2022.06.28 (更新日:2022.09.26)

フィールドセールス

アカウント営業とは?ソリューション営業との違いやアカウント戦略で重点顧客との長期的な関係構築を作るポイントついて解説

アカウント営業とは、「特定の顧客とビジネス上の課題を共有し、解決策を提案し続けることで、顧客ロイヤリティを長期に発展させていく戦略的営業活動」をいいます。

営業手法にはいろいろな種類があり、それぞれに特徴やメリットが異なります。その中で注目されているのが、アカウント営業と呼ばれる手法です。従来の手法とどのような違いがあるのか、どのように導入したらより効果的なのかを確認しましょう。

アカウント営業とは?

<アカウント営業という言葉を耳にする機会が増えている>このように実感されている方もいるのではないでしょうか。とはいえアカウント営業に関しては、まだ従来のようなソリューション営業、能動型提案営業と同じように捉えられており、本来の真価が発揮されているとは言い難いのが実状です。そこでまずは、アカウント営業の定義から説明しましょう。

先に述べたようにアカウント営業とは、「特定の顧客とビジネス上の課題を共有し、解決策を提案し続けることで、顧客ロイヤリティを長期に発展させていく戦略的営業活動 」をいいます。以下で、他の営業手法との違いを見てゆきましょう。

従来のソリューション営業・ルート営業との違い

定義に基づき、これまでのソリューション営業・ルート営業とは異なる点を整理すると次の3点になります。

絞り込んだ顧客に対して深い提案を行う

従来のソリューション営業・ルート営業は、より多くの顧客に対してアプローチすることで結果を最大化する手法がとられてきました。もちろん自社の製品やサービスに合わせて顧客層を絞り込み、効果的に営業活動を行っていますが、基本的には見込み顧客が増えるほど売り上げ増につながるというスタイルになります。

一方、アカウント営業では、アカウント先となる顧客をより精密に選別(ターゲティング)します。これはアカウント営業が顧客の課題を深く掘り下げることにあります。顧客が抱える課題を本質的なレベルまで聞き出すため、提案できるソリューション(解決策)は一つではなく、長期にわたるケースが多くなります。そのため自社が貢献できる顧客を十分に絞り込む必要があります。

顧客の事業課題にフォーカスする

アカウント営業の大きな特徴の一つは、顧客の抱える事業課題に注目して営業する点にあります。つまり、顧客の具体的な課題に対してすぐに自社の製品・サービスを提案するのではなく、その背景にある事業課題まで掘り下げた上で、その事業課題の解決に貢献できる提案は何かという視点を持ちます。

そのためには、まず顧客が抱えている事業課題をじっくりと聞き出す必要があります。顧客を取り巻く外部環境を整理し、顧客のビジョンや事業モデルを理解した上で、問題の優先順位を把握し、顧客にとって優先順位と重要度の高い問題や課題に対して自社の製品やサービスを使って解決に向けた提案を行います。

顧客と長期的な関係を構築する

アカウント営業が目指すのは案件単位での関係性ではありません。具体的な案件だけに注目する場合、案件ごとに関係を構築することとなります。もちろん取引を重ねるたびに信頼が高まり関係性も深まることになりますが、アカウント営業で大切にする顧客との関係性はより長期的な視点に立ったものです。

顧客の事業課題を取り上げるため、長期的な提案が求められます。例え短期的な製品やサービスの導入であっても、顧客の事業課題が変化することに合わせた提案を行うため、結果的に長期的な関係構築につながっていきます。

以上のように顧客を点で選定し、その顧客が抱える真の事業課題を広く深くつかみ取って、その課題解決に向けた解決策を自社製品やサービスを通じて提案していくのがアカウント営業です。

アカウント営業が注目される背景

現在、営業ではソリューション営業が主流になっています。従来の「自社商品を買ってもらえばよい」といったプロダクト営業から、「顧客の課題解決」に主眼を置いたソリューション営業に営業手法を切り替えている企業は少なくありません。

しかし一方で、「自社製品だけではなく様々なサービスを組み合わせたソリューション営業に切り替えたが成果につながらない」「顧客の課題やニーズをつかんで解決策を提案する重要性は理解しているが、具体的にどう進めていけばいいのかがわからない」などの声もよく耳にします。

市場はすでに成長型から成熟型に移行しています。商品・サービスが飽和状態となっている現状において、これまでのように幅広い顧客に向けて商品・サービスを提供し、シェアを拡大していくといった〝面〟での営業ではなかなか成果が出せなくなっているのが現状です。

市場あるいは顧客先企業の中で重点化を図り、ソリューション営業に切り替えたとしても、〝面〟で売る発想から抜け出せないままでは行き詰っていくでしょう。

こうした背景から、〝面〟ではなく〝点〟で個々の顧客と深くつき合っていくアカウント営業が注目を集めています。

アカウント営業で期待できる成果

アカウント営業は従来の営業手法とは異なるため、導入に当たっては営業戦略そのものを見直す必要があります。また、営業パーソンの取り組みや意識も変えていく必要があります。こうした変化はリスクもしくは負担となることがあるのも事実です。しかし、それだけの価値がある手法で、大きな成果を期待できるのです。具体的にどんな成果があるのかを確認し、自社の営業戦略の検討材料とすることができます。

