2022.10.12 (更新日:2022.11.01)

リーダーシップ

オーセンティックリーダーシップとは?特性やメリット、習得方法を解説

オーセンティックリーダーシップという言葉を聞いたことはあるものの、具体的な意味や特性などを知らない人は少なくありません。しかし、オーセンティックリーダーシップは、ビジネスにおける人材育成で非常に重要なことです。今回は、オーセンティックリーダーシップについて、詳しい特性やメリットなどを解説します。

リーダーシップの種類

アメリカのダニエル・ゴールマンという心理学者によって、リーダーシップは6種類に分類されています。

・ビジョン型リーダー

相手に具体的なビジョンを提示し、方向性を示すタイプです。リーダーのビジョンにメンバーが共感することで信頼関係が築かれます。

・コーチ型リーダー

組織のメンバーが持っているスキルを活かしたり、引き出したりするタイプです。このタイプのリーダーは相手とコミュニケーションを取ることが得意で、メンバーの個性と意思を大切にする傾向にあります。

・信頼関係型リーダー

メンバーとの人間関係を大切にするタイプです。相手と良い関係を築くのが得意なので、いつも和やかな雰囲気を作り、トラブルの修復を担います。

・民主型リーダー

それぞれのメンバーの意見を聞き、活動へ反映させるのが得意なタイプです。メンバーは「意見をしっかり聞いてもらえる」という点で安心感につながり、活動に対するモチベーションも向上します。

・ペースセッター型

組織のリーダー自らが難易度の高い作業を行い、メンバーは参考にしながら後ろからついていくというタイプです。リーダーの実力が高すぎると一人で作業をこなしてしまう恐れもあるので、適度にメンバーへ仕事を任せることも重要です。

・強制型リーダー

その名の通り強制的にメンバーへ言うことを聞かせるタイプ。通常時は理想的とは言えないリーダー像ですが、緊急事態においてメンバーを速やかに動かしたいときには有効です。

オーセンティックリーダーシップとは

そもそもオーセンティックリーダーシップとは、どのような意味なのでしょうか。また、オーセンティックリーダーシップはどのような目的で使われているのでしょうか。

ここでは、この2点について詳しく解説します。

オーセンティックリーダーシップの意味

オーセンティックは英語で「authentic」と表記され、「本物」や「正義」などの意味を持っています。オーセンティックリーダーシップという言葉は「真の(本物の)リーダーシップ」と表すことができ、自身の思考理念をもとにリーダーとして指揮を執ることを意味しています。

リーダーシップと言うと、見本となる指導者を真似て、自らの指導力をアップさせるのが定番のやり方でした。その一方でオーセンティックリーダーシップは、真似をするという考え方を捨てて、自分の考え方や価値観をもとにメンバーを引っ張っていくのです。

オーセンティックリーダーシップの目的

これまでリーダーシップと言えば、何かしら見本となる指導者や、流行の考え方などをもとに指揮を執ることが一般的でした。しかし現代では、他人を真似る形のリーダーシップが通用しにくくなっています。

オーセンティックリーダーシップであれば、自分自身のビジョンや考え方をメンバーへ伝えることができ、一人ひとりが主体性を持って行動できます。時代とともに変化してきたリーダーシップですが、まさに多様性が重要視されている現代において、非常に大切な考え方なのです。

オーセンティックリーダーシップが求められる背景

オーセンティックリーダーシップが現代で求められるようになったことにはどのような背景があるのでしょうか。これには時代の移り変わりが大きく関係しています。ここでは、オーセンティックリーダーシップが注目されている理由について見ていきましょう。

時代の変化が激しくニーズが多様化した

男性だけではなく女性も社会進出する時代になり、人それぞれの働き方が尊重されるようになってきました。その結果ニーズが多様化し、これまでの考え方ではメンバーを引っ張っていくことが困難になってしまったのです。

さらに、新型コロナウイルスの影響によってイレギュラーな事態が多発している現状では、これまでのリーダーシップ論だけに頼るのは非効率的です。何が起こるのか分からない現代だからこそ、過去の栄光に縋りつくのではなく、一人ひとりの考え方をもとにしたリーダーシップが求められています。

今までのリーダーシップでは限界

今までのリーダーシップは、型にはまった考え方でメンバーを指揮していました。ところが働き方やニーズの多様化によって、従来どおりのリーダーシップ論では対応できなくなってきました。

リーダーシップという考え方が生まれたばかりの時代では、トップがチームの意志を半強制的に決定するようなスタイルが定番でした。しかしグローバル化によって、現在ではそのようなスタイルが廃れていき、むしろ異文化に対して理解を示すリーダーの需要が高まってきています。

オーセンティックリーダーシップのメリット

ビジネスの場でオーセンティックリーダーシップという考え方を取り入れると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。この考え方が注目されているのは、大きく分けて2つのメリットがあるからです。詳しく見ていきましょう。

良質なコミュニケーションを形成

これまでのリーダーシップでは、トップの人間がメンバーを指揮するような主従関係が形成される傾向にありました。しかしオーセンティックリーダーシップの場合は、リーダー自身の考えをメンバーに伝えることで、人柄や信念に対して同じ考えを持った仲間たちに支持されやすくなります。

その結果、メンバーたちも自分の意見を素直に発信しやすくなり、お互いの考え方を認め合うことで、絆を深められるのです。また、お互いの価値観を知っておくことで、リーダーとしてメンバーを指導しやすくなるメリットがあります。

様々な人財を活用できる

上に立つ人間が一方的な命令をしてばかりでは、メンバーからの協力を得ることは難しくなるでしょう。さらに上司の仕事が完璧に見えれば見えるほど、部下は「自分の協力は必要ない」と判断してしまい、人財活用から遠ざかってしまいます。

