2022.11.01 (更新日:2022.11.09)

人材育成

人材育成への考え方とは?目的や基本的な考え方、ポイントまで徹底解説! 【人材育成シリーズ③】

企業を成長させる上で重要なのが「人材」であり、いかに優秀な人材を確保・育成していくかが大きな課題です。しかし、「人材育成って何をすればいいのか」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。ここでは、人材育成の目的や基本的な考え方、ポイントを解説します。人材育成の効果をより高める方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

人材育成の目的とは

現在、労働者が減少傾向にある日本では、限られた人材をいかに有効活用できるかが重要です。企業の大切な経営資源である限られた人材を最大限に活用し、利益アップと企業の発展を進めていくためにも、企業における「人材育成」の優先度は非常に高いと言えます。

そんな企業の成長に不可欠な人材育成ですが、具体的には何を目的としているのでしょうか。

生産力の向上

1つは生産力の向上です。少子化問題が深刻な日本において、労働者不足は大きな問題となっています。企業によっては社員が足りず、業務に支障が出ることも珍しくありません。だからと言って、急に必要な人材を確保することは非常に困難です。つまり、限られた人材で企業が成長していくためには、1人1人の生産力を向上する必要があるわけです。

生産力は簡単に言い換えると「仕事の能力」と考えられます。社員1人あたりこなせる仕事が増えれば、今よりも確実に生産力は向上します。社員1人あたりの能力を伸ばすことが企業の成長へと確実に繋がっていくため、生産力を上げることは人材育成において重要な目的の1つです。

組織力の向上

社員1人1人の能力を上げ生産力を向上することは非常に重要であり、一人ひとりの活躍が企業を大きくしていくことは間違いありません。しかし、企業においてもう1つ重要なのは「組織で動くこと」です。様々な考え方や能力を持った社員たちがバラバラに動いてしまっては、その力が半減してしまうだけでなく、場合によってはマイナスに働きかねません。そのため、組織力の向上も企業にとって重要です。

個人の能力を高めつつ自分の役割を明確にし、1つの目標を目指す強い組織を形成することも人材育成における大きな目的です。

社員の離職を防ぐ

また人材育成には離職を防止するという目的もあります。現在、転職は特に若い世代において一般的であり、転職に伴う離職は増加傾向にあります。厚生労働省が昨年発表した「新規学卒就職者の3年以内の離職率」では大卒就職者では31.2%が3年以内に転職しているという結果となりました。転職の理由では「給与」や「職場環境」、「やりがい」などが挙げられます。

人材育成を行うことで、個人の能力を上げそれを評価したり、組織力の向上で職場環境が良好になったりするなど、転職の原因を減らすことも可能です。個人と組織の両方からアプローチを行い、社員の「やりがい」をしっかりと確保するためにも人材育成は重要と言えます。

人材育成と人材開発との違い

人材育成とほぼ同義で使われることの多い言葉に「人材開発」があります。実際、この2つの言葉には共通する部分も多くありますが、しっかりとした違いもあります。その違いは、「対象と目的」になります。ここでは、人材育成と人材開発の違いについて解説します。

人材育成の対象と目的

人材育成の対象は「新入社員」「中堅社員」「管理職」などの切り口で行うことが多く、新たに必要な能力やスキル、知識を身に付けさせることが目的です。

具体的には、コミュニケーションスキルやビジネスマナー、部署・役職ごとに必要とされる専門的なスキルなどです。専門スキルに関しては、新しく人事異動した部署で先輩社員とともにOJTなどで身につける手法が一般的ですが、一方で管理職などはマネジメントスキルなどが新たに必要になるため、勉強会や講習などを開催することが少なくありません。

このように、人材育成の対象は役職や部署などで分けられることが多く、具体的なスキルの習得が目的です。

人材開発の対象と目的

これに対して、人材開発は全社員を対象に行います。「開発」という言葉の通り、社員のスキルや能力を新しく見つけ出したり、社員自身に気づかせたりすることで組織力を高めていくのが目的です。

人材開発を行う上で重要なのが、各社員の現在の課題や特性をしっかりと把握することで、その上で施策を行っていきます。人材育成の目的よりも抽象的であり、特定のスキル習得を目指すものではありません。

