中堅社員が人材育成をする上でマネジメント力を高めるべき理由や、マネジメント力を高めるための具体的な育成方法についてご紹介しました。マネジメントスキルとは、組織が成果を上げるために経営資源を効率的に活用するための能力です。部下の成長、促進持続的な組織力の向上、さらには次期管理職の育成の観点からも、人材育成においてマネジメント力を高めていくことが求められています。マネジメントスキルを高めるためには、コミュニケーションスキルや目標管理能力、分析力や問題解決力など様々なスキルを複合的に身につけることが大切です。

企業や会社が継続して発展していくためにも、人材育成は非常に重要です。教育の時間が捻出できないなどの理由から、思ったように人材育成に取り組めていない企業こそ、この機会に人材育成や社員のマネジメントスキルの習得に力を入れていきましょう。

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