2024.03.21 (更新日:2024.04.15)
アップセルとは?クロスセルとの違い、意識したいタイミングやポイントについて解説!
マーケティング用語である「アップセル」とは顧客一人あたりの売上単価を上げる営業手法の一つであり、少子高齢化で人口減少が深刻化する国内市場で重要視されています。売上をアップするためには、顧客数を増やすことも大切ですが、それ以上に顧客単価を引き上げるよう働きかけることも必要です。
ここでは、アップセルの概要をはじめ、具体的な手法を解説します。アップセルを成功させるために意識したいポイントや実際の企業の成功事例もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
アップセルとは
アップセルの「Up」は「上に」、そして「Sell」は「販売する」という意味を持ち、商品を購入予定の顧客や既に商品を購入した顧客に対し、さらに上位モデルの商品を購入するよう提案する販売手法のことです。
具体的には、次のような販売事例がアップセルに該当します。
・無料会員から有料会員への移行を提案する
・月額5,000円のプランを利用するユーザーに対し、月額8,000円のプランを提案する
・10万円の洗濯機を購入予定の顧客に対して20万円の上位モデルを提案する
・同じ商品を頻繁に購入する顧客に対して定期コースを提案する
・単品購入ではなくまとめ買いするように促す
アップセルの販売事例はただ単に上位モデルへの購入を促すだけでなく、様々な手法があります。アップセルの手法を大きく分類すると、以下の3つです。
1. 上位モデルや高級品の提案
2. まとめ買いの提案
3. 定期購買の提案
アップセルを上手く導入することで、購入予定の商品やアイテムよりも高額の商品やサービスを提案できるため、顧客単価や利益を上げる効果が期待できます。
アップセルの目的
アップセルに取り組む目的は次の4つです。
1. 顧客の売上単価の向上
2. 生涯顧客価値(LTV)の向上
3. 業務効率の向上
4. 顧客満足度の向上
アップセルの最大の目的は、顧客単価を向上させることです。一人あたりの売上がアップすることで、新規顧客を獲得するよりもはるかに低コストで効率よく利益の向上が期待できます。
顧客の興味関心をしっかりと見極めた上で、関連商品や上位モデルを提案することが重要です。アップセルだけでなく、他のビジネス手法を上手く組み合わせていくことで、ビジネス全体のボトムアップを実現できるでしょう。
生涯顧客価値(LTV)とは、「Life Time Value」の略称で、企業にとって顧客一人がどの程度の利益をもたらしたかを表す指標のことです。この生涯顧客単価は「顧客平均購入単価×平均購入回数」で求められます。
アップセルを意識しながら営業・販売をすることによって、継続的に商品を購入する顧客が増え、結果として生涯顧客価値を高められるのです。
新規顧客の獲得や新サービスを提供によって売上アップを目指す場合、大々的なPR活動や開発費用など、金銭的にも時間的にも大きなコストがかかってしまいます。
しかし、既存商品やサービスを購入している既存顧客をターゲットにするアップセルの場合、顧客と企業との信頼関係が既に構築されているため、大掛かりな宣伝などは必要ありません。アップセルの手法を取り入れることで、業務時間やコストを削減でき、企業全体の業務効率化を実現できるのです。
さらに、アップセルでは顧客に対してより質の高い商品やサービスを提案・提供し続けることによって、顧客満足度の向上にも大きく寄与します。
アップセルとクロスセルの違いについて
アップセルと似た営業手法の一つに「クロスセル」があります。
クロスセルとは、顧客が既に購入しているアイテムやサービスや購入を検討している商品やサービスに関連する別の商材を提案して一緒に購入してもらう営業手法です。多くのケースでは、クロスセルされる商品やサービスは互いに満たされない部分を補う役割を果たすため、組み合わせることで新たな付加価値が生まれます。
クロスセルはアップセルと同様、既存の顧客単価を向上させるために非常に有効的な手法であるため、両者を混同してしまう方も多いかもしれません。
アップセルとクロスセルの違いは、アップセルが「同一製品やサービスの上位モデルやプランへの移行やオプションの追加購入」であるのに対し、クロスセルは「同一製品のラインナップに関する違う製品やサービスの購入」だという点です。
同一製品のラインナップに関する手法がアップセル、提供製品とは異なる別製品のラインナップに関する手法がクロスセルと覚えておきましょう。
関連記事:クロスセルとは?メリットや手法、意識したいポイントや成功事例まで幅広く解説!