「人材育成」と「人材開発」の違いを理解しておくことで、これから行う施策の対象や目的にブレが生じにくくなります。2つの違いをしっかりと確認しておいてください。

人材育成における課題

企業の成長に欠かすことのできない人材育成ですが、実際に行うのは簡単なことではなく、うまくいかなかったケースも少なくありません。ここでは、人材育成を行う上でよくある課題についてご紹介しますので、自社に当てはまる点がないか確認してください。

現状がしっかりと把握できていない

人材育成において、現状把握は非常に重要です。まずは、現在自社にはどのような課題や必要性があるのか、社員の状況はどうなのかしっかり確認しなければなりません。現状を把握することで「どのような対策を講じたらいいのか」「人材育成が本当に必要なのか」が明確になります。ピラミッド型、フラット型など組織内のシステムによっても、最適な人材育成方法は変化します。「現状が分からないがとりあえずやってみよう!」と動くことは時間やお金を無駄にする可能性が高く非常に危険ですので、行うべきではありません。

人材育成にかける時間が足りない

何か施策を行うとき、どうしても短期間での効果を求めてしまいます。しかし人材育成はスキルや能力の習得や育成が目的であり、成果が出るまで時間が必要です。人材育成ではサポートや研修などの振り返りも重要な工程であり、非常に手間と時間がかかります。しかし、この振り返りを行うか行わないかでは、人材育成の効果にも雲泥の差が生じかねません。人材育成を行う際には長期的なスパンでじっくり時間をかけて実施する必要がありますので、十分な時間的余裕を持って取り組んでください。

人材育成のモチベーションが低い

人材育成のモチベーションは「行う側」と「受ける側」の両方に必要です。一般的には、人材育成を行う側は、企業の成長や生産性の向上を目的としているため比較的モチベーションが高い傾向にあります。一方、受ける側のモチベーションが低いことは珍しくありません。大きな要因としては「なぜ人材育成が必要なのか」「これをしたら自分たちにどんなメリットがあるのか」などが挙げられます。人材育成を行う人事部や管理職サイドは、人材育成を受ける側がメリットややりがいを感じ、モチベーションを高く保てるよう工夫しなければなりません。

人材育成に対する基準が明確に決まっていない

「効果ありそうだからうちでも人材育成しよう!」となんとなく始めてしまい、基準が不明確なケースもあります。人材育成を行うには、しっかりとした基準を決めることが重要です。基準を明確にすることで、人材育成を行う側も受ける側も「どこまでやればいいのか」「どんな方法が効果的なのか」が明確になり、より効果が期待できます。

基準がない状態で人材育成を行うのは、ゴールが分からない状態でマラソンを行うのと同じです。どこまで走ればいいのか、どこに向かって走ればいいのかが分からず、体力と精神力を消耗し途中で挫折してしまいかねません。人材育成を成功させるためにも、基準を明確に決めることが重要です。

人材育成シリーズ④

人材育成を考える上で必要な3つのこと

上では「よくある失敗例」についてお話しました。では、実際に人材育成を行う際にはどのような点を押さえておけば良いのでしょうか。意識しておくべきポイントを3つご紹介します。

自社に必要な人材の明確化

まず人材育成をする際には、自社が求めている人材を明確にすることが重要です。なぜなら、自社が必要としている人材像がはっきりすることで、育成計画が立てやすくなるからです。また、ゴールが明確となるため、途中で方向性がブレてしまう危険性も少なくなります。

必要な人材像がはっきりすれば新しく社員を採用する際にも、自社が求める人材を採用できる可能性も高まります。必要な人材が明確になったら、文章化するなどして共有・保存できるようにしておくと良いでしょう。

会社全体での人材育成に対するルールや取り決めの整備

人材育成は会社全体で取り組んでいく必要があります。そのため、人材育成に対するルールや取り決めを整備して、全員が共通認識のもと取り組めるようにすることが重要です。「どのような人材を育てたいのか」を会社全体が理解しているのとしていないのでは、効果は大きく異なります。