オーセンティックリーダーシップの場合は自らの価値観や考え方をアピールするスタイルなので、苦手な分野(弱点)を相手に伝えることが可能です。その結果、リーダーの姿を見たメンバーが「自分も手伝いたい」、「スキルを活かせそうだ」と感じるようになり、主導でのバックアップが期待できます。

どれだけトップが優秀だったとしても、トップだけの力ではビジネスを成功させることはできません。だからこそ、メンバー一人ひとりのスキルを活かせる環境作りが大切です。

オーセンティックリーダーシップのデメリット

優れた考え方であるリーダーシップ論に思えますが、当然ながらデメリットも存在しています。決してパーフェクトな考え方ではないからこそ、オーセンティックリーダーシップを取り入れる際には注意が必要です。具体的なデメリットについて解説します。

成長意欲が高まりにくくなる

個性を発揮してのびのびと活動できるオーセンティックリーダーシップですが、そんな現状に対して満足感を得ることによって、成長意欲が高まりにくくなる恐れがあります。トップの成長意欲が欠けてしまうと、当然ながら他のメンバーもやる気が無くなっていき、目的を達成する力がなくなっていきます。

自分が元々持っている考え方やスキルを発揮することは、オーセンティックリーダーシップ論においてとても大切なポイントではあります。しかし、それだけではスキルアップにつながりません。常に様々な知識と技術を磨き、学ぶことを意識しましょう。その姿勢を忘れなければ、メンバーと共に成長しながら、ビジネスにおける目標を達成し続けられます。

オーセンティックリーダーシップに求められる能力

オーセンティックリーダーシップを取り入れるためには、いくつかの能力が必要不可欠です。ただ個性を発揮するだけでは、リーダーとして先頭に立てません。ここでは、自己の考え方を大切にしながら、どのような能力を磨くべきなのか解説します。

自己認識能力を意識する

自分を客観視できていないと周りからの信頼は得られません。自分の長所や短所などを認識できてこそ、目標を達成するための戦略を立てられるようになります。まずは己を知ることから始めてください。

これまでの人生において何を成し遂げてきたのか、何が苦手だったのかを改めて見直し、自分自身を認識しましょう。自分を客観視できるようになれば、周りからどのようにみられているかが分かるようになります。

自身の価値観を明確に持って行動する

オーセンティックリーダーシップは、一人ひとりの個性や考え方を尊重するスタイルなので、価値観を明確に持って行動しないと説得力がありません。また、価値観が明確になっていたとしても実際に行動しなければ何も始まらないでしょう。

特にメンバーの先頭に立つべきリーダーは、積極的に行動するスキルが大切になります。メンバーと一緒に目的を達成させるには、まず自らが行動することで示してください。

コミュニケーションを積極的に取り人間関係を構築

オーセンティックリーダーシップでは、相手との信頼関係が重要です。相手との絆を深めるためには、コミュニケーションを取ることが何よりも基本です。

社内で積極的にコミュニケーションが取れていれば、お互いの個性を知ることができ、ビジネスにおいて協力関係を築くことも可能です。社内では相手と良好な関係を構築できるように心がけてください。

真摯に周りと向き合う

メンバーに対して真摯に向き合っていないと、周りから見透かされてしまいます。自分では取り繕っているつもりでも、周りは何となく不信感を抱いてしまうものです。

信頼関係を構築するという意味でも、真摯に周りと向き合うことはとても重要です。いつも真剣に向き合ってくれるリーダーになら、メンバーも積極的にサポートしてくれるようになります。

自分自身をしっかりと律することができる

自身のことを律することができてこそ、メンバーの指揮を執ることができます。まずは自分のストレスをコントロールしたり、頭の中を整理したりできるようになることが大切です。

いわゆるセルフマネジメントできることが周りから信頼されるリーダーへの第一歩です。行動だけではなく、考え方もセルフマネジメントすることを心がけてください。

オーセンティックリーダーシップを習得するためのポイント

オーセンティックリーダーシップを取り入れるためには、どんなポイントに気をつけるべきなのでしょうか。メンバーから支持されるリーダーになるためにもとても重要なポイントですので、必ず押さえておきましょう。

自身の目的や特性を理解する

リーダーとして先頭に立つ前に、まず目的に対しての自身の考えを明確にしてください。特に、そもそもの目的が理解できていなければ、メンバーの指導はできません。

また、自分の特性が理解できていないと、独りよがりな指導をしてしまう結果となります。まずは客観的に自分を見つめ直し、目的と特性を考えてみることが大切です。

自分自身の弱みを開示する

メンバーに対して「完璧な自分でいよう」と意識する必要はありません。むしろ弱みを開示することによって、メンバーは親しみやすさを感じられるようになります。

リーダーが苦手なことを、メンバーが助けてくれるようになり、信頼関係の構築に役立てられます。お互いの強みだけではなく、弱みもさらけ出してこそ、多様性のある活動ができるのです。

周りの考えや思いに気を配る

自分らしさにこだわるだけでは周りの思いをないがしろにしてしまう可能性もあります。リーダーの考え方が大切なのはもちろんですが、それだけではなくそれぞれのメンバーの考えも尊重してください。

一人ひとりの想いに耳を傾けられるようになれば、全体で何をすべきなのかが見えてきます。また、メンバーにとっても「自分の考えを聞いてくれた」という安心感につながり、周りから慕われるようになるでしょう。

【まとめ】個性を発揮することでメンバーと一緒に目的を達成

オーセンティックリーダーシップは、これまでのリーダーシップ論とは違う、「自分らしさ」に着目した新しい考え方です。従来の考え方だけにとらわれず、個性を発揮することでメンバーと一緒に目的を達成できるようになります。求められる能力や習得方法などを参考に、チーム作りに取り入れてみてはいかがでしょうか。