2022.11.27 (更新日:2022.12.10)

マネジメントノウハウ

コーチングとは?必要なスキルと目標達成するマネジメント方法を徹底解説

「企業は人なり」という格言が示す通り、企業が安定した成長を達成していくためには、そこで働く人、つまり社員の育成が不可欠です。この目標を達成するうえで要となるのが「コーチング」です。

コーチングとは

コーチングとは、指導を受ける人が目標を達成するうえで必要な行動やプロセスに自ら気付き理解できるよう、コーチと呼ばれる指導者が適切なサポートを行うことです。コーチングでは、質問を軸としたコミュニケーションを通して、相手が現状を整理・分析し、自己評価できるよう助けます。

コーチは思考力を刺激する質問を行うことにより、指導を受ける人自身が正解を導き出せるよう助けます。コーチングは自主性を重んじた指導方法であるため、指導を受ける人は安定した心理状態を保つことができ、ポテンシャルが引き出され、内面が成長していくのです。

コーチングは人材育成やコミュニケーションスキルに関連した非常に効果的な方法として、ビジネスにおける人事の分野だけでなく、教育やライフプランニングなど幅広い分野で活用されています。

コーチングの歴史や背景

コーチングの起源や背景を正しく知ることにより、この表現が持つ意味やこの教育方法が持つ意図などについて正確に理解することができるでしょう。

コーチングの歴史

コーチングの語源はハンガリーのコチ(Coks)とされています。15世紀当時、この村は質の良い馬車を生産することで広く知られていました。この地名から、馬車(Coach)という単語が生まれます。この言葉には「乗客をきちんと目的地まで送り届ける」といった意味が含まれていました。

20世紀半ばになると、米国を中心としてコーチングという言葉が「クライアントの目標達成をサポートする」という意味合いを持つようになり、ビジネスやスポーツの分野で幅広く用いられるようになりました。日本でコーチングという表現が普及し始めたのは、1990年代後半のことです。それ以来、ビジネスパーソンを中心に、人材の育成やマネジメントに関連した用語として頻繁に用いられるようになりました。現在ではコーチングに関連した認定資格も増えてきています。

コーチングが注目される背景

コーチングが近年大きな注目を浴びるようになった大きな要因は、企業を取り巻く環境が急速に変化していることでしょう。世界中に競合相手が存在する中にあって、SNSの普及により、企業に関連したネガティブな情報はすぐに拡散されます。そのため、何かトラブルが発生した場合、上司の判断を待って部下が行動する「トップダウン型」ではとても対応できません。そこで、スピーディーに状況を評価し適切な判断を下せる人材が必要とされているのです。こうした人材を育てる点で、コーチングは非常に有用な方法であるため、注目度が高まっています。

企業で働く人の意識が変化してきているのもコーチングが注目される要因でしょう。終身雇用という考え方が失われつつある中で、有能な人材はより良い環境や人事評価を求めて他の会社へ移っていくということが珍しくなくなりました。一方で、仕事に対して熱意を持つことができず、人事評価にも関心がなく、ただ上司から割り当てられた業務だけ行う、いわゆる「指示待ち」の社員に頭を悩ませている企業もあります。こうした状況を改善する画期的な方法として、コーチングが注目を浴びているのです。

コーチングとティーチングの違い

コーチングとティーチングの根本的な違いは「目標を達成するために必要な解答を持っているのは誰か」という点です。コーチングの場合、「解答は指導を受ける人が必ず持っている」という考え方が土台となっています。コーチはあくまで相手の中から解答を引き出すためのサポート役であり、コミュニケーションは互いに発信をする、双方向の対話スタイルです。

一方、ティーチングは「解答を持っているのは指導する人である」という考えに基づいています。そのため、コミュニケーションは指導する人だけが一方的に情報を発信する単方向スタイルです。

関連記事:コーチングとティーチングの違いについて詳細はこちらの記事を参照ください↓

コーチングとティーチングの違い

コーチングに必要とされる5大スキル

コーチングで目指すのは、自律性を持った人材を育成することです。コーチは援助を与える立場であり、対象となる相手に心理的なプレッシャーを与えてはなりません。むしろ、5つのスキルを常に意識して効果的なコミュニケーションを図ることが求められています。

1. 傾聴スキル

コーチングでは、相手の話に関心を示しながら耳を傾ける傾聴スキルが求められます。効果的なコーチングを達成するためには、指導を受けている人が実行したことや感じていることを気兼ねなく話せるよう環境を整えなければなりません。