LTV(顧客生涯価値)が高まる

アカウント営業の大きな成果はLTV、つまり顧客が生涯もしくは中長期にわたって自社に与えてくれる利益が高くなることです。アカウント営業では一度きりの販売を目指すのではなく、その後も継続的な利用をしていただくことを目標とします。自社製品・サービスの質が優れていると共に、営業担当者への信頼が強まることで、新規開発した製品・サービスが出てきた場合に購入してもらいやすくなります。さらに、顧客に新たな課題が出てきた時に、真っ先に自社にサポートを求めてくれるようになりますので、営業機会が大きく増えます。

顧客ロイヤリティの向上

アカウント営業では、1社に対して密なコミュニケーションを取ります。いわば、その企業の専属として課題解決に当たり、製品・サービスを提供する役割を果たすのです。顧客の自社に対する忠誠度、つまり信頼を高めることになります。

ほとんどの製品・サービスではたくさんの企業が参入してきていて、ライバル企業との競争が激しくなっています。そのため、一度自社と契約したとしても、すぐに乗り換えられてしまうリスクが常にあります。しかし、顧客ロイヤリティが高い状態にあれば、ライバル企業からのアプローチを阻むことができ、長期にわたって独占的に取引できる可能性を持てるのです。結果的に、安定した業績を維持でき、自社の経営戦略を健全なものとするのにも役立ちます。

成果につながりやすくなる

成果率を高められることも、アカウント営業の良い点です。

その一つの理由は、顧客についての情報をより広く、より深く得られるからです。それだけ事業課題解決のための提案を高い精度で行うことができて、顧客から納得してもらいやすくなるのです。

また、ライバル企業に対して、親密度や対応の丁寧さなど質の点で、優位に立てることも大きな点です。どこの企業も機能の利便性や価格のバランスを工夫していますので、製品・サービスそのものではライバルと拮抗状態になることは珍しくありません。そこで、顧客はいかに丁寧に営業をしてくれるかといった、営業担当者の誠実さを見て、総合的に判断します。アカウント営業ではより深いアプローチをしていきますので、この点で一歩有利に営業を進めていけるのです。

アカウント営業の6+1プロセス

ターゲット顧客に対してアカウント営業を展開していくには、図に示したように大きく7つのプロセスがあります。

【戦略的アカウント営業】全体の流れ

STEP0:アカウントビジョンの策定

選定した顧客と今後長期的にどのような関係性を築くのか、その絵姿を明確にします。業界によってもビジョン達成の期間が異なりますが、およそ2年後くらいが平均的な期間となります。

ここでは自身の意思を込めて、いつまでに、どうなりたいのかを具体的にします。その際に、売り上げ目標などの数字だけが宙に浮かないように、顧客への貢献を通じた関係性を明確にすることが重要です。

STEP1:事業課題の仮説化

顧客を取り巻く事業環境を大局的に分析し、課題を仮説として立案します。

【戦略的アカウント営業】事業課題の仮説

ここではWebサイトで公開されているIR資料、各種メディアからの業界ならびに企業情報の取得などから課題の仮説を立案します。その際に、顧客の顧客からの期待や要望と現状とのギャップから、顧客のあるべき姿を仮説で立案します。これはあくまでも仮説のため、実際には顧客との対話を通じて検証していくことになります。

STEP2:関係性(リレーション)の強化

複数の関係者と接点をもち、立案した仮説の検証を行うと同時に、社内人脈の関係性を明らかにします。

【戦略的アカウント営業】リレーション強化

ここでは企業上位層、関係部門先などのキーパーソンと接点をつくることが重要になります。ただし、上位職者以外の“志が高い人”との出会いも大切です。“志が高い人”とは、問題意識が高く、上位職者へ影響力を発揮できる行動力のある方です。この“志が高い人”から共感を得ることによって様々な角度から情報を得ることにもつながります。そのためにも、アカウントビジョンで定めた顧客への貢献姿勢をしっかりと伝えましょう。

STEP3:アカウント戦略の立案

アカウントビジョンを実現するための営業シナリオを明確にします。

【戦略的アカウント営業】アカウント戦略立案

ここでは収集した情報から、自社のリソースを活用して課題解決にどう貢献できるかを考えていきます。それには自社のケイパビリティ(企業が有する組織的能力)をあらかじめ洗い出しておくことも不可欠です。

また、組み立てたシナリオが真に課題解決につながるかどうかを“志が高い人”にも確認しておくとベストです。その際、顧客内の組織図を間に挟んで、こういった話なら誰がキーマンとなるのか、誰に意見を聞くべきか、誰が反対者になりそうか、などの社内事情と顧客戦略の道筋を“志が高い人”に率直に聞いていきましょう。的確に教えていただけるかどうかは“志が高い人”に対して提供してきた情報の価値や営業担当の人柄、アカウントビジョンに込められた熱い想いなどによって結果が変わってきます。

