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2021/04/06
これからの営業のあり方について
営業の未来を考える
昨今、商取引の現場に営業担当の介在するシーンが少なくなってきています。その背景として、インターネットの利用が進み、買い手が商品検討に必要な情報を自由に得られるようになったこと。電子商取引(EC)やデジタル購買などの処理や決済が、人手を介さずに済むようになったこと。顧客の嗜好や購買行動が分析によって予測できるようになったことが挙げられます。
営業はこのまま時代遅れの職種になるのでしょうか?
- 営業を巡る変化
- 営業の果たすべき役割
- 営業の未来に必要なこと
を通じて、これからの営業を考えていきます。
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1. 営業を巡る変化
販売従事者が減少する
平成27年国勢調査の『就業状態等基本集計結果』によると、「専門的・技術的職業従事者」は年々上昇しているのと比べて、「販売従事者」は、平成 22 年と比べると800万人から741万人 と0.8ポイント低下しており、平成12 年(966万人)と比べると2.7ポイントも低下しています。
職業(大分類)別15 歳以上就業者の割合の推移-全国(平成12年~27年))
コンピューターにより自動化される
コンピューターによる自動化が進むことにより、20年後の将来には47%の仕事がなくなるという結論が導き出されています。訪問販売員が淘汰される一方で、営業職と技術職の両方をこなすセールスエンジニアが20年後に残る理由について、私たちは考察を深める必要があります。
〔営業の未来予測〕
予測1:2018年までに法人ビジネスの営業チームの2割が「バーチャル」となり、営業パイプラインのコンバージョン率が向上する (IDC)
法人営業は、一般消費者を対象としたビジネスに比べ、商材や意思決定プロセスが複雑である傾向が強いため、対面でのコミュニケーションが大切とされています。しかし、法人ビジネスにおいても、顧客側が事前にオンラインを中心に情報収集をする傾向が強まっているため、従来の方法では対応ができなくなってきています。
予測2:2025年までに営業担当の仕事はAI(人工知能)にとってかわられる(リードジニアス社)
営業担当の仕事がなくなるというわけではなく、営業担当はより戦略的で高度な業務を行うようになると予測されています。見込み客を探し出す、購入行動の理解、見込み客とのメールコミュニケーションにAIが使われるようになると予測しています。
セールステックが進化する
- セールスイネーブルメントとアクセラレーション
SFAを中心に営業活動における多様な業務をデータ化し、効率的な活動を支援するものです。トレーニングやシステム、コーチングといった施策の内容を一元管理することで営業活動を効率化し最適化を図るもの。 - ゼネラル CRM
営業活動を商談、顧客ごとに追跡できる顧客管理 (CRM) ツールです。外出の多い営業担当にとって、どこからでも簡単に顧客情報を確認できるCRMの存在は必須です。 モバイル化が進む現代のビジネス環境のなかで、クラウドツールを中心に成長し続けています。 - カスタマーエクスペリエンス (CX)
顧客が商品やサービスを使用して得られる満足感や効果といった、心理的または感覚的な付加価値を最大化して売り上げをさらに伸ばすのがCXです。サイトに訪問したユーザーの訪問回数や流入経路に合わせて適切なポップアップを配信するWeb接客ツールや、チャットツールなどがこの領域の代表ツールです。 - コンタクトとコミュニケーション
顧客との直接のコンタクトの質向上を図る領域です。コールセンターのシステムや顧客からの電話内容を分析してオペレーターに最適な回答方法を進言するツールが代表的なものとなります。 - ピープルデベロップメント(人材開発)とコーチング
営業担当の教育やモチベーションの向上を図る領域で、ツールとしては教育資料の動画プラットフォームや、オンラインでロールプレイングを実施し評価も出来るものがあります。 - インテリジェンスとアナリティクス
営業活動に必要なデータ活用を最大化するための領域です。GUIで簡単にデータ分析が出来るツールや、営業担当の商談中の会話の分析ツールなどがこの領域に属します。 - カスタマーサポート
この領域では顧客のサービス継続率を高め、サポートの質の最適化を実現します。問い合わせサイトの構築や管理を簡単に行えるツールや、ヘルプデスク最適化のためのツールがあります。
マーケティングが営業を代行する
テクノロジーが進化するにつれ、お客様はインターネットを通じて企業やブランドとつながりやすくなりました。SNSなどの発展に伴い、見込み客が企業に直接コンタクトできる機会も増えています。そうした背景から、オンライン、オフラインのあらゆる場面で、いかにお客様とつながるかが重視されています。進化したマーケティングが営業を代行しているとも言えるのです。
顧客と企業とのつながりを深めることは、ただの顧客からファンへ、そしてファンを超えた「応援団体、アンバサダー」へと育て上げる機会を増やし、売上向上につなげる効果的な施策となるのです。
参考:コトラーの「マーケティング4.0」に加筆
*AIDAとは…attention(注意を惹く)、interest(興味を持つ)、desire(欲求となる)、action(行動する)
**5Aとは…aware(認知)、appeal(訴求)、ask(調査)、act(行動)、advocate(推奨)
インサイドセールスが台頭する
アメリカはBtoBの営業担当が570万人で、そのうちインサイドセールスの営業担当が43.5%を占めています。セールステックの進化により、プロセスごとに最適なITツールを活用することが可能となり、今後、フィールドセールスの営業担当を追い越すと予想されています。
営業スタイルが高度化する
買い手と売り手間の情報の非対称性が失われた現在、製品の機能やメリットを紹介するだけの営業や、お客様が認識している課題(顕在ニーズ)の解決策を示すだけの営業は生き残れなくなります。
営業を巡る変化のまとめ
これまで自己完結型の仕事とされ、企業価値への直接的な貢献と人間臭い営みが魅力とされてきた