ダウンセルとは何か
ダウンセルとは、顧客に対してよりグレードの低い低価格の商品やサービスを提案する営業手法のことで、アップセルとは対照的な考え方を指します。
ダウンセルの具体的な事例は次の通りです。
・契約アカウントの減数
・一部オプションの解約
・下位プランやモデルへの移行
顧客の使用状況や活用状況によって、現状のモデルがハイスペックすぎたり高額すぎたりすると判断された場合、顧客満足度が低下し、最終的にサービスの解約などの顧客離れにつながってしまいかねません。
そのような事態に陥らないためにも、顧客のニーズに合わせた適切な提案を行い、契約の変更や商品の買い替えなどを促す必要があります。その結果、長期間継続的に利用してもらえるでしょう。
アップセルのメリット・デメリット
アップセルを導入することで様々なメリットが得られる一方で、デメリットもあるため注意しなければなりません。営業活動にアップセルを効果的に導入するためにも、メリットとデメリットを理解しておきましょう。
アップセルのメリット
アップセルのメリットには、次の2つがあります。
顧客単価の向上
アップセルを導入することで、顧客の売上単価を引き上げられます。
売上をシンプルに表すと「顧客数×顧客単価」です。つまり、売上アップするためには、新規顧客の獲得だけでなく、顧客単価を向上させる必要があります。
アップセルの手法を取り入れることによって、顧客一人あたりの売上単価を引き上げ、企業全体の売上アップにも大きく貢献していくのです。
営業業務の効率化
アップセルでは、既存顧客への営業がメインとなるため、新規顧客へのアプローチよりも営業コストが少なくて済みます。一般的に、新規顧客の獲得は既存顧客の維持にかかるコストのおよそ5倍とも言われているほどです。
顧客単価を向上が期待できるアップセルは、新規顧客獲得よりも効率的、かつ効果的に営業活動ができるでしょう。
アップセルのデメリット
アップセルを導入するデメリットとして、次の2つが挙げられます。
無茶な営業による失注
顧客が求めていない高額な商品やサービスを提案し続けてしまうと、顧客は「押し売り」をされていると感じてしまう可能性があります。その結果、必然的に顧客満足度は下がってしまい、顧客が他社に流れて「失注」につながってしまいかねません。
無茶な営業やむやみな営業は避け、顧客の話にしっかりと耳を傾けることが大切です。
顧客満足度の低下
顧客の意思を無視した営業活動を続けてしまうことで、顧客満足度が著しく低下してしまいます。むやみに営業をかけてしまうことで顧客を惑わせてしまい、結果として購買に繋がらない可能性もあるでしょう。
最悪の場合、クレームや口コミサイトなどに低評価の書き込みにつながりかねません。顧客のニーズに合わせた営業活動を心がけることが大切です。
アップセルを実施するタイミング
アップセルを成功させるためには、顧客にとって最適なタイミングで実施することが重要です。ここからは、アップセルを実施するおすすめのタイミングをご紹介します。
商品の購入時
トライアル期間終了後や商品の購入を決断したタイミングは、アップセルを行う絶好のタイミングです。顧客のニーズに合わせた商品やサービスを提案できれば、顧客はたとえ単価の高い商品を提案されたとしてもポジティブな感情を抱くでしょう。
このように、商材の購入を検討しているタイミングで、より便利で魅力的な商品を提案することにより、購入率を大幅に高められます。
プランの更新時
プランの契約更新の時期や商品の買い替え時期は、アップセルが成功するおすすめのタイミングです。買い替えを検討する時期に上位モデルやサービスを上手く提案できれば、自然な流れで上位商品への興味関心を引き出せるでしょう。
顧客の課題を確認した時
顧客の課題が判明した時は、アップセルを実施する最適なタイミングです。顧客の抱える課題を解決する適切な商品やサービスを提案することで、成功率を高められます。
いつ発生するかわからない顧客の課題を把握するためにも、常日頃から顧客とのコミュニケーションを図っていくよう心がけ、顧客の課題を発見する機会を逃さないようにしてください。
アップセルを成功させるために
ここからは、アップセルを成功させるために実践すべき項目をご紹介します。
顧客情報を正確に把握しておく
ユーザーのニーズに合わせた商材を提案するためにも、顧客情報を正確に把握することが重要です。アップセルを行う上で事前に把握しておくべき顧客情報として、以下の内容が挙げられます。
・顧客の購買履歴
・顧客のWebサイトの閲覧
・資料請求を行った際の行動履歴
これらの顧客情報を収集し、蓄積する業務を継続的に実施することで、顧客がどのような経緯で商品の購入に至ったのかという経緯を把握できるため、適切なタイミングで最適な提案ができます。
ユーザーごとのニーズに合わせた提案を行う、あるいは顧客の傾向の変化に気づくためにも、顧客情報の収集や把握に力を入れることが大切です。
アップセルに繋がる商品設計を行う
顧客にどのようにアプローチをすれば上位モデルの商材を購入してもらえるかを条件に、アップセルに繋がる商品設計を行うことも重要です。
たとえ、アップセルが成功したとしても購入した商品やサービスに満足しなければ、顧客満足度は低下してしまいます。顧客がアップグレードしたいと感じるような機能や特徴などの付加価値を付け加えるような商品設計を行うことが大切です。
どのような利益・効果が出るかを明確に提示
顧客に対して、アップセルを実施することによってどのような利益や効果がもたらされるかを分かりやすく提示することも重要です。