コーチが無関心な態度を示すなら、指導を受けている人はコミュニケーションに対する意欲を失ってしまい、コーチングはうまく行かなくなってしまうでしょう。一方、コーチがいつも親身になって話を聞いてくれるなら、指導を受けている人は「もっと話したい」という気持ちになります。結果として、コミュニケーションは一層円滑になり、コーチングの効果性は大いに向上するでしょう。

2. 承認スキル

人は自分の努力を評価されると、さらに頑張ろうという動機付けを得られるものです。ですから、コーチングでは、指導を受けている人をふさわしく評価する承認スキルが求められるのです。承認スキルには主に「存在承認」「変化承認」「成果承認」の3要素で構成されています。

「存在承認」とは、文字通りその場に相手がいることを評価することです。具体的な方法としては、主に声掛けや挨拶が挙げられます。「変化承認」とは、相手の変化や成長を評価することです。コーチは指導を受ける人の変化に目敏しくあり、具体的な言葉でそのことを評価します。

「成果承認」とは、相手が生み出した成果とそれに至るプロセスを評価することです。

これら3つの要素を踏まえてコーチングを行うなら、指導を受ける人は自己評価を高めることができ、引き続き意欲的にコーチングへ取り組むことでしょう。

3. 質問スキル

コミュニケーションスキルは人によって大きく異なります。すべての人が同じ方法で自分の意見や思いを表現するわけではありません。ですから、コーチングでは高い質問スキルが求められるのです。状況に適した問いかけをして相手の思考を促し、発言しやすい環境を作る必要があります。指導を受ける人の自己評価が低く、自分の考えを伝えることに消極的なら、YesもしくはNoで回答できる質問を準備しましょう。対象がコーチングに慣れてきたら、少しずつ具体的な質問を織り交ぜて、相手の思考力を刺激していきます。

4. フィードバック・スキル

コーチングにおけるフィードバックとは、指導の対象となっている人の努力や成果に基づいて、さらなるヒントやアドバイスを与えることを指します。ただしフィードバックを行う際には、批判的になったり、「次はこうしたらよい」という断定的なアドバイスを与えたりしないことが大切です。あくまでも相手の視野を広げて本人が気付くように、客観的な意見を述べながらサポートします。

リンク:効果的なフィードバックの手法についてはこちらの記事を参照ください。「フィードバックとは?効果的な4つの方法と部下が育つ人材マネジメントについて解説」

5. リクエスト・スキル

リクエストとは、相手の意向やプランを尊重しつつ、特定の行動を取るようを促すことです。ただし、行動の内容はコーチングで指導を受けている人自身が決めたものでなければなりません。コーチは常に相手の自主性を尊重し、「命令されたからやらないといけない」という思いにならないよう注意を払います。これはコーチングのマネジメントを進めていくうえで非常に重要なスキルと言えるでしょう。

コーチングの効果

コーチングの大きな効果は「コミュニケーションの中で目標に対する進捗を的確に把握できること」です。指導を受ける人は、目標を達成するためのプロセスや選択可能なアプローチの方法、それぞれのメリット・デメリットなどをコーチとの会話の中で表現していきます。これにより、目標達成に向けた進捗状況や改善すべき課題を自分自身で明確に整理することができるのです。事あるごとに他の人による分析や指示を待つという必要がないので、時間を有効に活用できるというのもコーチングの効果と言えるでしょう。

コーチングのメリット

「目標は明確に定まっている一方で、そこに至るまでのプロセスが定められていない」という場面では、コーチングが非常に有効です。その理由として、コーチングが持つ3つのユニークなメリットが挙げられます。

自発性や応用力を身に着けられる     

コーチングでは、指導を受ける人が様々な提案やプランニングを積極的に行います。自分のアイディアに関して改善すべき点が見つかったり、突発的な問題が生じたりした場合には、誰かに依頼するのではなく、本人が適宜対応していかなければなりません。こうして、自発性や応用力が徐々に磨かれていきます。また、コーチングでは他の人が理解しやすい仕方で自分の考えや思いを表現することが求められますから、コミュニケーションスキルや自己発信力も成長するはずです。