自社に必要な人材が明確になったら、それを育てるための計画を立て、しっかりとルールや取り決めを組織全体で整備してください。

長期的な視点で取り組む

人材育成は短期間で効果が出ることはあまりありません。また、同じ育成方法を行ったとしても、人により効果が出るまでの時間に差があります。そのため、人材育成には長期的な視点で取り組む必要があります。人材育成のスパンを短期間に設定してしまうと、育成方針を度々変更することになり社員の不信感や不満に繋がる恐れが否定できません。企業としては短期間での効果を期待してしまいますが、焦らずにゆっくりと人材を育成していくことが大切です。

人材育成を成功させる4つのポイント

企業を成長させるために非常に有効な人材育成。多くの時間と労力が必要になるため、せっかく行うのであれば絶対に成功させたいところです。ここでは、人材育成を成功させるために意識したい4つのポイントについて解説します。

自身の業務を理解し目的を明確にする

人材育成を成功させるには、まず社員が自身の業務を理解できていることが重要です。理解が不十分だと成果を十分に上げることができず、社員のモチベーションの低下にもつながりかねません。また、社員と企業の間で業務に対する理解に大きなギャップがあると、社員の不満が高まり離職率が高まる危険性もあります。

社員が業務内容を理解し、この業務の目的が何なのかを明確にすることは、人材育成を成功させる基盤となるため重要です。

自主性を引き出す環境を用意する

言われたことや与えられたことをしっかりとこなしていくことも重要な能力です。しかし、それだけでは大きな成長に繋がる可能性は低いと言えます。そこでポイントになるのが「自主性」です。社員が自分で工夫したことや考えたことを実践することは、社員だけでなく企業の成長に大きな影響を与えます。自主的に何かを行うということは、受動的に仕事を行うよりも圧倒的に学びが多く、モチベーションも高くなり新たな発見を生み出すのです。

しかし、急に「自主的に行動しなさい!」と言っても簡単ではありません。特に若手の社員が自分の考えを積極的に発信するのは困難です。そこで大切なのが自主性を引き出す環境を用意することです。自主的に様々なことに挑戦したり、実践したりできる場面や環境を整えてあげることで、社員の自主性を伸ばすことができます。「もっとこうできるのではないか」「この方が効率的にできそうだ」という考えを積極的に発信し、生かせる職場を目指してください。

実践できる機会を設ける

習得した知識やスキルは実践することで定着していきます。また自主的な考えや工夫も実践することで新たな課題や良かった点などに気づくことができ、さらに発展させることが可能です。そのため人材育成では、知識やスキル、自分なりの考えを実践できる機会を設けることが必要です。

具体的には「習得したスキルで対応できる業務を任せる」「提案してくれた工夫が生かせる仕事を与える」などです。実践の場面では不慣れな点や分からないことも多いため、必ず周囲のサポートも必要になります。しっかりと組織で人材育成に取り組めるようお互いの役割を確認してください。

成果を可視化しPDCAを構築する

社員が、実践した成果が目に見えるようにすることも重要です。成果を可視化することで「自分がどれだけ成長したか」「取組がどれだけ成功したか」をより具体的に確認できるため、モチベーションのアップにも繋がります。可視化の方法として挙げられるのは、売上などの数値だけでなく、知識やスキルレベルを測定するテストの実施などになります。会社側としても評価の基準にすることもできるため、成果の可視化を行うメリットは大きいです。

また、この可視化した成果を基に「PDCAサイクル」を行うことも重要です。計画・実践したことを、しっかりと評価(Check)し、改善(Action)していくことで、さらなる成長に結びつきます。また丁寧なフィードバックを行うことで、実践した社員のモチベーションアップにも効果があるので、しっかりとPDCAサイクルを回すことを心がけてください。

これら4つのポイントを意識するだけで人材育成の成功率と効果はぐっと高くなります。現在の自社の環境や人材育成プランと照らし合わせ、必要があれば改善してみてください。

関連記事:PDCAサイクルルを回すための営業KPIの設定方法についてはこちら

人材育成で注意すべき点

人材育成は成功すれば大きな効果を生み出し、企業の成長に大きな影響を与えます。しかし、間違ったやり方で行えば、その効果が薄れてしまう可能性も否定できません。ここでは、人材育成を行う際、注意すべき点をご紹介します。

人材配置が適切でないと効果は半減する

人はそれぞれ異なる性格をしています。従業員が100人いれば、性格も100通りですし、得意・不得意な分野も様々です。例えば会社が「営業力を向上したい!」と考え、営業スキルの研修を実施したとしましょう。しかし、研修を受ける社員が、性格上営業が得意ではなく本人も望んでいない場合、その研修の効果が十分に得られない可能性が高くなりかねません。