STEP4:事業課題の共有

顧客の複数の関係者と対話を重ねる中で、事業課題を特定・共有し、解決の方向性を顧客と共有します。

ここではアカウント戦略にもとづいて、最終的には意思決定できるキーマンの抱える事業課題を特定・共有し、次の提案につなげていきます。

キーマンが、その事業課題に対してどのくらいの意思をもって具体的に変えていこうとしているのかをしっかりと面談を通して確認しましょう。

STEP5:ソリューションの提案・提供

顧客の事業課題を解決する自社ソリューションを提示します。

ここでは自社の立場から「このようなソリューションがあり、これによってこう解決できる」ではなく、「こうした課題があり、こう解決できると成果につながる。そのためにこのように自社が役に立てる」と、顧客メリット優先で解決策を提示します。

つまり、自社ができることの紹介ではなく、顧客の事業課題に対して自社であればこういった成果につなげることができるという提案をします。ここが自社都合の営業担当が多く、顧客のキーマンに刺さらない提案になってしまうのはそのせいです。

顧客の事業課題に対するアウトカム提案ができれば受注の確度が大きく高くなり、その結果として、自社に受注した場合は、受け入れられた自社ソリューションを最高品質で提供しますが、ここでは単なるソリューションの提供ではなく、顧客の成果に確実につながることを最終目標にしていきます。

STEP6:関係性(リレーション)拡大

ソリューションを提供した後は、その提供したソリューションに関する投資効果を顧客と共有しながら次なる課題について対話します。
ソリューションによる効果・成果をレビューし、それを共有しながら、次に解決すべき課題、新たに見えてきた課題に関して認識の刷り合わせを図ります。

そして、同じような課題をもつ別の部署がないか顧客に確認し、その間口をどんどん広げていきます。以上のプロセスを継続させ、ターゲット企業の業績向上や業績安定に貢献していくことで、自社の長期的な業績の安定にもつながっていくのがアカウント営業のメリットです。

アカウント営業の実施に必要となる3大スキル

アカウント営業を成功させるためには、明確なプロセスとアカウント戦略だけでなく、営業担当者個人の能力も求められます。具体的に、どのようなスキルが成功率を高めるものとなるのかを把握しておきましょう。個人としてスキル向上に励むことができますし、部署としてメンバーの教育に生かすこともできます。大きくは3つのスキル・能力が求められてきます。

仮説構築力

顧客の経営課題・事業課題がどこにあるかを見極め、仮説を立てる能力です。そのためには広範かつ多角的な情報収集力も必須となります。

顧客の現状を知ると共に、課題の本質的かつ潜在的な原因を把握できないと、解決策を提示できません。それだけに、ヒアリングから得られた情報だけで判断するのではなく、さらに深い点についての仮説を立てる能力が必要となります。その際には、いくつもの仮説を立てて、それぞれの可能性を探ることで、より深堀りことができます。

対人対応力

アカウント営業では、顧客とのリレーション強化が成功に直接関係してきます。コミュニケーションをしっかりと取れなければ、信頼関係は醸成されません。強い信頼関係がなければ、企業としての悩みを話してくれることもないでしょう。それだけに、対人対応力は絶対に身につけなければなりません。

上位層との対話をはじめ、さまざまな部門、さまざまなタイプ特性に合わせて接し方を変え、話を引き出す力も必要となります。良好な関係性を築き上げていくには不可欠なスキル・能力といえるでしょう。

共創型コミュニケーション力

顧客からの情報提供を待つ、顧客に言われたことに対応するなどの受け身の姿勢ではなく、対話を通じて本質的な問題・課題を明らかにし、顧客と認識を共有しながら課題解決に向けて伴走する、共創型の上級コミュニケーション力が必要とされます。

特に「共創型コミュニケーション」とも呼ばれる、問題をともに考え、課題を一緒に設定する能力が必要となります。顧客にとって良きビジネスパートナーとなれるように、価値ある対話を重ねることが重要です。

【まとめ】アカウント営業を成功させるカギはアカウント戦略の明確化  

アカウント営業は、従来の営業手法よりも明確に絞り込んだターゲットに対して、関係をより深くしていく戦略です。それだけに、事前にターゲティングを高い精度で行い、より自社製品・サービスとの親和性が高いところを選び出して、アプローチすることが大切です。そうすることで、強い信頼を勝ち得て長期に及ぶ関係を保てるようになるのです。そのためには自社の製品・サービスの強みや特徴を明確にする必要があります。これは営業戦略を明確にすることでもあります。自社の提供価値が整理できれば、提供価値を最大化できるターゲットを絞り込むことができます。営業戦略と連動した効果的なアカウント営業を検討されてはいかがでしょうか。