例えば、有料サービスが無料で受けられるようになったり、新機能が利用できるようになったりするなど、アップグレードによってどのようなメリットやお得感があるか明確に説明してください。
上位モデルにアップグレードするメリットを余すところなく伝え、魅力を最大限アピールしていきましょう。
アップセルを行う上で意識したいポイント
アップセルで成果を出すために意識したいポイントをご紹介します。
押し売りはせず、顧客目線を徹底する
アップセルを行う上で最も重要なのは、決して押し売りをせずに顧客目線を大切にすることです。より高額な商品を購入してほしいと、顧客のニーズや思いを考えずに提案し続けてしまうと、信頼はもちろん、購買意欲も失ってしまいかねません。
アップセルはあくまでも上位モデルの提案を促す営業手法であり、無理やり顧客単価を高める手法ではありません。顧客に満足して商品やサービスを利用してもらうためにも、やみくもな販売は避けてください。
アップセルを行うタイミングは慎重に見定める
アップセルを成功させるためにも、タイミングを見計らった営業活動を行うことが重要です。
アップセルを実施するタイミングの章でもご紹介した通り、アップセルを実施するおすすめのタイミングは次の通りです。
・商品の購入時
・プランの更新時
・顧客の課題を確認した時
アップセルを実施する適切なタイミングを見極めるためにも、場数を踏んで営業力を高めていきましょう。
顧客のロイヤルティを意識する
顧客のロイヤルティとは、ブランドや商品に対する顧客の愛着度や信頼度のことです。顧客のロイヤルティが高ければ高いほど、顧客が上位モデルを購入する可能性は高まります。
顧客のロイヤルティを高めるためには、顧客情報をしっかりと把握することはもちろん、上位モデル購入することの具体的なベネフィットを提示することが大切です。
アフターフォローは定期的に
商品を購入して以降も、定期的なアフターフォローを行うことで顧客のロイヤルティを高められます。
購入後も、何か問題があったら気軽に相談や質問ができるフォロー体制を整えることで、顧客の満足度や信頼感の向上が期待できるでしょう。
適切なアフターフォローを実践することで、さらなるアップグレードや関連商品の購入も検討してもらえる可能性が高まります。アフターフォローを行うことは顧客育成においても非常に大切なプロセスです。
アップセルの成功事例
アップセルが実際どのように活用されているかを企業の成功事例をご紹介します。自社で実践できる方法がないかぜひ確認してみてください。
ヤクルト
ヤクルトスワローズは、球団ファンクラブ「Swallows CREW」の運営においてアップセルを実施しています。
ファンクラブ会員が抱える課題を明確にし、満足度を高めるための施策を検討するためにNPS®調査を導入しました。
ファンクラブの会員区分に無料会員を含む6つのクラスを設け、区分ごとに受けられる特典やサービスが異なるという付加価値をつけ、会員のアップグレードにつなげているのです。
Amazon
世界最大のECサイト・Amazonは、商品の購入のしやすさを実現するためにアップセルを実施している企業です。
ユーザーが商品の検索や注文をする際に、その製品の上位モデルや関連商品が自動的に表示される仕組みとなっています。同じ製品を購入したユーザーの情報を踏まえているため、ユーザーのニーズに合わせた適切な商品を提案できるのです。
アップセルとクロスセルを上手に組み合わせてビジネスを展開しているのもAmazonの大きな特徴と言えるでしょう。
Dropbox
世界最大級のオンラインストレージのDropboxでは、「紹介制度」を活用してアップセルを実践しています。
他のユーザーに紹介し、そのユーザーが新規登録をした場合、オンラインストレージに保存可能な容量を増やせるという特典が受けられるという内容です。Dropboxは無料で利用できるサービスではあるものの、サービスの認知度を広めることで、結果として有料版への移行する可能性が高まります。
これらの企業は、顧客のニーズや興味に合わせた提案を行うことで、アップセルを成功させています。顧客にとって価値のある提案を行うことが、アップセル成功の鍵となります。
【まとめ】アップセルの手法を営業活動に取り入れていく
今回は、アップセルの特徴をはじめ、具体的な手法や成功させるポイントについて詳しく解説しました。アップセルは、新規顧客を獲得するような大掛かりな宣伝が不要なので、低コストで売上を高められる方法として様々な企業から注目されている営業手法です。適切なタイミングでアップセルを実践することで、確実に顧客満足度の向上と自社の利益向上に繋げられるでしょう。
ご紹介したアップセルの基本的な概要や注意すべきポイントや実施すべきタイミングなどを理解した上で、アップセルの手法を営業活動に取り入れていくことをおすすめします。
アップセルとナレッジ営業は、顧客に対する深い理解と価値提供を基盤としています。アップセルは、顧客が既に利用している商品やサービスよりも上位のものを推薦し、顧客単価を高める営業手法です。一方で、ナレッジ営業は、顧客のビジネスやニーズに関する知識を活用して、顧客にとって本当に価値のある商品やサービスを提案するアプローチです。
アップセルにおいては、顧客の現在の利用状況や将来のニーズを理解し、それに基づいてより高機能や付加価値のある商品を提案することが重要です。ナレッジ営業はこのプロセスを支える知識と情報を提供し、顧客に対して適切なアップセルの機会を見極めるのに役立ちます。つまり、ナレッジ営業はアップセルを成功させるための土台となる営業戦略と言えるでしょう。
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