人材育成で大事なのは、社員の特性にあった人材配置を行い、その中で育成を行っていくことです。これは、前半で説明した人材育成の改題にある「現状がしっかりと把握できていない」場合によく発生する問題です。もし、最適な人材配置ができているか確認したい場合は、社員へのヒアリングやアンケートを実施し、社員が能力を最大限生かせるように注意してください。

各人ごとに合った育成プランを構築する

先ほど上でお話した通り、1人1人性格もスキルも様々です。人材育成をする際に、単純に新人や中堅、リーダーといったキャリアや、営業や製造といった部署などで分けるだけでは不十分です。例え企業が求めている人材は一貫していたとしても、十分な効果を得るために育成プランは性格や長所に合わせて社員ごとに準備する必要があります。他社の成功例をそのまま自社に採用する企業もありますが、もちろん社員の性格やスキル、特性が違うため必ず成功するわけではありません。しっかりと現状に合わせて、自社ならではの工夫を行うことが必要です。

また多くの社員を抱えている大企業においては、1人1人の育成プランを管理する能力も必要になります。人材育成は新入社員や若手のみに行うのではなく、管理する側にも実施することが重要です。

以上2点をしっかりと押さえ、人材育成の効果を十分得られるようにしましょう。

関連記事:人材育成制度を体系的に構築したい方はこちら

人材育成をより効果的にする方法

人材育成を成功させるポイントや、効果を十分に得るために注意すべき点について解説しました。この内容をしっかりと実行すれば、人材育成を効果的に実施できるでしょう。

実は人材育成の効果をさらに高める方法があります。それは「社員のモチベーションを上げること」です。社員1人1人が自主的に人材育成に取り組むことで、その効果はさらにアップします。ここでは、社員のモチベーションを上げ、人材育成をより効果的にする方法を2つご紹介します。

勉強会の実施や資格取得を奨励する制度の導入

まずは、社員が自分で学習できる機会を準備してあげること重要です。例えば、終業後に自由に参加できる勉強会を実施するのも有効です。勉強会では、知識やスキルを習得できるだけでなく、他の社員との交流の場にもなり社員のモチベーションアップの効果が期待できます。

また、勉強会で得た知識をしっかりと実践する場を用意してあげることで、勉強会への積極的な参加を促すことも可能です。自社で勉強会を開催するのが難しい場合は、外部のものへ参加できるよう支援する企業もあります。

資格取得を奨励する制度を導入するのも効果的です。資格によっては受験費用が高く、それがハードルとなり受験を諦めてしまう社員がいるため、受験費用をサポートする制度を導入している企業も少なくありません。資格の種類や獲得数に応じて一時金を支給している企業もあります。

社員が進んで学習に取り組めるように支援すれば、会社にとっても大きなメリットになるのは間違いありません。

昇給など成果が反映される待遇の用意

昇給や昇格など成果が形としては反映される環境を整えることも必要です。社員がどれだけ頑張っても、待遇に反映されないのであればモチベーションは著しく低下します。そればかりか、自分のことをしっかりと評価してくれる他企業へ転職してしまう危険性も否定できません。

社員が努力を重ね、自社の求める人材、あるいは貢献度の高い人材になった際には、しっかりと待遇に反映させることが重要です。社員も「しっかりと頑張れば評価してもらえる!」と感じ、さらなるモチベーションアップに繋げられるのです。

【まとめ】社員と会社の両方が成長できる企業を目指していくこと

この記事では、人材育成の目的や基本的な考え方、成功させるポイントなどについて解説しました。人材育成を通して必要なリーダーなどの人材を確保・育成することは、企業が成長するために大変重要です。現在でも多くの企業が人材育成に力を入れ、大きく成長しています。一方、人材育成を行うにあたって不安を感じる人も多いかもしれません。ご紹介した注意点や成功のポイントを参考に、ぜひ人材育成を成功させ、社員と会社の両方が成長できる企業を目指していくことをおすすめします。

関連記事:営業部門の人材育成を何から始めればいいかわからない方は「営業組織力診断」で現状を把握することをお勧めします