モチベーションを維持できるようになる

コーチングにおいて、コーチはあくまでサポートをする立場であり、イニシアティブを取って目標達成を目指すのは指導を受けている人自身です。そのため、「誰かにいわれたことをただ行っている」というネガティブな心理状態になりにくく、モチベーションを維持しやすいのです。加えて、コーチングの中では悩みや心配事などをコーチへ伝えることも可能です。こうして率直な感情を吐露することで、心理的な負担を軽減できるのもコーチングの持つメリットと言えるでしょう。

新しい可能性やアイディアを見つけ出せる

コーチとのコミュニケーションを通して、指導を受ける人は物事を俯瞰的に見ることができるようになります。結果として、これまでにない新しいアプローチやアイディアを見つけることに成功したという事例は珍しくありません。また、コーチングを通して自分のアイディアが持つ新しい可能性に気付くということもあります。

コーチングのリスク

コーチングのリスクは「コーチングを受ける人の姿勢によって効果が容易に失われる」という点です。例えば、対象となる人の目標が明確に定まっていない場合、コーチングをどれほど行っても効果はほとんどないでしょう。また、指導を受けることに対して相手が意欲的でない場合も同様です。豊富な知識と資格を有するコーチが熱心にマネジメントしたとしても、受ける側に熱意がなければ効果的な人材育成は困難です。

「コーチのスキルが十分でない」というのもコーチングに関連するリスクです。コーチングの意味を正しく理解していない人がコーチになると、対象となる人に思考を促すのではなく答えを提示してしまうということが起こりえます。こうして誤った方法でコーチングをしてしまうと、コーチングの持つメリットは失われてしまうでしょう。

 コーチングのデメリット

コーチングは人材育成を進めるうえで非常にユニークな手法です。ティーチングにはないメリットが幾つもある一方で、導入前に理解しておくべき注意点もあります。

対応人数が限られる

ティーチングでマニュアルに沿って人材育成を行う場合、1人の担当者が多数の人をまとめて教えるということが可能です。担当者に求められているのは正しく知識を伝達することであり、個々の対象者に細やかな配慮を示すことはそれほど期待されていません。

一方、コーチングは個別対応が基本です。コーチは指導の対象となる人1人1人と向き合い、それぞれの状況に合わせて指導方針を適宜調整していかなければなりません。そのため、対応人数は限られてしまうのです。

時間を要する

コーチングでは、指導の対象となる人が自分で答えを見つけていく必要があります。そのため、上司が部下に対して細かく指示する場合と比較すると、期待した結果が出るまでにかなりの時間を要するというデメリットがあるのです。

コーチングには、心理的なケアを行うという側面も含まれています。自分のスキルや判断に自信がない人を指導して、自己肯定感を高められるようサポートすることにはかなりの時間が必要でしょう。

マネジメントの複雑化

ティーチングによる指導では、教育担当者のスタイルは固定されており、伝えるべき内容をいったん覚えてしまえば、それ以上業務が複雑化することはありません。

一方、コーチングでは指導を受ける人のニーズに合わせてマネジメントの方法を適宜調整する必要があります。対象となる人の性格や経歴などは千差万別であり、1人の人に効果的だったアプローチ方法が他の人にも有効とは限りません。そのため、準備を含めたコーチの業務は非常に複雑なものとなってしまうのです。コーチングの有資格者であっても、マネジメント業務の多さに強い心理的な負担を感じてしまうということが起こりえます。

ビジネスにおけるコーチングとは

ビジネスの現場では、多くの企業が組織を強化することを目的としてコーチングを導入しています。一般的なモデルは、上司がコーチとなり、部下に対してコーチングを行うというものです。コーチングが円滑に行われることで、上司はマネジメントスキルやコミュニケーションスキル、リーダーシップ力などを磨くことができます。部下は自主性や判断力を培うことができ、人事評価も高まるでしょう。企業としては、こうして優秀なスキルを持った人材が増えることにより、生産性や競争力を高めることに繋がるわけです。それで、管理職の社員に対しコーチング資格の取得を勧めるケースが増えています。

コーチングを身に着ける方法

コーチングを身に着ける主な方法は「本で学ぶ」「研修を受ける」「スクールに通う」の3つです。コーチングを本で学習するメリットは、自分のペースで進められるという点でしょう。コーチングの認定資格を持つ人が提供している動画を活用して学習する人もいます。ただし、書籍や動画で提供されるコーチングの知識は一般的なものであり、すべてのビジネスモデルに適合するわけではありません。また、偏った知識を得て自己流のコーチングになってしまうリスクもあります。