営業が、その姿を変えようとしています。
- 営業は複雑で困難な仕事になっています
→インターネットによってあらゆる情報にアクセスでき、買い手が優位な状況が生まれています。
→ユーザー自身が気付かないニーズを掘り起こす必要があります。
- 分業化・効率化の波が営業にも押し寄せています
→市場調査、顧客選定、仮説構築、顧客提案、インストラクション、アフターフォローに至るまで、広範な営業プロセスを分割し、セールステクノロジーで代替する動きが加速しています。
- アウトバウンドからインバウンドにシフトしています
→顧客訪問を中心とするプッシュ型から、プル型(お客様自身がネット上で検索をかけて自ら主体的に行動する)顧客を積極的に取り込むモデルに変わってきています。
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2.営業の未来を考える
営業の目的を再確認する
営業の目的をもう一度確認してみましょう。辞書で“営業”を調べると「企業などが利益を得る目的で、継続的に事業を営むこと。また、その営み」と定義(デジタル大辞泉)されています。事業を営むために、企業は有用なモノやサービス(価値)を創造して、市場に投入し、お客様と取引(価値交換)しなくてはなりません。つまり営業とは、「お客様が求めているもの、必要性(ニーズ)に気づいていないが、あったら役に立つであろうものを提供していく仕事であり、会社全体の責任を負うこと」なのです。
日本の営業の特徴を知る
欧米のMarketing & Salesは“分業型”で、「マーケティングが全体計画を策定し、販売が計画を実行する」という考えが主流ですが、日本の営業は“統合型”で、「営業は単なる販売“Selling”に留まらず、社内他部門、協力先を巻き込みながら顧客価値を共創する役割を担う」という考えに基づいて組織体制が組まれている企業が主流です。
つまり、欧米はマーケティング部門が主導するのに対して、日本は営業部門が企業業績の中心的役割を果たします。
営業の前後にあるプロセスを統合する
インターネットの普及によりブランドやサービスを選定するプロセスに、他人の推奨を参考にするというプロセスが加わったことで、ビジネスの焦点は顧客にモノやサービスを売ることから顧客がモノやサービスを他者に推奨することへと大きく変わってきています。
◆ データベース解析に基づく潜在顧客の獲得→ マーケティング領域へ
◆ 商品やサービスを導入いただいたお客様の成功をサポートする→ カスタマーサクセスへ
科学的思考でプロセスを管理する
これからはマーケティング機能とセールス機能は、それぞれがより高機能化していかなければ市場から選ばれません。そのためにも、機能ごとの役割を明確にしながら「マーケティングから商談、成約後のカスタマーサクセスまで各部門間が連携して、一貫した顧客対応をとる体制」を構築していく必要があります。
そのためにも、未取引の状態から広く顧客へアプローチし、新たな顧客との出会いができてから顧客に自社の提供価値を認識してもらい、顧客の課題解決の手段となることを正しく理解納得してもらい契約してもらい、想定通りの成果につなげてもらうための支援をする、という一連のプロセスを要素分解し、そのフェイズごとの活動を科学的に捉えていく必要があります。
テクノロジーを味方につける
営業を支援する技術は大きく進化しています。SaaSの利便性が高まり利用者が急増しています。
- 市場や顧客を分析するツール
- マーケティングを代行するMAツール
- オンライン営業のためのコミュニケーションツール
- 外勤営業をサポートするSFAツール
- 顧客の困りごとを解決するためのカスタマーサポートツール
- 契約やオーダーを電子化するツール
などがあります。
インサイト力を身につける
ソリューション営業の実践には、顧客ニーズを聞き出すことが基本とされてきました。お客様は課題が何であるかを認識されていますが、有効な解決策が分からないために、営業のよい提案に期待を持っているからです。
しかし、インターネットの発達や、スマートフォンの普及により、お客様自身が必要な情報を、余すことなく収集できるようになりました。商談の主導権はお客様に移り、コストダウンに応じるか、特別条件がないと受注が困難になりました。
これからの営業に求められるのは“インサイト力” です。インサイトとは直訳すると「洞察」、「物事を見抜く力」などを意味します。インサイト営業は、お客様自身が何をすべきかを、先回りして見つけ出し、ニーズと認識されていない提案を行い、お客様の変革を助けるのです。
人間力を磨く
どんなにAIやテクノロジーが進化したとしても、コンピュータが人間に及ばないことがあります。それは心と結びついた行動です。
(1)クリエイティビティ(創造性)を発揮すること … 人は思いもよらない知識を組み合わせて、新たな知を創出し、価値へと転換することができます。例えば、鳥の翼を分析して揚力を計算することはAIでもできますが、鳥を見て「空を飛びたい、だから飛行機を創ろう」と思い立つことはできません。また新しい考えを提示(コンセプト形成)することもありません。
(2)お客様の役に立ちたいと想うこと … 困っている相手に深い共感を示し、問題解決に向けて役に立ちたいという感情を抱くことは、人間固有のもので、関係者の心を動かします。
(3)お客様と信頼関係を築くこと … 誠実な行動、一貫した態度、相手に尽くす姿勢、謙虚さ、責任感などが伝わることにより、「信用や信頼」が芽生え、相手は胸襟を開くのです。
おわりに
営業を取り巻く環境変化は、今後ますます加速するものと思われます。とりわけ情報の蓄積が進むことで、セールステクノロジーの利用価値は高まるでしょう。単純な営業活動はいずれ機械がこなすようになるに違いありません。
しかし、営業は極めてハイタッチな仕事であり続けています。信頼関係に基づいてお客様を未来に導くことは、未来洞察力と創造力にあふれる人間にしかできないことが、改めて明らかになりました。
テクノロジーに翻弄される前に、貴社の営業の価値を再定義してみてはいかがでしょうか?
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