コーチングの認定資格を得るため短期間の研修に参加する人もいます。研修のカリキュラムは資格試験対策に重点が置かれていて、心理学的な要素を含む座学が中心となります。そのため、具体的なコーチングのセッションやデモはあまり多くありません。

より実践的な内容を学びたい人はコーチングスクールに通います。スクールでは数か月から1年ほどの綿密なカリキュラムが用意されており、ロールプレイを通して基本から応用まで学ぶことが可能です。生徒自身が部下の立場になってコーチングを体験することで、効果性を実感できるというのも強みでしょう。スクールに通う人の中には、一般的な認定資格に加えてコーチング心理士などの上級資格を目指す人も少なくありません。

効果的なコーチングを実現させる方法

人材育成を目指してコーチングを取り入れる際には、効果性を高めるためのポイントを理解している必要があります。そうでないと、部下からは単に「上司から𠮟責を受ける場」と受け止められかねません。自己流を避けるためには、5つの点を念頭に置いてマネジメントする必要があるでしょう。

1. 現状認識

コーチングを行う上司は、指導を受けている部下が現状をどう評価し、どう感じているかを知る必要があります。部下が満足しているのか、それとも不満を感じているのか、巧みに質問して本人の自己評価を聞き出しましょう。相手が自分の考えを話し出したなら、上司は穏やかに耳を傾ける必要があります。

2. 具体的な目標設定

コーチは部下の現状が把握できたなら、目標設定をサポートします。部下自身が具体的な数値目標を持ち、それを達成するためのプロセスをイメージできるよう助けましょう。ディテールが不足しているときには、それを補うアイディアを出せるような質問を投げかけます。ここでは、上司の考えを部下が復唱するというスタイルにならないよう注意が必要です。

3. 課題の確認

コーチは現状から目標へ到達するために克服すべき問題や障害を考えさせ、プロジェクトに取り組む際の課題を浮き彫りにします。これまで同じような問題に取り組んだことがあるか、その時はどのように対処したのかといった点も質問をして聞き出すのが効果的です。こうした事前の準備により、部下は落ち着いてプロセスをスタートさせることができます。

4. リソースの確保

コーチはプロジェクトを進めるうえで使用可能な資源(リソース)を確認します。完了までの時間や予算、携わる人材などを確認することで、部下は今のプランで進めてよいか判断できるでしょう。部下が1人で取り組む場合には、本人が十分なスキルや経験を持っているか、客観的に自己評価できるようサポートします。

5. ロードマップの作成

目標達成に向けて、短期の行動目標を設定していきます。1日ないし1週間ごとの目標を質問するのは効果的です。こうしてロードマップが設定されていると、部下は定期的に進行状況と比較しながらプロジェクトを進めていくことができます。

コーチングの成功事例をみる

1つの会社では、若い社員を中心としてプロジェクトチームを結成しました。どの社員も経験が浅かったので、プロジェクトリーダーからの指示を各メンバーがこなしていくというトップダウン型を採用したところ、工数は増える一方で売上の数字は思うように伸びません。

そこで、指導方法をコーチングに切り替えます。リーダーは各メンバーに対し、工数を減らし契約数を伸ばすためのアイディアを求め、それを各自が実践するよう促しました。結果として、業務は大きく効率化され、売上も当初の予測を大幅に上回る結果となったのです。

効果的なコーチングを実現するためのマネジメント研修

コーチングの成否には、コーチとなる上司のマネジメント能力が大きく影響します。行き当たりばったりではコーチングは成功しません。コーチングをどれほどの頻度で行うか、部下との関係を強化するためコーチング以外のタイミングでどのように振舞うかといった点を意識しながら、全体のマネジメントしていく必要があるのです。

最近では、人事職を中心とした管理職向けのマネジメント研修が広く行われています。豊富な経験とコーチングに関連した資格を持つ講師からベースとなる知識を学び、ロールプレイを含めた実技指導を受けることにより、有能な人材が育つコーチングの方法とはどのようなものかを深く学ぶことができるでしょう。

関連記事:シェルパワークスの体系的なマネジメント研修について

【まとめ】効果的なコーチングを実践し、チームを強化する

正しい知識に基づく効果的なコーチングを行うなら、指導を受けた個々の人は自信を持って課題へ取り組むことができるようになり、チーム全体としても一体感や安定感が生まれます。こうして組織内の各チームが強化されることにより、企業全体として安定的な成長が生み出されていくのです。

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